今日から3年生だ。ヴォケ大阪と階段をあがり、3階まで行く。今日から毎日、3階まで昇るのだ。なんという優越感だろう。新入生どもよ、私をたたえるがよい。それにしてもヴォケはとことんヴォケだ。誇るべき資格を「くじけそうや……」とのたまう。そんなに毎日3階まで行けるのを億劫と思うのなら、先生に頼んでまた2年をやりなおすがよい。なんなら私が校長に言ってやってもよいぞ。
厨房(中坊)のセーラー服を着たみちるとゆかに会った。あの2匹は素朴で疑う事を知らない都合の良い連中だから、友人のふりをして子分としてこき使っていた。子分どもがセーラー服を着ているというのはこれまでの優越感が少々薄まって癪だが、香具師(やつ)らが工房(高坊)になる頃には私はさらに上の学校に行ってる。そのときに爆笑してやろうと優越予定帖に書き付けた。
19 それは怖くないです (原作3巻141~142P)
智のあほうが苦手な怖い話を連続させてきた。恐がりつつも復讐計画を速攻で練り、包丁の話のところで続きを考えている瞬間に実行に移した。教室から逃げるふりをして扉のところで急に曲がり、あとを慣性的に追うバカがインに軌道を取るよう誘導した。案の定あほうは私の誘いにまんまとひっかかり、扉の角に足をぶつけて自爆した。人はものを考えながら走ると、きわめて本能的な行動を取るものだ。逃げ出すタイミングが数秒早くても遅くてもだめで、私だからこそできたのだ。
わはは、ざまあみろ。
67 神と和解せよ (アニメ版20話5【原作3巻149P換算】)
オープンロリコン木村から相談を受けた。
「担任になった機会を利用して、かおりんさんと仲良くなりたいんです」
なんだ? なんで私なんだ?
「きみは天才ですから……」
そうかそうか、よし、じゃあ私の名を伏せた計略を授けよう。
つぎの日、かおりんが泣く泣く私に言ってきたぜ。
「ちよちゃーん、キムリンが私をクラス委員長にしたー」
「それは可哀想ですねー」
ふふふ。
木村からまた相談を受けた。
「かおりんさん、私をどんどん嫌いになっているようです」
それは当然だな。
「大丈夫ですよー。この方法をつかえばー」
つぎの日、かおりんが泣く泣く私に言ってきた。
「ちよちゃーん、キムリンが花壇に『キムリンとカオリンの花園』って作ったー!」
「それはそれは可哀想ですねー」
あはは、あはははは。
つぎの日、かおりんが笑いながら私に言ってきた。
「ちよちゃーん、キムリンに復讐できたよ♪」
どうしたんだ。やたら機嫌がいいぞ。
「奥さんでなく、娘さんにあの花園見せたんだー」
なっ! その手があったか。あの奥さんなら善意な誤解しかしないが、利発な娘には利かない。あのロリコン家庭ではさぞやぎゃあぎゃあ言われただろうな。かおりん恐るべし。
木村からまたまた相談を受けた。メガネがヒビ入ってるし髪もよれよれだ。よし、かおりんとこいつを双方ともどんどん精神的に追いつめてやるぜ。
「……娘が、娘が反抗期なんです」
へ?
「娘と仲直りするには、どうしたらいいんでしょう」
待てよ、なんでそんなこと、私なんかに聞いてくるんだ?
「ねえちよちゃん。私にその天才の知恵を貸してください」
「ま、待ってくださいよ木村先生。あの私、そういうの専門外」
「でもかおりんのときは相談に乗ってくれたじゃないですかー」
「うわ、来ないでください来ないで来るなロリコン!」
「ちよちゃーん!」
「いやーん!」
私は逃げ出したよ。それで秘密の会議場から抜けて学内を逃げ回った。
後ろからはキムリンが追いかけてくる!
「かおりんのときはー! かおりんのときはー!」
うわ叫ぶなこの変態、私のしわざだとばれるだろ!
「かおりんのときはー!!」
叫ぶなー、叫ぶなー! こんなときはもはや私の体力ではどうしようもできない。神頼みだ、仏様助けてください。幸運を私に!
神仏に祈って角を曲がる。
「ちよちゃん?」
「かおりんのときはー!」
……私の祈りに応えたのは、悪魔さんですかーぁ?
すんません、神と和解します。ちょっとだけ。
うかつなことに、おさげの装着位置を誤った。よみには髪型を変えたとごまかせたが、大阪には通用しなかった。あの女、意外と鋭い。私のおさげの秘密がばれないうちに、なんとか手を打たないと。よみに髪型を変えたと言った手前、しばらくは誤った位置に付け続けざるを得ないのが一生の不覚だ。これでは空を飛ぶときスピードが出過ぎてしまう。
もうすぐ人生はじめての修学旅行だぜ。楽しいぜ、ふふふ。
なにを買ってやろう。なにを見てやろう!
「では修学旅行の掟を教えておいてやろう」
「掟?」
暴走バカが、得意そうな顔でなにを言うつもりだ?
「おみやげには木刀を買う」
「木刀!?」
本当なのか? 本当なのか? ――私は家に帰ってからいろいろと調べてみた。なるほど、木刀を買うこともあるようだ。めずらしい、暴走バカにしてはちゃんとしたことを言ってくれるとは。
一週間後――
「ちよー、ただいまー」
「おかえりなさいませ、おかあさん。温泉旅行、楽しかった?」
「ええ楽しかったわ。そういえばちよも来週にはいよいよ修学旅行ね」
「はい。楽しみですー」
「それでこれ、おみやげ」
「わーい」
「はい、木刀」
「へ?」
なんだこれはなんだこれはなんだこれはなんだこれは。
茶色の妙な木で出来たバナナのなんかでかいというか細長いというか、絶対に欲しくないというかもらってもまったくうれしくないというか、うん、いらねえ。100万円やるといわれてもいらねえ、こいつはそういうたぐいの、最低のアイテムにちがいねえ。
「うれしくないの? だって、土産の掟だって、私が出る前日、夕食で言ってたじゃない」
「あ、ありがとうございます、おかあさん」
……うれしくねえ。
天地神明に誓っても、うれしくねえ。
やめとこ。
やはり暴走バカは、正真正銘のバカだ。
大阪ボケが神楽を指さした。
「しーさーやいびーみ?」
「あれー、しーさーあいびらん」
なんてことしやがるこの野郎。私が教えた沖縄弁を使っていたずらを仕掛けるとは、不届きなやつだ。ゆるさん、填めてやる。
私は自己中担任に事の顛末を報せておいた。そして有頂天になってる大阪を自己中の前に誘導して――
「しーさーやいびーみ?」
……やったー! ひっかかったー!
「キー!」
痛っ、な……なんで私が叩かれるんだ?
「なんだその笑顔はー!」
え? えええ?
「あんた私のことバカにしてるでしょー! このガキー!」
えええええーー!
修学旅行だぜ! うちなーだぜ! 食い物かめーぜ!
「リミッター解除!」
メガネねーねーが太るの承知でかめーってか?
「ちゃんぷるー!!」
たらんぬなボケも飛ばしてるぜ。
私も負けていられないぜ。くわっちーさびら!
……あー、かめすぎたぜ。わた満腹だぜ。みんながちーまやだぜ。
あがー。お腹が痛くて動けないぜ。
「みんなよーさん食べたなぁー」
あ――。やーは平気か?
「ちよちゃんも!」
かしまー! 腹に響くだろ。
「意外や、食いしんぼさんやったんか」
「ぬー、私がちーまやあいびらん……」
だめだ、腹に力が入らないぜ。
沖縄でスキューバをしたとき、バカ智が餌を私に撒いたせいでいじ汚い魚どもに散々つつかれてひどい目に遭った。どいつもこいつも、
バカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせにバカのくせに。
魚と智め。とりあえず魚の生死体を食べて憂さを晴らした。智のバカもいつか食べよう。
34 まりゅど (原作4巻27~30・34~35・39・42P)
修学旅行中だ。いつも「観笑」してる連中の本性を見られると思っていたが、「いつもと同じ」なのがかえって新鮮で心の中でほくそ笑んでいる。そんな自分もいつも通り。
ふっ。
沖縄という土地は面白い言葉の宝庫だ。大阪のボケ女はおせんみこちゃとかさーたーあんだぎーとかしーさーやいびーみがかなりツボに来たようだし、智の暴走ヴァカはちんすこうなどが気に入ったようだ。かくゆう私はそのていどにはびくともしないが、ひとつだけどうしても気になるものがあった。
マリュドの滝。
まりゅど……まりゅど……まりゅど……あははははは! あははははは! あはははは! はあはあはあは――こんなこともあろうかと用意してきた簡易消音袋におもいっきり笑い声を封印し、トイレに流した。笑った場所は泊まったホテルだ。大阪ですら反応しなかったまりゅど――プ――ごほん、に、なぜ私が引っかかったのだろうか。それはともかく、これで心の平静はなんとかなるだろう。
笑いを始末してホテルの1階に降りると、土産コーナーで智のヴァカがなにかを手に取っていた。うこん茶だ。暦に見せつけてうるせーと言われてる。そりゃそうだ。シモネタって一発でわかる。
おせんみこちゃのような長さでの面白さや、シモネタに比べ、まりゅどの面白さは素人にはにわかにはわかるまい。そう、まりゅどの――ぷ。
「なに顔ふくらしとるんや?」
あ、大阪のヴォケだ。やばい、このままでは思いだし笑いで大失態を! 逃げの一手だ。
「なあなあ、なんで逃げるん?」
追いかけてくるなー! おいかけっこ開始!
逃げまくり、追いまくる。なんだこの娘は、どうしてこれほどしつこく追ってくる? ヤヴァイ。ヤヴァイぞ私。
「こらー! 廊下を走るな!」
にゃも先生につかまった。にゃも……そういえばなぜみなもでにゃもなのだ? これは面白い――う、笑いが、腹の底から……なぜだ。なぜこのていどで……そうか、これが私の本性。修学旅行の解放が見出した、私の隠れていた本質。面白いとわかりきってるものに反応せず、マイナーなものに極度に反応する異質な笑いのツボの持ち主――うう……がまんするんだ、まりゅどなんて知らない。
まりゅどまりゅどまりゅど……ううう! だめだこれは。にゃもにゃもにゃもにゃも――なぜ頭から離れない! まりゅどにゃもにゃもまりゅどまりゅどまりゅどにゃもにゃも――
あ……口が開く……
「あ……」
しまったーー! もう抑えきれないーー!!
アーーヒャヒャヒャヒャヒャ~~。ギャハハハハハハ! アヒーアヒー!! げほげほ、あははははははーー……――あははははは――――――
―――――――――――――
……………………
合宿でボケを起こすと、着替えもせずにふらふらと歩き出した。
「大阪さんちゃんと起きてます?」
「……ゆかり先生を」
「先生を?」
「フ、フライパン――で……お、起こすの――やってみたい」
なーるほど、ガンガン叩くやつか。よし、ここは黒の血が騒ぐぜ。
「大阪さーん、台所はこちらですよー」
「……フライパン」
「はーい、これですよー」
「お、起こしにいったる……」
ゆれながら歩いてゆくボケ。
ふふふ、貴様は今から大問題を起こすのだよ。手に持つはなんと文化包丁だ。あはは、頑張って行って来い。
すこし離れて大阪の様子を見る。ターゲットは自己中の部屋に入っていった。
「……あ、起きてもたー」
「な……に……?」
ふふふ、怒られろ怒られろ!
「しっぱいやー」
あれ?
ボケは無事に部屋から出てきた。どうやらさすがの自己中も、包丁を前に怒る暇もなかったようだ。
仕方がない、ここは不詳、私めが大事にしてやろう。ふふふ。
「大阪さーん、手に持ってるもの、なんですかー?」
「あれー、ちよちゃんおはよー」
「おはよーございまーす」
ボケめ、私がずっと傍らにいたことにまるで気が付いてない。
お、後方からようやく気を高ぶらせた自己中が、のっそり出てきたぞ。あまりの怒りに声も出ないようだな。よし、私が通せんぼをして、ボケの退路を絶ってやろう。
私は大阪のすぐ前に立ちふさがった。
「それで大阪さんー。その手に持ってるもの、なんですかー?」
「あー?」
ボケは手に持っているものを――勢いよく持ち上げた!
ぷす。
92 大阪と智は1000円 (原作4巻55~57P+アニメ版22話5)
やるき~でろ~、やるき~でろ~、やるき~でろ~、やるき~でろ~。
戦況は不利だ。今日は登校日なんだ軍の休みボケ猛攻は私のおまじめ光線を受けてもなかなか防ぎきれるものではない。智バカより生じたやつの版図は、ボケ大阪に感染し、自己中にまで伝播した。黒板に登校日と書きやがるし。いくら私がやつらをいつも笑っているとはいえ、先生が授業をできないようでは困る。光線によってさらなる侵攻を防ぐのが精一杯だ。
やるき~でろ~、やるき~でろ~、やるき~でろ~、やるき~でろ~。
けっきょく夏休み明け最初の英語の授業はなかったも同然だった。休みボケの侵攻はさらに幾人かの生徒を襲い、私の孤軍奮闘はなおつづく。いや、神楽などのやる気注入アタックなどの協力もあったが、不発に終わっている。ただあまり効果がないとはいえ、ひたすら戦いをつづけているのは私だけという有様なのだ。どいつもこいつもふがいない。
やるき~でろ~、やるき~でろ~、やるき~でろ~、やるき~でろ~。
ひとつの光明が見つかった。このクラスに最初に休みボケを持ち込んだ暴走バカが、幼馴染みメガネのちょっとした失敗にあっさり回復を果たしたのだ。なるほど、それぞれのやつが普段関心を寄せることが発生するのが回復条件のようだ。これは使える。沖縄のときのことを思いだし、大阪には北海道の地図を見せたらやはりすぐに回復した。地方はおもしろい地名の宝庫なのだ。
「かむいこたんー、あはははは!」
ただ、そのセンスは理解できないぞ大阪。
古文の授業だ。
「今日は登校日なんです……超ミニスカート……ビキニ水着」
くっ、木村までかかったか。誰に移されたかだいたいわかるぞ。とりあえずまずはやる気光線だ。
やるき~でろ~、やるき~でろ~、やるき~でろ~、やるき~でろ~。
「女子高では……ううう」
やつがなにを求めているか分からないが、私はとにかく勉強がしたいのだ。背に腹は代えられない。私はボケと暴走バカを呼んで、ある作戦を決行した。着替えて教室に入ってきた私たち3人を見て、女子から軽い驚きが、男子からやや戸惑いつつもうれしそうな声が漏れてきた。
「はーい、先生。授業してくださいー」
「……キンコンカンコンキンコンカンコンキーンコーンカーンコーン!」
ふふふ、回復したぜさすがは強力だな、下半身スク水は! 単にスクール水着の上に制服をスカート抜きで着た姿だが。
やる気出たか? よしよしっ……こら待て、なぜカメラを持ち出す? しかも2眼レフ。ていうかクラスの男子どももなんだその目つきは? 携帯のカメラでなにを撮ろうというのだ? ――こちらばかり見ずに大阪と智を撮れよ! 私はロリロリで性的魅力に欠けるだろおい。もしかしておまえら「これはこれで!」ってやつか、うわそのいやらしい目つきやめてくれよ別にサービスしてんじゃねえからさあ、私は、私は授業を受けたいだけなんだよー!
あー、1枚5000円で闇取引されているらしいな、私の。
いつも観察して笑っているだけだが、たまには直にいたずらもしてみたい。ターゲットは智の暴走バカだ。ある状況で彼女がいかに愚かに暴走するか、じっくり見てやろう。やりかたは簡単だ。特定の自動販売機に仕掛けをし、演技をして彼女に買わせるよう仕向ける。
さて、自動販売機の前に来た。智のヴォケがいつもパックでなくコップで買ってるのは承知している。一番飲んでいるのはストレートティーかココアだが、今日は仕掛けをしたやつにしてもらいたい。普段買わない牛乳を買っておいしそうに飲む。大きくなりますなどとか断言して刷り込む。
ほらほら、あっさり引っかかった。胸がないことをすこし気にしているから、ミルクティーを選んだぞ。ふふふ。
そしてじゃーん、仕掛けが上手く働き、紙コップ出ず~~。あはははは! 面白いぜ。なんて悲しそうな顔をしてるんだこの子は。まるで哀れな子羊だ。ざまあみろ。牛乳飲みますか? 同情されてさらに落ち込んでるぜ。おっと? グッドタイミングで暦さん登場。しかもうまい具合におなじミルクティー選択。
あはは……見ろよ智バカの期待に充ちた顔を。あれが変わるんだぜ。まもなく、急転直下に――ほらー!! 変わった! あーはははは! 1回だけの細工に決まってる。天才ちよちゃんにぬかりはないぜ。そもそも発動からしてタイマー式だったしなあ。わーいわーい、さあさあ、あとはどうする? ほらほらほら、おおっと、暦さんに近づきますねー。あっと、はたき落としましたね?
やってしまいましたねー、見事な暴走っぷり。もー! もー! って、言葉になってませんねえ。暦さんにヘッドロックかまされて泣いてますねえ。あはははは! なんて上手くいったんだ。最高ーー!
いつもの復讐ができて、いい気分だぜ。……あれ? なんかお腹の調子がおかしいな? うーん、トイレに行きたくなってきた。もしかして、慣れない牛乳を一気飲みしたせい?
ううう……はうっ。
とてとてとてとて――あー! みんな入ってる!
とてとてとて――こちらもーー!
とてとてとてとて――こちらもかよ!
まるで漫画じゃんよ! ていうか、のび太君ですかぁ?
パン食い競争だと? 大阪がずいぶんとご執心なそんな競技、さすがに若い私は知らないなあ。どういうやつなんだ? 吊したパンを食いついて取るのか。ふーん、で、どういうふううに吊すんだ? ふっ、まさかなあ。釣りみたいにしないよな?
え――神楽、それ本当か? 本当なのか? 本当に釣りみたいに人を? 体がぶるぶる震えてきたぜ。うわ! 想像してしまったじゃねーか。パン食い競争で釣った人間を急速冷凍させ、市場に運んで解体して首のところで切り、その切れ目で味を判断してセリが行われる様を――
『つぎは東京の女子高生だよー。体育祭で釣れた活きのいい連中だー! まずは美浜ちよ。首から上はこんな感じ、切れ目はこうだー! じゃあ10万から!』
『12万!』
『14万!』
『14万5000!』
『15万!』
『15万だよ、誰かいないかー?』
『15万1000!』
――――…………
「どかーんどかーん!」
「どうしたんやちよちゃん」
「どーんどーん……」
どうにも活躍できず、マスコット扱いしかさせてもらえなかったが、体育祭で私でも勝利に貢献できる競技をついに発見した。ふふふふ、やはり私は天才だ。
その競技の名は、ずばり仮装競争。ペアが仮装した状態で徒競走をするのだ。私は暴走バカを相方に選び、策を授けた。ふふふ、勝利間違いなし。
当日、私は手錠を填められた犯人、暴走バカは警察官になった。暴走バカはやるき満々だ。ふふふ、これで勝利は間違いあるまい。ICPOに憧れるその心理を利用したのだ。
私のもくろみは辺り、暴走バカは周囲を押しのけて独走し、1位になれた。あははは! 最強だぜ。貢献したぜ。MVPは私だ、みんな私を賞賛するがいい。
さて、競技も終わったな。
「智ちゃん、そろそろ手錠を外してください」
「ごめーんちよちゃん。鍵なくしちゃった」
「え?」
「面倒だから、見つかるまでこのままで探そうか」
「えええええ!」
しばらく……その……さ、さらし者になったぜ。
101 どうでもよい葛藤 (原作4巻83~86P)
全員リレーでいっぱい抜かれたぜ。さすがの私もあまりのふがいなさに泣いてしまったが、木偶がみんな抜いて取り返してくれた! やった! えらいぞ木偶――いや、榊!
よし、そのまま1位でゴールだ! うちのクラスがトップだ! 3年連続学年優勝だー!
あ……アンカー担任じゃん。おい、後ろからにゃもが来るぞ! 自己中がんばれ! そのまま抜かれなかったら心の中で自己中というのを止めてやる!
あ!
こらー! 倒れ込んでどうする! くそっ、失格か。この自己中め、貴様のせいで3年連続1位がなくなったじゃねーか! 永遠に自己中と呼んでやる! ――はっ、待てよ、たしか私、いま条件で「抜かれなかったら」としていたな。
――ということは、抜かれなかったわけだから、私はあいつを自己中でなく、ゆかり先生と心中で呼ばなければならないのか? いやそれはないはずだ。だって最下位になったし、いやでも条件をちゃんと満たしているのは間違いないし……
うわー! 私はどうすればいいんだー!
102 替え歌 (アニメ版24話1【原作4巻95P時系列】)
時間割ー、時間割ー、先に揃えておきましょうー。
ん? なんだこれ。どこかで歌ってるような気がする。
116 キセキ (原作1巻106P・4巻96~112P)
どうしてあいつはあれほどネコに嫌われているのか?
この素朴な疑問からはじまった研究は、思った以上の長期に渡ってしまった。だが2年に渡る長年の努力が実を結び、天才様の私はついに木偶が持つなぞの秘密を突き止めた。えっへん。
それは当初予測していた細菌でもウィルスでもなく、なんと蛋白質だった。便宜的にネコキラウーゼと名づけた特殊なこの高分子は、名前の通りとってもイエネコさんが嫌う体臭の元となる。くくく、木偶は先天的にネコどもに嫌われる運命だったのだ。イエネコだけしか嫌わない特別な成分なので、日常生活にはなんの差し障りもないが、やつめにとっては人生悩みの連続だっただろう。なにしろやつは大のネコ好きなのだ、ふふふ。まさかDNAレベルで嫌われているとは知るまい。
このネコキラウーゼ、じつは長時間イヌの皮膚成分と交わるとアミノ酸の一部が変質し、毒性を持つイヌハゲロースになる。今を遡ること2年と1月前、私はそれに当たり、数日学校を休む羽目になった。ネコを寄せ付けず、犬に触るだけで炎症を起こさせる魔性の女、木偶。くくく、他にもネコキラウーゼには特殊な効果があるかも知れない。
研究を重ねるうちに、ネコキラウーゼを木偶に拠らずに合成することに成功した。よし、これでネコ嫌いな人が喜ぶ製品を作れるぞ。もはや水入りペットボトルなんて要らぬ、きっと売れるぜ、私は金持ちだわはははは。木偶よありがとうな。
さてと、これを小瓶に詰めて、さっそく街にあぶれるネコどもを苛めてやろう。ぐふふふ――そうだ、どうせなら木偶と一緒にいて、そこで盛大にネコどもに嫌わせようぞ。楽しいぜ、嬉しいぜ。
その日、学校で木偶が自分の夢について語りやがった。なんと「1人暮らしを初めてネコを飼いたい」という。
ほー。
…………無理無理、むりだって。無理だよーん。
けっ、なにネコの本を見てほくそ笑んでいるのだ。貴様はあれほど生まれてこのかたひたすらネコに嫌われ続けていて、未だになんの根拠を持って希望を抱き続けることができるのだ? 人というのは割り切りと軽い絶望あるいは諦観によって平凡なあるいは劣っている自らの位置というものを自覚し、わきまえるものなのだ! 私のような天才のみが許されるのだよ、多少の努力では不可能な理想を超えた自己実現を成し遂げることはさ! くけけけけ。
帰り道、天然ボケと別れて木偶と2人きりになった。よし今だ! 私は隠し持っていた小瓶の蓋をあけて、例の特殊な臭いを周囲に解き放った。今日という今日は、木偶に「諦める」ということを教えてくれるわ! よしよし、ネコどもが来たぞ……すごい数だ、木偶が戸惑ってるぜ、ふふふ……あれ? なんで私まで? いや、あの……うん、その……
…………。
そうか! 瓶を開けたのは私だから、私からネコキラウーゼの臭いがしてるんじゃねーか。わはははははは、なんて簡単な理屈だ。ていうか迂闊すぎだってばさ私、天才なのに畜生!
…………。
……た、助けてプリーズ。
そのときだった、突然キセキが飛び込んできたのは――
(この辺り原作とまったく同じなので中略)
というわけで私はネコキラウーゼが利かない「ヤマネコ」によって救われたわけである。帰り道、私はさすがに反省していて、木偶が飼えないといったこいつを家で預かろうと申し出た。木偶はイエネコではないにせよ、念願の「ネコ」を飼えるわけで、まったくなにが起こるか世の中分かったものではない。私はすこし反省しなければ――
木偶と別れて家に向かう。木偶から手渡されたヤマネコ野郎は、私の胸の中ですうすうと寝ている。まったく殊勝な奴だ。さて、まもなく私の家だぞ……
……なぬ!
そこにはいきなり数多くのネコどもがいた。しまった! ネコキラウーゼを入れた瓶の蓋を閉め忘れていた! このネコキラウーゼ、ちっともネコ避けに使えない! むしろ猫どもの攻撃性を高めて使用者を危険にさらすだけだ……残念ながらこれで金儲けなんて出来ないな。いやそれはともかく――カミネコめ、回り道してやがったな! だが今の私には心強い味方がいる! よし、ヤマネコ野郎、また私を救え!
…………。
おーい。マヤーさーん。
……スヤスヤ。
お い 貴 様 、ぐ っ す り と 寝 て や が り ま す か ?
えーと、あのー、ネコさんたち? うーん、ねえ、待ってくださいな、はい。
…………。
いやーん!
1 やヴァい計画 (SF+原作4巻100~107P)
あの木偶の坊を片づけるために手懐けていたボス猫が裏切った。木偶の坊はカミネコと呼んでいるようだが、あいつの正式名はこの星の下等な原住民には発音不可能で、私の母星で神聖な意味を持つ由緒ただしい名前だ。それなのにあいつは裏切った。
木偶の坊の生態を観察するため一緒にいた私も悪いが、任務を優先するあまり私ごと襲うとは何事か。この場はなんとか親衛隊の活躍で切り抜けたが、この親衛隊員2号、あろうことか木偶の坊を偏愛しているのだ。木偶の坊との距離が縮まってしまった。
このまま木偶の坊がそばにいると私の計画が遂行できなくなる。いよいよこの国から抜け出て周囲の観察対象を一新する必要にかられてきた。隊員2号はクビにして、原住民のペットに成り下がって貰う。私の守護は隊員1号がいれば十分だし、いざとなれば父が飛んできてくれる。
103 ことだま (アニメ版24話2~3【原作4巻104~110P相当】)
いきなり現れたヤママヤーが、カミネコたちに包囲されていた木偶と私を助けてくれた。それで精根尽きたのかぐったりと倒れてしまったので、忠吉が世話になっている石原動物病院に連れていった。
「お――ちよちゃん大きくなったのぅー。そのうち2メートルこえるぞ」
うるせーよと思いつつ適当に受け答えする。
「は、はい! ありがとうございます!」
ヤママヤーの治療中はやきもきと待つことになった。あのネコは私を助けてくれたのだ、いくら私が黒くても、助かってくれと思ってしまう。
治療が終わったようだ。どうだったのだろう。
「お、ちよちゃんさっきより大きくなったのぉー」
「あ、はい! ありがとうございます!」
ヤママヤーは無事だったようだ。適当に受け答えして、病院を後にした。
「無事でよかった……」
「ちよちゃん……大きくなってる?」
「え?」
そういえば――私の背、木偶とおなじになってる!
「ちよちゃんの顔、おおきい」
「ああああ! 体全体がふくらんでますぅー!」
そのうち2メートル越えました♪
めでたし、めでたし――なわけねーだろ!
33 RPG (原作4巻117~119P+ドラクエ1)
智ちゃんがあらわれた!
コマンド?
戦う
防御
おさげ
泣く
→マヤー
逃げる
ちよちゃんの攻撃!
ちよちゃんはマヤーを召喚した。
「ひさしぶりー、ピ……ピカ……ニャー」
しかしマヤーは大阪に挨拶されて動けない!
智ちゃんの攻撃!
智ちゃんは漫画を漁っている。
部屋がすこし汚れた。
ちよちゃんは精神に5のダメージを受けた!
コマンド?
戦う
防御
→おさげ
泣く
逃げる
「なんやっちゅーねん?」
→飛ぶ
回す
外す
ちよちゃんの攻撃!
ちよちゃんはおさげで飛ぼうとした!
…………
大阪さんが寝ていない!
彼女が寝ていないとこのコマンドは有効にならない。
マヤーが大阪さんから離れた。
マヤーは彷徨っている。
智ちゃんの攻撃!
智ちゃんはマヤーに近寄った。
「忠吉~、食っちゃうぞ~~」
智ちゃんはマヤーで遊んでいる。
ちよちゃんは精神に10のダメージを受けた!
大阪さんはぼーっとしている。
コマンド?
戦う
防御
→泣く
逃げる
ちよちゃんの攻撃!
ちよちゃんは悲しい顔をした。
同情した暦さんが降臨した。
智ちゃんの攻撃!
智ちゃんはマヤーで遊んでいる。
しかし暦さんのカウンターだ!
「そんな事してたらマヤー怒るぞ」
カウンターは成功した。
『バリッ』
「あ」
…………
「いたいよー」
「いたいーいたいよー」
智ちゃんは体力に50、精神に100のダメージを受けた!
大阪さんはぼーっとしている。
コマンド?
→戦う
防御
泣く
逃げる
ちよちゃんの攻撃!
ちよちゃんは仲間を呼んだ。
「血、血がいっぱい!」
ちよちゃんの大声に、榊さんと神楽があらわれた。
暦さんは慌てた。
「ほら言わんこっちゃねえ!」
神楽さんは叫んだ。
「病院! 病院だ!」
智ちゃんの不安を増大させた。
智ちゃんは混乱した。
智ちゃんの攻撃!
「うあーんうあーん」
智ちゃんは混乱している。
大阪さんはぼーっとしている。
コマンド?
攻撃
→防御
泣く
逃げる
ちよちゃんの攻撃!
ちよちゃんは防御した。
(仲間に任せます)
意志は仲間に伝わった。
榊さんがマヤーを叱った。
「こら、人をひっかいちゃだめだ!」
智ちゃんの混乱が回復した。
スペシャルウラギリ技発生!
「いやよくやった!」
「おまえは調子にのりすぎだ!」
暦さんと神楽さんが叫んだ。
智ちゃんにカウンター!
智ちゃんは精神に256のダメージを受けた!
智ちゃんの攻撃!
「えーんえーん」
智ちゃんは逃げ出した!
「うー――、あいつきらいー」
暦さんと神楽さんの追撃!
「おまえが悪い。一番ひどい目にあってよかったよ」
「そーだそーだ」
大阪さんはぼーっとしている。
敵は全滅した!
ちよちゃんは20の経験値を得た。
「バーカ」
「バーカ」
暦さんと神楽さんの追撃はなおつづいている。
大阪さんは我に返った。
「ほんならー」
木偶がヤママヤーを構ってくれてるので、お茶でも淹れよう。私のすばらしいお茶を飲んで、天にも昇る心地よさを味わうがよい。
……あ、マヤーを抱いて転がってる。なんかいけないものを見てしまった気が……あのー、なにも言わないのか? なかったことにしたいのか? ――そうか、うん。
このお茶美味しいだろ? おもわず昇天してしまいそうだぜ。実際むかしはおいしすぎるものを食べたりすると、あまりの美味さに死んでしまう人もいたようだ。それだけ現代は味に恵まれてるってわけだなあ。
――あれ? なんだ木偶その棍棒は? そ、それで私を殴るのか待ておい!
ごいん。
きゅー……――
――……木偶? あれ私なんで寝てたんだ? お茶で昇天してしまっただと? なるほど、私自身がやられるとはこれは失敗だなあ。なに? 木偶がマヤーを抱いて寝てるのがどうしたって? なんだそれ。私がこの部屋に入ったときは――あら? お茶を淹れて……それで、いきなりここにいるぞ。
どうした木偶、安堵したような顔をして。なにもないって? ――そうか、なにもないのか。じゃあ飲もうぜ――なんだこの棍棒?
なぞなぞになんでも即答する大阪。えらいなこいつ。私はつい熟慮してしまう癖があるが、すばやくかつ的確に反応できる訓練も積まないといけないな。
そんな大阪に先生になれると言ったら、どこで聞きつけたのか自己中が飛んできた。
「あんた私をバカだと思ってるでしょ!」
「はいっ!」
ふふふ、即答できた……ぜ? あ、待ってゆかり先生、あの、いまのなしっ、いまのなしですーー!
あがー!!
初詣にいくとハトがいっぱいいた。とても美味しそうなので食い物で釣ろうと思い、ハトの餌を買って油断を襲おうと思ったら甘かった。いじきたないあやつらは私目がけて大群で押し寄せ、全身を覆ってしまったのだ。トリのくさい臭いで目眩がした。だが2匹のハトを捕まえて気絶させておさげに仕舞い、なんとか目的は達成できた。おいしかったぞ。
13 特許を取ってなかったです (原作4巻138~140P)
今日はいよいよセンター試験。裏情報で天然ヴォケが奇妙なおまじないを開発したというので、普段から復讐の機会をうかがっていた私は、対抗して確実に勝てる手段を講じることにした。それは普遍という安心感に任せたものだ。普遍ゆえ突飛さも意外性もないが、しかしそれゆえ有効となる。
さて、試験会場の入口で天然ヴォケがネタを公開した。箸をきれいに割ったら縁起が良いとかいうやつで、私が教えたやつだ。それをなにをトチ狂ったか、「私が開発しました」とかぬかしやがる。腹が立ったのですかさず対抗手段のお守りを皆に渡した。案の定、皆は私のおまじないを受け取ってくれた。大阪の「なんやー」という悔しそうな顔が痛快で、じつにすがすがしい気分で家路についた。
ざまあみろ。
割り箸をたくさん買ってきて、みんな割るぜ。ふふふふふ。
「ちよ、なにしてるの?」
「お母さん」
「これ大阪さんの真似ね。お友達のために合格祈願なのね、えらいわ」
「ちがいますよー。これで明石海峡大橋を作るんです」
「あらそうなの? じゃあ私も混ぜてね」
「はーい」
ぱき。ぱき。ぱき。ぱき……
「それでお友達の合格祈願は?」
「もう済ませましたー。『あいつら』にはお守りで十分です」
「そう……ちよ、ちょっと黒いの出てるわよ」
「あん。ごめんなさい」
「あんたの黒いとこ、私の遺伝だけど、最近は隠すの上手くやってるの?」
「いまでもときどき失敗してしまいます……」
「じゃあまた私があいつらの該当する記憶を消して回るからね。アメリカではちゃんとうまく立ち回りなさいよ?」
「はーい」
卒業式も大詰め、自己中に復讐しようと思って財布を隠しておいたら、案の定、自己中のやつ自失してやがる! 安い同情すなって、あははは! 楽しいぜ自己中! おまえは最高だぜ!
……って、なんだ体育教師? ええ! なっ、財布が出てきやがったのか!
自己中が大喜びしてはしゃいでるぜ。
畜生! 畜生!
私の晴れ渡った気分が一転してどん底だぜ。泣きそうになってきた。
「先生~~」
自己中を見上げて、なにか言ってやりたい気分だぜ。しまった。これではまるで別れを哀しんでいる図じゃねえか。くそう、私にはそんな普通の感性はないっていうのによう。
ぎゅ。
鼻をつままれた……
い、息ができねえ。もしかして自己中の報復か? いやまさか……
66 2469士 (アニメ版26話5【原作4巻181~185P相当】)
今日はメガネの合格発表日だぜ。他の連中はみんな合格したが、こいつだけまだ決まってないぜふふふ。私がつきあってやってる仲間内で私についで頭が良いやつだが、本番にやや弱いという精神面の脆さを持っている。だからいままでみんな落ちたのだ。おっと、落ちたって禁句だなふふふ。
それでメガネの発表をみんなで見に来たぜ。確認したあと、このまま遊びに行くのだ。メガネが落ちたら画竜点睛を欠いておもしろいぜ。みんな幸せハッピーエンドといかないほうが面白いよな? あ、そういやかおりんが木偶とおなじとこに受かろうとムリして落ちたっけな。知能指数がちがうのに愚かなことを。
さあ、いよいよ発表だな。番号なんだ? 3661? サムライだって? 戦うから縁起がいいって? んなことないって。こいつサムーイとも読めるぜ。冬の寒さ、不合格の冷えたブロークンハートだぜあははははは。
さて、いよいよ掲示板の前だぜ。ほら、さっさと見て来いよ。あんだって? 私の合格パワーが欲しい? そうかそうか、わかってるなこいつ。うーん、うーん。落ちろー、落ちろー。あはははは、行為と思惑が一緒だとは限らないぞ。大阪までみゅーんみゅーん怪しげなことしてるぜ。あれじゃあ受かるものも受からないよな、あはは。
え、落ちたって? 暴走バカナイスフライングだぜ! メガネが走っていくぜ。あははは、すごいぜおい、この瞬間、仲良し連中がさあ、勝利組と敗者組に分かれてしまうんだぜ。運命の分かれ道ってなあ。今日これから先が見物だぜおい。どんな展開になるんだろうな、あはは。他の連中はともかく、暴走バカはまず慰めようとはしないだろうからな、そこからどんどん亀裂が深まってどろどろのショーがはじまるぜ。
よし、メガネが帰ってきたぜ。レディースアンドジェントルメン、イッツザショーターイム! ……な?
なにー!!
受かっただとー!
くっ、私の呪詛が利かなかったというのか、なんということだ。いや、もしや大阪ボケのキテレツなみゅーんみゅーんが私の呪いを上回ったのか? ……敗北だ。
あ、うれしそうな顔しやがって。くそっ、ここは喜ぶふりをして。
ぺち。あはは、暴走バカ殴られてるぜ当然だな。ああ、その罰、私にもくれよ。失敗したからには、それくらいの自戒がないとつぎに繋がらないぜ。今日の失敗は明日の成功ってなあ。
そうか、そうかい。ハッピーエンドでみんな行くのかよ。あー、最後の最後でくやしい失敗だなあ。あのみゅーんみゅーんが失敗の元にちがいない。まったく大阪め、ぜったいに私のものにしてやる。百合の血が騒ぐぜ。
あ、待ってくれよ……あー、なんだか涙が出そうになるぜ。これは感動ではないぞ。そうだ、悔しさにちがいない――どうして無性に胸が熱いのだ。私はバッドエンドを求めていたはずではなかったのか?
私は……やつらとの日々を忘れないぜ。