狼と香辛料 1/8 ホロ 変質者キョン編 フィギュアレビュー
この娘が通常より可愛いホロだというのはコトブキヤ製品だという実績だけを見てもまったくありきたりな事実であり、俺のなんでもない日常に降って湧いたたんなる良作のひとつというだけにすぎず、つまりはいいものを拝ませていただきありがとうと、誰にでもなくつぶやいたごく普通な俺の感想が、彼女に対する恥ずかしくも第一印象であった。いろいろ見過ぎて目が肥えてしまった――そう言ってしまえば簡単であるが、俺としては変化を期待し、また自らの行動で変えようと望んでいたに違いない。気がつくとビデオカメラを手にしていた。
結果論だが普通を打開するにはどうすべきかと考え、結局あたりまえのことしか思いつかないのは、俺のような凡人にしてみれば仕方のないことで、凡庸の神様がいたとすれば俺の発案に快く頷いてくれたことだろう。要はそれが俺にとってあまりやらないことでしかし無難に実行可能なことであればそれで普通という殻は心情的に十分に打破されるわけで、俺が10人いたとして、カメラ撮影の経験があって目の前に記録映像装置があったならば、10人ともがそのスイッチを入れたに違いない。保障してもいい。眼福を記憶に留めておくだけに飽き足らないのは、俺が青春まっただなかの青臭い青少年にすぎないことからも、別に女子より責められる筋合いのないことであろう。
だからといってSOS団の、とくに涼宮ハルヒとかいう唯我独尊団長には絶対に見つかりたくはない。きっと俺の財布はますますその口を団員への奉仕のために緩めることになるであろうことは、進化論が創造論に覆されるようなことがあっても変わることのない、既定路線かつ定説レベルに固定されるのは間違いないからだ。進化論が科学の正道を貫くためにも、俺の撮影と思い出作りは、ごく短時間に済まされなければいけない。俺はスピードを重視して、最短にして自然なことをホロに要求した。
「お嬢さん、ぱんつ見せて」
無言で、股間を。
わっち
わっちくるり
わっちくるくる
わっちくるりん
わっちくるる~
わっちわっち
いやー、ケモノ耳っ娘って、ホントにいいなー。
この顔、かなり原作版だね。
興奮して我を失っていたに違いないセクハラぶりに、少々自己嫌悪に陥っている俺がいた。俺は客観的かつできるかぎり冷静に自分を保ちつづけていると自負していたが、思考の流れはいつしか捻れ、たんなる自己弁護の塗り重ねに終始してはいなかったのではないだろうか。だからといってセクハラ発言の事実はもはや覆しようがなく、股間のあまり丈夫でない息子が悲鳴を脳に送信している事実も元に戻すことは叶わないわけで、下の疼きは収まらず、反省する前に格好悪い俺自身に恥じている気持ちが強い。
「キョンよ」
変なポーズをした黒服野郎が俺の前に立っていた、というべきだろうか。ガニマタの度を余裕で成層圏まで突き抜けた確信犯的な、昭和時代の漫画に悪役として出てきそうなおかしな足の開きをさせたそいつは、両手も真横に広げ、肘を直角に立てている。カエルのように寝そべった格好があるとして、その状態で立ち上がってるわけだが、維持するのに大変な労力を要するであろうが、別に誰が褒めるわけでもなくむしろ警戒され多くが無視ないし嘲笑するであろう報われぬポージングで、黒服のそいつは偉そうにふんぞり返っ――
「ルルーシュが命じる、俺様のような素晴らしい変質者になっちゃえ♪」
「うん、わかったよ! 丁daiさんレベルは無理だけど精進するよ!」
わっち耳
わっち髪
わっち上着
わっち貧乳
わっち麦袋
わっち手
わっち背中
わっちスカート
わっち腰紐
わっちスカート裏
わっち尾
わっち靴
靴と台座の境界に注目。草の中に本当に立ってるような演出に成功した。
わっち台座
わっちズロース
わっちズロース!
変えられぬどうしようもない事実として女に対する男のサガというやつがあり、オタク的にいえば萌えという言葉に代表されるような、なんともいえない時折つきあげてくる本能の衝動にくらっとすることが、俺には少なからず、いや普通の男子並にある。俺の身近にいる女性といえばSOS団の女子であり、かわいらしい未来人マスコットや頼りになる無口な宇宙人、さらにハルヒに対してその方面の興味や感情を持ったことがないといえば、まったくの嘘だ。夢の中の出来事として片付けられているとはいえ、ハルヒにはしっかりとその髪型について萌えたと発言し、恥ずかしながら一般にABCと呼ばれる行為の初歩にも踏み込んでいるわけで、青い巨人とともに俺の思い出のポケットで心憎からぬ位置に青臭く収まっているのだ。
さて、ここにホロなる可愛らしいと誰もが発言するであろう少女がいる。実際は別として、見た目の年格好は俺とおなじくらいか、年下にも見える。俺が生まれるはるか昔、おおきな戦争があったさらに以前は、これくらいの歳ですでに結婚していたというから、そんな年齢で公に手を振って不純異性交遊にいそしめた古き良き時代はうらやましい限りである。そしていまの俺はそのまさに古い素敵な時代の大地に立っているのだ。郷にいれば郷に従え。俺は思考に頼らない脳の古い部位が発する司令に忠実に従い、俺を導いてくれた師匠と共に、可愛らしい狼少女の下半身に取り憑き邪魔なる布を剥がしたのは、けっして痴漢ではなく、時代の許すごく自然な行為であり正義であった。
「お嬢さん、ぱんつ見せて」「おお……」
「おおお……」
「しっぽのためとはいえ、ローレグ・ズロースとは、なんというチラヒップ、なんというフェチズム!」
無言で、股間を。