鯉のぼりバスターズ! 水中こいのぼり&こいのぼりの川渡し

おでかけフォト
撮影:2009/05/01,05/05

鯉のぼり

「あっはっはっはっは! 落ちろ落ちろ!」

「そこのハッピトリガー、楽しそうじゃない」
「あの鯉は生きてないくせに生きてるように蠢いている屍だ。だから屍姫である私が倒す!」

「なるほど……ということは、あれに紅世の徒が紛れて秘かに存在の力を貪っていてもあるいは、おかしくないかも」

 こうしてシャナ(灼眼のシャナ)と星村眞姫那(屍姫)による鯉のぼりバスターズが臨時結成された。

 鯉のぼりは鯉だけでなく、幟(のぼり)や旗(フラフ)でも構成される。

 モザイクはその家で祝っている子供の名が書かれている部分だ。

「見ろよ! 屍がいっぱいいるぞ!」

「死ね死ね死ね!」

「やめれ」

「紅世の徒があんな安物の紙で出来てる鯉のぼりに化けてるわけないだろう」

「いやあれは紙じゃないぞシャナ。土佐和紙だ」
「土佐和紙?」

「見てみろそこの川の中を」

「なにかいるな……」

「あいつらが何物か、どうやって確かめたらいい眞姫那?」
「そうだな……高いところに登るとか」

「高いところか」

「あれがいいな。人もいっぱいいる」

「それより私はあちらのほうが気になる」

「祭りのようだよシャナ」
「メロンパンはあるかい?」
「さっき食べたでしょ」
「にょろーん」

橋上

高知県いの町(旧伊野町) 水中こいのぼり

「おおっ! 眞姫那、川の中に鯉のぼりが!」
「あれみんな土佐和紙だってさ」

 いの町は土佐和紙の特産地だ。

 地元メーカーが開発した水に濡れても平気な特殊和紙が、不織布フィルターなどに加工され日本製の工業製品に秘かに使用されている。

 とくに日常的に使用される日本メーカー製乾電池の6割は土佐和紙のセパレーターを採用しており、圧倒的なシェアを持つ。

 伝統工芸が意外なところで息づいているのだ。

 昔ながらの普通の土佐和紙は当たり前だが水で溶けるので、こんなふうに水中で泳ぐことはできない。

 いの町で生産される和紙の多くが工業用であるから、非水溶の特殊和紙を活かすイベントがこうして毎年、こどもの日の時期に開かれている。

 和紙の鯉のぼりを支えるのは下の写真に写ってる、砂袋の重りだ。

 いの町水中こいのぼりの遠景。どうでもいいけど平成大合併の折、伊野町からいの町へと、ひらがなに改悪したのはなぜなんだろう。きれいな漢字だと思うんだけどな、伊野って。

「ふっふっふ」

「ふっはっはっはっは」

「狩る!」

「死ね死ね死ね死ね!」

「…………」

「弾切れまでの釣果は1体だった。さすがに距離がありすぎたみたい」

「なんだよ釣果って。釣りじゃないぞ」

「紅世の徒を感じる……」

「チェストー!」

「…………」

「じつはこれ私が倒したわけじゃなくて……その……ごめん、見栄。刀が届くわけ、ないよね」

「第一陣は私の勝利だったが、わずか1匹ではきれいな成仏にはとうてい及ばぬ」

「しょうがない、神頼みでもしよう」

「…………」

「おい眞姫那」
「私は祈っているところだ。邪魔をするなシャナ」

「いやだから違うって」

「眞姫那はいつから漫画家を目指すようになったんだ?」
「ま、まんが神社だと!?」

「そうだ……私の原作コミックがもっと売れますように」

四万十川

 日本最後の清流と呼ばれるだけあって、マジ綺麗。中山間部では簡単な濾過装置だけで川の水が飲めてしまう。

 この四万十川に毎年、数百匹の鯉のぼりを渡している場所がある。

 街灯もこいのぼり仕様だ。

「あれは……」

「おいシャナ、あんなところにたくさんの屍があるぞ!」

「そうか? 私には紅世の徒にしか見えないが」

 日本ではこういう鯉のぼりの渡しをしてるとこがたくさんあり、高知県ではここがもっとも規模が大きい。

高知県四万十町(旧十和村) こいのぼりの川渡し

 鯉のぼり川渡し発祥の地の碑。鯉のぼりそのものは少なくとも江戸時代からあり、このように川などを渡すようなことは気の利いた有志であれば誰もが思いつきそうなことで、戦前から日本各地で行われていたと容易に想像できる。日本中に似たような碑がありそうだが、四万十川のそれは数百匹レベルの大規模なものを指しているようだ。

 500匹以上いるらしい。日本には千匹から数千匹を泳がせる大規模な渡しが幾つも存在するが、そういったところの多くは数十センチの小さな鯉のぼりを多数使用している。ここ四万十川の鯉のぼりはすべて、メートル単位のフルサイズだ。

「眞姫那、今回は先に私に討滅させてくれ」
「いいだろう」

「…………」

「消えろ〜〜!」

「……うん、みんなそのまんまだな」

「だから刀が届く距離じゃないだろ」

「やっぱり化け物退治は銃器に限る。今回も勝ちはいただく!」

「滅べ滅べ滅べ滅べ!」

「……あれ?」

「おまえ本当に屍姫か?」

「ま、待て。刀を向けるな怖いだろシャナ」

「よし、作戦をかえよう」

「ケーブルの下に、屍どもを繋いでいる茶色の紐があるだろ」
「そうだな。たしかに見える」

「それの根本を抑えてしまえばいい」
「眞姫那は頭いいな」

「というわけで――」

「紐の根本に来てみた」

「さて、この紐をどうしたものか……」

「斬っちゃえ!」
「あ!」


「ふっふっふ。見ろこの紅世の徒どもの残骸を」

「これで世界は平和になるのかな」
「さあ?」
「それより、さっきからパトカーのサイレンが聞こえるわけだが」

「心配ない! 鯉のぼり仮面になれば正義は正当化される」

「なるほど! 仮面をしてれば正体がばれることもない!」

「待てよ。こどもの日が過ぎたらどうしたらいいんだシャナ?」

「……聞くな」
「というかさ、鯉のぼり仮面って、逆に鯉のぼりを守る立場じゃね?」
「……私は寝ることにする」

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