第六章 破滅魔災 DIABOLUS

旭和ラノベ
夢幻のフムスノア/第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章

 赤の集落が、巨大な火炎に包まれている。
 赤の人口は八〇〇人。白の四倍であり、全アツァアスル族の八割を占める。
 それゆえ、その炎は破壊的であり、また煙と灰は何かを象徴していた。
 ――終わりだ。
 赤は、負けた。赤は終わりだ。
 いや、アツァアスルが、終わるのだ。
 理想郷が、白と、ミクトランに奪われる。
 ――ミクトランめ。
 ――侵略者め。
 ――それに加担する、白め……
 赤の怨嗟が、煙とともに空に昇る。
 赤の大集落を、興奮したミクトランや白の戦士たちが駆ける。方船レンで押し寄せた悪霊どもは、煙に巻かれて逃げ惑う赤の人々を見るや、片っ端から奪う。女を犯し、老人を踏み潰し、子供を打ち悦ぶ。そして心と物を奪った後、狩りを楽しむように殺した。
 とはいえ、許せぬ冒涜者は四〇人未満。残りは対岸で、避難作業に専念している。
 方船シパクトリにすべてを放り込む。ミティの予言が、ミクトラン族を突き動かす。
 洪水だ、洪水が来るぞ。
 さあ、カヌーは役に立たぬから捨て置け。必要なのは、食料と、木材だ。とにかく、方船へ運び入れろ。怪我人もだ。死者は形見だけ取れ――
 ミクトラン族のあまりの熱心さに、白の部族は当初、戸惑っていた。しかしチニグの指示が飛ぶと、何も考えずにミクトラン族の手伝いをはじめる。
 洪水を直に体験していたチニグからは、真摯さが感じられる。状況が人を変える。やがてミクトランの気迫が乗り移ったのか、白もきびきびと動くようになった。そしていつしか、生き残った赤の捕虜までもが、作業に参加していた。
 一連の作業を終えるのに、それほど時間を要しなかった。
     *        *
 その頃、対岸――
 燃える赤の集落の中心を、七、八名の戦士の一隊が歩いていた。
 狩長トナティと、その直属の親衛隊だ。
 トナティ隊の後ろには、数十人の赤の部族がついている。いずれも疲れた顔を、すすに汚している。
 この一団と出会う略奪者たちは、獲物の束だと喜ぶが、すぐに狩長に気づき、おののくように退散する。
 命令外の暴走行為を、トナティが嫌悪しているのを知ってるのだ。
「くそっ、これじゃあ埒があかねえ……」
 トナティは苛ついていた。身勝手な連中を治めるために上陸したはいいが、見せしめに戦士を数人殺したのがまずかった。それ以降、どうやって話が広まったのか、どいつもこいつも、トナティを見ると逃げる。
 逆に、この男といると安全だ、と判断した赤の民が集まって来る。守る義理はなかったが、とはいえ状況的に断るわけにもいかない。彼らを保護することによって、トナティ隊の足はどんどん遅くなる。
 やがてトナティは決心した。
 略奪の中心では、新たな火が生じるはず。
 こうなったら――
「おまえら、二手に分かれるぞ!」
 そう言うと、トナティは足の速い戦士を二人連れ、三人で略奪の最前線を追うことにした。残る戦士に赤の民の護衛をまかせた。
 トナティたちは駆けだした。すると、聞き慣れない四人目の足音がする。トナティは訝しみ、後ろを向いた。
 すると、足を怪我した赤の戦士が、トナティたちの後を走ってついてきていた。
「道案内役ではないか!」
 トナティはここの地理に疎いので、道案内に赤の捕虜を一人、伴っていた。
 トナティは、走りながら聞いた。
「たしか、タトラだったな。シャーマン・ニルの護衛をしていた」
「は……はいっ」
 タトラの顔が、脂汗でにじむ。ケツァの槍に貫かれた足でびっこをひきながら、懸命に走っている。
 傷口が開き、包帯は真赤だ。
 トナティは、しかし走るのを止めない。
「戻れ! 足を失うかもしれんぞ!」
「いやだ! 俺の……おれの妻が、この先に……まもなくはじめての子が生まれるのに」
「そうか、それで自分から道案内を買って……わかった。ついて来い」
 トナティは、走る速度をいくぶん抑えた。
     *        *
 彼の鼻に、とても懐かしい、濃い臭いが届いた。
 彼は戦いを止めた――臭いは、少年?
「コラッ、れん、オレヲ無視スルナ!」
 ――気を立てるな、我の光を奪った男よ。
決着はいずれ着ける。だが、今の我には、こちらのほうが大事だ。
 彼は、臭いの元に向かった。
 間違いない!
 ――やっと……やっと出会えた。
 なんという日か。ついに、求めていた者と出会えるなんて!
     *        *
 サーベルタイガー・レンを至近に捉え、ケツァは硬直した。レンは、しきりにケツァの胸元に鼻を寄せる。そこには、父テスカの首飾りがおさまっている。
 それにしてもレンは、なんて立派なのだ。氷のように銀色の毛。大牙は一本しかないが、十分強い。ケツァは素直に思った。この牙の王は、美しいが、とても恐ろしい――
「ケツァ、恐くないよ。大丈夫」
 しかし、ミティが、無邪気にレンの背中に体重を寄せる。危険を感じないらしい。
 するとレンが、おもむろにケツァの顔を嘗めた。ケツァの顔に、湯気が立った。
「ねっ」
「や、やあ、レン……」
「レンディックストカックス君」
「……レ……ンディックストカックス、よろしく。俺はケツァ」
     *        *
 すべての争いは終わっていた。
 レンは、なぜかケツァとミティを仲間と認識していた。それゆえシンは、もはや戦いを挑むことができなくなった。
 オウィは力抜けたように座り込み、痛む鼻を押えている。ニルは、そんな父に槍を向けて監視している。槍が小刻みに震える。
 シンはしばらくレンを睨んでいた。が、レンがまったく相手にしない。しょうがないなと、シンは構えを解き、
「さて……急いで戻るとするか」
 と言ったのと同時であった。
 ――!
 いきなり、幾万もの獣が咆哮したような、体を揺さぶる響きが、皆を襲ったのだ。
「……来る」
 ミティが、同時に襲ってきた巨大な不快に耐えて、呻いた。
「……来るよ。洪水……大禍」
 そして、強い風が吹きだした。
 皆の背筋に、びりびりと悪寒が走った。オウィは声にならぬ悲鳴をあげた。レンだけは、なぜか超然としていた。
 振動は、どんどん大きくなっていた。
「これではとうてい、方船には……」
 ニルが、悔しそうに膝をついた。
 とはいえ、ケツァは諦めていなかった。
 何を思ったのか、オウィから奪った黒曜石の斧で、足下の氷を掘りはじめた。
「……何を?」
 というニルの問いに、
「シンは、ミクトランの洪水大禍を氷塊の亀裂に隠れて凌いだと――」
「……それはチニグとの再会のときに言ったきりなのに。耳まで聡い奴だ」
 シンは、おもむろにマンモスの大牙を担いで、上段に構えた。
「またやってみるか。この氷島の上半分はマンモスを閉じ込めていたせいでくびれている。おそらく水の勢いで氷塊になるだろう」
 そしてケツァの隣で、信じられない速度で氷を砕きはじめた。
 レンも、さもおもしろそうに牙で氷を噛み砕いていた。本当に楽しそうだ。
 ケツァは、レンを見てふと思った。
 ――おまえは、もしかしてこの洪水を知っていたのか?
     *        *
 燃える赤の集落をトナティたちは駆けた。
 そしてタトラが、指を差した。
「あの家だ――ああ、やめてくれえ!」
 トナティが見ると、タトラの家には、今、白の戦士がまさに火を放とうとしていた。
 トナティは鯨顎骨の大槌を振りかぶった。
「おい」
 声に気づいた戦士が振り向くや、その顔面に狩長の一撃が決まった。
 放火魔の頭部は変な方向に曲がり、耳から血が噴き出た。体が崩れる。即死だ。
 そしてその手から、松明が落ち……
 松明の火が、タトラの家に燃え移った。
「ちっ」
 トナティが火を消そうとしたが、しかしそのとき、思いがけない敵があらわれた。
 数人のミクトラン族の戦士だった。
 彼らは、トナティを口々に非難した。
「おいらは、食い物があれば十分だった」
「そうだ。関係ない戦に参加しやがって」
「だから略奪ぐらい、いいだろう!」
「白だってやってるじゃないか」
 対し、トナティの親衛隊が返す。
「誰が略奪を非と責めた!」
「勝手な命令外行動を責めているのだ!」
 トナティは、顔を真赤に震わせていた。
「赤をどうするかは、白が決める。俺たちは食客であって、理想郷の住人ではないぞ。俺たちは――ミクトラン族だ!」
 そして、突発的な同士討がはじまった。
 火を顧みる余裕などない。
 戦闘の間にも、火は大きくなる。家を形作る草束は乾いているので、回りが早い。
「……ユリ、ユリィ!」
 タトラが、足を引き摺って家に入った。
 煙の中で、タトラは妻を探した。ユリは青草の山から顔を出した。家の中はひどく荒らされている。どうやら草のおかげで、略奪者に見つからずにすんだようだ。
 腹の大きいユリは、タトラに擦り寄った。
「ああ……あんた。恐かったよ」
「すまない、ユリ。かわいそうに、こんな草の中で、さぞつらかったろう」
 ユリは、タトラの傷に気づいた。
「あんた……足に怪我を」
「それがどうした。身重のおまえを見守れとの、オウィ様のはからいで決戦に出なかったのに、肝心なときに……」
「なにを言ってるの。ニル様の頼りに応えるのは当然じゃない……それに、今、あんたは来てくれた。そんな足で……」
「ユリ、おれは敗者になってわかったよ」
「えっ、どうしたんだい」
「これは統一の戦じゃねえ。細りゆく理想郷での間引き合戦だったんだ。おれたち赤のやってきたことは、ただの人殺しだったんだ」
「あんた……変わったねえ」
「おれはやっと、ニル様の気持ちがわかった。さあ、ユリ、出よう……こんな集落を」
 タトラとユリは、おたがいを庇い合って、燃える家から脱出した。二人が出た直後、家は燃え落ちた。大きな火の粉とともに、黒い煙の塊が立ち上がり、二人を覆った。
 そのころ、トナティたちは反逆者を追い散らしていた。
「……勇者だな、タトラ」
 トナティは、煤塗れのタトラを背負った。
 親衛隊はユリの両側を固める。
「よし、他にも助かった者を探すぞ」
 そのとき、低い重低音が、トナティたちを襲った。火の粉がいっせいに煌めいた。
 トナティは、不安げに空を見上げた。
     *        *
 音の波動がアツァアスルを通過したとき、方船シパクトリは赤の集落についていた。トナティの部下に導かれた一〇〇人ほどの赤の部族が、方船に乗っている最中であった。
 音と、風が唸る。方船と陸地とを繋ぐ渡し板が揺れ、がたがたと音をたてた。
 方船の中からは一斉に人々の悲鳴がもれ、カリブーやマンモス、イヌたちが鳴き声をあげた。
 赤の部族は、この壮絶な波動に不安を刺激され、方船への歩みを止める。中には、なにを思ったか、ふたたび危険な燃える集落へと戻る者もいた。
 チニグは、渡し板の上で氷穴ツルナロタスを見た。音は、そこから来たのだ。
 と――
 次の瞬間――
 無音の氷塔が、穴の彼方で立った。
 透明な空に、透明な氷が、灰色に濁って、猛禽類のように――
 舞いあがった。
 青白い氷が、空中に塵のように散った。
 一度ではない。
 幾本も、氷と水の塔が立つ。
 連鎖的な噴出は、一直線にこちらを目指している。
 チニグは、自分を抱いた。
「……水路が、闇の水路が、破裂している」
 そして、はっと気がついたように、体を震わせた。
「シン……シン!」
 チニグは、走りだした。
 渡し板を降り、岸づたいにツルナロタスの方角へ。
 だが、最大の爆氷とともに――
 ついに衝撃波が、赤の集落に達した。
 チニグはそれをまともにくらって倒れた。
 だが起き上がり、氷穴ツルナロタスに手を伸ばし、口を開いた。
「シー……!」
 絶叫は、轟音に掻き消された。
 加速度的に音が高まり、
 すさまじい風が、赤の集落を襲った。
 集落の火災が、たちまち消える。
 そして――
 氷床が崩れ、そこから灰色の、魔の大水が湧き出した。
 ツルナロタスは、完全に形を失った。
     *        *
 風が、轟音となって皆を揺さぶった。
 ほとんどシン一人で開けたも同然の大きな窪みに、ケツァ、ミティ、シン、オウィ、ニル、レンが収まっていた。
 そして、水が入ってきた。松明はあっという間に消えた。空気が抜けた。
 闇の中、ケツァは、恐怖に駆られた。
 息が、できなくなる!
 ケツァは、息を大きく吸った。
 水が、すべてを覆った。
 音が聞こえなくなる。耳の空気が抜ける。
 いきなり、天地が回転した。
 上下がわからない。何もわからない。
 揉み、揉まれ、揺れ、揺さぶられ――
 ケツァの意識は、暗転していった。
     *        *
 方船シパクトリは、大騒ぎになっていた。
 冷静に戻ったチニグは赤の部族を叱咤し、大急ぎでシパクトリに追い立てる。
 水はどんどん迫っている。方船シパクトリから離れて、方船レンがある。そちらのほうに、略奪者たちがかけこむ。戦利品をたくさん抱える男、赤のきれいどころの女をつれて行く男さまざまだ。
 だが、無法者は我慢がない。多くの者を置き去りに、方船の入口が閉じた。そして河に漕ぎ出す。残された者たちが喚き立てる。それに、方船レンは矢で答えた。
 それを横目に、赤の部族の入船を確認したシパクトリでは、大渡板を入れはじめた。その作業中に、トナティたちが戻ってきた。二〇人前後の赤の部族を導いている。
 トナティは即断で、カヌーで方船に渡ることにした。四艘のカヌーに全員を乗せ、シパクトリのそばにいく。そして方船の屋根から綱を吊るしてもらい、伝って昇るのだ。
 みんな懸命に綱をのぼる。妊婦のユリや怪我人のタトラは、縛って引き上げた。
 最後に、トナティがのぼった。
 トナティは、屋根上で迫る水を見た。
 灰色味を帯びた水の壁が、ツルナロタスにより近い位置にいた方船レンを、まさに飲み込む瞬間であった。
 方船レンは――水の中で、いきなり弾けた。いくつもの木片が飛び、人も飛ぶ。そしてそれらも、水に消える。
 水は、もうシパクトリに迫っている。水が押し退ける空気が暴風となり、シパクトリを激しく揺さぶる。
「ちっ! 持ってくれよ、シパクトリ」
 トナティは汗を拭うと、大急ぎで屋根から退散し、屋根への口の大蓋を塞いだ。
 その直後、蓋に水が覆い被さった。
     *        *
 濁流の中、多くの木や氷塊が流れていた。そして氷の一つに当たった波が大きく弾け、飛沫が散った。飛沫は空中に弧を描き、すぐに落ちて短い旅を終える。ある水粒の終着駅は、ケツァの頬であった。
 ケツァは、頬に伝う冷たさを感じて意識を取り戻した。ケツァはゆっくりと起き上がり、自分のいる状況を確認するため、窪みの口までのぼって外を見た。
 そこには、灰色の水世界があった。
 ケツァの網膜に映るすべては、うす暗い灰であった。緑も、藍も、褐も、白も、アツァアスルの里を形成していた素朴な色彩すべてが、黄昏の単調に染まっていた。
 風と水が、争い叫んでいる。
 ケツァは直感した。
 ――理想郷が、滅びた。
 氷島の一部であった氷塊は無事に難破舟となり、ケツァたちを乗せて流れていた。ケツァは嘆息して窪みに戻った。
 他の者も、すでに意識を回復していた。
 シンはケツァに続いて外を見に登った。
 ミティはシンと一緒に行こうとしたが、ケツァの落ち込みを見て行くのをやめた。
 上から、氷を打つ音が響いた。シンが、無念と悔しさを左拳に込めた一撃だろう。
 ニルやオウィは、耳に入る騒音だけで、すべての気力が失せてしまっている。
 そしてレンは毛繕いを――
 !
 ふと、ケツァの視線はレンの背中に釘付けとなった。
 ――虹?
 きれいなアーチの虹だ。
 うすく、消えかかっているが、間違いない。ケツァはとたんに元気になり、レンに近寄って父テスカの絵に注目した。
 すっかり忘れていた。そう、レンディックストカックスは父の相棒だったのだ。虹を背中に描くのを許したほどの、友人だったのではないか。
「父さん……」
 心細くなっていたケツァは、いつしかレンに抱きついていた。
     *        *
 やがて流れが少々ましになって来た頃、
「ぅおーい! こっちだ!」
 シンが、氷塊の頂上に立ち上がり、マンモス・カトルの牙を振り回して叫んだ。
 ミティの横に座っていたケツァは、服の霜を払い、窪地から身を乗りだした。
 褐色の大船が、波間に揺れている。
「シパクトリだ」
 方船は無事だった。帆ごと大マストが千切れ飛び、上層の革張りがほとんど剥がれていた。だがこの剛健な船は、二度の大洪水に耐えてみせたのだった。前の洪水の時と同じく上半分は白い霜に覆われ、まるで凍った大木のようであった。
 方船はシンを見つけ、漕ぎ口を開いた。八本の櫂を準備しつつあった。
 幾人も屋根の上に出て、こちらに手を振り、いろいろ叫んでいた。
 シンは、力強くうなずいた。
「あちらは元気だ」
「みんな無事だ!」
 ケツァも力の限りに手を振った。
 方船は距離を詰めた。
 だが、あるていどで接近を止めた。
「すまない、これ以上の接近は無理だ」
 方船からチニグの声がした。
 氷塊は、水上はそれほどの大きさではないが、水面下に隠れている部分を考えれば、おそらく方船に匹敵する大きさがあるだろう。近づかないのは当然の選択であった。
「綱を放るぞ。それを伝うがよい」
 チニグが指示して、シパクトリから綱が放られた。ケツァが綱を受け取った。
 綱の一端は方船の屋根上で、トナティら力持ちの男たちが持っていた。少ないが、さっきまで敵だった赤の部族もいた。
 氷のほうでは、ケツァとシン、ニルが協力して、綱を引いた。綱はシパクトリと氷塊の間で、ぴんと張った。
「まず、俺が」
 赤の酋長オウィが手を挙げた。
「鼻を折ってるぞ。大丈夫か」
「シン、これぐらい我慢できる」
「わかった。行け」
「父上!」
「ニル、お前に綱伝いの手本を見せてやる」
 オウィは逆さまに四肢でしがみついた。器用に綱を伝い、氷塊から荒波に出た。
 激流の中、流氷から船への綱渡り。
 それは緊張の連続であった。
 波が背を撫でるたび、氷塊と方船の微妙な位置がずれるたび、オウィの進みは止まった。両端で綱を持つ男たちは、張りが緩み崩れるごとに、力の限りに引っ張った。
 ケツァは、体中から汗を噴いて叫んだ。
「ちくしょう、条件が悪すぎる!」
「同感、シャーマンが力仕事なんて……」
「我慢しろ! ケツァ、ニル」
 シンが、仁王に足をふんばって言った。
「これ以外に、方法はない!」
 やがてオウィは、無事、向こうに渡った。
 オウィは、当然であったが、たちまちリンチを受け、そして縛りあげられた。
「次! 誰だ!」
 ミティが手を挙げて、
「シン、私が行く!」
 シンは無表情で頷いたが、ケツァは心配そうな顔をした。
「ミティ……」
「ケツァ、行かせて」
「……わかった。がんばれよ」
「うんっ」
「よし、ミティ、行け」
 シンに促されて、ミティは綱に掴まった。
 そして雲梯の要領ですばやく動き、あっという間に半分を渡った。さすがに若い。
「どうやら、楽に渡れそうだ」
 とケツァが安心したとき、とたん、ミティの動きが止まった。
「ミティ?」
「いやああ!」
 ミティは懸垂のままで足をばたつかせた。
「なんでこんな時に来るのよ!」
 方船の上で、カマクが叫んだ。
「ミティ、予感か!」
「そうよ! 氷、氷が!」
 ミティの声に、ケツァとシンは、思わず辺りを見回した。
 なんと、氷塊の目前に、小山のような巨大な氷山が迫っていたではないか。
 救出作業に集中して、気がつかなかった。
「くそっ、間に合わぬ。ミティ、絶対に手を離すな!」
 氷山がぶつかった瞬間、シンは思いっきり綱を引っ張った。
 氷塊が大きく揺れ、綱も上下に振れた。軽量のケツァとニルは綱から弾き飛ばされた。一番危険な位置にいるミティは、無言で、必死に振れる綱を掴んでいた。
 そして氷塊が崩れはじめた。
 窪みから、水が吹き出てきた。
 ニルが、乾いた声をあげた。
「氷が、沈みます!」
 シンは悔しがった。
「もはや綱渡りは出来ぬ!」
 そのとき、今まで一連の騒ぎを他人事のように傍観していたレンが、水に追われて窪地から出てきた。
「うわあ!」
「何だ、あれは」
「レンだ! 銀の悪霊レンだ!」
 方船の屋根上では、騒ぎが起こっていた。
 シンが怒鳴った。
「こらあ! 綱を緩めるな!」
 それらを無視している当のレンは、窮地のミティを確認した。そしてしばし頭を揺らし、ケツァの元に寄った。
「レン……策があるのか」
 レンは、ケツァを口にくわえた。
「うわあ!」
 思わぬことにケツァは暴れた。
「……あれ、痛くない」
 それでケツァは大人しくしていた。するとケツァはレンの背中に乗せられた。
 レンは足踏みをはじめた。
「……そうか」
 ケツァは、両足でレンの腹を挟んだ。
「待って、少しでも軽くする」
 ケツァは、武器や汗水を吸った上着を捨てた。そして最後に、首から外した首飾りを握った。象牙の首飾りは、ずっしりと重かった。
「……ミティが大事なんだ。ごめん」
 父テスカの想い出を、水に投げ捨てた。
「――よし、行ってくれ、牙の王!」
 短い助走の後、レンは矢のように飛んだ。
「受ける。落ちろ!」
 ミティは頷き、両手を離した――
 直後、
 レンが波に落ちるミティのそばをかすめ、ケツァはミティを抱きしめた。
 レンはそのままシパクトリの外壁にぶつかった。レンはすばやく爪をかけ、上に跳躍した。そして方船の屋根に躍り出た。
 近くにいた者は恐がり、一斉にレンから距離を取った。
 ケツァとミティは、抱き合って転がった。
「ケツァ……助かったんだね」
「死ぬかと思った」
 二人は恩人ならぬ恩獣に礼をしようと起きたとたん、不意にレンに嘗められ、ひゃあと悲鳴をあげた。
 さらに強く抱き合ってしまった。
 さて、崩壊しつつある氷塊には、まだシンとニルが残されていた。
「おりゃあ!」
 シンは口に綱をくわえ、左腕でカトルの牙を氷に刺した。
「ていや」
 二撃、三撃と、杭のように打ち込んだ。
 そして牙に綱を結わえた。最後に端を口にくわえて思いっきり引き、結び目を強固にした。
 シンは、ニルを探した。
「ニル!」
 ニルは霜塗れになり、震えていた。
「……僕は、死にたくない」
「正直でいい意見だな。俺も賛成だ」
 シンは、硬直するニルを抱えあげた。
 足下は急激に崩れつつあった。
 シンは大急ぎで綱に向かった。綱は、大きくたわんでいた。
「駆け渡る! 張れや!」
 方船では、男たちが綱に飛びついた。ケツァも、ミティもいた。
 トナティが、号令をかけた。
「引けえ!」
 綱が、張った。
 シンはニルごと、綱の上を走った。
 そのとき氷塊が、ついに大きく崩れた。
 マンモスの牙も、抜けた。
 綱が、緩んだ。
 シンは、大きくジャンプした。
 鳥のように。
 そして、屋根上に降り立った。
 氷塊が背後で、ばらばらになっていた。
 すかさずトナティが、叫んだ。
「氷山が来るぞ!」
 氷塊を粉砕した氷山が近寄っていた。上層で、族長アトルが命令した。
「死ぬ気で漕げ。後方へ、だぞ」
 方船シパクトリは寸前で氷山をかわした。
     *        *
「うわっ」
「なにこれ」
 屋根から上層に下りたケツァとミティは、船内のすごい熱気に驚いた。服についていた霜が、瞬間的に溶けてしまった。
 大声で泣く乳飲み子、泣きじゃくる子供、うなだれる女、わめく男、祈る老人。
 シパクトリは上下層とも満杯で、所狭しと人でひしめいていた。
 そこに、シャーマン・キアが寄ってきた。キアはミティの手を取り、
「おお、見よ、精霊の子のお帰りだ!」
 と、皆に大声で触れ回った。
 次の瞬間ミティは、感謝の嵐に囲まれた。
「ありがと、お嬢さん」
「心から感謝します」
「よく還って来てくれた、精霊の子」
 誰もがミティに感謝している。
 ミティは戸惑い、隣のケツァに、
「ケツァ、私、精霊の子だって」
「ミティは、その不思議な力で、たくさんの人を助けたんだ」
「わたし……私……」
 ミティは、うれし涙が出てきた。
「……今度こそ、みんなを救えたんだね」
 ミティは、心のなにかが解け、身軽になったような気がした。
     *        *
 屋根上で、ニルは必死にトナティとシン、チニグに直談判していた。
「父上を、許してはくれませんか」
 だが、トナティは首を振る。
「無理だ……敗者の頭は死ぬ。戦の掟だ」
「……でも」
「ニル、《血羽根》めを特別扱いするわけにはいかぬ。敗者の頭の命を捧げないと、戦の精霊が怒り、災厄をもたらす」
「シン……」
「それに、彼はあまりにも多くの人を不幸にした。皆の恨みは深かろう」
「チニグ……」
 ニルは、落胆した。
「わかりました……ですがせめて、一日の命を――別れる時間を、ください」
「……それくらいなら、いいだろう。だが皆が動揺するので、オウィは方船には入れず、外で錨に縛りつける。食い物もやらぬ」
 シンが、強く言い切った。トナティとチニグは同意した。オウィ個人に対するうらみは、青の部族の遺児であるシンが一番深い。
 ニルも、シンに従うことにした。
 それを聞いていた当のオウィは、無表情で水面を睨んでいた。
     *        *
 灰色の荒波区域が終わると、シパクトリは、両側に氷の壁が迫る回廊に出た。
 氷の谷の狭間を、方船はすさまじい速度で流れていた。
 カマクは、一本の流木が氷壁に触れたとたん、折れ散ったのを目撃した。
「いかん、壁と距離を取るんだ。こんな速さじゃ、シパクトリとて安心できぬぞ」
 シパクトリは、騒然となった。
 氷に少しでも触れたが最後、融通の利かない方船は壁に押しつけられ、破壊される。
 皆は、争うように櫂にしがみついた。族長アトルのかけ声の下、懸命に櫂を漕ぎ、壁に激突しないように務めた。
 櫂漕ぎを邪魔する子供たちは、下層に集められた。下層の一角を占有していたマンモス・ブルクとカトルの背上は、はしゃぐ子供で溢れた。カトルは平然としていたが、不満のブルクは鼻を高々と挙げ鳴いた。数人の子供が驚いて落ちた。するとカトルが鼻でブルクの鼻をはたいた。急所を叩かれたブルクは、恐い先輩の忠告に従い、大人しくなった。ブルクは前以上に子供にたかられた。
 カリブーたちも、角が毎日見違えるように伸び行く時期だったので、残酷邪気なガキ軍の侵略を受けた。主権と独立を保ったのは、黒いキキンナクぐらいであった。彼は袋角を触りたがる好奇心旺盛な餓鬼たちから必死に逃げ回っていた。大人の頭を踏み渡った後を、子供が同じように踏み追う。
 さらに困ったことに、イヌたちが子供に混じって、いっしょに駆け回っていた。
 上層は、子供で開いたスペースを戦病者や年寄り、乳幼児が埋め、医療心得を持つ数人のシャーマンが飛び回っていた。
 その中で、赤の戦士タトラの妻ユリは、にわかに産気づいてタトラをあわてさせた。
「あんた、洪水のせいだよ。生まれるよ、すこし痛い……苦しいよ」
「おお、ユリ……俺はどうすればいいんだ」
 それで呼ばれたシャーマン・ニルは、顔を真赤にして叫んだ。
「これは僕の専門外だ!」
 かわりに《知る者》チニグが呼ばれた。
「出産は女の聖域だ、男はみんな去れ」
 そして産婆経験のある女性が数人集められ、それでおさまった。
 とはいえ、一番汗と熱気が漂う現場は、やはり上層両舷に並ぶ漕ぎ場であった。
 アトルの号令に従い、一斉に柄を漕ぎ動かす人たちから、汗と湯気がほとばしった。
 ケツァとミティも櫂漕ぎに参加している。
「くそう、精霊の馬鹿野郎!」
「ちがうよ、悪霊。悪霊の意地悪!」
「どちらも同じだ。がんばれ、ミティ」
「うん」
 ミティは、顔を引き締めた。
 一方、シンは相も変わらず、一人で一本の櫂を漕いでいた。
「大変だな」
 女の声に、シンは無反応であった。
「おい、手伝おうか」
 チニグだ。シンの目の前に座った。
「……シャーマンの仕事はいいのか」
「一段落ついた。キアが休めだとさ」
「そうか」
 チニグはそっけないシンの態度にすこし腹を立てたように、
「ずっと忙しかった。おかげで、《感動の対面》をしそこなった」
「感動? チニグ、珍しく妙な言葉を使う」
「好きで使っているのだ……シン、なぜ、ツルナロタスに入ったのだ」
「アツァアスルが消える前に、おれはどうしても、レンに会いたかったのだ。戦士の勘が、生きていると告げていたのでな。それに、ケツァを立ててもやりたかった」
「ケツァを立てる……」
「ミティもだ。チニグ、おまえはミティの恋を応援しておきながら、禁断とはいえ、いざというときには見捨てようとしたな」
「シンが穴に入るに決まっていたからだ!」
 チニグの叫びに、シンはたじろんだ。
「……チニグ」
 チニグは殻を脱ぎ捨て、泣いていた。
「ミクトランの洪水で再会したとき、ようやく気づいた。私はシンが大事だ。私は、いざというときはシンのように他が見えぬ……だから……もう、私のそばを離れるな。私が見えない部分を、隣で補え!」
 シンは、チニグの小さな背中を抱いた。
「二年前に戻ったな。我儘な、お嬢様に」
「こうも大変続きだと、死んで後悔しないうちに素直になるのが得策だ――」
「チニ……」
 シンの目が見開いた。
 チニグが、シンに顔を寄せて来たのだ。
「――好きだ」
 シンは、女の誘いを断わらなかった。それどころか、自分から進んでチニグを求めた。
 はじめてなのにやたら長いキスの後、
「やっと……おれの想いが叶った」
「――シン?」
 シンはチニグに優しい瞳で笑いかけ、そのきれいな髪をくしゃくしゃにした。
「約束しよう。もう離れないと」
 ケツァとミティは、一連の模様をしっかりと目撃していた。
「ミティ。何か、いいね」
「うん……したい」
「えっ?」
「なんでもないよなんでもないよ」
 二人とも真赤になり、いっとき漕ぐ手が止まってしまった。
 そのころ、チニグの父にして白の酋長スヌルクは、屋根上の端で川上を見つめていた。
「……さらばだ」
 妖しい銀灰の谷の彼方で、黄昏のアツァアスルがどんどん小さくなっていた。やがて、完全に見えなくなった。
 スヌルク以外に見送りはいない。
「悲しいことじゃ。誰にも、この最後を見届ける余裕も愛郷心もないとは……」
 そして、横に寝そべるレンディックストカックスと、そして錨の虜になっているオウィをつぎつぎとにらみつける。
 レンもオウィも、スヌルクを完全に無視し、ただじっとしている。
「付添いが悪霊どもとは、まったく……」
 そしてスヌルクは、ぶつぶつと何か言いながら、屋根から降りていった。
 孤高の牙王はあくびをし、赤の酋長オウィはくしゃみをした。
     *        *
 夜までに、水の負荷に耐えかね、櫂が一本折れてしまった。
 それでもなお、氷壁の試練は続いていた。
 やがて闇が来た。
 ミクトラン族は数日ぶり、アツァアスル族は数十日ぶりの、暗い夜であった。
 戦いは暗闇の中も行なわれた。
 ありったけの照明を用意した。氷壁と距離を取り続けるという、緊張の作業がひたすら続いた。氷壁の上は、嵐の区域になっていた。時々船の木々を結んだ綱が切れ、そのたびに船内に不安のどよめきが走った。
 船内の暑さと揺れ、恐怖、緊張に、大物のレンとカトル以外はろくに眠れなかった。
 音は響き、波は荒かった。
 夜の間に、さらに二本の櫂が折れた。
 そして短い夏の夜が明け、朝が来た。
 方船は、すでに魔の氷壁地帯を抜け出していた。抜けてきた氷原は、後方の地平にうすく広がっていた。
 やがて、流れが穏やかになった。
 ケツァは屋根上にあがり、震えるように白い太陽を見た。そして叫んだ。
「帰ってきた!」
 見渡す限り茶の濁り水が広がっていたが、そう言わずにはいられなかった。
 みんなは梯子を登り、つぎつぎと屋根に上がった。
 ミクトラン族は久しぶりに見る里に、生還の安堵と、同時に徒労の脱力を感じた。
「どういうことだ」
「水が引かないなんて……」
 一方、アツァアスル族は、初めてみる広大無辺な《海原》に、圧倒されていた。
「広い……」
「見て、地の果てまで水がある!」
 そう――ミクトランの地は、一面の海水に覆い尽くされていた。海と、洪水で溢れた部分との境界には、低丘陵地帯や、にわかに出現した河口干潟があったはずなのに。それらが、完全に消えていた――水が溢れようとも、ここは大地の一部だと主張していたあらゆる痕跡が、なくなっていた。
 ミクトランは、本当に沈んでしまった。
 ミクトラン族は、言葉を失った。
 帰る大地は、もはやない……
 沈黙が、支配した。
 ――
「精霊の丘だ!」
 その声は、ケツァのものであった。
 ケツァは、指を差し示した。
 ミクトラン族は、跳ねるように一斉に注目した。
「あいつか?」
「粒が見えるぞ」
「なら島だ。漕ぎ急げ!」
 アツァアスル族は何事かと思ったが、ミクトラン族は陸地の残像を目前にして、いてもたってもいられなくなったのである。
 アツァアスルからの流れもあり、方船は思ったより短時間で島に到着した。
 一艘だけ残っているカヤックで、数人の戦士たちが島に渡った。シンボルであるトーテムポールを回収し、方船まで持ち帰った。
 上層で、族長アトルが皆に説明した。
「いずれこの島は波に没する。トーテムは土に還すのがならわしだが、水には還さぬ。これには祖先と精霊の想いが詰まっている。だから、新たな地に連れていく……」
 そして大きな声で、宣言した。
「我々は今から、新天地に向かう!」
 ミクトラン族が拍手喝采したが、
「待った!」
 白の酋長スヌルクであった。
「この大船には、白赤のアツァアスル族も乗っているんじゃ。勝手に決めんでおくれ」
「……スヌルク。だが、おまえたちも大地を失った。どこかに行かねばならぬ」
「うっ……ごほごほ」
 拒むようにスヌルクは咳き込んだ。娘のチニグが背中を擦り、そして言った。
「私がかわろう。確かに、我々アツァアスル族は大地を失った。洪水大禍が起こらなくとも、いずれ白い夜と暗い昼に取り込まれる定めだったが――」
 この言葉に、アツァアスル族は一様にうなだれた。
「――新天地行きは承服しかねる。帆も櫂も折れ、結びの縄が朽ち切れた、こんな船での航海は無謀極まる。聞けば、新天地の地の揺れからシパクトリの巨木が流れ着くまで、《両手指の七倍》日かかったというではないか。とうてい食料も足りぬ。こんな状態では、漁も満足にできまい。疫病の心配もあるぞ」
 チニグは、指摘事項が増えるたびに指を一本ずつ折って皆に示した。
 アトルはあきれた。
「よくもまあ、つぎつぎと思いつくことができるものだ。そんなに嫌か」
「アトル族長、私は、今の時点で新天地を目指すのは、非現実的だと言っているのだ」
「…………」
「なぜ新天地にこだわる」
「それは……」
 そのとき、
 ――おぎゃあ。
 にわかに、産声が沸いた。
「うわあ、生まれたよ生まれたよ」
「産んだよ。産んだよ、あんた」
「でかした! ユリ!」
 ――ぎゃあぎゃあ、おぎゃあ。
 どうやら、タトラとユリの赤子が無事に誕生したようだ。
 チニグは、好機とばかりにつづけた。
「死とは別に、生まれ来る者がいる。アトル、そろそろ、ミクトラン族の封印した伝承を教えてくれないか。私たちが子に伝えてゆくために――もはや私たちは他人ではなく、同じ船の漂流者なのだから」

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