SIGMA DP2x

東方光画機
購入:2011/09 分類:コンパクトデジタルカメラ

 価格.comでマニアに存在感を示すカメラがある。コンデジの画質評価ランキングで、3年以上に渡り上位を独占し続けている、SIGMA DPシリーズ。画質以外の評価は平凡どころか三流という、尖りまくったカメラだ。

 というわけで新たなサブカメラは画質だけ最強コンデジだぜ。撮像素子にデジタル一眼レフ機と同等のAPS-Cサイズを採用している。マイクロフォーサーズ機よりも大きいセンサーで、NEXとほぼ同レベルだ。

 今年に入って一眼レフのレンズを大口径路線へ転換したところ、サブSONY NEX-5 の実働率が極端に下がってしまった。理由はずばり、画質格差だ。F値の明るい大口径レンズは総じて光学性能が高く、写りが良い。しかもD7000は2台体制だ。となれば安いキットレンズしかないNEX-5は、どうしても使いづらくなってきていた。

 夏にNEX用の明るい単焦点レンズが発表されたが、値段はなんと10万円。比較的安価なマクロレンズも開放F値3.5と、表現の幅でニッパチズームに劣る。メインカメラの価格と対比して、日常携行用のサブカメラに掛けられるお金はバランス的にせいぜい4〜5万円までだ。

 そこで実売3万円台にまで下がってきている SIGMA DP シリーズへ的を絞った。このシリーズはコンデジでは世界ではじめて、APS-C大型イメージセンサーを搭載した記念碑だ。レンズは画質最優先に割り切った単焦点で、利便性をきっぱり捨てている。登場当初は10万円近くしたが、シリーズ展開より3年以上経過して、最新機種でもお手頃価格になっている。

 DPには2種類あって、広角レンズを搭載したDP1シリーズと、準標準レンズを採用したDP2シリーズだ。結果的に選んだのは標準域のほうで、レビュー時点での最新機種 SIGMA DP2x を買うことにした。同時にカメラの画質をできるだけ稼ぐ環境を整えるために、ビューファインダー・特製グリップ・メタルドームフード・レンズプロテクターを装備した。これで視認・保持・遮光・防塵を確保し、一眼レフとほぼおなじスタイルで撮影できる。

 ビューファインダーを使わないときは水準器(レベラー)を取り付ければ、構図の微調整が楽に行える。

 さて、気になる写りをこれから見てゆく。一般的なベイヤーセンサーは1画素ごとに3原色のうちの1色しか読み取れず、のこる2色は周辺の画素データより「推定し補色」している。対してDP2xの FOVEON X3 センサーは1画素ごとで一度に3原色を読み取る特殊仕様だ。そのためダイレクトイメージセンサーと呼ばれている。

 左がDP2x、右がD7000にF2.8ズームの同等焦点距離だ。色合いが多少異なるのを除けば、両方とも主題の銅像をきっちりかっきり解像させている。だがこのサイズまで縮小するなら最近のコンデジでも綺麗に写る。

 そこでDP2xの等倍をトリミングしたものを載せておく。ホワイトバランス以外は無補正で、シャープネス処理などは掛けていない。この一枚で、通常のコンデジとはまるで別次元の写りをしていることが分かると思う。DPに対抗できるコンデジはレビュー時点で FinePix X100 と LEICA X1 しか存在しないが、いずれも価格は10万以上だ。
 等倍が無補正で使えるというのは、ウェブ掲載中心での運営上、強力なアドバンテージとなる。24.2mmF2.8単焦点のDP2xは不便だがそのじつ、24mmスタートの大口径ズームレンズを付けているのとおなじことだ。

 開放が明るいと、ボケ表現も期待できる。まずは前ボケ。この1枚はボケ量の小さな一般的なコンデジでは相当に苦労しないと写せない。

 続けて後ボケ。ズームレンズによく見られるツブツブ状の散乱が起こらず、単焦点らしく溶けるようにボケる。このボケをNEX-5で得ようとするなら、最低でも7〜8万円は要る。ただしDPが画質を維持できるのはせいぜいISO400までだ。低感度高画質――フォベオンは諸刃の剣そのもの。

 強烈な日差しに細長い鉄塔という、一眼レフでも厳しい条件のテストだ。縮小ではあまり違いが分からないが――

 等倍にしてみると意外なことに、コンデジのDP2xが一眼レフ中級機D7000に圧勝した。フォベオン3層が関係しているのか、それとも単焦点とズームのレンズ差か。ズームレンズはF2.8通しといえども、領域の端では解像度が急速に落ち込む。

 下は適当に撮り比べたもので、構図が予想以上にズレてしまったので、普通ならレビューより除外するのだが、一点無視しえぬ違いが生じたので掲載したものだ。

 それは雲の表現だ。DP2xでは細部までディテールが分かるのに、D7000ではそれが潰れてしまい、見られない。じつはD7000のほうは露出をアンダーに振ると雲のディテールが出現する。ほぼおなじ明るさで、DP2xは解像度が残っており、D7000は消えてしまう。この差がフォベオンとベイヤーで生じたのかどうかは分からないが、すくなくとも私にDP2xが「使える奴だ」と認識させるのに十分な成果だった。

 この風景写真でも、D7000は薄雲がほとんど消えてしまっている。DPシリーズは風景に強いと言われるゆえんを実感した。おそらく抜けの良い単焦点レンズと、ダイレクトイメージセンサーの両方で、幅広い色調を確保しているのだろう。ダイナミックレンジだけならD7000も一人前だが、雲を選ぶと全体がうす暗くなる。

 ただしDP2xの色にはおおきな欠点もある。それは色再現だ。下の写真はD7000のほうが実際の色に近い。DP2xは中央のドームが不自然に水色がかっている。ホワイトバランスをいろいろといじってみたのだが、どうしても本来の銀色になってくれなかった。

 今回掲載しているDP2xの写真は、すべての写真でホワイトバランスを手作業で調整している。シグマはカメラメーカーとなってまだ日が浅く、大手家電メーカーのような大型買収もできないので、ノウハウの蓄積もすくなく、なにもかもを自前でコツコツやるしかない。

 ネットを見回しても、シグマ機の吐きだす写真はRAW撮影からの微調整を経た現像がデフォルトのようだ。DPの色合いはシリーズ内でも一定しておらず、DP2xでは全体的にマゼンダ被りの傾向が見られる。

 DPシリーズにはさらに、フルオート機能も手振れ補正もない。撮影はどうしても気軽にはいかず、一定の数値設定や正確なホールドを前提とする。写すときも写したあとも亀のようにのろのろ歩むのがSIGMA DPのスタンスだ。初心者は完全に置いてけぼりの、中級者以上に絞ったカメラといえる。

 それでいて写りは完全に一眼レフ機レベルで、ボケもこの通り、画面の90%以上をぼかすことも簡単だ。まさに変態コンデジ。

 DPの欠点はまだあった。それは暗所でのAF性能の低さだ。下は日陰で写したもので、一眼レフなら問題ないが、DP2xではすぐ前ピンになってしまい、奥が解像していない。この欠点を補うためか、マニュアルフォーカスのための専用ダイヤルが存在する。でも背面液晶は23万画素しかなく、ピンポイントクローズアップもなく、ピントの山を掴みにくい。

 だがしかし太陽の眩しい好条件であれば、このような遠近感の強い撮影対象でも、前から奥までちゃんと解像してくれる。いやこれほかのカメラなら普通なんだけどね。

 風景に強いDP2x。基本はコンデジなので、一眼レフを持ってゆくのが億劫になるトレッキングなどで活躍しそうだ。

 船のケーブルにデジタル写真特有のジャギーが発生している。本来はシャープネスをかけたときに起きる現象だが、解像感のバカ高いDP2xではなにもせずとも、掲載用に縮小するだけで恒常的に起きてしまう。これは欠点というよりは、愛嬌のある玉に瑕というやつだろう。あえて甘受すべき、嬉しい悲鳴のようなものだ。

 ネットではDPは夜景も得意だというので試してみた。8秒露出だというのにノイジーな部分は見あたらず、なかなかに宜しい。D7000ではここまで綺麗にはいかない。ノイズを除去すればかなりのディテールが失われるだろう。

 さいごに15秒露光で車列を写した。DP2xは多くのモードで一眼レフ中級機以上同様のマニュアル撮影が可能なので、こういった撮影が楽に行える。オート指向のNEX-5などでは設定するだけで何分もかかるうえ、設定を元に戻すのもけっこう面倒だ。