フィギュア撮影講座8 高演色&色見本

企画
執筆:2019/01/22

 高演色光源環境と色見本マクベス補正は、写真・映像の世界基準らしい。色再現に問題を抱えたカメラだろうとも、なんとかなる。あくまでプロの世界の話。ゆえに話半分で。 演色に難があろうとも、マクベスチャートとアドビ・フォトショップで強引に補正できてしまう。その効果は手動による単純な色調補正を越える。ゆっくり語っていく……もはやフィギュア撮影とか、関係ねえな。 これはニコンDfのスタンダード色だ。イメージセンサーは2012年開発で、画像エンジンはニコンデジタル第3世代。光源は工業規格的な「理想の太陽光」を97%の精度で再現する、超高演色LEDだ。ホワイトバランスを合わせているのに、なんか全体がうっすら黄色い感じがする。 ニコンZ6のおなじくスタンダード。イメージセンサーは2018年開発で、画像エンジンはニコン第6世代。色はやや濃いめで、色の偏った感じがまったくしない。 両者を並べてみる。明らかに違う。6年と3世代の進歩だ。 重ねて交互に表示させてみたもの。Z6は受光能力の高い裏照射型と呼ばれるセンサーで、色再現に優れると評価されている。ニコンのデジカメはかつてキヤノンなど他のメーカーと比べて写真が「黄色い」と評されており、Dfは現行機(2019年1月時点)として最後の「黄色い」ニコンだ。 超高演色な光源と最新のデジカメだけでいいような気もするが、あえて魔法の道具にご登場願おう。マクベスチャートだ。写真用としてもっとも使いやすい製品はXライト社のカラーチェッカー・パスポート。最低限の24色で理想の太陽光を再現だ。 色見本による補正はかつて見本色ごとに手動で調整していたが、2010年に登場したカラーチェッカー・パスポートは一発変換できる強みをもつ。フォトショップのプラグインでも可能。 作業時間は圧倒的に短い。しかも光源の条件さえ同じなら、データの使い回しができる。私はフィギュアレビューだと月1でしか更新しない。 ところで下の写真はフォトショップの用意した標準のカラープロファイルだ。うむむ? なんか上とほとんど同じじゃねーの? やっべー! なにこれ! ほとんどうり二つ。撮影講座8でいきなり演色と見本について記事にしたのは、これに気づいたから。どうも調べると、フォトショップの色再現が「すっげー」ことになったのは、2018年後半らしい。 ニコンDfの野外撮影に当てはめてみる。ニコン標準だけ微妙に色が違う。森林がどことなく黄緑だ。 フォトショップの標準カラーが、色見本補正なしに「ニコンの黄色」を駆逐するさまをご覧ください。カメラの設定した色を使ってる場合じゃねえぜ。 色見本補正との比較もついでに載せるよ。やはりマクベスによる補正とアドビカラーでも、Dfの黄色味は退治できる。 ニコンDfの黄色がどれくらいのレベルか、デジタル測定で定量化したのがこれ。ホワイトバランスをちゃんと取っても、残ってしまう黄色味だ。2014年以降に発売された機種はこの変な黄色から解放されている。なおこういった偏色は同時期のデジカメならメーカーを問わず、大なり小なり抱えていた。 さてアドビ・フォトショップのカラープロファイルが色再現において優秀なのは下でも一目瞭然だが、それも条件による。 日影だと、あれ? ちょっと差が…… 日向と日影の比較だ。これにより、色見本による色再現(補正)の傾向がわかる。日影であろうとも日向の色にしてしまう。それが演色再現の仕組みといえる。 新旧カメラと補正を並べたもの。光源が高演色なら、最新のカメラさえ使っていれば、ほかのツールに頼る割合は低くてもいい。古いカメラでもフォトショップ単体(ただし最新版に限る)でなんとかなる。 高演色LED照明での、色見本補正とフォトショップ標準プロファイル比較。カメラの新旧は関係なく、すなわち古いカメラを色彩的に蘇らせる。ただしRAWで記録し、現像する限りにおいてだが。 下は高演色ではない照明下で、色見本補正とフォトショップ標準を比べたもの。高演色下ではほぼ同一だったのに、演色性が「理想の太陽」から離れるほど見え方が違ってくる。
 フォトショップの色再現は、照明の変化による演色の低下を的確に捉えている。「写実性」という意味で、色見本を元に補正するほうが不自然に見えるかもしれない。とくに熱を通す調理のものは。ケースバイケースだな。 例外もあり、見かけの演色が高いほうが美味しく見える料理に「サラダ」がある。野菜類は太陽光で照らされた状態を多くの人が記憶しており、演色が下がると不自然に見えるだろう。 色見本に頼らなくともコントラスト強調やビビッドなプロファイルを使えばあるていど美味しそうに補正できるが、色飽和による色調の潰れが起こりやすくなる。潰さず彩度を高める容易な方法が、マクベスチャートだ。 フォトショップの色再現が進歩したので、ニコン純正の現像ソフト、NX-Dを最新のバージョンへアップデートしてみた。古いカメラでも最新のピクチャーコントロールを扱えるので、最新のスタンダートを当てはめてみた。 改善してるように見えるが、油断は禁物だな。 ニコンZ6のスタンダードに届いてない印象だ。少なくとも私のモニター環境だとフォトショップ優性は動かず、Dfにアドビ標準を当てるほうが黄色の退治効果は高いと判断した。なんにせよ新しいソフトが古いハードへ息吹を吹き込む傾向はほかメーカーの古いカメラでもおなじように起きているだろう。ただしあくまでもセンサーの色被りを打ち消すだけで、カメラが自動判別するホワイトバランスの傾向そのものは不変だ。さすがにそこをいじるにはカメラ本体のファームアップが必要になる。 以上をまとめたら、最新のカメラと最新のフォトショとマクベスチャートがあれば、いろんな光源パターンへ適応できちゃうってわけだな。ただし高演色の光源はフィギュア撮影ではやはり大事だぜ。理由はこれだ。演色の落ちる照明は、たいてい特定の色に偏っている。照明の強さが違えば、おなじ写真の範囲でも箇所によって色が変わってしまう。色被りの変化は背景紙やレフでも起きて補正の邪魔をしてくるが、演色に劣る光源の補正不足は、たいていフィギュアを不健康に見せる。 さらに光源の演色性が高いほど、下図のように色見本補正の精度も向上していく。ゆえに日本の映像業界では2010年代半ば、業務用照明の推奨演色基準を一挙にRa95(95%の再現)へ向上させた。写真業界はもうすこし緩いようだが、少なくともストロボを使う瞬間光の撮影では、Ra97〜99というハイレベルが普通になっている。 ワンフェスといった玩具イベント撮影でストロボが活躍するのは、明るいと同時に「超高演色」の光源だからだ。屋内照明の多くは経済性優先で演色性能を犠牲としている。その低演色を吹っ飛ばすのがエレクトロニックフラッシュの役割だろう。あとはフォトショップに任せたらいい。色見本補正は――やめといたほうがいいかな? 光の変化を考慮せず無理にプロファイルを使い回すと、下のようにおかしな感じになる。ワンフェスは場所ごとに照明環境が激しく変化するので、理想の色の再現にこだわらないほうが精神上は健康を保てるだろう。 フォトショップの用意している優秀なカラーを頼るべし。カメラの色味を損ないかねないが、基本の色として、そこから自分好みへ補正すればいいのさ。2019年1月に値上げが発表されたが、最安値のフォトプランは据え置きだぜ。理想の太陽光の再現に興味が無いなら、普通に最新のカメラを使ってるだけで、無難に高度な色再現を発揮してくれるだろう。 少なくともニコンZ6は写実という意味で超優秀なカメラに間違いなく、同世代のほかのカメラも軒並み同様かと。キヤノン、ソニー、リコー(ペンタックス)、オリンパス、パナソニック…… たとえホワイトバランスの傾向が偏っていても、グレーカードでしっかり調整すれば、きっと素晴らしい色を体験できるだろう。写実に興味がないなら、フィルム再現に命をかけてるフジがいいよ。シグマも写実に興味なく独自色だね。フォトショップ通すとたぶん普通の色になっちゃうけど。 今回、どうも汎用的というか、「フィギュア撮影」専用のテキストになってない気がする。まあいいか。

企画 記事リスト