市川ソフトラボラトリー SILKYPIX Developer Studio Pro6 機材 ホビーレビュー

機材
購入:2015/05 分類:画像処理ソフト

デジタルカメラのRAW(ありのまま)データを加工し、写真へと現像するソフトウェアだ。シルキーピックスのフラグシップ、Proシリーズの6。ニコン純正キャプチャーNX-Dが不安定すぎて作業にならないので、本格的にメインの現像ソフトとすることにした。なにより発色の定量化にようやく(仮)成功した。「色」への意識を高く持つようになって数ヶ月、ようやくひとつの成果がでた。 ノーマルな蛍光灯ないし蛍光ランプは、下の写真のように普通に写すと緑に被る。これを嫌って赤成分の強い高演色ランプなどを使っていたが、今度は色のブレ方が大きくていつも難儀していた。このサイトのレビューを年度別に見ればわかるが、2013年くらいまでホワイトバランスがかなりいい加減だ。黄色傾向が強い時期があったり、赤っぽいのが多い時期があったり。初期のレビューはみんな緑だぜ。2014年以降もまだまだ安定していない。それだけ「色作り」を大の苦手としてきたぜ。10年選手としては調色がめっちゃ下手くその部類に入る。 ともかくも、まずはパラメータの読み込みだ。このレポート時点で野外撮影用の「ネイチャー」、フィギュアレビュー用の「フィギュア」、燃え玩具や撮影機材用のツール、暗い照明撮影用の「フィギュア(濃)」の3種類しか用意してない。しばらくすればこれに「イベント」が加わるだろう。ワンフェスなどのレポ用だ。以前のシルキーピックス4ではISO感度区分ごとに細かく10種類以上を用意してたけど、いまは一括りにしている。なにしろPro6には全自動機能があるし。なお野外撮影用の濃い調整は黒レベルや自動レベル補正で手作業により行う。 読み込んだぜ。くすんだ緑がごっそり取れる。いい感じだ。 今回の現像設定はこれまでと違い、ピクチャーコントロールやモードを元にしていない。カラー系統の基本パラメーターをリニアー(忠実)にしている。ソフト開発者の色に関する考えやこだわりの影響をすこしでも弱めるためだ。 はじめてトーンカーブをまじめに設定した。きれいなS字カーブになっている。この「基本」設定値を追い込むだけで20時間以上かかっている。この数字はあくまでも私の好みでしかないわけで、しかもほかの細かい設定でいくらでも印象は変化する。被写体に応じて実際に採用される数値は変動する。繰り返すがいつもこの数字を使うわけではない。もっとも私の好みに合っている、汎用性の高い「スタート地点」というだけだ。 最近の現像で顕著なのがシャープ処理の放棄。現像時はわざと眠い絵のまま、加工途中の素材として出力する。このシャープ掛けなしにより、NX-DではISO感度50からISO感度51200までひとつのノイズ消し用の数字で済んでいた。シャープはそれだけでノイズを増やす。シルキーPro6にはISO感度により自動でノイズ消しを強く効かせてくれるオートモードがあり、野外撮影用の調整で採用した。こちらのほうが低感度のディテールが保たれるぶん便利だぜ、 シルキーピックスの「シルキー」なゆえんは自動的なダイナミックレンジの拡張だが、これを切っている。NX-Dが吐き出す絵を見てるうちに、グラデーションの濃淡をより強調したほうが「はっ」とする絵で写る率が上昇するような気がする。すくなくともフィギュアレビューにおいては。ハイライトコントローラのほかの数値はわりと弄る。野外撮影の現像だとダイナミックレンジ拡張は使用率が高い。 さて今回は色作りで基本設定を用意してみた。NX-D使用ではホワイトバランス「蛍光灯4200K」というのがいい感じに使えたからだ。シルキーには「蛍光灯」しかないが、内容はNX-Dでいうところの「蛍光灯5000K」に該当する。NX-Dで隠されている色偏差の具体的な調整値が、シルキーだと明示してくれるのでその数字を仮設定したぜ。 判定は黒背景で行う。白~灰~黒のモノクロ背景は、光源や被写体以外からの色被りが発生しないので、チェック用にもってこいだ。
どうも赤いな。過剰補正になったようだ。NX-Dはシルキーピックス旧バージョンをベースにしたOEM製品なので、蛍光灯の補正値は同等だと思ってたのだが、あくまでも細部は自分で詰めなければいけないようだ。それに5000Kと4200Kでは微妙に数字も変わるだろう。 赤い背景だとさらに赤くなるぜ。このままでは補正値が大きくなりすぎて使えない。黒が黒に、白が白く見えるバランスから調整するから、短時間で済むようになるのだ。 そこでいつもの色作りを参考とする。まず X-Rite のカラーチャートから。こいつはプロ用のため、背景由来の色被りは解消できるが、かわりに光源の被りを半分ほど残してしまう。 よつばの胸。こちらはやや青い? かな。緑成分を退治してくれるので時間がないとき重宝していた。むろん正確な色ではない。あくまでも擬似的に蛍光灯からの色被りを拭ってくれる。 この2つとさらにホワイトバランス蛍光灯の調整値、さらにプロが写したニコンDfの発色をいろいろ見比べて―― この数字に行き着いた。あくまでも私の撮影環境(シェアトップメーカーの84Ra・5000K蛍光ランプ+面光源ライトで統一)で有効な数字であり、これを真似したからといって使えるわけではない。あくまでもアプローチ方法として紹介しているだけだぜ。 背景紙からの色被りが発生しない黒背景で。そのまま使えたので、色作りを行わずいきなり現像した。 これも読み込んだだけ。背景からの色被りを残してるが、照明が暗かったので被り具合は少ない。ほとんどそのままで使える。なにより背景の被りをすこし残留させてるほうが印象的に見える――かも。 こちらも色作りなしの読み込んだだけ。レンズと被写体の距離がほぼ最短だったので、背景からの影響が少ない。そのまま使用できる。 でも通常の距離では通用しないな。下の写真は読み込んだそのままだ。袖の部分は本当は白なのだが、背景の赤成分を受けている。 そこで活躍するのがホワイトバランス微調整だ。こんな感じで円形になっており、空間として感覚的に調節可能。これがNX-Dだったら「バー」しかないから面倒だった。時間節約に活躍。 背景からの色被りを退治して終了。いい色になったぜ。このように基本設定を用意しておくと、時間がないときはカラーチャートによるホワイトバランス取得すら不要になる。なお私が調整完了の参考にしてるのは第一に顔面の色だ。そのほかに髪なども入れていればいいだろう。ただし人間の目は偏向に慣れてしまう。あとで見て「ずれてる!」となるわけだぜ。そこに絶対値による基本調整を用意する意味が出てくる。 あとは微調整した情報を一斉にほかの写真データへも反映させる。なんにせよ時間が足りなさそうなときでも即興で使える近似値的な基準補正値を準備しておくのは、未来への投資としてかなり有益だろう。私はフィギュアレビューの10年選手だが発色がまともに近くなってきたのはようやくこの半年ほどだ。それまでは勘に頼りすぎ、しかもモニターが安価なうえ調整が必要というあたりまえのことすら気付いてなかったから、散々な色になっていた。スマホを手に入れてようやく自分の「色」が異常だと気付いたほどだぜ。 ここより細かいものを。まず「絵」の部分だ。ノーマルだとコントラストが足りない。 レベル補正~~。詳しくは検索して調べてみて。 くっきりしたぜ。ただしトーンカーブをいじった状態からだと過剰補正になる傾向があり、コンデジっぽくなる。 単写からのHDR。NX-Dよりもずっと幅広い。非現実的な写真が得られるぜ。 こんな感じ。わざと崩して加工臭。レビューに1枚から数枚ていどなら混ぜてもあまり「?」感はないだろう。みんなこうだとレビューとしてはヤバいだろうけど。 デジタルシフトや回転。NX-Dのこの機能は使えなさすぎて論外。シルキーは賢い子だ。ほかに局所的な明度の変更を行う「覆い焼き」機能などが多彩だが、私はあまり使わない。 レンズ補正とか。これだけはNX-Dのフルオート機能(ニコン純正レンズ限定)に分がある。もっとも私の撮影は9割以上が単焦点マクロ、すなわち収差の少ないレンズだから、あまり不便は感じない。補正が面倒ならNX-Dを使えば良い。 ファインカラーコントローラー。色区分ごとに操作していく機能で、ちょっとした加工ができる。 たとえばこれ。これだとあまり目立たない写真だが―― 背景の赤を際立たせ、ついでにマフラー部分のテカりを強調。引っ張られた肌色もオレンジ成分のカウンター補正で戻してある。こういう補正が一分と掛からず出来てしまう。便利だぜ。重宝しそう。 あとNX-Dになくてシルキーのプロ6にあるのが、スポット修正機能。ホコリとかを退治する。こいつは現像後にフォトショップ・エレメンツで修正するより精度が高い。ただし「点」や「面」しか選べず、「線」での補正は無理だ。 マスク掛けによるピンポイントのシャープ処理はフォトショップで行う。シルキーピックスではしきい値によるアンシャープマスクまでしか設定できないが、どうしてもボケが犠牲となる。シャープを切るのはノイズを減らすだけでなく、ボケを良くする効果もある。シャープ処理はボケのウルサイ部分、エッジの乗った箇所を強調してしまう。むろん高性能レンズではそのていどの違いなんか目立つ以前に判別もできない。安価レンズのボケをせいぜい中級レンズのそれへ変えるていどだ。劇的な効果があるとすれば、jpg出力の際にデータの大きさがけっこう違ってくるところだろう。シャープを切ってると小さくなる。 野外撮影に関する紹介がないが、いまのところシルキーピックスの細かい設定はことごとくフィギュアレビュー用に特化している。歪みの大きいVR24-85mmはNX-Dでないと現像しづらい。フジフイルムX100Tがあるのでやはり野外撮影の現像もシルキーで行うことになるな。X100Tを持ち出すときDf側も単焦点レンズになることが多いから、シルキーの現像でそれほど時間がかかるわけでもない。
NX-DとシルキーPro6はユーザーインターフェイスが近いので、使い分けが楽に行える。フォトショップ・ライトルームという手もあったが、いまはこの環境で良い。なによりライトルームの色とシルキーの色は違っており、フィギュアレビュー界隈でライトルームが主流となってる以上、個性的なカラーを出せると見込まれる。狂ってる方向じゃなくて、魅せる方向で。そういうレビューを安定して提供できるようになりたい。それも短時間で。


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