Nikon AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D

東方光画機
購入:2017/05 分類:魚眼レンズ

 広角用のレンズが2年2ヶ月ぶりに復活。

 ニコン純正の魚眼レンズ、フルサイズ用モデルだ。超広角ズームを調べてみて使用頻度のわりに値段がすんげぇので、安価な魚眼で代用だぜ。中古4万。Dタイプで、モーターはカメラ依存。

 絞りリングがあったりフォントが妙に古いっぽいかったり――うむ、このレンズ、設計が古い。なんと1993年だが、レビュー時点でなお現行だ。モデル更新される気配がなく、製造番号を見ても生産数は少ない。普及用の廉価ズームがわずか1年足らずで走破してしまう番号を、20年・30年もかけて競歩のように完歩する。じつは魚眼レンズは本来、産業・研究・記録用で、写真家が表現として用いるのは副次的なものだ。等距離射影方式という。

 メイドインジャパン。生産を継続してる一部の旧式レンズはずっと日本製で、まじめかつ律儀に数十年前の仕様をコツコツ再現しつづけている。
 ソニーなど後発メーカーはこの手のレンズをすでに純然たる表現レンズとして設計するが、ニコンやキヤノンみたいに業務用で使われてた時分から継続してきた老舗メーカーはいまなお当時の思想を継承しつづけている。たとえばマクロレンズ。いまだに複写にも耐えうる完璧な平坦構造・均一な性能を設計段階から与え、絞り開放の性能はあまり考えない。

 AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D の写りを見る。対角180度をカバー。下は参考として24-85mmの24mm端だ。APS-Cなら16mmに相当する。魚眼のほうは10.5mmだ。

 1993年設計のレンズとは思えないほど、けっこうな解像度を実感できる。

 以前使用していたトキナーの魚眼ズームより中央の解像は良好。

 ただし四隅は弱いぜ。解像感が一気に落ち込む。

 さすがにデジタル以前、フィルム専用のレンズだ。おなじニコンより10年後に登場したデジタル考慮のAPS-C用魚眼と比べて、抜けも解像度も落ちる。ニコンにはクロップ機能があるのにそれでもフルサイズ用を買ったのは完全に趣味だ。

 さらにほかの魚眼とも比べてみよう。2011年にキヤノンより発売された EF8-15mm は魚眼としては突出した超絶性能の神レンズだ。2007年のシグマ15mm、2006年のトキナー AT-X107、2003年のニコン10.5mm、いずれも総合的な光学性能で今回購入した前世紀の魚眼より良好。余裕で最下位だったぜ。ただしトキナーの魚眼ズームより中央の解像度は上回っている。端の急激な落ち込みが残念かな。

 製造番号は31万の5000番台。2006年のコーティング変更前で、推定で20年くらい前か。2006年のコーティング変更はたまに言われるデジタル対応などではなく、国際条約で鉛ガラスが使えなくなったことによる代用素材と補正コーティングの影響。

 フィルター類は後玉で使い分ける特殊仕様。前玉にはなにも付けられない。蓋は専用のプラスチックで――ちょっとこれ、綺麗すぎない?

 そもそも20年前に生産された個体にしてはコンディションが良好すぎる。オーバーホール履歴もなし。ほとんど使用されず防湿庫で眠っていたようだ。新品8〜11万、中古は最近のロット(60万番台)なら5〜7万、古いのは4〜5万。ほぼ底値で買えた。カメラのキタムラ。

 1993年設計で四隅が弱かろうとも、Web公開サイズなら問題ない。ついでにニコンDfのイメージセンサーはフィルム用レンズ対応モデルだったりする。ローパス表面のコーティングがそうなっている。ニコンD4以降のハイエンド機のみが実装しており、ニコンDfも番外末席だがD4センサー採用の恩恵に預かった。

 魚眼レンズは本来、写真家のものではなかった。気象研究などの仕事で使うために開発・進化してきたジャンルで、歪みの付け方には現場の都合から数種類のルールが存在する。つまりそれら「正しい」仕様に即した魚眼専用レンズであれば、歪みなしの補正もまた容易。下がそれだ。超広角10.8mm相当、10.5mm魚眼&APS-Cなら7.2mm。この換算はメーカーや方式によって変わるぜ。あくまでもニコンFマウント。

 補正は現像ソフトのカメラプロファイルで行う。事実上、メーカー純正とフォトショップにしかできない。

 プロファイルの項目に「ゆがみ」がある。魚眼はゆがみ「0」で魚眼本来の描写だが、デフォルトは100だ。

 フォトショップのゆがみ補正は0%から200%まで自由自在。最初から歪みの少ないレンズではあまり変化しないが、プロファイルに魚眼を充てれば激しい変化を楽しめる。ただし色収差まで魚眼のパラメーターとなるので、やはり魚眼でやるのが本筋か。

 フォトショップのデフォルト、補正100%の姿。普通の超広角レンズに見える。このような整然とした補正は正しい仕様の魚眼レンズのみが享受できる。魚眼コンバーターの類いは「表現優先」でムラのある設計により、超広角化への歪みない補正についてはほぼ全滅の模様だ。魚眼でノーマルの超広角も楽しみたいなら、魚眼専用レンズを買うべし。等○○射影方式であればOK。それ以外はすべて見栄えのみを追求した「なんちゃって魚眼」だぜ。

 魚眼からの超広角化の模式だ。24mmと比較しても広い。

 レビューしてる魚眼は設計が古く端が弱いぶん、補正への耐性が低い。だがピント位置であるていど補える。下を見ると、上はディテールがギリギリで踏みとどまってるが、下はブレてるかのように溶けてしまってる。

 簡単なことで、超広角化するつもりの構図でピントを端に合わせれば良いだけだ。これでピントの合う範囲が調整され、粘りが生じる。

 ポートレイト? モアイを使って、魚眼・超広角補正・広角24mmの比較。超広角へ補正すると、そこからトリミングしたらそのまま24mmになると分かる。人間やフィギュアの見え方は被写体との距離によって決まる。ゆがみ少なく写したいなら、まずあるていど離れることだ。まず距離が重要で、焦点距離はどのくらいの広さを切り取るかの指標にすぎない。

 魚眼レンズの利点を見る。下の写真は置き看板によってシャッターのアートが見切れてる状態。

 魚眼レンズなら看板の内側よりシャッター全体を捉えることも可能。

 むろん超広角化も。撮影距離は数十センチだ。

 最短距離か――AI AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D は25cm。

 スペック上の最短撮影距離はこう。この距離はイメージセンサーと被写体の距離だ。コンデジなどではレンズ前玉からの距離だが、一眼の世界では基準が違っている。倍率は0.09倍で、あまり大きく写せない。

 APS-C以下の魚眼レンズは最短撮影距離が総じて短く、ダイナミックな表現が可能。

 じつは最近のフルサイズ用フィッシュアイレンズでも、最短距離はとても短くなってきている。キヤノンもシグマも15cmまで寄れてしまう。

 さてここで裏技だ。焦点距離が小さいほど、絞った際にピントの合う範囲がより広がる現象を使う。16mmならF22で25cmから14.6cmまでピントが合うんだぜ。

 つまりこうだ。マニュアルモードにして、距離目盛りを最短距離で固定、F値も最大限に絞って、ぐいっと寄る。すると予想通り、ピントの合った状態で大きく写せた。これで前世紀の魚眼でも広角マクロとして使える。

 もうちょっと大きな被写体ならわずか10cmの違いを実感できるぜ。下のRIFA-Zは左右の幅が40cmある。10cm短縮しただけで見え方が大きく変わった。

 F22が前提となるため、ボケを利用する表現では不利となる。ここは割り切りが必要だろう。さらに設計が古いせいか絞り開放付近のボケ質はかなりアレでナニだ。ぶっちゃけひどい。

 いちおうF4まで絞るとかなり改善される。

 ピント25cm&F22で写し、さらに超広角化した世界。

 これも同等。左上に看板が残ってるのが邪魔なので――

 ゆがみ補正200%でさらにダイナミックへ。

 魚眼レンズをフィギュアレビューにも使えないか検証。

 箱もすごいありえないほど近距離で。

 超広角化で平行してる平面の箱は普通に見え、奥行きある立体物は変形して見える。ただし中央ほど歪みは小さい。

 すなわち写真表現上で魚眼+補正を利用するなら、中央から端まで使い、フィギュアを斜めに置く。

 魚眼はわずかな距離で倍率が激しく変化するため、空間の使い方と割り切りが難しい。特性を知っておけば、少年マンガ的な面白い画を得られそうだぜ。

 以上、フィッシュアイと超広角を兼用できるニコン純正魚眼についてだった。


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