アバイ・ゲセル Abai Geser(F:same/Abai Gesel)

全長685m 全幅65m 全高280m 乗員732名 ナンバー1102 同盟軍第11艦隊
1/5000ガレージキット(提供ウォルフ(Wolfgang)さま)
ストークス少将の乗艦で、第11艦隊の分艦隊旗艦として就役した。アムリッツァの大敗北をきっかけとして開発された、制式艦隊分艦隊旗艦専用艦の初期型である。
旗艦級戦艦といっても標準型戦艦のバリエーションである。もはやアイアース級(アキレウス級・パトロクロス級)を分艦隊旗艦に配しづらい貧乏臭さが、同盟の哀愁を感じさせる。姉妹艦ではないが、おなじ目的で開発されたほぼ同期の仲間にムフウエセがいる。 ムフウエセは攻撃性能を大幅に増強させた艦であったが、アバイ・ゲセルは指揮性能の充実を目指した。このような実験的な試行錯誤は数の少ない旗艦級戦艦ではいつものことであり、そのうち実戦で上手くいった機能が、何万隻も造られる量産艦艇へとフィードバックされてゆく。
帝国軍ではバレンダウンに至る過程でその傾向がはっきり見られたが、末期の同盟軍では残念ながら、アバイ・ゲセル戦没の2年後に結ばれたバラートの和約を境に、その流れが完全に絶たれることになる。
アバイ・ゲセルやムフウエセには数隻の仲間がいるのだが、残念ながらアニメでの登場はない。それら未確認艦の形状は、機能の実験場という側面から考えて両艦とはかなり違っているだろう。ブロック毎に建造して組み合わせるモジュール工法を用いる同盟軍は、その気になれば無限に近いバリエーションで自在な形状を艦艇に与えることができる。 [4枚目以降はフリート・ファイル・コレクションの写真を使用予定]

アバイ・ゲセルの特徴はアイアース級の指揮モジュールを標準型戦艦に載せてしまったところにある。そのぶん全長も伸び、標準型戦艦のバリエーション艦としては確認されている範囲で最長の艦である。
このでかい指揮ブロックの影響か、ムフウエセをさらに上回る乗員が艦の操作に必要で、すでに標準型戦艦の範疇を超えている。伊達に旗艦級戦艦を名乗ってはいない。

アイアース級専用のFTLアンテナも、数を3分の2に減じ長さも短いとはいえ、しっかり実装している。おそらくこの様式でないと、指揮ブロックのシステムは受け付けてくれないのだろう。アイアース級御用達といえば推進剤となる純水を入れておくタンクもそうで、特徴的な3本の塊が、指揮ブロック後方上部に屹然として立ち並んでいる。ノーマルの標準型戦艦ならこれは2本である。

おまけで主砲もアイアース級のものに換装してしまっている。18cmないし20cmだった集束口径は25cmへ大幅アップを果たし、瞬間的な破壊力は向上している。ただしエネルギー供給源の動力炉が標準型戦艦規準なままなので、照射可能――すなわち攻撃時間は反対に短くなっており、中途半端に終わっているとの批判もある。
艦底のスパルタニアンは艦体伸長の恩恵を受けて3機増えており、12機を搭載する。うち3機は強行偵察型である。

アバイ・ゲセルは就航してまもなく、不運にも初陣で沈んでしまった。クーデターに参加した第11艦隊はドーリア星域でヤン艦隊の奇襲を受け、分断された前衛のストークス分艦隊は、アッテンボロー分艦隊にいいように翻弄される。

第11艦隊は数において最初からヤン艦隊に負けており、実戦からも2年以上離れていた。さらに先制の奇襲を受けたとなると、第11艦隊にどのような勝機があったというのであろうか。勝算のない戦いはしないとはヤン・ウェンリーの言であるが、まさにそれを反対の意味で地でいってたのが第11艦隊であり、付き合わされたストークス少将もアバイ・ゲセルも、いいカモネギである。
沈むにしても帝国軍が相手ならまだ本望であったはずだが、アバイ・ゲセルは味方と戦い、味方に沈められたのである。これを不運といわずして、なんであろうか。付け加えるなら無念の2文字もあっただろう。

艦名はモンゴルの神話、英雄叙事詩アバイ・ゲセルの主人公である。地上を平定して天に戻った。
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