田舎の濃厚おたくスポット 海洋堂ホビー館四万十オープン 造形 おでかけフォト よつばとフィギュア

撮影:2011/07/09

地元高知にへんぴなミュージアムが誕生するので、開館日に行ってきた。
(タイトル写真:高知痛車連合・ローゼン氏のミラ「こみっくパーティー」仕様) だがその場所が、こんな橋があるほど辺鄙な地だ。 道幅の狭い、簡素な橋だ。 歩道・車道の区分はおろか欄干・手摺りすらない。しかし総コンクリート造りと頑丈で、車が日常的に走っている跡もくっきり。 沈下橋費用対効果から利用者の少ない地域に普通の橋をつくるお金がないので、増水時に沈んでしまう橋を架けている。四万十川の風物詩だ。そんな沈下橋(県によって呼び方は様々)が同水系に47カ所も点在するほど田舎。 四万十川の支流のひとつ、打井川(うついがわ)。 その川のたもとにあるJR打井川駅に、一両のみのいかにもなローカル列車がやって来た。 海洋堂ホビートレイン側面には海洋堂躍進のきっかけとなったチョコエッグをはじめ、動物フィギュアがずらり。 土佐犬・坂本龍馬・クジラ・四国霊場巡礼など、高知や四国にちなんだものも多い。 あとは恐竜など。海洋堂は古代生物や怪獣の模型を以前から多く造っており、本社ビルを巨大な恐竜モニュメントで飾っているほどだ。 車両内には棚が設けられ、模型が並ぶ。いずれも海洋堂製だ。 ここまで徹底してるとたんなる広告車を超えて、痛列車と呼んで良いかな。 警笛として恐竜の雄叫び(!)をあげ、ホビートレインが去ってゆく。煙が出ているように、ディーゼル車だ。車種はキハ32。この姿で2012年7月ごろまでJR予土線を走る予定だ。人気が出れば延びるかも? いよいよホビー館へ行く。国道から先はあまりにも道が狭いため、行楽シーズンや土日はシャトルバスのみ進入可となるようだ。 四万十川(打井川)を渡り、いざ海洋堂ホビー館四万十へ。 日本の僻地・四国。その中でもっとも人の来ない高知県、そのさらに山奥にホビー館はある。廃校となった小学校を再利用している。テントや旗指がたくさん。写真の右奥には報道関係のプレス車が並んでいた。 ついたぜ。時刻は12:30くらい。 海洋堂施設の実現は創業者がこの辺出身であることに由来する。西日本のアニメコミックオタク的スポットにはいわゆる物語の舞台となった「聖地・モデル」よりも、関わった人や物の「出身地・実物」という条件のほうが、長く続いて成功しやすいというビジネスモデルが確立しており、今回も前例に倣った形だ。 ホビー館はすでに10:00に開いているが、記念式典が13:00からある。仕事で遅れたので10:00のテープカットは見逃したけど、セレモニーは撮りたい。 だからホビー館に入るのは後にして、13:00まで時間潰し。隣接する食堂で食事だ。 肉がないヘルシーなカレーだった。地場産の幸をふんだんに使ってるみたい。 13:00近く、招待客が集まってきた。 景気付けに地元の太鼓。 四万十町長がトップを切る。以後顔を知られている人はモザイクなし。 青丸で囲っているのは海洋堂創業者・宮脇修氏だ。文字通り、故郷に錦を飾った晴れの舞台だね。左のモザイクなしは高知県知事。なお内容が普通すぎたので、これ以後セレモニーの写真は掲載してない。 海洋堂二代目の宮脇修一氏が、ホビー館一般スタッフとおなじ恰好で歩いていた(青丸)。 セレモニーがはじまると周辺の人間が減り、見えなかったものが視界に飛び込んできた。祝いの花輪群だ。 その中に、見慣れたものが。まずはグッドスマイルカンパニー。いまや海洋堂に代わってフィギュア業界の萌えジャンルを牽引する筆頭メーカーだ。 なぜかAKB48、雑誌付録などで付き合いのある講談社、おなじくアスキー・メディアワークス。 ガレージキット時代から付き合いのあるコトブキヤ、リボルテック特集などを組むフィギュア王、いわずもがなホビーストック、ワンフェスで付き合いの長いレジーニャ!のコスパ。 テントが並ぶ広場を、円柱に乗ったオブジェが囲んでいる。 その造型内容は「カッパ」というテーマで括られている。ホビー館の立地一帯にはシバテン(高知のカッパ)伝説がある。左からやなせたかし氏・知らん・ちばてつや氏・くさか里樹氏。 竹宮惠子氏・村岡マサヒロ氏・牧野圭一氏・田中誠一氏。他にもあったかも知れないけどテントが邪魔で確認不足だぜ。 売店。こちらの面ではホビー館オリジナルグッズを扱っていた。 反対側には海洋堂の最近の商品がずらりと。主力商品のリボルテック中心だった。 この扇子はいいね。買い物披露はレポの最後で。 いよいよ入館。 高知県四万十町打井川 海洋堂ホビー館四万十奇想天外な門構えだ。海洋堂はこのホビー館を運営するため、四万十町に会社を作っている。その名もずばり「奇想天外」。このモニュメントといい、町興しにありがちな気負いも、お金を落とす観光客への媚びも感じられない。在地趣味人たちのほとばしる魂と感性が伝わってくる。ただ好きなようにありのままを表現する。模型造型の、まずは基本だろう。商業造型はさらにその先の話となってくる。 看板はプラモデルのキットとランナーを模している。 入館記念品を配っていた。10:00のオープン直後は上の写真のロゴバッヂだったが、13:00すぎだと品切れだったようで、カッパのミニフィギュアに変わっていた。 おお恐い恐い。原型はチョコエッグ主力原型師のひとりでもあった松村しのぶ氏。かわいいデフォルメにすればもっと受けるだろうに、一般向けを廃し、どこまでも造形美に徹する海洋堂の構えを象徴している。 入館直後の風景をパノラマで。ほぼ180度。 ホビー館の中心に座する船を前側より、おなじくパノラマ。写真中央下にパンダ被った人が写っているが、高知県ローカルで有名なパンダ忍者。それとも忍者パンダかな? 普段は小学校の交通安全運動を行っていて、祝祭日になると県内の観光地によく出没するらしい。 後ろ側よりパノラマ3連。廃校となった小学校の体育館を改装しているだけに、中はそれほど広くない。しかしあらゆるところにフィギュアが置かれている。その数、公称でなんと1万点だ。みんな海洋堂製品だ。 テレビ各社が取材していた。ブログやサイトの管理人とおぼしき、ごついカメラやメモを手にした個人も何人かいた。私もカメラ2台だったので比較的目に付いてしまったかも。 こちらはカッパ像のひとつをデザインした、元新聞漫画家で芸大教授の牧野圭一氏だ。雑誌の取材を受けてるみたいだった。雑誌といえばオンラインマガジンGIGAZINEが午前中に取材していたみたいで、前中後3編に渡る本格記事をアップしている。 ここからは展示の紹介だぜ。 入ってすぐ左に、ガレージキット体験コーナーがある。開館日は入場記念品を作っていた。品切れでもらい損ねたホビー館のロゴマークが、ガラス張りの下に立てかけられているね。 体験コーナーの屋根には、恐竜やドラゴンが。その中に金色の社長像が混じってる。 どでけえティラノサウルス。海洋堂の恐竜模型は昔から世界的に評判で、ハリウッド映画ではじめて大規模に恐竜CG動画を導入したジュラシックパークでは、筋肉の再現に海洋堂の模型を参考にしたといわれる。 エントランス近くのリボルテックコーナー。よつばも混じっている。 最新作品ギャラリー まずはホビー館の象徴ともいえる巨大カタロニア船に入ろうか。モチーフに船を選んだのは「海洋」堂という社名テーマそのものらしい。入り口近くで見る者を威嚇する、1m近くはあるゴジラ。 船内にはチョコエッグやミニフィギュアが所狭しと大量に飾られている。 とりあえず当サイトと関連の強い、いわば業の深い変態紳士用フィギュア群をぱちりと。 この時期の海洋堂は萌えに熱心で Asahiwa.jp 的にはじつに良かった。ちなみに今回の撮影は一般の非オタクなお客さんがたくさんいるので、フラッシュは使っていない。ほとんどがF2.8~F4の絞り開放近くで写している。 船のデッキも展示傾向はおなじだ。 何十万円もするああっ女神さま三姉妹。 仏像美術など特別展の公式フィギュアたち。 雑誌付録。月刊アフタヌーンだな。 こちらは角川書店系だ。 船を下りると、ステージ跡を利用したひときわ濃いめの展示スペースが。 ザ・フライの撮影で使われた人形のレプリカモデル。 こちらはグレムリン。リアルすぎる。クリーチャー系は昔から得意だったんだね。だからこそチョコエッグの成功があった。 宮崎アニメのガレージキット。歴史あるだけに、海洋堂の萌えはガレキではじまった。前世紀末、模型店で美少女物を探してもプラモすらなく、ガレージキットを買って自分で塗って組み立てるしかなかった。しかも造型レベルはいまと比べものにならない。 こちらは塗装済み完成品初期の海洋堂製品だ。懐かしいね、ラブひな。 リボルテックたち。フィギュアレビューサイトなので気付けばメカ系をほとんどスルーしてしまっていた。思えばニーズ的にはそちらのほうが多いと思うのだが。 プラモデル黄金時代と名付けられた回廊。コンセプトに沿って照明はノスタルジックな橙色だ。 普段メカ系にはさして興味ないが、さすがにこれだけ精緻だと思わずシャッターを切る。 この帆船もオーラを放っていた。 いったい何百時間かかってるのやら。撮らずにはいられないレベルだ。 海洋堂の原型師でもっとも有名なのがボーメ氏。壁に飾られているのはBOMEコレクションだ。おっぱい娘率が極端に高いので、ロリっとレビューサイトの Asahiwa.jp ではキディ・グレイドの女の子はエレガントにしかレビューしたことがない。 アーティスト村上隆デザインの立体化を担当したことで、ボーメ氏は名を上げた。巨大なフィギュアが現代アートのよく分からん価値観により、とんでもない値段で落札されたんだよね。 ボーメ氏の魅力をとくとくと語っている。造型的には作家性が強くなりすぎてるので、似てることが重視されがちな近年の売れ線とは、商業原型として合いにくい。 それでも個人名を関したBOMEコレクションに代表される、根強く買い支えてくれるファンの存在がある。 サイズは1/4から1/6と、大きめのものが多い。PVC商品は1/8が主流となり、1/10も増えてきている。これらのガレージキットがPVC完成品として日の目を見る確率はかなり低いだろう。 2階の造型作家ギャラリー。 ギャラリーの左半分には、海洋堂お抱え造型作家群の萌えフィギュアが飾ってあった。寺岡氏。 ロリが多いのでうちでのレビュー率が高めの大嶋優木氏。 かなり古い作品ばかりだね。海洋堂の萌えが元気だった名残だ。 香川雅彦氏。CCさくらは10年前とは思えない別格の仕上がりだ。 ワンフェス関連いろいろ。造形作家の発掘活動を担う、ワンダーショーケース。 珍しくガレージキットの塗られてないレジンが飾ってあった。この中で東方プロジェクト関係が、海洋堂ではなくコトブキヤより発売されている。ホビー館の写真はこれが最後だ。燃え系をかなりないがしろにしていたことに帰りのバスで気付いた。それはこれから補完する。 駐車場に降りて、いきなり痛車が目に入った。下のジオン車は岡山から遠征している。 これは今日の一等賞だ。 「海洋堂ホビー館本日オープン」こみっくパーティーとは渋いチョイスを。猪名川 由宇の掲げるスケブはどんなイベントにも使えるね。 調べたところ、高知痛車連合のローゼン氏という人の痛車らしい。 開幕期間中はホビー館の近くで、ほかの展示も行われる。ホビー館で写し損ねた燃え成分は、こちらで思いっきり充足できるだろう。コンベンションホールきらら大正。 企画展 宮脇修一 プラモコレクションでギネスに挑戦!!こちらにはホビージャパンとポケモンプロデューサーが、花飾りを出していた。 でかいシルエットだぜ。 会場一周パノラマ。プラモデル3万点。 とにかく目立つのが中央のプラモ山盛りだ。ホビー館とコンセプトが異なるので、海洋堂製品以外がほとんどだ。 すべての所有者、海洋堂社長・宮脇修一氏がにんまりと黄金に輝く。ジャンルこそ違えど、私のコレクションなど点数で彼の3~4%にすぎない。 ……当人がいた。てくてく歩いてる。生社長! その父、先代で創業者も、来客のカメラ撮りを快く引き受けたり……老紳士の正体に気付いてないだろうな、おばさんたち。 山積みの囲いには模造紙が全面張りされており、自由にいろいろ書ける。招待されたいろんな有名人が書いていた。ちなみに下の写真に写っている黒服のおっさんはクラッシャージョーの関係者らしい。 わかる範囲でもっともメジャーなのはゲームセンターあらしのすがやみつる氏かな。社長の年齢が年齢だけに、基本的に若い者置いてけぼりで、30歳以上じゃないと分かりづらいラインアップだった。いや、私にも8割は誰が誰だかさっぱりわからん。40歳以上だな。 高知大学の学生が手伝ったらしいね。 残骸コレクション 壮観だ。容量は6トントラック6台ぶんらしい。 じつに壮観だ。 プラモ属性はさほどないが、模型好きとしてこういう場を訪れられた満腹感はたっぷりとある。 ガレージキット中心の一角があった。 ホビー館で写し損ねた燃え分を、ここで補給しておくか。 ロボットアニメ物がなくてすまん。社長の「完成させる」趣味がミリタリー中心だったんで。ロボット方面は「集める」だけのようだ。 珍しい金型設計図。 帆船だ。組み上げられてすでにかなりの年月が経っている。古びても見応えあるね。 ホビー館のカタロニア船もあった。 宇宙戦艦ヤマト 宇宙開発 1mくらいあるスターウォーズのミレニアム・ファルコン。作りかけかな? 高そう。撮影はひとまずこれで終わった。四万十町と奇想天外は、一帯を四万十ホビーパークと化する計画を立てている。カッパ伝説ゆかりの馬之助神社までの道中にカッパ像を300体設置する公園事業をはじめ、近隣の道の駅3カ所に常設サテライトブースを置き、かっぱ模型専用のかっぱ館を2011年中にオープンし、ホビー館そのものも第2施設の企画がすでに進行中だ。 今回の戦利品だ。まず入館記念品。 オリジナル商品 ただし中身は既製品――露骨に余り物であまりオススメできない。ちゃんとした限定フィギュアの登場を望む。 カッパだって。 海洋堂初代の絵本と、フィギュア。 クロシオ先生の海。クオリティはプライズレベル。 お気に入りはこれだね。 これから夏本番、木製の扇子で、夏を乗り切ろうか。図柄は動物大行進で暑苦しいけど。
結論として、海洋堂ホビー館四万十はオタクが一度は訪れるになかなか心地よく興味深い場所だ。四国遠征の機会があれば、コースにホビー館四万十を入れておくのも乙だろう。ただし僻地にある関係で移動に時間を取られるぶん、自然景観の満喫といったものも目的に加えておくと、移動時間を浪費と思わなくて済むだろう。なによりホビー館が立地しているのは、日本最後の清流と呼ばれる、四万十川水系のただ中なのだ。海洋堂はほかの模型メーカーと比べ、動物フィギュアの発売実績が圧倒的に豊富だ。商業的に有利な街中でなく、あえて不便な山中に作ってしまうのも、なんとなく頷ける。


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