補助艦艇 Auxiliary Ship

銀河英雄伝説フリートファイル・バトルシップコレクション
特務通報艦
強襲揚陸艦
イストリア
ケイロン3
ローゼンリッター連隊
工作艦
RK-387
CH-702
輸送艦
従軍病院船
シャトル

特務通報艦 Reconnaissance Ship
補助艦艇
全長300m 全幅55m 全高92m エル・ファシル革命予備軍
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang)さま)
艦名が判明するまでバグダッシュ艦と呼ばれていた。
敵地に潜入し、偵察・諜報活動を遂行・支援するための艦で、高い情報収集能力を持つ。作中では隠密偵察をしていたが、威力偵察も可能な火力を有している。帝国軍でいう強行偵察艦に当たる。
上下左右に突き出た緑色の、円筒形をした構造体はすべてアレイアンテナを内蔵しており、あらゆる通信を同時傍受できる。大量の情報を平行処理するシステムも強力だと思われる。 艦首に16門もの短距離砲を集中装備しており、敵に発見され頭を取られた際はこれで正面を強行突破する。すこしでも軽量化を図るためだろう、ほかの火砲は一切持っておらず、首尾一貫、潔い。
従事する仕事の性格上、所属を示すナンバーも艦名も存在しない。 かつては偵察任務の主役だったが、強行偵察型スパルタニアンが登場して以降出番がなくなり、アニメ登場時には最後の1隻となっていた。
最後の1隻といっても、ここで挙げている特務通報艦と同型同形の通報艦は最初からいなかった可能性もある。というのも特務通報艦は出来合いの艦を改造して作られていたからだ。 改造艦の都合か分類上は輸送艦や病院船に準ずる特務艦となっており、特務艦が非戦闘任務を担うという運用特性上、偵察ではなく通報、すなわち特務通報艦である。こんなものは言葉遊びであり、実情は無論、普通に強行偵察艦だ。
どうして制式艦艇として開発されなかったのかというと、偵察用ゆえ秘匿性を保つため――では別になく、単純に必要とされる数が少なかったからだ。跡を継いだ強行偵察型スパルタニアンにしても、通常のスパルタニアンを改装し運用している。 エンジンは同盟軍艦では少数派の2基を装備している。白いFTLアンテナの前にある推進剤用の純水タンクは、同盟軍艦には珍しく上下1本ずつの別配置となっており、それぞれ上下のエンジンに対応した結果だと思われる。複数エンジンはほかには輸送艦や工作艦など、非戦闘用艦を中心に見られる。
この艦が作中で登場したのはマル・アデッタ星域会戦から回廊の戦いの間であり、ヤン・ウェンリーの命を受けたバグダッシュ大佐が乗り込み、単艦でハイネセン方面の動向を探った。古い艦ゆえ比較的調達しやすかったのではないかと思われる。

強襲揚陸艦 Assault Landing Ship(F:Assault landing ship)
補助艦艇
全長226m 全幅76m 全高42m 乗員200名 同盟軍
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang)さま)
登場するときたいていローゼンリッターが関係しており、ワルター・フォン・シェーンコップ御用達ともいえる艦種である。
敵艦や宇宙要塞・基地を制圧するための特殊艦で、固定艦首砲の代わりに強制接舷用の加熱シリンダーを搭載している。これが回転しながら攻略対象の外殻をぶち破り、装甲服を着た歩兵を送り込む。
敵艦等の破壊が目的でないため、揚陸艦は自衛以上の飛び道具を持っていないようだ。積極的に攻撃する武装としては、艦首上部などに低出力の回転砲塔4基を設置しているくらいである。迎撃用の対空砲群が中央部の窪んだ側面下部に集中配置されていて、その仕様は駆逐艦とほぼ同等であるが、模型ではディテールが最初から省略されており見ても分からない。
通常運用時には爆弾などは積んでないようで、トリスタンへシェーンコップが乗り込んだ際、引き上げ時に爆弾を仕掛ける工作をやらなかった。 大規模な艦隊戦のさなかでは、薔薇の騎士連隊ほどでもないと揚陸艦の自在な運用は難しいだろう。普通に砲撃したほうがはるかに効率的だからだ。そのぶん接敵および回避能力、すなわち瞬間的な加速力や軌道を変更する制御能力に秀でており、艦の規模に似合わぬ大口径のエンジンを装備している。スラスターも小型ながら抜きんでた数が分散配置されており、アニメの演出から艦首部だけでも数十、艦全体では100箇所を軽く超すと見られる。 帝国と異なって同盟軍の揚陸艦は単体での星間航行能力が付与されており、そのためか駆逐艦サイズになっている。同盟軍で宇宙を旅できる最小の艦は駆逐艦とされており、帝国軍のように連絡艇レベルにまでそういった能力を与えるようなことはコスト上の制約からか、行っていない。
サイズに見合った働きを求められるようで、この揚陸艦は装甲服6個小隊を一度に運ぶ。帝国軍揚陸艦は半分の3個小隊で、艦の全長もほぼ半分に留まっている。 装甲兵用の装備には拠点攻略用の地上兵器として、小型ホバーのイオノクラフトや高速機動戦車などがある。帝国軍の揚陸艦からイオノクラフトが飛び出すシーンがあり、帝国軍よりはるかに大型な同盟の強襲揚陸艦はイオノクラフトはもちろんとして、戦車なども積んでいるかも知れない。
艦尾上部に伸びる円筒状構造はこれまでの例から見て、推進剤用の純水タンクと考えるのが妥当だろう。他の艦艇と異なりここまで後退しているのは、揚陸艦という特殊艦艇ゆえの事情と思われる。

補助艦艇
全長226m 全幅76m 全高42m 乗員200名 ナンバー61 イゼルローン共和政府軍
最後の会戦となったシヴァの戦いで、皇帝不予(病気)を察知したユリアン・ミンツが、ローゼンリッター連隊と共にブリュンヒルトに攻め込んだとき使用した揚陸艦。
ブリュンヒルトへの侵入に成功し、結果としてユリアンが和睦にまで持ち込んだことで、イストリアは同会戦の最高殊勲艦となった。しかし代償も大きく、シヴァの戦闘ではメルカッツやシェーンコップなど名だたる良将が戦死することとなった。
なんにせよ帝国軍総旗艦へ殴り込むなどという無謀にも思える挑戦は、イストリアの揚陸艦としての性能がなければ始まらなかったわけで、同盟軍強襲揚陸艦の有意性を如実に物語っているといえるだろう。 イストリアはアドリア海にある半島で、地政学上の要衝にあることから長年争奪の対象となった。戦いに終止符を打たせた艦名としてはある意味皮肉になっているかも知れない。

ケイロン3 Cheiron 3/Chiron 3
補助艦艇
全長226m 全幅76m 全高42m 乗員200名 ナンバー666 同盟軍薔薇の騎士連隊
第6次イゼルローン攻防戦時、ローゼンリッターの連隊長に就任したばかりのシェーンコップが連隊専用とした揚陸艦。帝国艦を乗っ取ってはリューネブルクを誘い出す歌を戦場に流した。
直属と思われる同僚ないし上司に私戦を責められたが、シェーンコップはあえて私事(わたくしごと)の戦(いくさ)を標榜し、威嚇だけで追い返した。公務で人殺しをするところまで落ちてないとは彼らにしか吐けないセリフである。
非常識な奇策は功を奏し、シェーンコップはついに復讐を果たした。
ケイロンはゲーム等での名称で、ギリシャ神話に登場する半人半馬ケンタウロス族の賢者。第9次イゼルローン攻防戦時にトリスタンに突入した揚陸艦もケイロン3の可能性があるが、詳細は不明。

A
補助艦艇
全長m 全幅m 全高m 乗員名 ナンバー 所属
あああ


工作艦 Repair Ship(F:Construction ship)
補助艦艇
全長487m 全幅300m 全高312m 乗員64名 同盟軍
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang))さま
工作艦は名前の通り、工廠施設のない前線や宙域で艦艇の補修・整備を行う移動ドックである。特殊な工作作戦にも従事でき、間接的に戦闘へ参加する能力を持つ。
専門的な仕事の内容から工作艦を中心とする部隊や小艦隊が編成されることもある。その旗艦として開発されたシヴァなどの存在を見るに、工作艦隊は補給艦隊と並び常設的な性格を持っていたと考えられる。 戦闘に参加する能力を持つといっても正面を中心として工作艦には露出部が多い。整備能力を防御よりも優先した結果だと思われ、そういう意味では機能一辺倒で潔いだろう。
正面上部の艦橋と思われる構造の左右に4門の穴が開いた正方形のブロック状装備が見られる。こういう形状・開口・色彩はほかの艦艇において同盟帝国を問わず短距離砲なのが普通だが、非武装との古い資料もあり正確なところは不明である。輸送艦が同盟帝国共に兵装を持っていることから、最低限の自衛武器は備えていると考えるのが妥当ではないかと思われる。
いずれにせよ直接戦闘能力も防御も貧弱であるのは疑いのないところだろう。 工作艦の横幅は300mにも達し、全長こそ短いものの容積的には標準型戦艦5~6隻分はあり、同盟軍ではかなりの大型艦といえる。戦艦もフォローするにはそれなりのサイズが必要なのだ。おかげでアイアース級大型戦艦でも抱え込むことが可能で、その任務をきっちり果たすことが出来る。
逆から見れば、同盟軍艦艇のデザインはこういった整備補修への合理化が顕著である。基本縦長で、横に長いものは一部を除きほとんどが中型以下の比較的小型な艦艇だ。宇宙港湾施設・要塞施設も同盟軍工作艦以上の幅はほとんど持っていないと思われ、それがトリグラフ受け入れ問題の原因になったが些細なことだろう。 反対に帝国軍艦のデザインはフリーダムで、それに合わせた帝国軍工作艦も体積的にヴィルヘルミナ級に並ぶとんでもないビッグサイズとなってしまっており、工作艦や港湾施設の仕事量に対する建造・運用コストは同盟と比べるべくもない非効率なものだろう。
工作艦の心臓部は馬鞍の形をした内側にある。3面非装甲の露出部となっており、整備補修・工作用のドック設備・施設が所狭しとびっしり並んでいる。作業時にはクレーンを伸ばしてしっかり係留固定するので、最前線から航行不能艦を退避させる衛生兵役もこなせる。 巨大なオプション設備を内側に挟む仕様となっており、星間土建屋的な工作任務に従事する。
下の写真は切断ビーム発生装置で、通常は宇宙基地建設などに使用されると思われるが、ヤン・ウェンリーはこれを使って巨大な氷の塊を切り出し、アルテミスの首飾りにぶつけて破壊した。バーミリオン会戦ではアーム部よりワイヤーで岩塊を束ねて艦隊を偽装し、ラインハルトを騙すことに成功する。
この装置は関係者から通称「うんしょ君」と呼ばれているようで、工作艦部隊の殺伐さとは無縁な雰囲気が感じ取れる。 エンジンは6基を備えている。同盟軍でも突出した数であり、工作艦にはそれだけ高い推進力が求められるのだろう。上のうんしょ君や戦艦を抱えての移動を考えても、増加した重量ぶんをカバーするには、数で補うのが手っ取り早くて妥当であると思われる。
またこの工作艦は、制式艦隊の一員としてまともに随行できるはじめてのタイプだとされている。以前の工作艦は速力が足らず、艦隊と共同して有機的に働くことが難しかった。ヤンが工作艦を攻撃に応用できた背景には、そのような事情があったようである。

補助艦艇
全長487m 全幅300m 全高312m 乗員64名 ナンバーRK387 同盟軍マスカーニ工作艦隊
ローエングラム公ラインハルトによって発動されたラグナロック作戦は、帝国の勝利で終了した。予定調和の幕引きに際し帝国同盟間に停戦条約が結ばれ、150年におよんだ戦争状態にはじめて公式の区切りが設けられる。
条約の名を、バーラトの和約という。
内状は同盟の全面降伏文書であり、敗者にとってなんら益のない不平等条約であった。たとえば第5条において同盟は帝国と同質の戦力を持つことが論外とされた。戦艦や宇宙母艦などの大型艦は建造を禁止され、現有艦も破却しなければいけなくなる。その敗戦処理の一環として、レサヴィク星域で1820隻が爆破されることとなった。
宇宙暦799年7月16日、同宙域で準備を進めていた工作部隊の旗艦RK-387が、接近する友軍を確認した。
責任者マスカーニ少将は一度疑ったが、応援と聞くと納得して許可する。だがその友軍には前面に80門もの主砲を見せつける巨大戦艦が含まれていた。戦艦シヴァを旗艦としメルカッツが率いる義勇兵集団、シャーウッドの森艦隊がその正体だった。
戦力比は圧倒的であり、いきなりマスカーニ少将当人が艦ごと人質に取られたこともあり、工作部隊は無抵抗で傍観するしかなかった。強盗集団は戦艦464隻・宇宙空母80隻などを強奪し、さらに4000名のお調子者が同調して任務を放棄、軍を脱走して義勇兵に合流する。
この事件をきっかけとしてヤン・ウェンリー処断の陰謀が始動し同盟は混乱状態に陥る。バーラトの和約はあくまで停戦条約であり、終戦条約・平和条約ではない。ラインハルトは大義の名分を最初から握っており、同盟の命脈を絶息せしめる主導権の皇帝杖をやがて振り下ろすこととなる。
RK-387はたいへん珍しいことに、艦籍ナンバーがそのまま艦名となっている。非戦闘軍用艦で固有名の明かされている稀少な艦でもあり、これが工作艦の名付け法則であるとは断定できないが、駆逐艦なども含めてみると、一般に戦闘力の高い艦ほど命名で優遇されている証左といえるだろう。

補助艦艇
全長487m 全幅300m 全高312m 乗員64名 ナンバーCH702 同盟軍マスカーニ工作艦隊
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang))さま
(本来はCH702のナンバリングあり)
ハムディ・アシュール少佐の乗艦。
レサヴィク星域で帝国軍との条約によって嫌々戦艦破壊・遺棄任務に従事していたおり、巨大戦艦シヴァを旗艦とする謎の義勇兵集団が出現、その扇動に乗って同盟軍を脱走する者が相次ぐ中、もっとも高位の階級を有していたのがアシュール少佐だった。
脱走兵4000人を代表してメルカッツと会見した少佐は、メルカッツでは旗手として弱いと本人を前に堂々と持論をのべ、暗にヤン・ウェンリーの旗揚げを望んだ。
歯になにも着せぬ無骨な物言いでかえってメルカッツの信を得て、少佐とその仲間はシャーウッドの森艦隊に欠かせぬ人材となった。シャーウッドの森艦隊の成立が戦場から離脱した前線集団であることを考えれば、不足しがちな人材の方面は容易に想像できる。後方の専門家たちの一挙合流は、手探りだった小艦隊の運用を大いに助けた。

輸送艦 Transport Ship(F:Transport ship)
補助艦艇
全長2480m 全幅463m 全高494m 同盟軍
補給艦隊旗艦仕様 コンテナ船を含めて何種類もある同盟軍輸送艦の中でもっとも目立ち、登場回数が多い。
全長2480mの威容は軍艦として銀英伝最大。別の資料では全長2500m以上もあり、いずれにせよ段突である。1隻で1000万トンもの物資を大量輸送することができ、非常に効率が良い。
帝国に比べ総じて小振りな同盟軍艦にあって、輸送艦だけ規格外の超巨大艦であるのは、同盟軍艦の積載容量が帝国軍艦より少ないことが関係していると思われる。長時間に渡って継続して戦う力――継戦能力において、同盟が不利であるのはいうまでもない。それを解決するのが1000万トン級輸送艦の存在であり、輸送艦でありながら同時に補給艦としての役割も担っている。
戦いに巻き込まれたときのことを想定して、正面に自衛用低出力ビーム砲を16門備えている。
後部エンジンは8基より成り、同盟帝国合わせても最多クラスである。
同級艦は第2次ティアマト会戦の捕虜を惑星エコニアに輸送するなど少なくとも宇宙暦745年から運用されており、半世紀以上に渡って世代交代なしに生産された、息の長い艦となった。

従軍病院船 Army Hospital Ship
補助艦艇
全長2480m 全幅463m 全高494m 同盟軍
輸送艦を利用した病院船仕様で、内部は大幅に改装されている。
帝国軍も2キロメートルの巨艦であり、まさに動く巨大病棟。会戦ともなると数百万人が参戦するからには、キロ単位の大きさがないと効率良く負傷者の手当てが出来ないのだろう。
帝国同盟共通のマークは赤十字に相当し、双方攻撃禁止の取り決めがなされていると見て良い。このマーク、会戦シーン以外ではハイネセンポリス第8ハイウェイ戦闘後の救助シーンなどで登場している。ビデオ版では単純に景教の赤十字だったが、銀英伝世界は地球教を除いた特定宗教の力が衰微しているため、DVD版で現在の模様に修正された。
病院船そのものは完全非武装という決まりになっており、戦力外となっている。病院船のみ「従軍」と冠せられている事情はここから来ていると判断できる。
病院船への恣意的な攻撃は虐殺と見なされ、軍法会議の対象になる。厳密に適用されたらかなりの確率で死刑になるだろう。

シャトル Cosmic Shuttle
補助艦艇
全長49m 全幅35m 全高12.5m 乗員4名 同盟軍

同盟軍が艦同士の連絡・移送・脱出に利用している小型宇宙機は数種類あるとされ、その中でも登場シーンが飛び抜けて多く、代表格となる大型タイプがこれ。外見はスペースシャトルそのもので、120名の人員を輸送できる。アイアース級艦尾上部に収まってるのもこの機体だ。
帝国侵攻作戦でのみ登場した別タイプ(おそらく武装型)もある。同盟軍の艦艇は大気圏突入能力を持たないため、地上と軍艦との移動を一手に引き受けるなどして活躍した。