Nikon NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S 機材 ホビーレビュー

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購入:2021/06 分類:マクロレンズ

ニコン純正として16年3ヶ月ぶりに新機種が出た、フルサイズ対応・等倍中望遠マイクロレンズだぜ。防振機能あり。 パッケージは横長だ。発売日に購入した久しぶりのレンズ。 Zになって自己主張を控えるようになったニッコールレンズ。シックで漆黒の佇まい。せいぜいが銀Sマーク。重量は120gも軽くなった。 寄って写すマクロレンズらしく、正面は文字が一切ないぜ。最近の本格マクロレンズで増えてる仕様だ。映り込みなどを防ぐ。フード内側もつや消し塗装処理で、内部反射を抑制。 Zレンズの30万円以上に達する高級ラインにはデジタル小型ディスプレイがあるが、実売10万ちょいの本レンズでもなぜか採用。レビュー時点でもっぱら距離表示にしてる。 前機種とおなじインナーフォーカス式を採用し、AF速度や気密性などの信頼性を重視した設計だ。すなわちプロによる使用を前提とする。画質面と重量面において、Zマウント規格から想定される最高性能と比較し、ちょっと不利かもしれないが、後述する裏技で解決してるようだ。 左サイドにボタン2つ、スイッチ2つ。複雑そうに見えるけど、手ブレ補正の切り替えスイッチなどがないぜ。カメラボディ側で設定する仕様。どのみち三脚使用(ブツ撮り)をユーザー設定してる人は、そこでボディ側の手ブレ補正を切ってる設定にしてるわけで、事実上、切り替え操作は瞬時だ。 ほぼ同時期にキヤノンもRFマウントで新100mmLマクロを発表したが、実際に購入したのはニコンになったぜ。理由は光学性能と重さとコスパ。光学性能はニコンのMC105mmが上、逆光性能も上。軽さでも有利。さらに実売価格まで安い。 キヤノン新100マクロは等倍以上に拡大でき、ボケ収差コントロール機能まで搭載しているが、過去にDCニッコールを所有した経験から、すぐ飽きてほとんど使わなくなる可能性の高い機能のために重量100gプラスを延々と背負い続けるのは、どうなんだろうと考えた。やはりボケ味制御の本命は収差コントロールでなくアポダイゼーション機能でしょって。 それにキヤノンはすでに驚異的な光学性能をもつTS-E90mmLマクロ持ってるしな。今回導入したニコン新マイクロでも、中央の解像度やボケ味はともかく、周辺画質となれば解像でも玉ボケでもTS-E90mmLマクロにまるで歯が立たない。TS-Eはマニュアルフォーカス専用となっており、そのぶんレンズエレメントを画質レベル最大まで引き出せる配置を採れた。ニコンZも究極の画質を目指した58mmF0.95ノクトはマニュアルレンズになっている。 メイン写真活動のフィギュアレビューでは絶好調の写りを叩き出すぜ。想定しうる最高画質ヒャッハー! テンションマックス。 とはいえ、最新の寄れる中望遠F4ズームと比較してみて、PCモニターやスマホだと見分けつかないのは、気のせいではない事実。前から書いてるけど、フィギュアをわざわざマクロレンズで写す意味は薄い。もはや大きく拡大しないと分からないていどの画質差に対するロマンだ。 マクロレンズはピント位置の変化による被写体の見かけ上のサイズが変わってしまうフォーカスブリージングが盛大で、構図調整に苦労する。ズームだととくにミラーレス用にはブリージングを抑えたモデルが多く、構図もサクサク決まるだけに、撮影の長時間化は写真用マクロの宿命といえる―― ――けれど、ズームはズームで選択肢が増えたぶん考えることも多くなり、割り切らないと集中を削がれるので、お互いに扱いが難しい。閑話休題。うちでは強い光で飽和させるライティング照明が多いが、このレンズは逆光に滅法強い。 斜めからの入射光と、直接の垂直入射光、双方に別々の特殊コーティングで対応できる。ひとつは名をナノクリスタルコート。もうひとつはアルネオコート。双方を実装だ。 キヤノンの新100Lマクロは、収差コントロール機能が原因か、対逆光の特殊コートを施されていない。これもニコンを選んだ理由だぜ。TS-E90mmLマクロはニコンのアルネオに相当するASCあり。 おかげさまで、撮影後の現像編集がいくぶんか楽になっている。ディテール面よりも露出の均質さがさらに確実性と信頼性を増している、気がする。 105mmだと写る範囲の狭さから物理的な撮影距離が伸び気味になるなど、大変なところもあるけど。あちらが楽になればこちらが不便になり、クオリティの追求は一長一短だぜ。 レビュー撮影以外にも普通に使える――手持ちによるメシ撮りは中望遠レンズでするものじゃないな。ズームレンズと見分けつかねぇ。 いくつかの理由からどうしてもISO感度が高くなってしまい、ノイズ消し処理によってボケ味も解像感も殺され、最新マクロの描写とは思えないトホホぶり。ここはキヤノンRF35mmマクロが有利だぜ。 マクロレンズといっても、遠近自在。風景撮影も可能。この辺は10年以上前からどのマクロでもおなじ。 ボケも非マクロ対象でもなかなか。 そうそう。マクロレンズといえばトリミング――切り取りの強さをアピールだぜ。下は2600mm相当というとんでもない大幅なトリミングを行っており、全体のわずか数%しか使ってないような状態。以前からFマウントの105mmで夕焼けの太陽を写し、トリミングして野外撮影記事に載せたりなど。 もっとも大胆なトリミングはズームレンズでも可能。光量条件さえ良ければ普通にできちゃうぜ。それがいまどきのフルサイズミラーレス。AF精度がレフ機時代とは比較にならないほどのガチピンで、ピントとブレ補正さえしっかり担保されていれば、解像は約束されている。 ただしズームレンズというかマクロでないレンズが苦手とするのが、近い被写体。下はほぼ同時期に購入した70-200mmの最短撮影距離での一枚だが、右下の領域がふわりとフレアや曇りがかったようにボケている。 近接専門家のマクロレンズでは、そういう解像の乱れは起こらない。ボケの輪郭まで解像感を保ったままだ。最短撮影距離は前機種より数センチ短縮され、それで倍率がおなじということは、撮影距離によって見かけの画角が変わってしまうフォーカスブリージング現象がちょっとだけ改善されたことを意味する。 一般的なレンズは解像やボケの得意なレンジが決まっていて、たいていは数メートルくらいが最高になるよう設計されているそうだ。マクロレンズは至近で、超望遠レンズは無限遠で最高画質になるという。 ただしZニッコールにはその常識を覆す秘密兵器があって、AF用のレンズエレメントを2つ用意し、2つのAFモーターで解像感をコントロールしていくマルチフォーカス式を一定以上の高級レンズに搭載している。NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S もその一本で、下のようにマクロでない領域での後ボケが普通に整っている。 また画質面で全群より不利なインナーフォーカスを採用しながら高画質を実現したのも、マルチフォーカス式がいい仕事をしてるからのようだ。Z70-200mmF2.8Sはインナー式だが、画質は全70-200mmクラス最高の評価を複数のテストで絶賛されている。それはさておき、このマクロレンズ、マクロ的な距離での解像感は最高で―― ボケも美しい。 玉ボケの輪郭はきれいに溶けていく。 それはまるで絵画のような。 ニコン自身もこのボケ描写を自画自賛していた。この辺りはTS-E90mmLマクロよりたぶん上。 風景レベルの撮影で、前ボケと後ボケを同時に見る。目立つようなざわつき感などは見られない。普通のマクロはこの撮影距離になると後ボケが硬質になっていき、作品撮りに向かなくなっていく。 まるで非マクロレンズのような、問題ない後ボケ描写。 またもや前後ボケを見る。整っておりざわつかず。マルチフォーカスの賜物か、これこそ真の遠近自在、いい写りじゃないか。RF85mmF2マクロは一瞬で引退売却が決定した。 というわけでキヤノンマクロ3本体制から、1本ニコンへ置き換わり、混在によるマクロ3本だぜ。それぞれ得手不得手があり、使い分けで様々な被写体やシチュエーションに対応可能。等倍マクロの復活により、撮影の幅を改めて確保したぜ。


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