レダII Leda 2(F:same/Reda 2)

全長486m 全幅55m 全高62m 乗員326名 ナンバー175D 同盟軍第1艦隊/ヤン艦隊/エル・ファシル革命予備軍
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シューマン交響曲第4番第4楽章より第8次イゼルローン攻防戦ケンプ・ミュラー両艦隊を挟撃
ドヴォルザーク チェロ協奏曲第3楽章より第8次イゼルローン攻防戦ガイエスブルク要塞の最期
ショスタコーヴィチ交響曲第8番第3楽章より魔術師還らずヤンに迫るフォークの武装商船
ショスタコーヴィチ交響曲第8番第2楽章より魔術師還らず地球教徒とのレダII艦内戦
ブルックナー交響曲第9番第1楽章より魔術師還らずヤン暗殺
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang)さま)
レダ級高速巡航艦の2番艦である。基本スペックは諸要素が従来の巡航艦を上回っており、単純な高速仕様の巡航艦というわけではなく、おそらくは次世代の標準巡航艦の候補でもあったと思われるが、時代がその量産を阻んだと考えられる不遇な艦種である。なにかといえば無論、アムリッツアの大敗北だ。
だがそんな高速巡航艦の裏話よりもはるかに重大な役柄を、レダIIは与えられてしまった。
ヤン・ウェンリー元帥暗殺の、歴史的な悲劇の現場として。
レダIIの登場はヤン・ウェンリーが、同盟首都星ハイネセンへ召喚されたときである。ヤン提督を乗せイゼルローン要塞より単艦にてバーラト星系へと航行したのが、新鋭高速巡航艦レダIIであった。この時ヤンは保身を考えて同盟政府を刺激しないレベルの随行と規模を考えており、レダIIはヤンのお眼鏡に叶ったようである。 もっともヤン・ウェンリーの配慮は空振りで、同盟政府、正確には政権を牛耳るトリューニヒト閥は、最初からヤンを精神的リンチにかける気満々であった。同盟憲章にない査問会なるものを開催し、目の上のたんこぶであるヤンを、法的根拠がないがゆえに好き勝手にできる査問会を利用して、数日に渡って口撃した。それを余裕と自身の見識をもって真正直に受け答えしていたヤンの度胸は、爽快ともいえるものであった。
査問会を裏で同盟にけしかけたのは、帝国軍の侵攻を察知していたフェザーンであった。帝国軍を勝たせるための謀略である。同盟へ遅延している借款返済の件をちらつかせた策謀は完璧にうまくいき、ヤンが要塞を離れた隙に、大型ワープシステムエンジンを実装したガイエスブルク移動要塞が、イゼルローン回廊へ堂々と侵入し、ガイエスハーケンによって第8次イゼルローン攻防戦の序幕とした。
急報が届いてよりわずか数分、査問会は大慌てでヤン・ウェンリーを解放する。屈強有能な帝国軍を確実に撃退できる軍人は同盟軍でただ一人、彼しかいないからだ。ヨブ・トリューニヒトは火遊びの危険を思い知り、自身の手駒に有為な軍人がいないことを考慮して、この後実戦部隊への直接的な干渉を慎むようになる。
要塞へ戻るヤンのため増援艦隊が編成された。制式艦隊によらない、警備部隊など分艦隊以下を中心とした寄せ集め艦隊5500隻を指揮したのは、面白いことに本艦である。巡航艦にもかかわらずレダIIには戦艦クラスの指揮能力が付与されていた。量産艦でありながらわずか2隻しか建造されなかった事情から、特注艦並の贅沢な内部装備を得ていたようである。 戦場の神に愛された天才ヤンの用兵で、帝国軍は9割以上の損害を出し、ガイエスブルク要塞も粉微塵に失われた。レダIIはといえば、別になにもしていない。獅子が率いたヒツジの群れは、ヒツジに率いられた獅子の群れを駆逐するという。メックリンガーの言であるが、それを実現して見せたのが第8次イゼルローン攻防戦であった。
レダIIの再登場はその戦いより2年後のことである。宇宙暦800年6月1日、つぎの世紀まで半年余りとなったその日、回廊の戦いで事実上の戦略的勝利を収めたヤン・ウェンリーは、皇帝ラインハルトとの平和的会談のため、イゼルローン要塞より帝国軍陣地に向かっていたが、乗艦としていたのがこのレダIIである。
2年前の縁起を担いでのことであったが――ユリシーズほどの強運を、残念ながらレダIIは有してなかった。
武装商船を強奪したアンドリュー・フォークが向かっているとの警告が帝国軍より入り、レダIIは警戒態勢を取っていた。その辺りの判断はヤンは普段より艦長に一任しているが、レダIIはすでに地球教の罠に陥っていた。
ヤンの才は集団戦ともいえる艦隊戦でこそ発揮されるが、局地戦闘の最たるものといえる個艦レベルのそれでは、ヤンの天才はほとんど意味をなさなくなる。餅は餅屋と、強い委任癖がヤン・ウェンリーという人物にはあり、ヤン艦隊ではその気質がプラスに作用して各分野の専門家の能力を最大限に引き出してきたわけだが、この事件ではその性向が逆に徒となる。 [5枚目以降はバトルシップコレクションの写真を使用予定]

フォークと会敵したレダIIが戦闘準備に入ったとき、哨戒中と称した帝国軍駆逐艦2隻が後方より急行し、フォークの武将商船をあっさり撃破してしまった。駆逐戦隊の司令官はヤン・ウェンリーとの直接の挨拶を希望する。相手はヤンを名指ししてきたが、当のヤンは文民統制を考慮して、接舷の判断をエル・ファシル独立政府首席、ロムスキー医師に委ねてしまう。当然その返答は紳士の流儀にかなったものであった。
そして彼らエル・ファシル独立政府の面々の命を端緒として、悲劇が幕を開ける。
レダIIには、ユリアン・ミンツがいなかった。
レダIIには、ワルター・フォン・シェーンコップがいなかった。
レダIIには、オリビエ・ポプランがいなかった。
レダIIには、ルイ・マシュンゴがいなかった。
パトリチェフ少将やブルームハルト中佐の命をかけた行動により、ヤン・ウェンリーは辛くも第一撃を逃れることに成功する。同時刻、地球教の蠢動を知って追いついたユリシーズよりユリアンやシェーンコップらがレダIIへ乗り込むが、ヤンを発見したのは……帝国軍兵士に扮する地球教徒のほうが早く、そのブラスターが急所である動脈瘤を撃ち抜いてしまう。

「ごめん、フレデリカ。ごめん、ユリアン。ごめん、みんな……」

宇宙暦800年6月1日2:55、ヤン・ウェンリーの時は、33歳で停止した。
事件が事件だっただけに、無言の遺体を収容した後、レダIIはイゼルローン回廊内にそのまま放棄された。

技術面のレダIIは、最新鋭巡航艦にふさわしいスペックの数々を実現している。
艦首主砲は6門から4門へ減らされているが、中性子ビーム砲を標準採用したことで射程は大幅に伸び、総合的な威力も上回っている。火力を維持するためこれまでよりもパワーのある核融合炉を載せていると思われ、同時にエンジンの高出力を実現し、高速巡航艦にふさわしい推力を確保している。
炉とエンジンのパワーアップは艦体を相対的にサイズアップさせたが、それによって稼いだ全長により安定性が増し、砲撃性能が向上している。艦艇が細長いほどブレが生じにくくなり、砲撃戦で有利になるのは戦艦の設計思想が示している通りである。

レダ級最大の特徴は同盟軍ではじめて、傾斜装甲を実装したことである。装甲を傾斜させるだけならおそらく昔から繰り返されていただろうが、帝国軍のブリュンヒルトにはじまるそれは、質量を持つ中性子ビームを物理障壁で反らせてしまう画期的な技術体系理論であった。中性子ビームはどんなに遅くとも光速にかなり近い速度で迫ってきて、相対性理論によりその重さは恐るべきレベルに達する。直接受けるには容易でない相手であるからこそ、長らく防御バリアの強力な磁界で強引に逸らしてきたのである。
同盟で突発的に出現した傾斜装甲技術の裏には、フェザーンを介して帝国より流出した技術を採用しているという噂があり、シャフト技術大将が関与していたようだ。同盟軍はまた、帝国が秘蔵していたゼッフル粒子発生装置を小型ながら帝国軍の本格的な実戦投入の前にすでに保有しており、これにもフェザーンとの蜜月を謳歌するシャフト大将が絡んでいた可能性がある。

レダIIの艦橋は設計上の都合か危険な開放型が採用されているが、その位置はできる限り後方へと置かれており、一定の配慮が見られる。露天艦橋の下、側面部には11門の砲門が集中的に配置されており、両面合わせた22門が、側面防御の中心火力となっている。この火力集中は傾斜装甲の性能確保が主眼だと思われるが、砲門群まとめてひとつの目標を容易に狙えるため、砲門数に比する近接対空性能が相対的に高くなっている。
後部上方の純水タンクと思われる2本の円筒は細長く、かつかなり大型だ。エンジン開口部が広く、燃費が悪いのでそのぶん多めに推進剤の水が必要なのだろう。さらに側面前方には星間物質を取り込むためと思われる開口部が見られる。これはアイアース級が標準採用している、燃費軽減のための装置である。

エンジン後部に伸びるテールフィンは偏向板の数が従来よりかなり減って単層構造を軸としているが、ヒューベリオンやマサソイトなど旧式艦への先祖返りではなく、制御技術の発達がもたらした簡素化である。
外見からではスパルタニアンが見受けられないが、巡航艦レベルで戦闘艇を保有しないのは運用上危険であるから、傾斜装甲がちゃんと働けるよう、同盟軍の量産艦艇には珍しく収納式となっている可能性がある。
これらの変更がシステム的にどう作用したのかは不明だが、レダ級巡航艦の定員は従来の巡航艦よりも数十名少なく、326名となっている。実際の運用は制式艦隊レベルだと平均100名ほどで行っているが、定員が減るということはそのぶん1人当たりの負担が減るわけであり、操艦は幾分楽になっているであろうと考えられる。

艦名はギリシャ神話に登場するスパルタ王妃レダである。絶世の美女であり、気に入った主神ゼウスは白鳥に化け、レダを誘惑した。これまでにない女性的な艦影を持つ新鋭艦への、開発陣の期待を感じさせる。帝国領侵攻作戦の後退さえなければまちがいなく期待に応えた量産艦が誕生していただけに、試験配備のみで終わってしまったのは実に無念であろう。
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