COSINA Carl Zeiss Milvus 2/100M ZF.2 (Makro-Planar) 機材 ホビーレビュー

機材
購入:2016/06 分類:マクロレンズ

日本とドイツの技術力は世界一ィィィイイイ! ドイツが設計し、日本とドイツが共同開発し、日本で生産した新世代マクロプラナーだぜ。 数十万円するようなハイエンド単焦点の超光学性能がマクロレンズへ初めて降臨してきたので、思わず発売翌日に購入してしまった。つい数ヶ月前に旧型でいいやとかデザイン重視みたいに言ってたが、なにしろマクロはこのサイトで掲載している写真の9割以上を生み出す常用ジャンル。レンズテストで実際に数値化されたミルバス2/50Mのハイスコアデータを見せられると、飛びつくなら早いほうがいいと判断したぜ。下はデジカメinfoの記事。 でも実際に買ったのは100mm――中望遠だ。標準マクロなんぞ出番は中望遠の1~2割だぜ。だから当然のように8~9割の主力投手100mmだ。まだレンズテストが出てないのに、先んじた標準マクロがすごい結果を示したのを信じて18.5万円即決。DxOMarkは同一の基準で淡々とデータを蓄積するので、世界的にも信頼度が高い民間レンズデータベースのひとつだ。 ※2016年10月追記
ミルバス2/100Mのスコアが公開された。元から優等生だったのでスコアこそほとんど伸びてないが、解像力が天井へつくレベルに達してる。ピークでマイクロ105mmのざっと1.6倍もの分解能をもつことになる。収差歪曲減光をフォトショップで補正できる以上、レンズテストで注目すべき項目は事実上「解像」だけだろう。 素っ気ないがセンス良い外装だ。シンプルでオシャレな仕事するぜドイツ。ミルバスは鷹の一種を意味する。これまでレンズ構成で名前を決めてたが、対応マウントやコンセプト、グレードによる再編成が進んでいる。ミルバスは一眼レフ用のデジタル専用モデル。 内箱にはレンズ構成。「This is the moment we work for」はツァイス社の広告で登場するコピー。「これが我々の働く瞬間だ」な感じで、アポロ計画やノーベル賞や医学上の革命とか流して、つまりツァイスのレンズが写してきたぜって誇り。現在形だからいまも変わらないぞとのプライドが感じられる。 コシナツァイスといえば数十年前を思わせるクラシカルなレトロ外装を長く維持していたが、一気に現代レンズ化した。レンズ鏡筒とフードが曲面でゆるやかに同一化している。これはむろんツァイスの仕事だ。コシナ側はOEMだぜ。コシナ独自の意思で自由に開発できるブランドはフォクトレンダーのほうだ。 デザインこそ変わったが基本的な部分はすべて一緒だ。おかげで旧型から新型への移行はコシナユーザーなら誰でも楽にできるだろう。ほぼ総金属でずっしりくるぜ。暗がりで触るとヒンヤリ冷たいぞ。 レンズを最大に伸ばしたところ。光学系はまったく同じなので、動きも同等だ。重量は数十グラム重くなった。コシナレンズの保持力は極めてしっかりしていて、この状態で1日2日放置したところで1ミリも縮まらないだろう。どういうユニークな機構を採用してるのか、レンズ鏡筒を前後から挟んで多少力を加えたところで、伸ばしも縮めもできない。なのにフォーカスリングへ手を添えて回せば、わずかな力ですいっと動いてくれる。ゆえにフォーカス精度も信頼性も高い。ストロークはとても長く、ピントのピークが来る「瞬間」を裸眼視力0.05の私でも掴める。この性能をどう喩えようか――画素数で言おう。普通のレンズのマニュアルフォーカス戦闘力を1000万画素とすれば、コシナツァイスのMF戦闘力は5000万画素くらいあるんだぜ。 レンズフードを外したところ。個人的にはレンズ側が間抜けなイメージなので、付けっぱなしのほうが良さそうだ。レンズ保護フィルタは安心のフッ素コーティングEXUSだぜ。 レトロチックな見た目こそ失ったが、ニコンFマウント用は絞りリングなどが残ってるのでニコンDfと合わないわけじゃない。通常はサブコマンドダイヤルで絞りをコントロールするが、絞りリングそのものを使う撮影も可能。Dfレベルの機種でもさすがにメニュー深層にあるので、マイメニューに登録しすぐ呼び出せるようにしてある。絞りリングの表面加工はフォーカスリングと同等に進化し、クリック音を無音にするデクリック機構を新実装、動画を写しながらサイレントな操作ができると書いてあった。 ミルバスのマクロは正面から各種文字表示が消えた。照り返しやガラスからの反射などで、写真へ思わぬ影響がでるのを最小限にするためだともいう。画質の理想を徹底追求すれば、レンズ前玉は最終的に漆黒になるしかない。 そのかわり前玉周辺にあった表記はレンズ側面へ移動した。マクロプラナーとかZEISSロゴが眩しいぜ。レンズの正規表記からマクロプラナーこそ消えたが、新型ミルバスでもレンズにしっかり刻印されている。ほかのプラナーやディスタゴンでも同様なんだぜこの配慮。 さて、このレンズの実力を見ていこう。といっても一個人でちゃんとしたテスト環境を持ってるわけじゃないから、適当な量り方だ。 まず周辺減光。標準マクロが絞り開放で0.3EV改善されたというので、おなじ露出条件で比較してみた。ニコンのどのグレードから可能かしらないけど、Nikon Dfは露出ホールド(ロック)した状態でレンズを交換しても、露出設定が受け継がれるという特徴を持っている。スイッチオンのまま交換するだけなんだけどね――で、やはりミルバスのほうが減光は少ない。2回やって同じだったので確定だ。ミルバス2/100Mは確実に旧型より光学性能が向上している。 もっとも解像度の高まるF5.6~F11帯で、ピント範囲を広く確保できるF11端。新旧に加え、ニコン純正(いずれも撮影はフルサイズ機)とおまけでX100T(単焦点APS-C)にも参加してもらった。X100Tの露出はさすがに適当だが、ほかの3本はおなじ。写真の明るさから透過率は新型が旧型に優性で、これもミルバス2/50Mのテスト結果を裏付けている。ミルバス2/100Mの透過率はマイクロ105mmとほぼ同等の模様だ。これまでマクロプラナーはフィルム共用で調整されており、デジタル専門となったのは今回でようやく初。ナノクリスタルコーティングでずっと前からデジタル対応を済ましていたニコン純正にようやく実露出レベルで追い付いた。 さてこの4枚、肝心の解像力はどうやってデータ化すればいいのだろうか? やり方は簡単だったぜ。「等倍」で一定領域を切り取ればいいのだ。うまい具合にDfとX100Tはほぼ1600万画素で等しい。下がその結果。ちゃんと差が生じてくれた。データが大きいほど情報量を含んでいる。つまり解像していると判断できる。
正規のベンチマーク方法ではない。第1位は113.15KBのミルバス2/100M。堂々だぜ。最新設計の新型新品だし。トリミング領域わずか3.8%で選んだのは成績の落ちるレンズ端だ。それでもアイプリントの凹凸まで分かる。中央ならそれこそカミソリだろうね。さらにニコンDfは1600万画素&ローパス搭載だから一層だ。 第2位は旧型となったマクロプラナー2/100。109.85KB。差はわずかなので視覚的には分からないけどね。スコア的に本当に微少だな。マクロプラナー2/100は元から高いスコアを出すので、ミルバスでも進化具合は小さいだろう。 第3位はマイクロニッコール105mm。103.02KB。すでに10年前の設計だし、購入から何年も経ってて精度落ちてるだろう。それに複数のテストサイトでマクロプラナーに僅差で負けているから、この結果は順当だ。インナーフォーカス&手ぶれ補正&全天候対応が、どうしても全群式のコシナツァイスに届かない。利便と高画質の両立は難しい。マクロプラナーやミルバスは高画質と引き替えに不便だ。 第4位はX100T+純正テレコン。87.93KBはほかの3玉に水を空けられてるし、見た目にもあきらかに解像感が落ちてる。この結果はマクロレンズじゃないから仕方ないだろうぜ。マクロは近距離ほど最大解像度がアップするが、普通のレンズは撮影機会のもっとも多い数メートルで最高画質に達するよう設計されている。これでも通常のレビュー撮影では十分に通用する。X100Tの出番はもっぱら全身とか引きとか箱だし。 いちおう※マークで注意してたが、こんなのは客観的なベンチマークの手法じゃないぜ。部分だけ拡大したのは等倍比較のつもりで切り出すと、データ量にきれいな上下差が出てくれて、解像度の指標に使えると思ったからで、順序としては「ついで」だ。全体を縮小すると10%ていどの解像差など埋没し、データ量に違いが生じなくなる。元サイズが巨大なので1/2でもウェブ用には大きすぎるが、すでにその縮小率でマクロ3本の見分けはデータサイズ的には付かなくなった。1/3でX100Tも並ぶ。私がフィギュア撮影講座でレンズはなんでもいいと書いた根拠だ。Web用なのにわざわざ最上級マクロを買ってるのは、完全に見栄だな。たかがアマチュアの素人撮影だろうとも、機材だけはハイアマチュアないし準プロ級でありたい。すくなくとも教わる側から伝える側になりつつあるから。ハイアマを自称する意地だぜ。
とりあえずいい具合に高性能の検証ができたので、ちょっと外へ連れ出した。 水辺と蓮。 よくボケる。 解像度が高いほどボケ質は硬くなりがちだけど、ミルバス2/100Mのボケは立派なものだぜ。 ちょっと大きめ。 蓮はこの辺でいいかな。マクロレンズとして素晴らしいとしかいいようのない描写力だ。 撮影設定と現像設定を弄って、フィルムに似せてみた。フィルムシミュレーションを十八番とするフジフイルム機を使ってるので「それっぽい」調整も楽だ。 アーケード。これでも選んだつもりだけど、平凡か。無機物はツァイスよりシグマのほうが得意そう。 はい、逆光耐性まだ問題あった。下の写真、フレア来たぜ。光源を構図内に入れるのではなく、ぎりぎり斜めに――という角度で画面が白く濁り、コントラストが減少する。おそらくイメージセンサーからの反射を上手く抑制できず、鏡筒内で乱反射が起きる模様。マイクロニッコールは逆光の大半をねじ伏せてくるので、標準&中望遠のコンビは手放せない。ニコンのナノクリ・キヤノンのSWC・タムロンのeBANDは逆光耐性を大きく向上させる構造型特殊コーティングだけど、ツァイスにはまだ類似技術がない。とはいえ、これは日本のメーカーが凄すぎるだけだな。 落ち着いた木陰の描写は逆光耐性など関係ない。しっとり濡れるような描写はこってりツァイス。 天井の曼荼羅。 でかい招き猫。強い逆光の日差しでも手でハレ切りすればフレアは起きない。下のはそれ。昔のカメラマンは癖のように手をかざして太陽光を遮ってたそうだ。写真を撮るなら曇りが最適という伝統的な常識も、逆光に弱いレンズが普通だった時代の名残りなのかな。 盆栽くん 林の中にできた日差し。 とろけるようなボケが質的に見事。ズームレンズでは難しい描写だ。 高速シャッターでロウソク。 中望遠以上を買うと高頻度で写してる銅像。やはり余裕で銅像のみ浮き上がる。 店舗の飾り。 棚田の風景。山が白いのはフレア現象じゃなく、大陸からいつものように飛んでくる汚染空気。レンズの性能じゃこういうのはカバーできない。 よくある地域興しの田んぼアート。
適当なサンプルばかりで済まない。こいつが平常の野外撮影で使われることはないだろう。ほぼフィギュアレビュー専用だ。おなじ100mm級マクロなら万能型で安心確実なマイクロを持ち出す。 細かい改善点の紹介。フォーカスリングと絞り環の表面がゴムになったよ。凹凸ないからデザイン的に落ち着いてる。さらにマウントの底に防滴レンズのステータス、青いゴムが見えてる。あくまでも防滴考慮ってだけで防塵防滴じゃないけどね。 マクロプラナーの表記とともに、T*の赤い文字も健在だぜ。ミルバス2/100Mは光学系そのままでレンズ配置やコーティングの見直しにより、デジタルカメラへ最適化したという。細かい理屈は分からないが、おそらく最適化に加え最新技術も投入されているだろう。光学系というよりはレンズ構成が同一で、事実上の再設計と見たほうがいい。 メイドインジャパンが誇らしいね。ニコンDfがメイドインジャパンだから、写真の主活動となるフィギュアレビューでも純日本製のレンズが欲しかった。それがようやく実現したのが数ヶ月前のマクロプラナー。レンズテスト結果を受け思わず発作買いしたのが今回。 いくら画質が良いといってもマニュアルフォーカス専用だし、逆光耐性や防塵防滴性、最大撮影倍率さらに最小絞り値(ピント可能範囲)などでもニコン純正に劣る。総合性能でニコン純正が覆されることはないので、今後も両方を使い続けるだろう。ただマクロプラナー2/100はさすがに引退・売却だな。どうせミルバス2/100Mのほうしか使わなくなる。
※ミルバス2/100M&2/50Mのハンズオンレビュー動画で香港のフォトグラファーが思いきり水ぶっかけてたので、防滴性は思った以上に確保されてるようだ。ちょっとした小雨ていどなら使い続けても良さそうだぜ。


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