ニュルンベルグ Nürnberg

全長855m 全幅331m 全高183m 帝国軍バイエルライン分艦隊
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang)さま)
大親征の最中にカール・エドワルド・バイエルラインへと下賜された新鋭艦で、回廊の戦いからミッターマイヤー艦隊の一翼として参加し、以後転戦した。
高い性能を誇りながらも戦術巧者に翻弄される場にばかり放り込まれろくに活躍しなかったように映るが、第2次ランテマリオでは当艦あってこそバイエルライン提督は死地から無傷で戻って来られたと評価されている。勝利だけが活躍ではない。敗陣中の英雄として、ニュルンベルグの性能は発揮されていたのだ。 当艦は旗艦専用艦の、ひとつの完成形である。軍艦としてあらゆる意味で最高の性能を誇るブリュンヒルトとパーツィバルは、帝国マルクをそれこそ山のように積み上げて強引に実現させた艦であるのは疑う余地のないところで、ローエングラム王朝にあっては今後、こういう破格な船は皇帝のお声掛かりがあった提督か、皇帝自らが乗る艦でない限り、建造も所有も許されないであろう。
ニュルンベルグの位置づけはすなわち、普通の旗艦専用艦としての、時代の到達点だ。 ゴールデンバウム朝末期からローエングラム朝初期にかけて、銀河帝国の個人旗艦はごく短期間に数多くの形状を生み出した。これは旗艦開発の転換点にあって、新旧の建艦思想がぶつかり、新しい技術の中でも競合が起きていたからのようだ。カンブリアの進化爆発に相応する歴史的なうねりが、帝国軍宇宙艦隊の工廠部で起きていたと考えられる。
ブリュンヒルト以前、旗艦専用艦開発の思想には2つの流れしかなかった。ひとつはヴィルヘルミナ級やケーニヒス・ティーゲルに見られる量産艦艇のフレームを流用する再設計、ふたつめはヨーツンハイムやガルガ・ファルムルに見られる大艦巨砲主義思想である。そこにブリュンヒルトのエッセンスが加わると、開発の思想は新旧融合のせめぎ合いで細分化され、複数の考えを採用した旗艦が多く派生する。新たなエネルギーは技術者陣に活力を与え、やがて新時代の標準型艦艇まで登場させる運びとなったのであろう。 旗艦開発競争の帰結点は、当然ながらブリュンヒルトを安く獲得する方向に収まった。おおまかなゴールは見えていたものの、アムリッツァ以降1年以上この流れはストップしていた。そこには旧軍指導部に連なり保身に長けた俗物、シャフト技術大将の存在があった。彼の逮捕更迭によりラインハルト・フォン・ローエングラムの思想が旗艦開発にもダイレクトに活かされるようになると、最適化は一気に進んだ。
ラインハルトの統治姿勢を示すローエングラム朝の旗艦群のうち、作中で確認されているのはエイストラ、ウールヴルーン、そして本艦に留まっているが、見えないところで同様の流れに属する小型軽量旗艦がほかにも就役していたことは簡単に想像できる。 ニュルンベルグでひとまずの挑戦が終わったようで、その後に登場した旗艦は次世代標準型戦艦の試作艦となっていた。
ニュルンベルグの特徴はまず、艦本体の徹底して尖らせた傾斜構造にある。横方向からの直撃弾さえ逸らせる先端の形状はブリュンヒルトを模し、艦橋がある後部中央部の傾斜構造は外見的にパーツィバルに近い。双方の良い部分を合体させたものが、ニュルンベルグ防御思想の中核を成している。シールド発生装置も最新型を積んでおり、防御性能だけで見ればパーツィバル、ブリュンヒルトにつぐ位置に付けているとされる。 800m台のコンパクトな小型旗艦で実現しているのは驚異的であろう。艦が小さくなるほど反応炉は小型のものを積まざるを得ず、総出力は低下する。そうなると防御性能も自ずと下がってくる。それを上回る効果を形状だけで補ったのがニュルンベルグという戦艦だ。
砲門はすべて埋没式で、防御性能を第一としている。今後の特殊旗艦は隠顕式砲座が標準となるようだ。個艦としての攻撃性能はさほど高くないが、大規模集団戦である以上、なんの問題もない。
艦体中央から後部にかけて粒状の目立たない出っ張りが多数見られる。これらは艦隊内に向けた全方位小型アンテナ群で、指揮する艦すべてと直接リンクしており、艦レベルで状況をリアルタイムにかつ正確に把握できる。リンクということは相互回線の常時接続であり、それがもたらす指揮管制能力の高さはいうまでもない。 機関推進部は艦本体からこれまでになく大きく離されており、左右への旋回性能は群を抜く。連絡している架橋部は被弾を考慮してか細く薄く削られており、延長型張り出し部の先輩にあたるベイオウルフ、トリスタンの反省を汲んだものと思われる。エンジン本体はとくに変わった構造をしていない。被弾に強いわけでない代わりに、壊れることで艦本体を守る、盾の役割を担っている。悪しき盾艦思想の、正しくあるべき形での再発見といえるだろう。
張り出し部の前面にはノイズの影響を受けない位置に各種センサー群が集中配備されていて、ブリュンヒルト以降たびたび採用されていた本体下部の張り出しを必要としない。いわば一石二鳥である。大気圏航行用のエア・インテークらしき開口部もセンサー群の合間に見受けられる。防御上の弱点となりうる装置だから、機能配置としては合理的に思える。危険は少ないほうが良い。 後部にはワルキューレ格納庫が見られる。一機ずつ個別にセル状格納するのではなく、広い空間にまとめて収納している。この部位は半開放式となっており一見危険なように見受けられるが、真後ろを取られ推進部ないし周辺に直撃を受ければパーツィバルといえども沈むわけで、横面を危険に晒していた従来型の格納と比べるとむしろ合理化が進んだと評価できる。この方式はヨーツンハイム級など大型戦艦で見られ、それを新旧融合の一環として造られたリューベックが受け継ぎ、さらにウールヴルーン、エイストラを経由して、ニュルンベルグまで辿り着いた。大艦巨砲も悪いところばかりではなかったようだ。
ニュルンベルグはドイツ、バイエルン州の歴史ある都市。いまではニュルンベルクと濁らずに表記されることが多い。
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