高速戦艦 Schnelles Schlachtschiff(Z:Schmell schlacht schiff)
標準型戦艦を雛形として原型を留めぬほどいじり倒し、敵陣形切り崩しを想定して開発された突撃用途中心の戦闘艦である。瞬間的な正面攻撃力と戦闘時の加速性能において戦艦を上回るが、小回りが利きにくいぶん機動性で劣り、防御力や継戦能力も下がっている。運用目的がはっきりしており、会戦における決勝艦種ともいえる。戦闘序盤や終盤、あるいは局面を変えたいその瞬間、高速戦艦部隊は集中投入される。
戦艦というだけあって高速戦艦部隊以外でも旗艦となる例があり、ジークフリート・キルヒアイスやアーダルベルト・フォン・ファーレンハイトが一時乗艦とした。 高速戦艦の猪突偏重は標準型戦艦の高度なバランスをわざと崩すことで成立しており、尖ってるぶん配備数は当然ながら標準型戦艦よりずっと少ない。標準型戦艦がその秀才を活かし、巡航艦や駆逐艦と混成している例がたびたび見られるのと異なり、高速戦艦は高速戦艦だけでまとまった部隊を編成する傾向が強い。それを突き詰めたのが黒色槍騎兵艦隊だ。
高速戦艦の主砲門は標準型戦艦に倍する12門。同盟軍標準型戦艦の8門よりもはるかに多く、提督たちが乗っている個人旗艦にはさすがに及ばないものの、量産艦艇最高の長中距離正面火力を有するに至る。具体的には上側の6門が長距離砲、下部の6門が中距離砲である。 高速戦艦の大火力は主動力炉だけでは賄いきれず、主砲構造のすぐ後ろに主砲および正面防御スクリーン専用の補助動力炉を備えている。高速戦艦の横面にはかなり前のほうに銀色の円盤構造――メンテナンスハッチがあり、その奥にサブ動力が隠れている。
危険な真っ向から突撃を仕掛ける手前、前半分の防御装甲は標準型戦艦より厚く守りも上である。一転して推進部の装甲は薄く、非装甲で構造が露出している部位さえある。重量軽減や排熱処理などの理由からだと思われるが、守勢に回った際の戦艦とは思えぬ脆さはここから来ているため、全体の防御性能は標準型戦艦を下回っていると判断できる。 露出を必要とするほどリスキーなハイパワーエンジンは5基で構成され、推力はメインエンジンだけで標準型戦艦と等しい。それだけ燃費も悪く、高速戦艦の連続稼動時間は標準型戦艦よりかなり短く、頻繁に補給を必要とする。随行の輸送艦部隊は必須だ。
高速戦艦で戦闘機動時に発生する熱量はほかの艦種とは比べものにならないほど大きいはずで、その熱をどうするかは常に課題となっているだろう。中央下部から伸びる二枚の長いサイドフィンは主動力部の近くから生えているので、排熱の役割を担っている可能性があるが、詳細は不明である。 このフィンはあるいは、露出の多いエンジンを守る盾であるかも知れない。王虎の原型リマスター版模型ではフィン末端にFTLアンテナのようなものが追加されており、これを元にすれば情報通信機能を持っているとも取れる。
正面砲撃戦と高速機動に特化した結果、エンジン下部構造体に搭載しているワルキューレはわずかに6機である。対空火砲も削られており、短距離での総合戦闘能力が低いぶん、敵陣に突入して分断してもすぐに離脱する戦法を必定とする。
エンジン下部正面の露出部は大気圏航行時に空気を取り入れるエア・インテークとなっている。弱点であるが傾斜部に設置されており、正面の艦首側から見ると露出面積が半分ていどに抑えられる。 高速戦艦の次世代艦は開発予定すらない。ミサイル艦のように試作的に生産され、小規模ながら実戦配備にこぎつける新艦種はたびたびあるはずだ。その中で高速戦艦は本格的に量産された、成功した事例といえる。だが戦艦の亜種からは抜け出せず、やがてその短い歴史に幕を下ろすのだろう。
戦艦というだけあって高速戦艦部隊以外でも旗艦となる例があり、ジークフリート・キルヒアイスやアーダルベルト・フォン・ファーレンハイトが一時乗艦とした。 高速戦艦の猪突偏重は標準型戦艦の高度なバランスをわざと崩すことで成立しており、尖ってるぶん配備数は当然ながら標準型戦艦よりずっと少ない。標準型戦艦がその秀才を活かし、巡航艦や駆逐艦と混成している例がたびたび見られるのと異なり、高速戦艦は高速戦艦だけでまとまった部隊を編成する傾向が強い。それを突き詰めたのが黒色槍騎兵艦隊だ。
高速戦艦の主砲門は標準型戦艦に倍する12門。同盟軍標準型戦艦の8門よりもはるかに多く、提督たちが乗っている個人旗艦にはさすがに及ばないものの、量産艦艇最高の長中距離正面火力を有するに至る。具体的には上側の6門が長距離砲、下部の6門が中距離砲である。 高速戦艦の大火力は主動力炉だけでは賄いきれず、主砲構造のすぐ後ろに主砲および正面防御スクリーン専用の補助動力炉を備えている。高速戦艦の横面にはかなり前のほうに銀色の円盤構造――メンテナンスハッチがあり、その奥にサブ動力が隠れている。
危険な真っ向から突撃を仕掛ける手前、前半分の防御装甲は標準型戦艦より厚く守りも上である。一転して推進部の装甲は薄く、非装甲で構造が露出している部位さえある。重量軽減や排熱処理などの理由からだと思われるが、守勢に回った際の戦艦とは思えぬ脆さはここから来ているため、全体の防御性能は標準型戦艦を下回っていると判断できる。 露出を必要とするほどリスキーなハイパワーエンジンは5基で構成され、推力はメインエンジンだけで標準型戦艦と等しい。それだけ燃費も悪く、高速戦艦の連続稼動時間は標準型戦艦よりかなり短く、頻繁に補給を必要とする。随行の輸送艦部隊は必須だ。
高速戦艦で戦闘機動時に発生する熱量はほかの艦種とは比べものにならないほど大きいはずで、その熱をどうするかは常に課題となっているだろう。中央下部から伸びる二枚の長いサイドフィンは主動力部の近くから生えているので、排熱の役割を担っている可能性があるが、詳細は不明である。 このフィンはあるいは、露出の多いエンジンを守る盾であるかも知れない。王虎の原型リマスター版模型ではフィン末端にFTLアンテナのようなものが追加されており、これを元にすれば情報通信機能を持っているとも取れる。
正面砲撃戦と高速機動に特化した結果、エンジン下部構造体に搭載しているワルキューレはわずかに6機である。対空火砲も削られており、短距離での総合戦闘能力が低いぶん、敵陣に突入して分断してもすぐに離脱する戦法を必定とする。
エンジン下部正面の露出部は大気圏航行時に空気を取り入れるエア・インテークとなっている。弱点であるが傾斜部に設置されており、正面の艦首側から見ると露出面積が半分ていどに抑えられる。 高速戦艦の次世代艦は開発予定すらない。ミサイル艦のように試作的に生産され、小規模ながら実戦配備にこぎつける新艦種はたびたびあるはずだ。その中で高速戦艦は本格的に量産された、成功した事例といえる。だが戦艦の亜種からは抜け出せず、やがてその短い歴史に幕を下ろすのだろう。
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang)さま)
原型リマスター版
ビッテンフェルト提督の個人旗艦にしてシュワルツ・ランツェンレイターの総旗艦。高速戦艦を再設計したバリエーション艦。
原型リマスター版
ビッテンフェルト提督の個人旗艦にしてシュワルツ・ランツェンレイターの総旗艦。高速戦艦を再設計したバリエーション艦。
あああ
アスターテの功績で宇宙艦隊の半分を率いる身となったラインハルト・フォン・ローエングラムの元帥府に、共に歩んできた赤毛の親友も提督として迎えられた。そのジークフリード・キルヒアイス少将にまもなく、皇帝より勅命が下った。カストロプの乱を鎮めよ、と。
キルヒアイスは高速戦艦テューリンゲンを旗艦とし、幕僚にベルゲングリューン、ビューローを伴い出動する。その数、わずか2000隻。それは先にカストロプ鎮圧に失敗し全滅したシュムーデ艦隊よりも、1000隻も少ない規模であった。
量産艦艇最高の砲撃戦力を持つ高速戦艦であるが、テューリンゲンは結果としてその破壊力を叛乱勢力に誇示することはなかった。ゼッフル粒子を本格投入したキルヒアイスの奇策により、キルヒアイス艦隊もカストロプ陣営も、一人の例外を除いて誰も血を流さずに済んだからだ。すなわち敵総大将マクシミリアン・フォン・カストロプの血と命で、すべては清算された。
わずか2日間、しかも無血占領――誰にでも瞭然の派手な武勲により中将へと昇進したキルヒアイスは、元帥府内でラインハルトにつぐナンバー2としての地歩を築いた。これが乱に乗じたラインハルトの思惑であったことはロイエンタールやミッターマイヤーのすでに見抜いていたところであったが、特別扱いを受けるキルヒアイスが嫉妬や反感を買うようなことはなかった。戦力比で見れば、敵は当て馬というには強すぎる千仞の崖である。その難問を満点で解いたキルヒアイスは、才幹に足る地位へ駒を進めたにすぎない。
一般的な高速戦艦と比べ外見上の違いはないが、テューリンゲンは旗艦用に内部が部分換装されていると思われ、そのぶん定員は通常より若干多いと考えられる。艦名はドイツ連邦州のひとつで、ドイツ中部にあるテューリンゲン(チューリンゲン)自由州から。16世紀、宗教改革でマルティン・ルターらが活躍した。
キルヒアイスは高速戦艦テューリンゲンを旗艦とし、幕僚にベルゲングリューン、ビューローを伴い出動する。その数、わずか2000隻。それは先にカストロプ鎮圧に失敗し全滅したシュムーデ艦隊よりも、1000隻も少ない規模であった。
量産艦艇最高の砲撃戦力を持つ高速戦艦であるが、テューリンゲンは結果としてその破壊力を叛乱勢力に誇示することはなかった。ゼッフル粒子を本格投入したキルヒアイスの奇策により、キルヒアイス艦隊もカストロプ陣営も、一人の例外を除いて誰も血を流さずに済んだからだ。すなわち敵総大将マクシミリアン・フォン・カストロプの血と命で、すべては清算された。
わずか2日間、しかも無血占領――誰にでも瞭然の派手な武勲により中将へと昇進したキルヒアイスは、元帥府内でラインハルトにつぐナンバー2としての地歩を築いた。これが乱に乗じたラインハルトの思惑であったことはロイエンタールやミッターマイヤーのすでに見抜いていたところであったが、特別扱いを受けるキルヒアイスが嫉妬や反感を買うようなことはなかった。戦力比で見れば、敵は当て馬というには強すぎる千仞の崖である。その難問を満点で解いたキルヒアイスは、才幹に足る地位へ駒を進めたにすぎない。
一般的な高速戦艦と比べ外見上の違いはないが、テューリンゲンは旗艦用に内部が部分換装されていると思われ、そのぶん定員は通常より若干多いと考えられる。艦名はドイツ連邦州のひとつで、ドイツ中部にあるテューリンゲン(チューリンゲン)自由州から。16世紀、宗教改革でマルティン・ルターらが活躍した。