9 あずまんがリサイクル12ページ (あずまんが9・あずまんがリサイクル12P)
まいどー、春日歩や。今日は私のクラスメイト、大山くんの秘密に迫っちゃうでー……って、なんで私、体操服?
「それは我が王国の制服がブルマだからである! ようこそ大阪さん! 俺は君の大ファンなのだ!」
こ、これはとてつもなく危険なところに来てしまったかも……
「俺はいつもこの等身大大阪さんフィギュアを抱いて寝ているのだ」
わっ、イヤ! ほんまにイヤやわ! あ、あの私なんかより榊ちゃんや神楽ちゃんのほうが……みなも先生なんかスタイルもよくてええで。
「ダメだね。俺ツルペタ天然ボケ萌えだし」
そんな具体的にターゲットロックされても……
「そんなわけでこの国王大山のお妃は大阪さんに大決定!」
なにがそんなわけやー!
「ちなみにお妃は特別にスクール水着が制服となっているのだ。さあ着替えよう。な、なんなら、オ、俺が……」
ギャア!
ごん。
はあ、はあ……こ、今回のひみつはナシ! 封印や! 私も忘れるからみんなも忘れといてや。
「海がきこえる」てアニメ見てな、氷室冴子さんの原作買って読んで感動したんよ。高知県てとこに興味持った。そういえば高知いうたら、龍馬さんや。なにしたか知らんけど、えらかった人らしいがよ。司馬さんて小説家が本にしちゅうて聞いて、「龍馬がゆく」て本を買うて読んでみた。
あー、どえらい偉人さんやったがやなあ、龍馬って。まっことすごい人やったけん、いまの日本があるがやね。大政奉還なかったら、いまごろ日本は亜米利加国日本州やったやろうな。
「なあなあちよちゃん、この本の人ってまっこと偉いがよ」
「あ、龍馬が行くですね。5歳のときに読みました」
「さすがはちよちゃんやな、すでに知っちょったがか」
「あの――大阪さん?」
「なんやちよちゃん。なにかついちゅう?」
「いえ、あの……土佐弁」
「おう? ちゃうがよ」
「ちゃうねん、です」
「ちゃうがよ」
「……ちゃうがよ?」
「……ちゃうが。ああああ! 大阪弁しゃべれんなった!」
「まさか大阪さん、一度にひとつの方言しかしゃべれないんですか?」
「もしかして私が標準語しゃべれんがは、それが理由ながやろか」
「とにかく大阪弁を取り戻しましょう!」
「ごめん、頼んだで」
まったく、いかんかったわ。本なんてそうそう読むもんやないがやね。漫才ビデオや大阪ストラットを24時間見聞きしつづけて、ようやく直ったんよ。はあ……大変やった。私もちゃんといろんなことできるようにならなあかん。賢いハチ公のように! 犬やな……まあええわ。トロい私には犬から倣うのがちょうどええやろ。犬さん~、犬さん~。あかんわ、忠犬ハチ公、死ぬやん。
死なない犬探さな。犬ていえばあれやな、西郷隆盛さんの銅像。犬連れとるわー。あの犬なんて名やろう。えーと、西郷さん西郷さん……あ、本屋に行ったら情報あるかも知れへん。
つぎの朝――
「ちよちゃん、なんばしよっと? おはようですたい」
ある春の日、なわとびがあった。なんで私の机の上になわとびがあるか知れへんけど、何気なく手に取ったら、けっこうしっくり来るねん。そういえばなつかしいなこれ。それにあれや、えーと、これに似たなにかがおったなあ。
「大阪さん、なにしてるんですか掃除中ですよ? あ、これ私のです。すいません今日放課後になわとびしたくて……」
「グフや」
「え? え?」
「ザクとはちゃうねん」
こうして私の放課後の1年戦争がはじまったんよ。
「ふふふ。おもろいわこれ。よしっ! つぎや、こういうのは連続が肝心や!」
教室を見回すと、片隅に2本のカサが。なんでやろか、まあええわ。カサを片方開いて、盾にする。もう一方はまるで槍みたいや。そうや、これは――
「ギャンや」
「大阪さん、部屋の中でカサを開くのは欧米ではとても縁起の良くないことなんですよ」
「えー?」
開発中止や。しかたない、掃除しよ。
ホウキに持ち替えて掃除してたんやけど、塵を取ろうとチリトリを持ったとたん、またピンと来た。あああ、思いついたー! ホウキを頭に結びつけてな。
「ボールや」
ええわ。これで掃除つづけよっ! 量産や!
「クスクス」「クスクス」
ええ? なんでみんな笑うん? 恥ずかしい、量産中止や。
中止から1週間ほどは開発忘れてたんやけどな、消しゴム落として拾おうとした四つん這い体勢で気付いたんよ。おお、この体勢、ええわ!
「アッザムやねん」
「大阪さん、白いものが見えてますよ。男子がみんなこちらを――」
ちよちゃんの小声で恥ずかしくなって叫んだんよ。
「開発コード変更! ――こ、これなら簡単や」
足を折って格納した。この木馬状態は……
「ホワイトベースや」
でもな、ぜんぜん先に進めないねん。まるで置物のようやった。
それから1月ほどホワイトベースしかやってへんかったけど、そろそろ飽きてきた。新しいもの開発せんとな。よっしゃ! 屈伸運動の状態から両手を後ろ手で支えて体を起こし、足はつま先だけで支え、腹筋に力を込めて体をまっすぐに伸ばした。
「ム、ムサイや」
疲れるねん。前期型はだめや。うつ伏せの姿勢で馬乗りの馬みたいな体勢にした。
「ムサイや♪」
後期型やねん。あー、楽チンやー。
「あー、これならラクチンや」
「かわいいことしてるね、君」
うわ、開発中を通りがかりの男子に見られてもうた! 顔が熱いー、指揮官機や。
「1人では恥ずかしいわ。協力お願いしたいんやけど」
「お、別にいいぞ」
「面白そうだな、なにするなにする?」
ボンクラーズを召喚した。これで大成功まちがいなしや。
「3人ともルーズソックスで、神楽ちゃんはバット、智ちゃんはチョップ。私は、割り箸や」
「あはははは! ジェットストリームアタック」
「床をこすって煙をあげて歩くんやー」
「ドムだぞー」
「ちゃうねん。ドムや」
掃除直前の廊下を進んだんよ。けっこう汚れてもうてな、あかんわこれ。
他に協力者おらんやろか。あ、テスト返ってきた。私はまたダメダメやな。ちよちゃんまた100点か。今回で10回連続100点? ちよちゃん眩しいで、まるで金ぴかに光ってるように見えるでー。金色?
「ちよちゃーん。ちょっとそのテスト用紙、こちらに向けてにかってわろて」
「え……カメラで撮るんですか? えへへ」
「百式や」
「はい?」
うん、これはええわ。いまのは1年戦争やのうてZやったけど、パートナーはちよちゃんに決定!
「もっと静かなモビルスーツを開発したいんよ。ちよちゃん協力して」
「え? なんですか?」
「ちよちゃん寝て」
「あ、はい」
「抱えるねん」
「えーー! あ、あん、いやです恥ずかしいですー」
ちよちゃんを足から背中に抱え上げてな、砲門の完成や。
「ガンキャノンや」
「ちよちゃん可愛いー」
「でも見えてるー」
「見えてるー」
ガンキャノンやはヒットしてな、とくに男子に好評や。あちこちで披露しました。屋内や屋外で、砲門の先がそのたび装備変更や。
「この格好は疲れます」
あーそうか? そりゃしょうがないなー。
ちよちゃんからクレームがあってな、新しいものを開発せーへんとあかんなった。どうしよ。そうや、これや! ガンキャノンやの体勢で座るんよ。
「ガンタンクや」
「これでずいぶん楽になりました♪」
あーよかったなあ。
だけどこれなぜか男子に「見えない」て不評でな? 私の放課後1年戦争もここで一旦中止になったんよ。夏休みの間にすっかり忘れてもうた。
それからさらに数ヶ月たって、衣替えも過ぎて冬も近いある日やった。調理実習中に包丁をたまたま2本持ってしまったときや。ふと脳内になにかが閃いた。放課後の神様が降臨したんや。
「あ……」
私な、いきなり両膝をついて、口をあんぐり開けて包丁を下向きに持ったんよ。
「ザクレロや」
「うわー、危ないですよー」
「先生、大阪さんが……」
危ないんで一発ネタで終わってしもた。実戦投入は無理やった。私のこれて男子が一番喜んでくれるのに誰にも見せられへんかったんは残念や。
めげる私やない。その日の帰り、ちよちゃん家で私の家より早めに出されたコタツに入って思いついた。俯せでコタツに肩まで入り、両手を前でガオッと開いて、
「ビグロや」
でもちよちゃんにはさっぱりわかってもらえんかった。さらにあまりの気持ちよさに、そのまま寝てもうたんよ。
しょうがないと、次の日に再挑戦や。昨日とおなじ体勢で、今度は両手を後ろのほうに伸ばす。
「グラブロや」
でもまたわからへんかったようや。それもそうやな、私もテレビアニメ見たことないねん。総集編みたいな劇場番アニメと漫画だけやねん。古い作品やからなあ。
最近開発した3つはどれも男子の前では披露できないので失敗や。喜んでもらえるギャラリーに見てもらわんと飽きてくるねん。これはあかん、よし、教室で見せられるものを開発や!
寝そべって、飛行機みたいに手足を広げる。
「ドップや」
おお、受けた受けた。よし、さらなる開発やでー。
段ボール箱を拾ってきた。これに乗って……あかん、段ボール潰れそうや。しかたない。
「ちよちゃん入って」
「え? ……あ、はい」
よし、これでええねん。段ボール箱を下敷きにして、ドップやに近い体勢を取る。
「ミデアや」
「痛い、痛いです大阪さん、出して、出してくださーい」
あかん、ミデアやは一瞬の夢に終わってしもた。
ちよちゃんがモビルスール開発のパートナーから手を引いた。これで私1人で開発をつづけなあかんようになった。危機的状況や。どないしよ。
そのときや、なにかがひらめいた。トイレで両足を教室の壁の色に塗り、そのまま教室に乱入した。目をつむり両手を先までまっすぐ伸ばし、きりっと叫ぶ。
「足なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです」
女子たちにはさっぱりのようやけど、おおっ、と男子たちがどよめく。ふふふ、成功や。よし、こいつの名を言うで、こいつはジオングや。ふふふ。
「ジオ――」
「なにが偉い人にはわからんだって?」
「あ……」
後ろに、怖い気配や。
「大阪ぁ~~。ペンキでこんなに床とか廊下とか汚しまくって、どうするんだ?」
「ああん、ごめんなさいごめんなさい。痛いわ痛い~」
この一件で開発中止が言い渡され、私の1年戦争は終わったんよ。
でもな、まだ終わってなかったん。夢の中で忠吉さんと、私がちよちゃんの誕生日にあげたネコが出てきてな、まだ夢は終わってないて言うたんよ。
「そうや。わ、私まだ出来るんや! 戦いはまだ終わってないねん」
「わんっ!(その通りですよ)」
「そうなのだ。ほらっ、私たちを後ろに乗せて」
忠吉さんを背負い、その上に巨大化したネコ人形が乗り、扇風機とカサを持って叫んだ。
「デンドロビウムや~!!」
つぎの瞬間、私は目覚めてもうた。それでな、オチがつきました。
「これ1年戦争関係ないやん!」
うん、有名やけどこれはファンが書いたらしいんやもん。おなじ番外のように見える百式やは、よつばスタジオにあったからちゃうよ。
あれ? 誰かが私を借りて解説しとる……2重オチ?
昔々、あるところにちよちゃんと大阪さんがなんとなく住んでいました。
ある日大阪さんは山へ芝刈りに、ちよちゃんは川へ洗濯にいきました。ちよちゃんが川で洗濯をしていると、川上から「はにゃーんはにゃーん」とくそでかい桃が流れてくるではありませんか。
あまりにでかいのでちよちゃんは持って帰れません。あきらめて放置しようとすると、桃がいきなり割れました。
中からすっぱだかのともちゃんが飛び出しました。
「こらー、物語が進まなくなるだろ!」
「はにゃーんなのにさくらちゃんじゃないの?」
「ふっ、読者を騙す罠よ」
わけがわかりません。
ともちゃんはずうずうしく家にあがりこんできました。一番上等な服を奪い、囲炉裏の上座を占有してちよちゃんも大阪さんも大迷惑です。
「じゃあ鬼ヶ島にいって鬼退治するから、さっさと旗と装束ときびだんごと銭用意してね」
「で、でもこの辺の鬼さんは大人しくて……」
「言い訳しない! 物語なんだよ」
「はい……」
ところで大阪さんセリフひとつもないですね。
ちよちゃんと大阪さんは生活保護を受けているほど貧しいのに、100万円も借金してともちゃんの要求するものを用意しました。
「ふふふ、じゃあな」
ひどい桃太郎もいたものです。
「うるさいな」
ともちゃんが悠々と歩いていると、よみさんが倒れていました。
「あー、腹減った」
「ほーらほーら、きびだんごやるから仲間になれ、さる」
「なんだと!」
でも背に腹はかえられません。よみさんはしぶしぶきびだんごで仲間になりました。
ふたりが歩いていると、榊さんがいました。
「榊さーん、かわいい鬼さん見に行こー」
無言で頷きました。
「榊さんは犬さんね。はい、きびだんご」
「やい智、私のときとはずいぶんとちがうんじゃねえか?」
「さるは黙ってなさい」
3人で進んでいると、空からかおりんが落ちてきました。マンガよろしく地面に人型の穴を開け、そこから土まみれで這い出たかおりんは一言。
「飛べませんが、キジとして連れてってください!」
「いいよー。これで揃ったー」
「わーい。榊さーん、ふつつか者ですがよろしくお願いします」
かおりんの顔から鼻血がつーっと流れました。
4人は鬼ヶ島に攻め込みました。
でも武器はともちゃんが持つなまくら刀一本だけ不安です。さっそく鬼が現れました。
「がおー」
「なにしてるんだ神楽?」
「しかたないだろ、他に役ないんだから。ほら、他のも出てくる出てくる」
「だー、なんで私が鬼なのよ。にゃもは似合ってるけど」
「お互い様よゆかり。脇役の運命よ」
「その悟ったとこイヤー」
神楽とにゃもとゆかりが襲ってきました。でもなにも持ってません。服装からしてほとんど水着同然な露出度の高いトラジマの毛皮です。
「ていっ」
ともちゃんが刀を振り回すだけで怖がって逃げていきました。
「おまえら、テストでは覚悟しておけよ! アイシャルリターン!」
「わはは、正義の勝利ー! このまま一気にボスを倒すぞー!」
「ゆかり先生にテストでむつかしい問題出されたら……」
しかしキジの足が竦んでいるようです。
「行こうかおり」
「榊さん――かおりんって呼んでください」
「かおりん」
「あーん、幸せすぎて死ぬー。もう死んでもいいー」
よみさんがあきれています。
「……なにやってんだこいつら」
「ふふーん、私たちのほうが濃厚な間柄だもんねー」
「なっ! 幼馴染みだからってなに勝手なこといいやがる」
4人は洞窟の奥に入ります。そこはやや広い空間になっていて……
「一等賞ーーー!!」
ボスはキムリンです。
「ふっ、私が来たからには、もうあなたの天下はおしまいよ」
「……私は留守番です」
「なに?」
キムリンの足元に穴が開きました。彼は「残念賞ーーー」というおたけびと共に消え、そして暗がりから現れたのは、1人の女性。
「ああ、おまえは!」
「ふふふ。そして犯人は私!」
犯人(?)はなんと大阪さんだったのです!
「これで大阪なボケ日記らしくなったでー」
「な、なんやっちゅーねん?」
「たかー、なすびー、目覚めよー」
ごごごごご。
鬼ヶ島は沈みました。
「ねえ、このSSの主人公は私、この智ちゃんじゃなかったの?」
これは春日歩のボケ日記です。そんなこと知りません。
「そんなあ~~、ぶくぶく……」
欲求不満やねん。今年のクリスマスイブも彼氏おらへん。誰か私のサンタさんになってください……ダメや。待っとるだけではなにも変わらへん! のーどーや! じょどーでなく、動くんや。でもなんで農道なんやろ。
農道いうたらトラクターやなあ。サンタさんがトラクター乗ったら、赤い鼻のトナカイさんはリストラされて大変や。トナカイが引くよりトラクターのほうが速そうやねんもん、農道のクリスマスにはトナカイさんすることなくて可哀想や。よし、私がトナカイさん慰めたる。トナカイなサンタの格好をするんや!
サンタさん服はなぜか父ちゃんが持っとる。サイズが大きめやから、上だけ着る。私の身長やとそれでワンピースみたいになった。下のズボンなんてなくてもええ感じや。女の子でよかったー。男やったら変態さんやで。そうそう、寒いのでパンストやのうてもっと保温効果の高い黒ニーソックスを穿いた。上着(兼スカート)とソックスの間でちょっとだけ肌色出て、妙に色っぽいねん。よみちゃんとおなじやー。
サンタブーツはぶかぶかやったけど靴下3枚履きでむりやり装備したわ。このオーバーサイズが意外とかわいいと思うんや。サンタ帽子は被らず、代わりに買ってきたトナカイさん変身セットの角付きイヤーマフや。耳を覆う毛の部分は優しいブラウンカラーやでー。両手もトナカイさんのマークが入ったおしゃれな革手袋。赤鼻はちょっと勘弁な。最後は荷物を入れた白リュックでプレゼント袋を再現や。
町に出ると、雪が降っとった。わぁー、ホワイトクリスマスやねんなあ。私はトナカイさんです。見てやー、けっこう似合っとるやろ? 今日はちょっと遠出しよっ。電車に乗って海辺まで行くねん。海につきました。わー、人いっぱいやー。
「あの……写真撮ってもいいですか?」
ええよー。トラクターでリストラされそうな農道のトナカイやー。
「写真撮らせてください」
ええでー。私の心は海みたいに広いんや。具体的にいえば、瀬戸内海くらいー。
「写真――」
またかー?
なんでさっきから男の人がぎょうさん寄って来るん? ずいぶんとメガネさんの率が高いねんなあ。
「ぜ、絶対領域ハアハア……」
ああああ、いま下から映した! やめてんかー、この助平。今日は寒いから木綿のパンツやねん。色っぽくないねんよ。
「これはこれで!」
なんやいまキムリン先生みたいなこと言うた! 私そないな特殊な趣味の人はいややねん。逃げたー。
「ねえねえスリーサイズ教えて」
今度はセクハラかー? 今日はずいぶんともてる日やなあ。私、あまりグラマーやないねん。小学生みたいにスレンダーすぎて、胸もぺったんこやー。
「それはそれで」
えー。男の人て胸があるほうが好きなんちゃう?
「いや反対の人も多い。とくに僕たちは」
そうなん? 私でも男の人にもてるん?
「はい。もうベリーグッド」
ありがとなー。これは御礼や、ほっぺにちゅう。ちょっと遅いけど私からクリスマスの贈り物やねん。うわ今日はなんや大胆やなあ私。トナカイさんの格好で「かいほーてき」になっとるんやろか。歩いとると男の人がどんどん寄ってくるねん。私、どうしてもてるんやろ。生まれて初めてやー。
それにしても周囲に私みたいな奇抜な格好した子がけっこうおるねんな。うすい本を詰めた紙袋持った人もたくさんいてるし。ここどこー? 建物の中に入ると、机がぎょーさん並んでみんながあのうすい本とかを声高に売ってるねん。汗の熱気がむんむんする。変わった祭りやなー。ようわからんけど、この祭りやったら私でもモテモテやねん。
へー、私がしとるのコスプレいうん? キャラの名前? 知らんわなにそれ。オリジナルキャラて、別に名前はないねん。そうや、我が輩はトナカイサンタである。名前はまだない。サンタにリストラされて泣いとるんや。その割には幸せそーな顔しとるなて、ほっといてんかー。これがデフォルト、地顔や。
ちょっとトラブルもあったけど、有意義でなかなか楽しかったわー。私なんかがモテるのがええねん。開眼したかも知れへん。今度あるときちよちゃんとコスプレして来よっと。