サラマンドル(火竜)Salamander

全長992m 全幅210m 全高244m(アンテナ含まず) 乗員981名 帝国軍ワーレン艦隊
フォルセティ級3番艦でアウグスト・ザムエル・ワーレンの艦。同級の中で一番長い。タッシリ星域会戦・地球征伐・第10次イゼルローン攻防戦など、ワーレンは自身の艦隊だけによる実戦参加がほかの提督より多かった。
サラマンドル最大の特徴は局地制圧用として強襲揚陸機能を備えたカギ爪構造を持つことで、艦名の由来ともなっている。このアンカーフックは地球教征伐で使用され、有効に運用された。 艦首の赤い部位は炎の竜サラマンダーそのものを思わせるが、実際にその通りである。ここにはアースグリムやトリスタンと同様の、超特大ビーム砲が隠されている。口径・出力等スペックは一切明かされてないが、トリスタンが無理をしなければ通常戦闘でも撃てるていどに加減されているのと対照的に、アースグリムのものは敵陣が密集していれば数百隻を沈めてしまう、小要塞主砲並の出鱈目な破壊力を有している。威力と格納は比例するようで、トリスタンでは砲構造が露出しているが、アースグリムは変形レベルである。 本艦にどちらのタイプが採用されているかは、考えるまでもない。閉じられた赤いシャッター、サラマンドルという艦名、炎の竜が口から放つ灼熱の劫火――それらのイメージから想起される必殺の咆哮は、緊急時でないと使用を許されない。なぜなら一発で艦首部が溶けて使い物にならなくなり、艦の各所に多大な負担と消耗を強いるからである。長期のドック入りは確実だ。
不気味な赤き蓋は地獄への扉なのだが、サラマンドルは幸か不幸か、「波動砲」を放たずに済んだ。この手の攻撃を物語のサブキャラが行うのは死亡フラグの一種だろう。 艦本体の前半分はヴィルヘルミナ級の再設計で、後ろ半分はエンジンをすべて本体に収めた、スリムな形状を成している。このタイプは正面露出が減って被弾確率が下がる。防御スクリーンの負担も軽減されるが、引き替えに旋回性能が低下する。
メイン・サブ一体型の旗艦によくある構造として、艦体後部より飛び出した四本のアンテナが見られる。帝国軍艦では張り出し構造の前面に情報機能を配置する傾向があるが、サラマンドルのような一体型では実装しづらい。そのための代替機能と考えられる。同型でもブリュンヒルトやバルバロッサのような正面露出面積の比較的大きな艦には四本アンテナは見られないが、センサーやアンテナ埋設に余裕があるのだろう。 艦中央下側を縦に走るアバラ状構造はエネルギー伝達チューブへのカバーである。艦首の火焔、艦底の爪と相まって、まるで爬虫類を思わせる外観に一役買っている。
ローエングラム陣営初期の旗艦で多かった傾向に漏れず、サラマンドルは設計思想と相反して被弾に弱い。第2次ランテマリオ会戦で被弾を許した際、艦内の誘爆はあっさり安全なはずの艦橋にまで届き、衝撃でワーレンは負傷し義手まで吹き飛んだ。提督が豪毅にも構わず指揮を執ったため幸い艦隊は秩序を保ったが、ヴィルヘルミナ級やブリュンヒルトの系譜に連なる艦であれば心配すらなかったであろう。
旧式から新式へ――過渡期における試行錯誤の宿命であろう。旧でも洗練されれば強い。新でも完成していなければ脆い。だが洗練されれば旧より良くなる。機械の類にはこの法則が本当に厳粛に作用する。
あまり目立たない割に並の旗艦よりも多く危険に身をさらし、創痍を得つつもくぐり抜けてきたサラマンドル。戦乱の終結と共に「獅子の泉の七元帥」に名を連ねた、ワーレン元帥の栄えある勲章艦として、血塗られた火竜の爪を収めた。
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