Nikon Ai AF DC-Nikkor 135mm f/2S

東方光画機
購入:2014/09 分類:単焦点レンズ

 ボケ味を直接コントロールできる希有な中望遠レンズだぜ。

 ついにマイクロ105mmに迫るレンズを買った。サイズと重さも更新。潜在的な画質もたぶん上回る。

 135mmF2大口径中望遠。1991年とおよそ20年以上前の発売だが、その後は大きな更新もなく、現行モデルのDタイプすら1995年発売。

 なんだこの巨大な前玉、ガラスの塊しかない。最近のレンズなら前になんか文字とか遮光板とかあるんだけど、なーんもない。いきなりガラス!

 このレンズはフードがレンズ本体に付いている。

 ほい伸びた。

 ちょっと心許ないな。こんな小さいフードで135mmを遮光できるわけないぜ。おまけだな。

 というわけでこいつだ。ニコン純正のHN-13に社外製72-86mmステップアップリングがひとつの定番らしい。絶版になってるコンタックスの72-86mmなんたらを使う手もあるそうな。

 ご立派な外見になってくれたよ。これなら135mm級のフードにふさわしいぜ。

 このレンズ最大の特徴はなんといってもDCコントロール。

 DCとはデフォーカスの略で、「フォーカス外」って意味。つまりピントが合ってない部分ってこと。簡単にいえば「ボケ」のことだ。それを操る機構をニコンはデフォーカス・イメージ・コントロールと呼んでいる。

 Fが前ボケ、Rが後ボケ。任意に調節可能だ。絞り値に対しおなじ数字に合わせれば適正値となる。具体的にどうなるかあとで見ていく。

 135mmのF2がどんなボケ量を持つのか実例を示す。普通のレンズで下のような絵は写せない。手持ちで最大のボケ量を誇るレンズが手に入った。マイクロ105mmの2倍近くボケる。
ボケ量ランキング(所有レンズ)
1 67.5 DC135mmF2S
2 53.6 70-300mm(300mm端)
3 41.7 50mmF1.2S
4 37.5 マイクロ105mmF2.8
5 21.4 マイクロ60mmF2.8
6 18.9 24-85mm(85mm端)

 設計の古いレンズだが絞ればシャープ。2キロ離れた看板もしっかり読める。評価サイトのレンズテストでも解像力の上限近くまで目盛りが突き抜ける。100mmを超える単焦点はだいたいみんな似たような高解像を示す。

 F8でも被写体が近くなら背景はふわっとボケる。

 つづけてボケ味。めちゃくちゃ煩くなるコスモス相手に健闘する。ボケコントロールは後ボケを適性値で。

 ちなみに70-300mmならこんな感じ。二線ボケだらけですごく煩い。マイクロ105mmもおなじような描写傾向だ。

 ボケコントロールの神髄。後ボケを煩くしてみる。どんな駄レンズでもこんな超硬質ボケはまず再現できないだろう。ピントが合ってないのにまるでシャープネスをかけたような後ボケ。そんな演出が簡単にできるのがデフォーカス・イメージ・コントロール機能。

 過剰に補正するとソフトレンズになる。ソフトフィルタ要らず。

 デフォーカス無補正。十分に美しいボケ。

 後ボケ過剰補正。ソフト気味になる。

 前ボケ過剰補正。前ボケに振るとエッジが立って後ボケが煩くなる。まるで安いズームレンズみたい。

 DCの数字は絞り値より大きく振ると過剰に補正されソフト効果が付く。まず後ボケ過剰。奥がふんわりで手前が煩い。

 F2に対しDCも後ボケ2。Rはリアの意味。適性値であればコントラストは保たれソフト感も出ない。奥がややなだらかで手前がすこし煩い。

 無補正状態。普通のレンズはこういう感じにボケる。

 Fに適性振り。Fはフロントの意味。手前がふんわり、奥がやや煩い。安価なズームレンズが全般的にこんな感じで煩い。カメラ付属のキットレンズなど。

 フロント過剰補正。ややソフト効果がかかりつつ前がなだらか、奥がざわつく。

 135mmは長いがフィギュア撮影にもぎりぎり使える。全身像に限るが。

 最短撮影距離は1.1mでこう。フィギュアの発色に引っ張られ、薄いフレアによって赤に色被りしている。古いレンズのためデジタル用のコーティングがされておらず、イメージセンサーで反射した光が鏡筒内で乱反射し、色被りが起きやすいらしい。こればかりは覚悟のうえで運用するしかない。

 色被りを利用すればこんなファンタジーな絵が得られる。ナノクリのレンズだと無味乾燥な絵になるシーンだ。こういうのを味という。

 これもフレアと色被り。オールドレンズ独特の色合いを生む。まるでフィルム写真みたいな印象だが、「そういうふうに写ってた」からこそ、こんなふうに写るのだ。

 手を使ってしっかり遮光すれば色被りは収まり、現代的な写りになる。描写が安定しないので普段撮りなどには使えないが、作品を志向する時間をかけたゆっくりな撮影では表現力の幅となる。ミラーレスとマウントアダプタの流行で古いレンズが見直されるようになってからこちら、レンズの欠点を利用した写真が数多く発表されるようになった。

 いろいろサンプル。

 ボケの質ではマイクロ105mmより幅も懐も広くて様々な撮り方が可能。ただし安定して優秀な結果を出してくれるのはまちがいなくマイクロ105mmのほうだ。どんな条件でも光学性能でねじ伏せてくる。

 硬質な被写体も絞れば引き締まる。

 柔らかい写りも容易だ。なんとも幅のある――癖の激しい面白いレンズを手に入れた。

 もしこのレンズがナノクリで一新されたら、余裕で20万円くらいになるだろう。むろん手が出ない。

 おもにネイチャー撮りで活躍してくれそうだ。DCニッコールは135mmのほかに105mmがある。


カメラ・レンズ レビューリスト
Copyright 2005~ Asahiwa.jp