テレ端が短い以外、欠点はない。F4通しの小三元級でありながら、すべてのニコン純正標準ズームを過去のものとする驚異のレンズだぜ。
Zマウントの高画質路線を象徴するレンズのひとつになりそう。一般ユーザーによる標準ズームの使用頻度は単焦点とは比較にならないほど多い。
ニッコールZレンズの名称はFマウントから簡略化されている。最後にSと付けるだけで、どんな特性や性格を持つかを代弁させているぜ。
操作は難しくない。スイッチはオートフォーカスかマニュアルフォーカスかを選ぶものがあるだけ。ニコンZマウントの防振機能はカメラ本体側にある。鏡胴外装は金属で、手触りの質感はいい。内部にエンプラが使われ、重さを軽減している。
インナーズームではなく、にょきにょき伸びる。さらに沈胴式で、ワイド端から最短状態まで縮む。これを安っぽいと見る人もいるが、軽さや移動時のコンパクトを実現するには、安っぽさと向き合うべきと思うぜ。
このレンズはレビュー時点でフォトショップにまだレンズプロファイルがないようだが、ニコンZで写したRAWファイルはカメラ内のデータベースより与えられた内蔵補正情報を反映できる仕様になっていた。収差の多くがあらかじめ自動補正されることで、細かい作業に集中できる。
実際の写りを見てみよう。最初から絞り開放を多用してる。ズームレンズでありながら、単焦点のような立体感を伴う。
秘密は絞り開放での解像力の高さにある。下は解像力を示す曲線で、上にあるほど高解像ということだ。Z24-70mmはニコンFマウントの標準ズーム最高峰、現行F2.8通し24-70mmより四隅まで解像する。ニコンDfで使ってきた24-85mmは……比較以前。絞らないと話にならない。
ついでにボケもズームとしてかなり良好だ。光点のボケを見るのが手っ取り早い。
輪郭のエッジが煩くなく、ボケ内部の縞模様も目立たない。なんだこのスーパーレンズ。すごすぎる。
下はわざとコントラストを強めに補正したもの。数段ぶんの極端な補正によって、ようやく年輪ボケが浮かび上がる(オレンジ色)。しかもくっきりではない。24-85mmなら盛大な木の年輪のような縞模様が出てるところだ。
ボケの輪郭が弱いので、こういう輝点の連なりも比較的柔らかく写せる。まるで単焦点レンズのような描写だ。
写りの良さが客観的に示されたので、積極的に絞り開放で写したくなる。
人工物以外にも、植物も得意。
背景のボケがやはり静かだ。煩い要素はさほどない。これが沈胴式の非インナーズームレンズだという。常識が覆る。
ZマウントのSラインはレンズ後部のナノクリスタルコーティングと表面の耐候フッ素コートを標準実装し、防塵防滴考慮のシーリングを主だった可動部にまんべんなく施されている。AFも静音高速なステッピングモーターだ。至れり尽くせりで、そのうえ画質もいいときた。四隅までしっかり解像。
F4で解像してると、下のような描写も可能。ほかの標準ズームなら解像してくれるのは中央部だけで、周辺部は解像が落ちて遠景からの浮かびあがりが目立たなくなる。
燃える炎の描写。逆光耐性が高く、火のみを的確に捉える。
ちょっと絞ったもの。無難に解像。
色乗りは濃いね。コントラストの高さは、鏡胴内壁での反射の少なさを示唆している。高性能の裏返し。
晴れた日に撮影。やはり色のり良好。Df+24-85mmなら錆びた自転車の朽ち具合が淡泊になるところが、このズームだとかなり鮮やかに。赤いフレームなど。
畑に黒シーツを被せ、春を待つ景色。サイレントシャッターと物理シャッターによる偽色の有無を見るため、発生しやすい被写体を選んだもの。物理シャッターのほうが描写は正確だが、等倍近くまで大きくして見ないとまず分からないていどだった。ウェブサイトやブログにメモ写サイズで載せるなら問題ない。
庭を飾る犬の置物。ボケ部分の二線傾向がほぼない。わんちゃんの背中、金属のボケが溶ける感じ。ズームレンズのおおむね60mm以遠で見られる描写だが、じつはまだ42mm。ズームの準広角で、単焦点と見分けが付きづらいレベルのボケが出た。
いいレンズだぜ。小売ならレビュー時点で11~13万円もするレンズだが、カメラと抱き合わせたキット付属なら、6~7万円相当で買える。ほぼ半額ときたか。ニコンはこういうところをなぜか宣伝しない。
カメラと合わせてAPS-C機並にコンパクトでバッグへの収まりも良く、高級コンデジでやってた映画鑑賞のメモ写も普通にこなす。
レンズ性能もカメラ性能も向上……なのだが、サイト掲載サイズだと差は分かりにくいか。自己満足の範囲だ。とりあえずトリミング耐性が圧倒的。
カメラも色もニコンなので、前のようなFUJIとNIKONのカラーマッチングはしなくていい。
ブツ撮りまで歪み小さく高度にこなせる。光源に使ってるLED光は直進性が強いが、ナノクリスタルコートで逆光耐性はFX用マイクロニッコールとたぶん同等。
あまり絞らず写した飯撮りをやや大きめで掲載。ボケは素直で、四隅の流れは見られない。これまでの苦労は何だったんだと使うたび唸る、ストレスの少ないレンズだ。
※追記2019/08/26
いろいろ使っていて、外出時の撮影で単焦点レンズの出番が本当になくなっている。映画のメモ写などはもっぱらこのレンズ。
飯撮りもそつなくこなす。ボケの味わいが良い。
こういう飯撮りはスマホもずいぶん得意とするジャンル。差別化が難しい。
いかに美味しそうに見せるか――ズームレンズの特性を活かして、試行錯誤を重ねている。このレンズを導入するまで、外出時の飯はほとんど単焦点で写していたが、それは画角固定により表現の幅があるていど制約を受けることでもあったぜ。
家にいて写すブツ撮りでもこのレンズの出番はけっこう多い。下の写真のような広角はもちろん、フィギュアレビューでもマクロレンズに混ぜて登板させている。1m前後で起きやすい二線ボケ傾向からメイン使用はさすがに難しいが、中望遠マクロに難しい広角側の表現が必要になればこの標準ズームが活躍だぜ。
この高性能レンズの影響で、標準マクロ(ミルバス)の引退が確定した。これまで標準ズームがイマイチだったので標準マクロを残してきたが、ここまで描写性能が高いと、中望遠マクロと共演させて見劣りすることはないぜ。
※追記 さらにマイクロ60mmも引退した。
最高撮影倍率は0.3。APS-Cクロップなら見かけ上およそ0.45倍となり、ハーフマクロとしてふるまう。ポテンシャルは高い。パナソニックが最大倍率0.5倍のすごい標準ズームを発表したが気にしない。あちらは価格帯がもうひとつ上だし、重さも1.5倍だ。
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