原作で語られてへん大阪さんのこと、勝手に解釈したでー。全93+3篇や。
高校生になってわずか1月で、お父ちゃんの転勤でいきなりの転校や。はじめての東京で緊張してます。うわあ、ええ学校やなあ。きれいやなあ。姉妹校のよしみでなんとか編入試験やらせてもろて、なんとか受かったんよ。最初に受かった学校より何倍も難しい問題やったけど、ぜんぜんテストできへんかったんやけど、なんで受かったんやろ。そういや面接で校長先生笑いっぱなしやったけど、それが良かったんやろか。
クラス担任もおかしいんよ。私のこと戦力いうて、ようわからへん。私、むこうではあまり目立たんかったんよ? おたくっぽい男の子にもてるていどで。まあそれはええとしてな、そないなイロモノな私になにができるんやろ。え? 自己紹介でいきなりなんや? よろしゅーたのんまんがなって、なんや? いやや、はずかしーやん。
なんとか最初の関門は抜けた。はあはあ、疲れたー。え? 休み時間になったとたん、なんでこないに人が群がって来るん? 小学校ならわかるけど、高校ってもっと転校生にクールやないんの? それにここ進学校やし――私、人気者やなあ。ああ、私が大阪人やからか。なんやねん私の魅力やないんか。まあええわ、はよ友達つくろっと。
マックのことマクドて? うん、そうやで。他にも大阪のことぎょーさん質問してや。なんでも答えられるでー。え、静かやて、うん。私あんまり声おおきくないねん。早口でしゃべれんし、でもこれでええねんよ。
「にせものー!」
えええ? そないなこと言われても……弁当見せて? タコ焼き? そないなもん入っとるわけ――はっ! この怖い目――な、なんでやねん?
……ほっ、怖いわここの人ら。この先大丈夫やろか。
英語のテスト直前にな、智ちゃんがみんなの前で出題予想しとったん。
「ズバリ! 32ページの和訳が出ます!」
でもな、私暗記に夢中で肝心なとこ聞き逃したんよ。えー? さんじゅーなんぺーじなん?
「なあなあ、暦ちゃん、なんぺーじ?」
「だー! 忘れるだろ!」
「なあなあ千尋ちゃん、どこやったんいまの?」
「いまはごめん」
あー、だめや。みんな一所懸命や。最後の足掻きや。こうなったら30ページ代のすべての新単語覚えたるー。じつは私、そーゆーの得意です。1時間で忘れるねんけどな。
いよいよテストの本番や、高校入ってはじめての中間テストでしかも最初の教科や。さすがに緊張するわー。よし号令や、裏返すでー。
…………おお、出とる! これは80点いただきやー。
「出てねぇー!」「出てねぇー!」「出てねぇー!」「出てねぇー!」
「出てねぇー!」「出てねぇー!」「出てねぇー!」「出てねぇー!」
なんやのんみんな一斉に? 耳にうるさいなあ……ああああ、今のでみんな忘れてもうた! うあーん、意味ないやん。
49てんやった。
42 ぼくドザえもんです (アニメ版4話3【原作1巻44P時系列】)
え? 人間て浮くように出来てるん? そうか、水死体は浮いとるんか。ともちゃんありがと、これで水泳の極意を会得できるわ!
死んだらええねん!
息を止めて、浮かぶー浮かぶー。なんやちよちゃん? うん、水泳の極意を会得中や。ちよちゃんもいっしょに水死体にならへん?
きっと楽しいでー。
66 カレーうどん (アニメ版18話2【原作1巻47P相当】)
よみちゃんはカレーうどんのカレーを服に1滴も飛ばさずに食べることができる人や。えらいなーよみちゃん。私なんかあれやで、ラーメンなんかもうかつに食べられへんのや。でも逃げてばっかやとあかんねん。私もカレーうどんに挑戦して、トロい自分から抜け出すんや。今日はその第一歩やねん。いつぞやの靴飛ばしは失敗したけど、今度こそ私の伝説がはじまるねんでー。
カレーうどんを買うてきた。この温かい茶色をまぶしたコシある物体を――あれ、智ちゃんがゆかり先生に叩かれとる。よみちゃんを襲ったのがゆかり先生に当たったんやなー。あかんで智ちゃん。さて、私の伝説をはじめるねんでー。いただきまーす。
「こら逃げるな智ーー!」
「大阪どけー!」
なんやー?
どかーん!
カレーうどんが……私の顔に迫ってきた。
えー! 智ちゃん私今日から大阪てなんやー!
大阪から来たからて、そんな安直な。ふえええええーん。
「私なあ、和歌山生まれやねん」
「じゃあ和歌山になる?」
う……それもっといやや。お相撲さんみたいやねん!
どすこーい。
41 私はこう読んだ (アニメ版2話3+原作2巻48P【原作1巻59~60P時系列)
体育館で運動したあと、ジュース買いに行ったら面白い文字を発見した。
『HECHO』
「なあなあ智ちゃん暦ちゃん、この会社のロゴってなんて読むのん?」
「なんだこれ……へちょ?」
「まるで元素記号だね。ヘリウム、炭素、水素に酸素。読み方はともかく、知らない会社名だな」
どマイナーな会社のようや。これはおもろいわ。頭の片隅に留めておこっ。
そして9ヶ月後……
「へーちょ!」
かっこええ女の人を見つけました。たしか、榊さんっていう人や。思いだした、あの人、私みたいによくぼーっとしてる人や。仲間やのに、体育になるとなんかこう、人が変わったようにかっこよくなるなんて、見事なる変身やねんなあ。かっこええなぁー。
「あ! そうでしょ? かっこいいでしょ?」
隣のおかっぱな人がなんや妙にうれしそーに言っとる。まあそれはどうでもええねん。
そんでな、榊さんにできるなら、きっと私も変身できるねん。ダー! シュワッチ! ウルトラマンみたいに。よし、私もあの人を狙おー!
「え! 狙うってあんたちょっとねえ!」
隣の人がまたなんや言ってきたけど、なんで怒ってるん?
私もな、いざというときはかっこええ女に変身するんや。ウルトラマンみたいにな、カッコええ女になるんを目指すんやー。
「あ、あ――狙うって、そ、そう」
隣の人が変なこと言っとほっとしとる。ようわからんわこの人。
「でもあんたにはムリだわ」
え? 無理? なんでやねん。私、ウルトラマンになれへんのー?
あ、そうか! そうやそうや、女の子では、マンにはなれまへん。そうや、ウルトラウーマンを目指すんよ。いや、ウルトラガールのほうがかわいくてええねん。私やったらウルトラガールやな。うふふ、ダー! シュワッチ!
ありがとな隣の人。おかげで間違いに気付けたわ。ウルトラマンて1回も言ってへんのに、わかるなんてごっつえらい人やなー。
……ところでおかっぱな隣の人、名前なんやのんー?
今日は親戚が東京に遊びに来てたんよ。
「どうやった私の学校。おもろいやろ」
「よかったでー、大阪」
「もうそれやめてんか。歩でええねん」
「ごめんな歩。ほい、制服貸してくれてありがとな」
「誰かにばれへんかった?」
「うん、だいたい大丈夫」
「だいたいて、なんやー」
「おかしな子に勘違いされたんよー。あの子きっと歩ちゃんの友達か知り合いやで」
「どういう子やった?」
「めっちゃ変な子やったで。『大阪、大阪』て呼んで人違いて知ったとたんにな、『つぎは名古屋……』――っぷ」
「え、どないしたん、なあ」
「あはははは、あはははははは」
「なあなあ、どしたん、なあ」
「『しゅっぱつしんこー。白線の内側に……』ぷ。あはははは!」
「あーん、その子誰やろ!」
けっきょく誰かわからへんかった。
パンツってなんで丁って言うんやろ。暦ちゃんに聞いたけど相手にされへん。そしたら近くの席にいた子が「拳銃とか1丁ていうよね」て言うてくれた。ふーん。武器と関係あるんやろか。おもろいなあ。ところで拳銃とかて言うた子、誰やろか。その後まったく見いへんのやけど……参考は1巻67ページやで。
43 燃えるような (アニメ版5話4【原作1巻85P相当】)
夏や、旅行や、別荘や、合宿や!
夏休みでちよちゃん家の別荘に来てます。夜はさっそく花火や。
……あー、派手なのみんなもってかれた。これなんやろう? ネズミ花火――ハートに火をつけてって、かわいい花火さんやなあ。よし、ちよちゃん驚かしたる! ちよちゃんの心を燃やすねん。
ほいっ、火を付けたで、ちよちゃんの後ろに置いたで。ちよちゃん気付かへんなあ。なにも知らへんでー。わくわくやー。
……あれ? なかなか弾けなんなあ? ――なんでや?
近づいてちょっとたしかめよ……ぼんっ!
うわああああ!!
わ、私のハートに火がついてもうた!
目の中のごみがな、ぴんぴん浮いて見えるんよ。あー、左やー、右やー。おもろいなあ、かわえーなあ。照明に顔を向けて目をつむったら、夜のぴんぴんやでー。ゆーれーみたいや。
あー、旅行の写真できたのん? 榊さんの写真、心霊写真みたいやなー。ええなー、あ、ゆーれーがあらわれた。待ってやー、ぴんぴん~~。
雷ってええなー。あのピカピカァーって光がな、好きなんよ。今日は台風の影響で午後から強い雨が降ってな、弱くなるまで帰るの難しいねん。絶好のピカピカ日和やねん。ちよちゃんと榊ちゃんは雷が苦手なようやな。智ちゃんは大好きで、暦ちゃんは平気みたいや。
窓に近寄ってな、雷を待つねん。雨で冷えた窓を触ると、気持ちええよ。9月でまだまだ暑いけど、雨の窓はええなー。
ピカッ! ゴロゴロー!!
「うわっ、こわぁ!」
びっくりしたやん。音はいやや。光はええねん。もう1回来ないやろか。ぴったりくっつく。
ピカッ! ドカーン!
「うわー! こわぁー!」
音が大きくて、おもわず後ろに離れたやん。音のばかあ。光がええんや。光。
12 雷2/してるよ (原作1巻101~102P)
「あんたは好きなのか嫌いなのか」
あー、暦ちゃんにつっこまれてもうたー。私が雷好きで嫌いなのわかったんやなー。でも突っ込まれたんはまるで智ちゃんやん。智ちゃん大阪や。
智ちゃんいうことは暴走せなあかんねん。暴走しよ。
…………。
どうやってするんやろう。まあええわ。暴走なんてしたことないし。
そういや雲の上には雷さんておったな。暦ちゃんに質問や。
「雷てヘソ取るやん? あれってどーゆーこと? ヘソ取ったらそこはどーなるん? 穴あくん? ツルツルになるん?」
「さあ……?」
暦ちゃん反応悪いなあ。
「ツルツルはまだしも穴なんかあいたらえらい事やで! 死んでまうで!」
「そんな心配しなくても……」
カッ! ゴロゴロ……
「うわっ、こわぁ!!」
光だけにして欲しいねん。びっくりしたやん。
44 1980円ぶんが (アニメ版6話1【原作1巻115P時系列】)
ちょっと雲が出てたので、体育祭の天気が気になった。よし、靴を蹴り投げて占うねん! おもてが出たら晴れるんや。見とってやちよちゃん、私も晴れ女になるねんでー。今日がその栄光ある第一歩になるんやー!!
とおぉーー!!
ぶぶぶっ……ぽす……ぶぶぶっーー。
ああああ、トラックの荷台に……私の、私の栄えある野望の第一歩がぁ。
45 バイオホネード (アニメ版6話2【原作1巻117P時系列】)
体育祭やー。ちよちゃーん、準備体操で前屈やるんで背中押してー。
……相変わらず硬いなあ。変な音がしとる。これ人間の音やないで。開かずのドアみたいや! 私の背骨は開かずの骨やねん! ホラーや、ホラーなんやー!
オーエスって言葉が謎や。体育祭のときに気になったんよ。あの掛け声や。つなひきのな。
それからしばらくしてな、情報の授業で念願のオーエスが出た。
「OSとは――」
あー、先生? わからへん。なに言っとるか、わからへんよ。オーエスって省略しとったんか。OSってなんの略やろ。オスマンサンコンさんやろか。古い?
最後の手段や、ちよちゃんに聞いたる!
「あ、それならoh hisseから来てるんですよ」
……はあ? 発音が流暢すぎてわからへん。
「フランス語です」
なんでフランス語なんか知っとるんやろう。ああ、私ら、いつのまにかフランス語話しとったんか。知らんあいだにお利口になっとったんやなー。
オー、エース、シルブプレー。
33 ちよちゃんはなんで飛ぶのんー? (原作1巻127~128・2巻14~16P)
ちよちゃんを観察してます。あれが気になるん。めっちゃ気になるんよ、おさげが。なにも特別なことしてへんと思うけど、ジェリーかなにかで固めたみたいにきれーな形しとってな。まるで機械の部品みたいやー。
そないなある日、夢におさげが出てきたんよ。ちよちゃんのおさげ片方持って上に挙げたら、もう片方も持ち上がってんねん。可動品やったんか! つぎの日たしかめてみたけど、動かへんかった。そりゃそーやんなあ。
しばらくしてまた夢に出てきました。今度は取り外し可能やねん。新しいのですよて、うわ、こわー。たしかめとうても無理やねん。実証不可能や。でも気になるんよ。もしかしたらて思てな? もしかしたら、ほんまにあのおさげ、部品やも知れへんやん。な? この気持ち、わかるやろ?
ストレスや。ハサミ持ってってほんまに切ろて3度は思たで。そのままおさげのことが気になって年越ししたらな、また夢に出てきました。しかも初夢や!
ちよちゃん飛んでたんよ。おさげひらひらさせてな? ちよちゃんはなんで飛ぶのんー? あの部品が可動してます。しかも取り外し可能やねん。今までの性能そのまんまや。そのうえプラスα(アルファ)や。意志持ってたんやで。せやから助けたろ思て取ったんよ。あー、おさげは3つの秘密を持っとったんやなー。でもおさげ取ったらちよちゃん死んでまうんよ。困たわー。
冬休みが終わって、ちよちゃんに会いました。夢に出てきたゆーたら、教えてて言われたけど、とても教えれへんねん。どないしよー。おさげがみんな悪いんよ。あのきれいな形のおさげが。そや、質問すればええねん。なんや簡単やん。
「ちよちゃーん。質問やー」
「なんですかー?」
「ちよちゃんのおさげ、どしてきれいな形なん?」
「それはですねえ、あずまさんが描きやすいからですよー」
「…………誰?」
53 さんご (アニメ版12話3【原作1巻128P時系列】)
お昼や。パンを買いに購買部に行ったんよ。そしたらなー、もう黒山で一杯やった。あー、ごめんなみんな、私のせいやー。私がトイレに行かへんかったら、もっと早う来れたんやのにねー。
それにしてもあれやで、黒山て髪が黒い人にしか通用せーへんやん。昔は染めとる人だれもおらんかったし、脱色しとる人もおらんかった。今は日本人ていうてもカラフルやもん、黒山はおかしーでー。
なにかこう、ほかの表現ないやろか……白山。あかん、これには構造的な欠陥がある。自然に白い髪の人なんて、年輩の方だけやん。しかも歳取っても黒々な人もおるもん、失礼や。あ、黒山も白髪な人に失礼やん。両方ともあかん、引き分けや! ――まるでともちゃんみたいやな。ここでイエーイ言わなあかんのやろか。恥ずかしいからやめとこ。
いろんな色をひとつにしたものやないとあかんねん。そうや! 珊瑚やったらどーやろ。色とりどりではんよーせいがあるねん。よっしゃ、珊瑚や、これで行くでー。
「せんごやんなあ……」
しもた、言い間違えたわ。
「……戦後だけどな」
わー、よみちゃん珊瑚てわかってくれたん!
5 サクラ (創作+原作1巻129・4巻158P)
今日はええ天気やったんで、昼は屋上行こうていうたんよ。
でもな、智ちゃんと暦ちゃん食い物競争するって食堂行くらしいんや。ちよちゃんは審判で、榊ちゃんが証人やって。みんな弁当持ってきてへん。あー、どうしたらええんやろ。そんなこと知らんかったわ。弁当もったいないなー。それに頭に住むこびとさんがな、今日は屋上で食えて囁いとるんよ。しょーがない、今日は1人で行こ。たまにはええやろ。
「あー、ええ風や」
屋上で1人になるのもええな。いまごろは勝負がはじまっとる頃やろな、どっちが勝っとるんやろか。リミッター解除した暦ちゃん強いんよなあ。弁当広げてな、いろいろと勝負の行方、想像してみる。いつのまにか榊ちゃんが混じってな、神楽ちゃんが横から入って4人で戦っとる。全メニュー競争とかして、調理のおばさんてんてこまいや。
「あれ……」
そのときや、横から誰かの声がした。
見るとな、男子やった。女の子みたいな、きれいな顔やなあ。上履きのラインを見ると1年生。私は2年生やから、かわいいかわいい下級生や。
「なにか用なん?」
「なんでもないです」
「なんでもないて、弁当持っとるやん。いっしょに食べよ」
「いえ、そんなこと……」
「ええやんええやん。誰も見てへんて」
そうなんよ。うちの学校、生徒が自由に出られる屋上は1番高いとこでな、学内からは誰にも見られへんのや。
「でも誰か上がって来たら誤解されますよ」
「誤解?」
「えーと……彼氏彼女とか」
「あー、そうかも知れんなー」
ぜんぜん気がつかんかった。にぶいなー、私。きっとこの子も私のことにぶいて思とるやろなー。
「じゃあ、あの上でどうやろ」
屋上の登り口指した。
「誰か屋上に上がって来ても、あそこなら大丈夫や。それに一度登ってみたかったんよ」
「ハシゴしかないですけど……」
「だからええやん。いかにも『昇る』って感じやもん」
「ノボル?」
「ほな、行くでー」
食べかけの弁当をしまって、男の子の手を引いた。うわあ、このトロい私がリードしとる。やっぱ素直な下級生はええなー。お姉さんになった気分や。
「私先に登るでー」
「あ、いや待ってください」
「なんやー?」
「ぼくが先に登ります」
「えー、なんでやのん?」
「だって、先輩が先に登ったら見えてしまいますよ」
「あー? あ、そうか」
スカートをつまんでふわふわさせたらな、その子たちまち顔を赤くさせたんよ。パンツ見える注意してくれたんや。真面目な子やなあ。それにウブや、かわいい。
「見なかったらええやん」
「いえいえ、そういうわけには」
「ほな先に登るでー」
その子放っておいてな、登りました。後ろも下も見なかったよ。一気に『昇った』。屋上の、さらに一番高いところ。
この学校で、一番のてっぺんや。風が気持ちええねん。
「あははははー! 360度みんな見えるでー!」
くるくる回る。ああ、踏み外しそうになった。危ないわ。
「君も登ってきてやー」
下の後輩君に呼びかけるとな、その子顔真っ赤っかにしてました。あらら? もしかして見たんやろか。信じてたのに、意外とデバガメさんやなあ。まあええけど。あれ? デバガメってなんやろ。
「デバガメ、デバガメ……出っ歯の亀や」
「あの……あの……」
「あのな君、出っ歯ある?」
「え? え?」
「出っ歯~~」
歯をイーってさせた。
「あ、ありませんよ」
「それならええねん。合格や」
「合格?」
「はよ登ってきてんかー?」
「あ、はい」
その子あっというまに登って来たんよ。やっぱ男の子は体力あるなあ。私は一気に『昇った』つもりやったけど、彼の3倍はかかったやろうな。あー、たくさん見られたやろか。まあええか、いつも家でお父ちゃんに見られとるし。そうや、お父ちゃんは出っ歯やった! あかんわ父ちゃん。
「あのー先輩?」
「あれ?」
しまった、またぼーっとしとったんか。お腹がぐうって鳴った。
「食べよ」
ふたりで仲良く並んで、食べた。なんか、いつもより美味しく感じたんよー。風もあるし、てっぺんやし。あははーって叫びたい気分やったけど、となりにかわいい男の子がいるからできへんかった。これが智ちゃんやちよちゃんなら平気でできるんやけどなー。
なぜやろ。なんか胸がすこし熱いねん。
それからかな、ときどき彼と一緒に、てっぺんで食べるようになったんよ。しかもな、卒業までみんなに内緒にしてたんや。いつもやったらたいていの秘密も嘘もすぐばれるのに、これだけはついにばれんかった。
あはは、なんでやろなー。
その子とはどうなったかって?
大学に進むと同時に、それきりや。と思てたんやけどな、次の年の入学式、サクラ散る花吹雪の中に、立ってたんよ。
彼。
そんとき智ちゃんにはじめてばれてもうたー。
あはは、うれしかったー。
47 偉い人にしかわからんのです (原作1巻140P)
文化祭でオリジナル人形を作って売ることになった。私は大阪の名物を見事に人形化してみせるねんでー! 阪神を作るんやー!
……あー。阪神ていうたらトラジマや。虎とらトラ――とらってどんなんやった?
まあええわ。黄色いなにかで阪神や。できたー。どこから見ても阪神や。えらいなー、私。さすがや。
よし、つぎは通天閣! つーてんかく……あの複雑な塔は、人形では作れません。でふぉーるめーしておかんとあかんねん。どないして簡単にしよっと。長くして、丸くして、わーい、これで通天閣や。誰が見てもすぐわかるねんでー。
なんでやろ。誰が見てもわかる思たに、説明せんと誰もわかってくれへんねん。こないにどこから見ても阪神と通天閣やのに――あ、そこのかっこいい兄ちゃんも見てみるー? これ、これは阪神です。こちらは通天閣です。買ってってやー。安いでー。え? なに目を大きく開けてぶるぶるしとるん?
美術部かだって? 私、部活はしてへんねん。絵を描いているかって? ちゃうよー。なにもしてへんねん。あ、買ってくの? しかも2つとも! ありがとなー。すばらしいて、恥ずかしーねん。名刺をくれるんか。後で連絡してくれて、ナンパですか? 私と2枚目の兄ちゃんじゃ釣り合い取れへんでー。
あー、売れた売れた。褒めてもろて有頂天やねん。なんやかおりんちゃん。いまのテレビによく出る有名な美術家さんだって? ふーん、そうやったんかー。こないなとこに来るなんて、暇なんやなあ。あ、名刺なくしてもうた。どこ行ったんやろう。さっきもろたばっかやのに。まあええわ。
12月で寒いのに、ゆかり先生いきなり英語の授業、体育にしてもうた。うわぁ、ジャージでもめっちゃ寒いわ、死んでまうねん。
「子供は風の子! さむくない!」
ゆかり先生、そないなこというても――
「ん? てことはあれね。大人は風の子の親……つまり風ね!」
へ?
「私は風! 風は自由に……えーと!」
「元気やなあ」
「そうだなあ……」
隣で智ちゃん震えながら同意した。
「おもろいね、一人で自己完結してるんやもの」
「大阪が言うか?」
へ?
智ちゃんひどいねん。私とろいとことかぼーっとしとるとことか多分あんねんけど、ふつーやと思うで。ゆかり先生ほど変やないねん。
「サッカーやろう!」「中田やるから」「ゴールッ」
なー? ゆかり先生走りまくりやもん。
「ちよちゃんもゆかり先生が完結やと思うやろ?」
「え……いきなりなんですかー?」
ちよちゃんおろおろしとる。
「ちよちゃん、人の話は聞いた方がええよ?」
「あれ? その?」
ちよちゃんも変やなあ。あかんは、まともなんは私だけや。
あ、サッカーボールが来たで。
ころころと。私に蹴られるためにやって来たにちがいない。
よっしゃ、今度は私が中田さんやー。
「あははははは、あははははは」
どーや、無人の野を突き進む私の勇姿は!
あああ、ボールが後ろに……取り戻って……
「あははははは、あははははは」
どーや、私は天才の……なんやろう、えーと、中田さんは……スト……スト……サッカーの偉い人は、えーと、スト……
ああああ、ボールが後ろに……また取り戻って――ゴールもーすぐや。
よっしゃあ、キィィーーーック。
すかっ
「……いまのはな、ちゃうねん」
仕切直して、しんこきゅーして、よし、次、真剣や、はずさへんで。
ぽん……ころころ……ぽす。
「あはははははははは、やったでー! 私は世界的な日本的な宇宙的な天才ストーカーの中田やー」
つんつん。
「はい?」
肩つつかれたんで振り向いたら、大山くんやった。
「あの、春日さん」
「大山くん、私のきっく見とった? 見事なストーカーぶりやろ」
「はあ。良い『ストライカー』ぶりでしたけど」
「ス……ストライカー。あー、そうとも言うかも知れへんなあ」
「そんなことどうでもいいですって。春日さん、もう誰もサッカーしていませんよ。今はドッヂボールの最中です」
「……へ?」
あ、遠くに、みんながおる……榊ちゃんがゆかり先生の顔面にボールぶつけたところや。
うわ、恥ずいわ、私めっちゃ恥ずかしいわ、どうしよ。
私はドッヂボールしとるみんなの方に、大山くんと並んで向かったんやけど、遠くからでもこっち見てみんな笑っとるんがわかる。失礼やな、ちょっとした勘違いやん。
「……大山くん、これはな、ちゃうねんで。誰にでもあることや。完結や、完結なんやで!」
「はあ――まあ、いつものことですし」
「いつものことって、なんやー?」
大山くん、すこし顔を赤くして慌てた。
「いや、その、春日さんはそれで十分ですし」
「私はな、変やないねんで? 普通なんやで?」
うー、すこしムキになってるかも知れへん……
「……大山くん?」
大山くん、よー知らへんけど、ずっと顔赤くしとった。
え――! 智ちゃんそれ本当? マグネてネコの肉使うとるんか! 意外とうまいねんなー。えらいことや、私はいつのまにか韓国人さんになっとったんかー。そのうちワンちゃんも食べるんやろか私。
その日、帰りになんとなくマグネトロンハンバーガー寄ってもうた。
「チーズバーガーセット1つくださいニダ」
「まことにすいません、チーズバーガーは売り切れてしまいました」
「アイゴーやねん」
私なー、この世でみたい動物が2つあるねん。ひとつはパンダ、もうひとつは走馬燈やねん。光る馬なんてとてもええねんなー。動物園におるんやろ? 今度行こっ。えー? 走馬燈やめとけって、なんでやのんー? 死ぬときにしか見れへんて、貴重な動物やねんなー。さすがは光る馬や。ワシントン条約のリストに載っとるんか?
……ますます見たいわー、走馬燈。
クリスマスでわかったんやけどな、私らの仲間て、誰も彼氏がおらへんねん。
ちよちゃんはともかく、みんな「子供」でな、大人な世界、誰も経験してへん。私もや。デートもしたことないねんで。まだ女の子や。おかしーな、なんで彼氏できへんのやろ。そんなに変な顔やないて思とるけどな。むしろかわええやん。待ってるだけはだめやろか。でも好きな人おらへんしなあ。もう何年もどきどきしてへんねん。初恋は幼稚園の先生やったし。
高校生のあいだに、せめてキッスくらいはしときたい。好きな人ができましたて、みんなに言いたいなー。逆やん。好きになって、成就して、キスや。その先は想像できへん。なんやろう、いろいろ考えとったら頭がぼーってしてきた。ちょっと考えすぎやな。恋に恋する乙女って感じや。そんなの中学生やでーって、自分に突っ込んでどないすんねん。もうこんな時間か、もう寝なあかんなあ。おっとっと、あああ、バランスが……
どてっ。
あたたたた……転んでもうた。痛いなーー。あ、口がなにかに触っとる。なんでちよちゃんがおるのん? ……なんや、写真立てか。夏の写真やん、別荘のやつ。うーん。もしかして私、ちよちゃんとファーストキッス? ちゃうねん、と冗談は置いといて――よく見ると、ちよちゃん可愛いなあ。ちよちゃんやったら、別にええで――あれ? 女の子同士! レズや! 百合や! あー、私、その気はないよ? ごめんなさいごめんなさい。
花畑に立っとった。
きれいなきれいな、いろんな花が咲いとる。その花の海に、ちよちゃんが立っとった。ちよちゃーん。なんでおるのん? 走って近寄ると、にっこり笑って逃げ出したんよ。なんで黙ってるんやー? 待ってやー。追いかけたんよ。でもちよちゃんになかなか追いつけんでな、けっこう走って疲れた。苦労してやっと手を掴むと、足がもつれて倒れてしもうた。そのままちよちゃんに寄りかかってな。ああ、ぶつかってまうー!
「いたっ!」
ちよちゃんの声がしたんよ。ようやくしゃべってくれたんやね……あれ? なんでちよちゃんが上におるのん? 私がちよちゃんを下敷きにしたはずやのに。それに、花畑はどこいったんやろう。あ、ここ、ベッドや――夢やったんか。
――なんか今、ちよちゃんとぶつかったなあ。
「ごめんちよちゃん。大丈夫?」
起きあがると、尻餅ついてるのを立たせた。もう制服や。あー、思いだした。あんまり遅刻が多いから、ゆかり先生にしばらくちよちゃんに起こしてもらえて言われたんやった。ちよちゃん車で登校したらええからちょうどやって。今日はその初日や。
「ちよちゃん、どこか打った? 痛うない?」
「ちっと腰と、口のとこぶつけました」
歯を押さえてる。ああ、私がぶつけたんやなあ。
「うーん。そういえば私も口内の、歯茎のあたりがじんじんするねん」
「もしかして、歯と歯がぶつかったのでしょうか」
「……これってキスに入れてええんやろか?」
「え? キスって――」
ちよちゃん驚いたように口に手を当てたんよ。
「ごめんなあちよちゃん。ファーストキッスやったん?」
「――もちろんです」
「私もやけどな、ちよちゃん好きやから別にええで」
「でも、女の子同士って」
「秘密にしたらええねん。好きな男の人とするときは、
それが男の人とのファーストキッスや。だからこれは数やないねん」
「あ! 発想の転換ですね。なるほど、さすがは大阪さんです」
「平和に解決したなー。着替えよ」
「では下で待ってますよ」
一人になって、着替えながら思うた。ファーストキッスは好きな人とやればええ。うん、これでしばらくは彼氏がいなくても大丈夫や。なんや勘違いしとる気もするけど、私が納得できたらそれでええねん♪
「みんな彼氏おらへんのー?」
クリスマスイブ、みんなで一緒に騒いで、それで終わりみたいやねん。秘密のある私、気になってさらっと聞いてもうたけど、よかった、誰も無視してくれたみたいや。うん、私のしゃべるんの、人とすこーしずれとるようでよう無視されるけんど、今回はそれでよかったんや、うん。
そいでな、歌って木村先生から逃げて、ちよちゃん家でケーキ食べて、そいでお泊まり会やったんやけど、私だけ嘘ついて抜けさせてもろた。
「あかんねん、除夜の鐘一緒につこて、おとうちゃんと約束してもーたんよ。ほんまにごめんや」
と誤魔化してな、引き留めよするちよちゃんらから走って逃げてきたんよ。楽しかったけんど、私にはな、うん、待ってる人がおんねん。
きれいな海が見える橋――やのーて、きれいな橋が見える海や。でも夜で、空は曇ってて雪がちらちら降ってて、それで海には東京湾名物の灰色なくらげがおんねん。いやや私、どしてロマンティックなこと考えられへんのやろ、いつもくらげとか、変なことばかりに目がいってまうねん。あ、なんか海の上に浮いてる。あの白い塊……くらげや。あれがひとつかみ……欲しいねん。
「せんぱーい」
あ……待っとった人が来た。見る見る胸があったこうなってきた。いい気分や、お泊まり会抜けてきて正解やったー。
「先輩、待たせてすいません」
「んんん、私もいま来たとこや。それにな、約束の時間までまだ30分あんねん」
つまりあれや、2人ともはよう来すぎたってことや。私みたいな遅刻の常習がな、なんで今日に限ってこないにしっかりしとんのやろ。この男の子といっしょにおるって、なんかうん、ええなー。
「せんぱーい、今夜は一緒だよね」
なかなかに恥ずかしいことを平気で言うてくる。
「うん一緒だよ♪」
私と彼は、仲良う手繋いで、夜の東京に消えてった……
今夜は、一緒に楽しもね♪
お・ま・せ・の、正太君。
「それで歩、正太君ちゃんと送ってきたー?」
「んー、おかーちゃん。無事に新宿駅からバス乗せたったでー」
「それにしても歩、いつまでも6歳も年下の正太君をな、彼氏に見たててごっこ遊びなんてせんほーがええで。かーちゃん恥ずかしいわ」
「えー、私も正太君も、たのしーのに」
「それがあかんねん。正太君は本気であんたと結婚するて言い張ってあちらの親御さんを困らせる始末やし、あんたもあんたで、さっさと本物の彼氏でも作りなさい、キー!」
ううう……彼氏……彼氏……て、なんかピンと来ないねん。
でも――彼氏て、なんとなく年下がええな……
PS.
「大阪ー、久しぶりー」
「智ちゃんおはよー」
「なあなあ大阪ー、どーしてあんとき、クリスマスで除夜の鐘なん?」
「へ?」
「いったい誰と、逢い引きしてたんだよー」
「ええええ?」
「ほれほれ、答えなさい」
「あの、いや、あの……」
2 お父さん誕生秘話 (創作+原作2巻45・138・140~141P)
明日はちよちゃんの誕生日や。デパートへプレゼント買いに行った。2回ほど道に迷って、なんとかついた。両手に一杯のティッシュや、財布のお金が減ってるんは謎や。このティッシュどうしよ。そうや、トイレや! 困ってる人にあげたる思てトイレに行った。
「ティッシュはいらんかねー」
ティッシュ売りの少女や。あれ? 少女いうてええんやろうか。でも漫画では高校生でも少女いうし、ええやろ。
「少女が売ってます」
「ないない! ペーパーがない!」
おったおった。おらへんかったらどうしよ思てたとこや。
「ティッシュ売りの少女です。いらんかね」
「え? 金取るの? 予備のロールあるでしょ?」
「私はティッシュ売りです。予備なんてしらん」
「だからなんで金取るのよ!」
しまった! 私は困ってる人にあげよて来たんやった。
「変更です。私はティッシュの慈善寄付人です」
持ってるティッシュをみんな扉越しに困ってる人に投げてあげた。
「ああなにこれ! 便器にティッシュが! 跳ねた! 汚い!」
喜んどるみたいや。礼はいらんでー。
ティッシュを始末して、プレゼント買いに復帰や。ちよちゃんのプレゼントを買いに、エレベーターに乗った。ふしぎやな、エレベーター。階段が動いとるんよ。あれ? これってエレベーター……やったと思うけど、なんやったっけ。まあええわ。疑問は次回に繰り越しや。疑問てのはやな、溜めると溜めるだけ預金がついて得したみたいや。
ぬいぐるみ売り場についた。ここにしよっ! 勘や、勘が告げた。私は自分の勘を信じる。ここになにかがあるんやー!
でもな、なかなかええのがあらへん。かわいい猫や犬はあるけど、びびって来るおもろいのがないねん。おもろいのおもろいの……あ、この猫、首がない。でもなんかちがう。そうや、丸くてかわいいんや。かわいいだけやったらちょっと足りないなー。
せっかく首がないのに……
「そこのあんた、ちょっとしゃべって見て」
「え? なんです?」
いきなり呼びかけられてふりむくと知らない子がいた。
「やはりあんたね! 見つけたわ」
「なんやろう」
「知らないとは言わせないわよ! よくもティッシュで汚くしてくれたわね!」
そんな覚え、あらへん。
「とにかく復讐してやるから!」
「はあ、ご苦労さまです」
「バカにして……ん? それ買うの?」
「え? ちゃうねんけど」
「あなたはそれを買うのよ!」
その子いきなりぬいぐるみを奪うと、すごい力で捻って引き延ばした。ねじり戻すと猫がすっかりスマートになっとった。
「うわー、あんた超人やったんか?」
「こう見えても女子プロレスラーの卵よ……」
そしていきなり言ったんよ。
「店員さん! この人が人形を壊しました!」
スマートになったぬいぐるみを私に投げた。
「おうおう?」
そんな急にやられても受け取れん。走って追うねん。
拾って戻ってくると、走って去っていくとこやった。その人と入れ違いに、こわい剣幕の店員さんが来て文句をいうてきた。
「弁償してください!」
でもな、ようわからんけどぬいぐるみ壊れてないねん。
「おもろいわ。この子、買います」
「え……まあ弁償してくれるのならいいですけど」
首がのうて、スマートで、手が細くて、足が短い。目つきもええねん。なんておもろい猫やろう。すばらしい一品や。ちよちゃん喜んでくれるやろうな。
あー、春先はいつも鼻がな? 大変なんよ。なんでこう、やたらむずむず~てするんやろ。
また来たで、3・2・1――
へーちょ。
考えとることみんなふっとぶねん。面白いこと思いついても、忘れるねん。逃した魚はでかいでー。
あう、鼻が……
へーちょ。
学校ついたらな、暦ちゃんが花粉症て教えてくれました。かふんしょお、かー。そうや、花粉症やねん。なんかな、長年の疑問が晴れた気分や。頭の中が晴れるっておもろい表現やなー。ええ言葉やで。頭の中が晴れるなんて、なんでやねん。あらへん。あははは。よし、さっそくちよちゃんに教えたろー。
ちよ……
へーちょ。
あれ? なんやったっけ? あ、そうや。わたし、花粉症やねん。なー、ちよちゃん、わたしなぁ、花粉症やねん。えへへー。さて、頭が爽快や。爽快いうたら、快感なわけやなあ。なんでやねん。快感ていうんは、こう、もっとなにかちゃうねん。ガム噛んだミントのすっきり感とか、ああいうんが快感やな。おお、大発見! 快感はガムの法則や。智ちゃんに教えたろー。
智ちゃーん、私なあ――
へーちょ。
わたしなぁ、花粉症やねん?