COSINA Voigtländer ULTRON 40mm F2 SL IIS Aspherical 機材 ホビーレビュー

機材
購入:2018/10 分類:単焦点レンズ

近接撮影能力を高めた元パンケーキレンズだぜ。ウルトロンという。 現実の運用と所有感や物欲さらに気楽さなどのバランスを取って選んだ準広角レンズは、コシナのフォクトレンダー・ブランド。マニュアル専用で絞りリングつき。 外見こそクラシカルだが、2017年に出たモデルだ。ニコンDfにとても合う。レンズ上部に付いてるカニ爪は古いフィルムカメラの露出制御用。 いきなりだがカニ爪は取っ払う。理由は交換レンズ運用で他レンズを傷つけるおそれがあるため。このレンズはチップ内蔵でレンズ情報をニコンカメラへ伝えてくれるので、1980年代以降のカメラなら爪がなくても完動する。カニ爪を固定してたネジは元に戻したぜ。穴があるとそこから雨などが浸水したらヤバい。ただしきっちりは締めてない。締めすぎると絞りが動かなくなる。 ウルトロン40mmの前に試した AI Nikkor 45mm F2.8P と並べて。外観が似てるのはわざとニコンの古いレンズを模しているからだぜ。コシナによれば昭和40年代だそうだ。 横。フルサイズ用レンズとしてはけっこうコンパクトにまとまっており、3.75cm。ニコン純正の35~50mm帯現行は5~7cmくらいある。 ところでこのレンズには前身モデルがあり、パンケーキ型だった。厚さも2.45cmと、1cmほど短かった。専用のクローズアップレンズを付けて25cmまで寄れる設計だったぜ。 新型はレンズエレメントの再設計・再配置により、パンケーキ型をやめる代わりにクローズアップレンズなしで25cmまで近寄れる仕様となったぜ。 AI Nikkor 45mm F2.8P の試用で近接撮影能力がやはり必要だと判明したので、フレキシブルに寄れる現代レンズは頼もしい。昔のレンズはマクロを除きおしなべて寄れなかった。汎用レンズが寄れるようになったのはつい最近だ。安めのレンズ・便利ズームほど寄れる傾向にあり、表現力に特化する高級モデルは相変わらず寄れないものが多い。素直にマクロを使えということだろう。 レンズ前キャップと底蓋、双方ともいつものようにニコン純正へ置き換える。コシナ純正は箱へお戻りだ。 外装は総金属、ひんやりだ。Dfとの親和性は高く所有感もよい。しかも2017年の光学設計だ。ピントを合わせるヘリコイドは大量のグリスでヌルヌル気持ちいいし、絞りリングまで金属だ。AFレンズでは体験できないぜ。マニュアルフォーカスを楽しむ上で必要なものが揃ってる。 ウルトロン40mmの最短撮影距離25cm(0.25倍)と、AI Nikkor 45mm F2.8P の同じく45cm(0.13倍)で撮り比べたもの。一目瞭然でまったく違う。こうみえて45mmのほうも登場した当時は右下の撮影距離ですらセールスポイントだったらしい。 撮影距離が短く取れるとはどういうことかというと、マクロレンズに近い運用が可能ということだぜ。下で分かるように、標準画角と中望遠では人が立って三脚を動かす範囲における俯角・仰角でずいぶん違いが生じる。寄れない45mmでは下の左側の写真は得られない。 ちなみに100mmで40mmとおなじポジション・距離を取ってもこうなる。三脚をかなり高く伸ばし、かつ撮影者も椅子の上に乗らないと全体は入らない。 40mmを効果的に使えば、メカなどの格好良さを引き立てられそうだ。下のように40mmで寄ったほうがバイクの前タイヤが100mmよりも大きく見えている。なおさらに広角で寄ると劇的な効果を得られるぜ。 つづけて絞り開放とちょっと絞ったときの比較。コントラストの濃淡にほとんど差がない。古いレンズは絞り開放だとコントラストが低下しやすいが、現代レンズ設計とコーティングの恩恵を受けてる ULTRON 40mm F2 SL IIS でそういう面倒な問題は生じない。すなわちフィギュアレビューで中望遠と混ぜて使用できる。真に寄りたいときは等倍マクロが別に控えている。 まずは一般的な風景から。10mくらいより遠くは無限遠にしてF8くらいにしておけばパンフォーカスとなり隅々まで解像する。 40mmという焦点距離は35mmに近く、FUJIFILM X100シリーズですっかり慣れた画角だ。広角でもなく標準でもない、中間の広さ。じつは準広角を使いこなせるようになれば、そのぶんレンズ交換を抑制できる。広角と標準の複数運用で広角を落とし破損喪失した苦い経験からだぜ。 APS-Cでいえば35mmは22~23mmくらい、40mmは24~27mmくらい。 標準より広角ぎみなので、遠くのものを近くへ引き寄せる性能はない。写せないものは諦める割り切りも必要か。 だがデジタルにも恩恵があって。 トリミングしてしまえば良し。撮影こそ40mmだが、下の切り取りはざっと200mm換算くらいかな。 つづけて背景のボケを見てみる。 F2は大口径ではないが、数メートルの大きさのものでも背景から十分に浮かび上がらせることが出来る。さすが2017年設計、ボケに「流れ」は見られない。古いレンズは絞り開放付近のボケ質が暴れやすい。 被写体がアレですまんが、だいたいこんな感じ。 等身大の背景ボケサンプルを龍馬像で。 準広角は記録撮影をこなせる広さだ。標準レンズだとすでに苦しい。 犬くんに寄ってこのボケ量。ボケ質もやはり良好だ。点描の輪郭は大人しく素直で煩くない。やや堅いが、煩くないだけでありがたい。ズームはとにかくすぐ二線ボケが生じまくる。 最短撮影距離付近だとボケ部分の輪郭に球面収差が発生することがある(花の外側)。これは二線ボケではなく、X100シリーズなどでもおなじ現象が見られる。マクロレンズでは起こらない。普通の構造のレンズで絞り開放で被写体へめっちゃ接近すると発生しやすいぜ。 奇妙な立体感があるね。単焦点らしいボケ方だ。ズームだと20万円を超えるような高級モデルじゃないとこんな感じに写ってくれない。単焦点はお手軽だぜ。ULTRON 40mm F2 SL IIS の相場はレビュー時点で5~6万円だ。 いつもの外食風景。飯撮りで多用してるフジフイルムX100Tよりボケがキレイだぜ。当たり前か……X100シリーズの固定レンズは内容的に2万円相当と聞く。APS-C機に2万のレンズと、フルサイズ機に5万で勝負になるほうがおかしい。この5万がズームなら並ぶかもしれないが、あいにく単焦点だ。 価格帯と開発時期がおなじなら、単焦点が勝つ。この描写をズームで得るなら、おそらく20~30万するプロ用F2.8通しモデルが必要だ。そしてそのレンズの重さは1キログラムにも達する。 フィギュアの買いすぎで食生活が貧相なもので、カメラ・レンズもあまり高いものは買えないし、勝負レンズもメイン用途のマクロしか維持できない。だから数万円であっというまにズームのプロ御用達と並べる格安単焦点は妥協の救世主だ。 標準単焦点としてミルバス2/50Mやマイクロ60mmがあるのに近い画角の単焦点を導入したのは、「普通の単焦点」なら遠景の背景ボケがキレイになるからだ。マクロレンズは近接こそボケが美しいが、用途外となる遠景は設計上の反動からどうしても煩くなる。すなわち持ち出して遠近自在に写すには、寄れる非マクロの単焦点が有利だった。 デジタルを考慮して逆光にはかなり耐えるが、下のように角度によって不思議な虹色のフレアを生じる。これは昔ながらの球面レンズを多用するシンプルなレンズで起こりやすいという。なんにせよ派手なものではなく、確率も低い。 というわけでお気楽撮影はこのレンズで決まりっぽいぜ。フィギュアレビューでも登板させたのは、フルサイズ+標準マクロでマクロな倍率の距離まで近づくことが少なくともフィギュア撮影だとほとんどないからだ。すなわち標準マクロをお役目ゴメンで引退させる前振りというか、実際に次のカメラを買って試用してからだな。場合によってはマニュアルフォーカスレンズのほうが引退かもしれない。少なくともこのレンズはDfにこそ似合ってるが、ほかの機種ではどうだろうか。


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