Nikon Ai Nikkor 50mm f/1.2S

東方光画機
購入:2012/06 分類:単焦点レンズ

 2012年6月現在、ニコン現行で一番明るい超大口径レンズだ。設計はなんと30年も前だぜ。この個体もおよそ15年前のもので、オーバーホールを受けた中古品だ。現行というのは、ちゃんと生産していて、販売も継続されていて、万全のメンテナンスを受けられるということだ。かなり凄いぜ。

 絞りはF1.2より始まる。この絞り開放が産み出すボケ量はすさまじいの一言だ。ちなみにAFなんてないぜ。ニコンのAFレンズはF1.4からしかない。

 絞りもピントも、レンズを手で直接操作するのだ。カメラ側で行えるのは自動露出とフォーカス支援くらいだな。

 このレンズに専用の純正フードというものは存在しないので、適当なラバーフードを取り付けた。HOYAマルチレンズフードというデジタル時代のロングセラーで、価格比の遮光性能は良好だ。ぶつけてもゴムで柔軟。前世紀のレンズは本来なら金属フードらしいが、混ぜるな危険で回避した。ほかのレンズへ不用意な傷を付けたくないし、金属だとアタッチメント破損率も高くなるだろう。
 追記:レンズ枠の影響でケラれやすいのでフードは外した。あってもなくても逆光には弱いので、手でハレ切りする。

 後玉のおおきさで、F1.2がいかに大きな口径であるかが分かる。右はF2.8レンズのものだ。この後玉サイズを維持するには、AFレンズでは難しいらしい。いちおう開発というか、AF化された新しいF1.2レンズの特許は出ているが、技術的なブレイクスルーがないと難しい部分も多いようで、発売はまだまだ先だろう。ちなみにニコンFマウントの過去最大口径レンズは CRT Nikkor 58mm F1.0 (販売終了) だが、特殊な工業用のうえ受注生産。性能限界や経済性など様々な理由により、ニコン一眼の量産(一般用途)レンズはF1.2が最大口径となる。もし AF-S NIKKOR 50mm f/1.2G が登場するとすれば、その価格は……10万円は余裕で超えそうな予感がする。

 いきなりF1.2の世界だ。これほどの大口径、絞り開放を使わずして、なんの趣味のレンズ遊びか。野外メインの17-50mmF2.8より二段半も明るい。ファインダーの明るさはこれがD7000か? と疑ってしまうほど、うっとりするような見易さだ。

 派手にボケちゃって、ボケすぎて困るくらいだ。35mm判よりボケ量で不利なAPS-CのD7000でこれだから、本来のフルサイズ機に付ければ、いったいどれだけの凄いボケを披露してくれるのやら。

 ひよこだ。ああ、癖玉っぽいぐるぐるボケが見えるね。ボケが円周に見えてしまう現象で、最近のレンズではほぼ全滅してるけど、こいつの基本光学系はSなしの出た1978年から変化してないので、しっかり残っている。こういう収差を抑制したっぽいノクトニッコールってF1.2レンズが出てた(生産終了)けど、中古相場は30万円もする。ニコン標準単で最高ランクに近いプレミアAi Noct Nikkor 58mm F1.2S だ。当然そういうのを買う気なんて毛頭ない。

 それにしても、本当にすごいボケ量だな。幻想的だ。このレンズの絞り開放付近はシャッタースピードが普通に1/2000〜1/8000秒くらいになりブレが起きにくく、そのブレにくさを利用した写し方がある。連射しながら少しずつピントリングを回すか、前後に移動してみるって方法だ。3〜6枚も写すと、狙ったところにピントがうまく収まったやつが1枚は残っている。フルマニュアルレンズでほとんど電池を消耗しないので、その特性を利用して数で稼ぐようになった。

 直線的なものを写して、このレンズの絞り開放は癖玉だと確認した。ここまで派手な二線ボケも珍しいだろう。17-50mmF2.8のほうが上だな。

 二線ボケ傾向は下の写真のように、F2に絞っても起こる。F2.8からF4まで絞ればほとんど解消されて一転、素直で優秀な描写に転じるが、その絞りならもうズームレンズ使うほうが便利だぜ。

 フィギュアをF1.2で。いろいろと幻想的に写ってる。

 1.5段、F2まで絞るとボケ質はかなり改善する。F2.8くらいから優秀なボケに転じる。

 F5.6くらいなら四隅までくっきり解像の、優秀なレンズとなる。もっとも絞って使うのはもったいないかな。

 てなわけで、適度に絞って優秀なボケ質を堪能だ。

 あちこちの情報を総合すれば、50mmのF1.4クラスよりも半段明るいぶん、絞った際の描写はF1.2のこいつが少々有利なようだ。F2.8での描写も17-50mmF2.8より上なので、棲み分けが可能だ。また古いレンズであるだけに逆光がめっちゃ苦手で、すぐにゴーストやフレアを引き起こすが、それを利用した演出的な撮影が楽に行えることも意味している。

 ただ、ピント合わせがやりづらいな。F1.2〜F1.4間は、どうしても連射しつつすこしずつズラす方法を多用しがちだぜ。すでにコシナのフォクトレンダー58mmF1.4を後継として様子見しているが、F1.4ならAFレンズを買ったほうがましだろうし、とりあえずこのレンズに関しては、出動の機会はあまりないだろうが、せっかくのF1.2だし、適当に記念所持だ。

※追記
 フルサイズ機Dfを買ったが相変わらずこのレンズの出番は少ないね。下はF8。こういう絵ならズームレンズでも得られる。四隅の弱いズームでも絞れば解像度と画質は確保できる。

 F5.6で。煩くなる背景への耐性が低いのがこのレンズの特徴。絞っても改善は一定で止まってしまうため、背景を整理しないと下のようにズームレンズみたいなボケとなる。ただし特殊硝材を使ってないぶん局所的なボケの質そのものはわりと良好。うるさめの背景には28mmF1.8Gがやや強い。最近リニュアールされたF1.8シリーズ(28mm・35mm・50mm・85mm)はいずれもボケが優秀なようだ。マクロレンズ2本はこの50mmF1.2と同様エッジの立つボケ傾向を持つが、中距離から遠景に限られる。本領とする近接撮影ではマイクロニッコールの美しいボケを得られるので評判が良い。

 F1.2で。背景を整理すればボケの悪い絞り開放でもなんとかなる。考えながら写すレンズだ。
 遠近自在で美しくきれいなボケを持つレンズはほとんどが10万円以上のオーダーなので、金さえあればフィギュアを買いまくってる私にはいまのところ縁がない。もし背伸びして買ったとしても重くて持ち出すか疑問が残る。たとえばマクロレンズは60mmのほうが出動機会が多く、105mmは家でお留守番になりがちだ。28mm以外のF1.8Gシリーズはすでに所有しているレンズと画角が近いため個人的に用はない。

 絞り開放にてあえて最大限に煩くしてみた。ざわついたボケをあえて「悪例」として載せている。こういった開放付近においけるボケ質もあり、50mmF1.2Sの実働率は低い。それでも「現行F1.2」の名は魅力的なので、売らず手元に残している。ニコンDfにも合うし。