ヴィーザル Vidar(Z:Vissarr)
ゴールデンバウム紋章版はデカールによる再現。
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang)さま)
沈黙提督ことエルンスト・フォン・アイゼナッハの旗艦。ラインハルト・フォン・ローエングラムは無口ながら期待を裏切らないアイゼナッハを信頼していたようで、登極後の親征には必ず沈黙提督の艦隊を伴った。したがってヴィーザルの活躍はもっぱら物語の後半に集中している。
他と一線を画するロケットのような外観は、フェザーン自治領を経由してもたらされた、同盟軍戦艦の設計データを試用したと公表されている。
しかしながらヴィーザル開発当時の同盟軍内部はまだ帝国軍ほど腐敗しておらず、未発表の戦艦一隻まるごとに及ぶ大量の軍事機密が漏れるとは考えにくい。そのため同盟側では、戦闘で捕獲した同盟軍艦より得た、既知の技術を様々に組み合わせてみた試作艦であろうと分析している。
同盟軍の技術を取り入れているとはいえ、ヴィーザルの基本構造はきわめて帝国的といえる。まず狭い領域に集中した艦首主砲群と傾斜装甲は、ブリュンヒルト以後の旗艦級戦艦では帝国軍だけが持つ新たな特徴である。 砲門の密集度だけなら数十門を備える同盟軍旗艦級戦艦のほうが高いが、一門辺りの威力は帝国軍旗艦級戦艦のほうがはるかに勝っており、総合的な正面砲撃戦性能はほとんど、艦の抱える核融合炉の根性が決めている。なにしろ基本エネルギー兵器であるから、生成できるパワー以上の砲撃が困難なのである。
それゆえ以前の数分の一というごく小さな範囲へと高熱量を凝集させるのは本来は難しい技術だったようで、ヴィーザルのほかにはガルガ・ファルムルなど、一部の傾斜装甲艦にのみ採用されている。これは同盟軍でいえば、パトロクロスの主砲群すべてをユリシーズの艦首に詰め込んでしまうほどの、技術的ブレイクスルーであったといえよう。
そしてこの密集こそが、傾斜装甲の採用を容易にしたのはいうまでもない。ブリュンヒルトのように主砲を分散埋め込み式としなくて良く、そのぶん経費も浮くと思われる。最終的に帝国軍の次世代標準型戦艦はヴィーザルやガルガ・ファルムルの安価タイプを採用した。数の少ない旗艦級は値段を気にしなくて済むためかブリュンヒルト型の艦首構造を継承する方向に収まっており、コストが艦艇に与える影響の大きさが伺える。 艦橋はかなり後方に置かれており、これも帝国軍のスタンダードで、前方に寄せがちな同盟軍とは異なる。メンテナンスハッチを意味する銀色の円盤構造が各所に見られ、動力炉は3~4基を積んでいるようである。これも1基を基本とする同盟軍と違う、帝国軍の特徴そのものである。エンジンも複数を積んでおり、1基の同盟軍戦艦とまるでかみ合わない。
ならばヴィーザルが採用している、同盟的な要素とはなんであろうか。それを紐解くヒントは、艦体後方にあると見られる。ヴィーザルの、帝国軍にはあまりない形状として、真横から見た上下への対称性が挙げられる。細部は異なっているが、フレーム的な形状がかなり似通っているのだ。帝国軍の戦艦はその多くが、輪切りにすると左右が対称であるが、上下はそうでもない。旗艦級大型戦艦で上下の対称性を持っているのは、ヴィーザル以外にはニュルンベルグにヨーツンハイムくらいである。
この対称性、同盟軍旗艦ではむしろ普通となる。アンテナや細かい部分こそ拡大したレベルでは違ってくるが、大まかな形はほぼ一緒であることが多い。これで左右は普通に一緒であるから、すなわち上下左右、四方向に等しいのが、同盟軍戦艦群の特徴であるといえるだろう。 形が似通っていると、どういう利点があるのだろう。考えずとも、安定性が自然と増す。そのぶん燃費も良くなるわけで、スタビライズで経済効率が高いといえるだろう。貧乏な同盟軍だからこその事情といえるが、帝国軍でもお金をあまりかけたくない補助艦艇や特殊用途の小型艦で、この多面的な対称性がかなり見られる。
ほかの同盟的要素は――見た目だけで分かるとすれば、残るは艦尾上部のアンテナぐらいだろう。アンテナの類を装甲の下に埋没させる帝国軍としては、ヴィーザルのスタイルは珍しい。あとは装甲の内側、見えないところで色々と同盟軍の技術が用いられているのかも知れない。もし同盟軍型の艦艇制御ソフトを使用しているとすれば、安定感の高いヴィーザルの形状はむしろ当然の選択になると思われる。
後部艦底には黒いセルが格子状に密集している箇所がある。ここにはワルキューレが1機ずつ格納されていると見られる。数は16と帝国軍旗艦の標準よりは少ないが、それでも量産型の戦艦よりは多いので、数としては手頃だろう。 左右に張り出している、けっこうのっぺりとした構造体は、短距離兵装を集中配置すると同時に、艦橋部を守る物理的な障壁として機能している。中距離用の武器は艦前半部の鋭くとがった部位に分散されており、前方を睨んでいる。
真後ろに視点を転じれば、推進の要となるメインエンジンがないことに気づくだろう。中型と小型のエンジン8基を効果的に配置した、ロシアのロケットみたいな姿である。高い推進力と、安定性能の両立を求めた結果だと考えられる。
本艦は第一次ラグナロック作戦時にはすでに実戦配備されており、ロイエンタール上級大将がイゼルローン要塞を攻略していた際、その後方で予備兵力として待機していた。そのシーンはアニメには登場しなかったが、後にラインハルトがアイゼナッハを前線指揮官として常用することになった事実から、地味なりにかなりの手腕を見せたようである。後方のスペシャリストだったアイゼナッハの転換点といえるだろう。
ヴィーザルは北欧神話に登場する無口な沈黙の神で、神話では最後まで生き残った。作中でも同様に最後まで無事だった。
沈黙提督ことエルンスト・フォン・アイゼナッハの旗艦。ラインハルト・フォン・ローエングラムは無口ながら期待を裏切らないアイゼナッハを信頼していたようで、登極後の親征には必ず沈黙提督の艦隊を伴った。したがってヴィーザルの活躍はもっぱら物語の後半に集中している。
他と一線を画するロケットのような外観は、フェザーン自治領を経由してもたらされた、同盟軍戦艦の設計データを試用したと公表されている。
しかしながらヴィーザル開発当時の同盟軍内部はまだ帝国軍ほど腐敗しておらず、未発表の戦艦一隻まるごとに及ぶ大量の軍事機密が漏れるとは考えにくい。そのため同盟側では、戦闘で捕獲した同盟軍艦より得た、既知の技術を様々に組み合わせてみた試作艦であろうと分析している。
同盟軍の技術を取り入れているとはいえ、ヴィーザルの基本構造はきわめて帝国的といえる。まず狭い領域に集中した艦首主砲群と傾斜装甲は、ブリュンヒルト以後の旗艦級戦艦では帝国軍だけが持つ新たな特徴である。 砲門の密集度だけなら数十門を備える同盟軍旗艦級戦艦のほうが高いが、一門辺りの威力は帝国軍旗艦級戦艦のほうがはるかに勝っており、総合的な正面砲撃戦性能はほとんど、艦の抱える核融合炉の根性が決めている。なにしろ基本エネルギー兵器であるから、生成できるパワー以上の砲撃が困難なのである。
それゆえ以前の数分の一というごく小さな範囲へと高熱量を凝集させるのは本来は難しい技術だったようで、ヴィーザルのほかにはガルガ・ファルムルなど、一部の傾斜装甲艦にのみ採用されている。これは同盟軍でいえば、パトロクロスの主砲群すべてをユリシーズの艦首に詰め込んでしまうほどの、技術的ブレイクスルーであったといえよう。
そしてこの密集こそが、傾斜装甲の採用を容易にしたのはいうまでもない。ブリュンヒルトのように主砲を分散埋め込み式としなくて良く、そのぶん経費も浮くと思われる。最終的に帝国軍の次世代標準型戦艦はヴィーザルやガルガ・ファルムルの安価タイプを採用した。数の少ない旗艦級は値段を気にしなくて済むためかブリュンヒルト型の艦首構造を継承する方向に収まっており、コストが艦艇に与える影響の大きさが伺える。 艦橋はかなり後方に置かれており、これも帝国軍のスタンダードで、前方に寄せがちな同盟軍とは異なる。メンテナンスハッチを意味する銀色の円盤構造が各所に見られ、動力炉は3~4基を積んでいるようである。これも1基を基本とする同盟軍と違う、帝国軍の特徴そのものである。エンジンも複数を積んでおり、1基の同盟軍戦艦とまるでかみ合わない。
ならばヴィーザルが採用している、同盟的な要素とはなんであろうか。それを紐解くヒントは、艦体後方にあると見られる。ヴィーザルの、帝国軍にはあまりない形状として、真横から見た上下への対称性が挙げられる。細部は異なっているが、フレーム的な形状がかなり似通っているのだ。帝国軍の戦艦はその多くが、輪切りにすると左右が対称であるが、上下はそうでもない。旗艦級大型戦艦で上下の対称性を持っているのは、ヴィーザル以外にはニュルンベルグにヨーツンハイムくらいである。
この対称性、同盟軍旗艦ではむしろ普通となる。アンテナや細かい部分こそ拡大したレベルでは違ってくるが、大まかな形はほぼ一緒であることが多い。これで左右は普通に一緒であるから、すなわち上下左右、四方向に等しいのが、同盟軍戦艦群の特徴であるといえるだろう。 形が似通っていると、どういう利点があるのだろう。考えずとも、安定性が自然と増す。そのぶん燃費も良くなるわけで、スタビライズで経済効率が高いといえるだろう。貧乏な同盟軍だからこその事情といえるが、帝国軍でもお金をあまりかけたくない補助艦艇や特殊用途の小型艦で、この多面的な対称性がかなり見られる。
ほかの同盟的要素は――見た目だけで分かるとすれば、残るは艦尾上部のアンテナぐらいだろう。アンテナの類を装甲の下に埋没させる帝国軍としては、ヴィーザルのスタイルは珍しい。あとは装甲の内側、見えないところで色々と同盟軍の技術が用いられているのかも知れない。もし同盟軍型の艦艇制御ソフトを使用しているとすれば、安定感の高いヴィーザルの形状はむしろ当然の選択になると思われる。
後部艦底には黒いセルが格子状に密集している箇所がある。ここにはワルキューレが1機ずつ格納されていると見られる。数は16と帝国軍旗艦の標準よりは少ないが、それでも量産型の戦艦よりは多いので、数としては手頃だろう。 左右に張り出している、けっこうのっぺりとした構造体は、短距離兵装を集中配置すると同時に、艦橋部を守る物理的な障壁として機能している。中距離用の武器は艦前半部の鋭くとがった部位に分散されており、前方を睨んでいる。
真後ろに視点を転じれば、推進の要となるメインエンジンがないことに気づくだろう。中型と小型のエンジン8基を効果的に配置した、ロシアのロケットみたいな姿である。高い推進力と、安定性能の両立を求めた結果だと考えられる。
本艦は第一次ラグナロック作戦時にはすでに実戦配備されており、ロイエンタール上級大将がイゼルローン要塞を攻略していた際、その後方で予備兵力として待機していた。そのシーンはアニメには登場しなかったが、後にラインハルトがアイゼナッハを前線指揮官として常用することになった事実から、地味なりにかなりの手腕を見せたようである。後方のスペシャリストだったアイゼナッハの転換点といえるだろう。
ヴィーザルは北欧神話に登場する無口な沈黙の神で、神話では最後まで生き残った。作中でも同様に最後まで無事だった。