フィギュア撮影講座7 セッティング

企画
執筆:2018/06/08

 第7回にもなって準備編とかアレだな、完全に間違ってるよ。 第1回で必要な道具について語ってるので、今回はやり方のほうについて扱う。適当だが。
 まず私はフィギュアレビューに特化しており、ジオラマやブンドドのコツは無理だ。むろん重複する範囲については大丈夫。たとえば設営の寸前、下準備段階とか。その先はそちらの第一人者がまとめたハウツーを探せば色々見つかる。
 そもそもこのサイトの撮影講座だって検索エンジンで来てる人が過半だし、順番が適当でも困る人はそれほどいないだろう。繰り返すが適当だ。メインは屋内
 フィギュア撮影が行われるおもな場所は屋内だ。正確なところは分からないが、公開されるフィギュア写真の8〜9割くらいは屋内のセット状態で写されている。それは趣味の撮影からジオラマ、イベントのフィギュア展示から仕事の撮影ブースに至るまで共通している。レアケースとなる野外撮影にもそれなりの作法っぽいものがある。なにも用意しない
 時間がないときや作業の経過を報告するときなど、またはフィギュアの背後にいる撮影者ないし模型者の姿を室内の生活感含めて見せるときに選ばれる。積極的理由・消極的理由、あるいはなにも考えてないも合わせて。
 フィギュアを机の上や窓際など、その辺の平らなところに置き、パシャッと撮影。屋内でも屋外でも。中には手に持って片手で、または演出のため不安定な状態で固定し、倒れないうちに急いでシャッターボタンを押す。
 このとき見られる現象が、人工の屋内灯と自然の太陽光との差だ。ほとんどの撮影シーンで、自然光を光源に使ったときのほうが発色が良くなる。カメラは「理想の自然光」で写したときもっとも色再現が高くなるよう原色フィルタを調整している。

撮影ブース
 撮影専用のスペースを構築してしまう。模型イベントや店頭サンプル展示なら、撮影されることを想定したディスプレイを行う。撮影にさほど凝らずとも、多くのフィギュア撮影者がブースを設置する。

 ブースは大きく3種類に分けられる。
ボックス型 コスト:安い サイズ:小さい
スタジオ型 コスト:高い サイズ:大きい
ディスプレイ 見られること第一で写すのはおまけ


ボックス型ブース
 ボックス型ブースは半開きの「小さな箱」だ。内側がブースになる。撮影へ特化したタイプで、壁はたいてい白か乳白。反射した光が回り込んでボックス全体を包み込み、フィギュアの写真写りを良くする。
 このタイプはフィギュア撮影初心者の過半が採用する。おもに金銭的な事情から。すなわち密閉されたボックスはこぢんまりと小さく収まり、場所を取らず値段も安い。自作でもわりと簡単に工作できる。
 玄人はこのタイプをあまり使わない。理由は光のコントロールに制限があるのと、背景およびレフ板の運用が難しいからだ。反対にいえば制約があるぶん割り切って撮影できる。凝る必要がない撮影者にうってつけ。撮影スペースが小さいため、ジオラマや大規模なブンドドには向かない。ライティングの融通が利かず、ステップアップにはブースを丸ごと交換しなければならない。
 市販の背景紙との互換性も低く、多彩さを求めると苦労する。有名なフォトラはボックスを名乗っているが、「照明がボックス状」であって設営は開放タイプだ。付属の小さい背景などさっさと捨てて、でかいのに交換しよう。はるかな自由を得るだろう。
 悪いことばかりに思えるが、ボックス型にもハイアマ&プロ仕様のものが存在する。出先で時間がないとき、重い機材セットを持ち運べないときなどのためにあるタイプだ。ちょっと調べればすぐ見つかる。オークション用とか銘打ってるのは素人相手なので注意。
 市販のボックス型で被写体を照らす照明が付属してるものは要注意だ。その光源はコスト圧縮で演色性に問題を抱えている確率が高い。萌えフィギュアを写してもその肌の発色はなにか違う。

スタジオ型ブース
 ボックスから固定壁を取り払った開放タイプで、その性質は真逆、ずばりプロ仕様だ。ボックス型と違って固定された壁を用意せず、そのときのライティングに応じて壁やレフで囲んでいく。密閉型とは比較にならない多様多彩な表現の幅を確保できる。そのぶん正しい知識が求められ、デジカメにたとえたら十数万円以上の本格機に相当する。
 汎用性が高いだけに場所もお金もかかるが、あらゆるジャンルの撮影に向く。技術とセンスが綺麗に填まったとき、得られるクオリティは間違いなく最上級だ。部屋レベルで確保された撮影スタジオのブツ撮りはほぼこれだが、何事にも例外があるように床を使うスタイルなど幅はとても広い。
 資金やスペースに余裕があるなら、初心者だろうともいきなりスタジオ型を構築するのもアリだ。ボックス型はどうしても選択肢が限られる。開放されたブースは上達に合わせてどんどんセッティング・ライティング・レフ配置のパターンを増やしていける。知識が少なくとも最低限の撮影はできるんだから、ためらわずとも良い。まず基本を収めてしまえば撮影活動は続けられる。変化はあとで覚えれば良い。
 ブースをどう機材で「覆う」かは、ほとんどライティングの都合、ないし背景の事情で変わってくる。カメラはレンズから見える範囲のすべてを記録してしまうので、被写体以外の外側まで考慮して隠すべきところは隠し、光を回すべきところは回し、反射・隠蔽・増幅をコントロールする。
 ボックスの固定壁に覆われた空間ならそういった煩雑なことを深く考えなくてよいが、慣れるに従ってクオリティはすぐ頭打ち、向上など期待できない。
 私はサイト運営開始直後は密閉型だったが、3年経った2008年9月より開放型へ移行した。
 講座としてテキストへ落とすのに10年も掛かったのは、勉強して覚えては忘れ、また勉強して覚えてはしばらく経つと忘れ――を延々と繰り返し、ほかの後発レビュアーに上手さであっという間に追い抜かる瞬間を何度も経験し、「自分って下手の横好きやん」と打ちのめされてきたからだ。
 いまも下手だよ。ほとんどカメラや照明の性能、現像・編集ソフトの優秀なアルゴリズムに頼り切っており、自分の感性(あるのか?)は信用してない。恥をしのんで文章化してるのは、ベテラン視点の講座がろくすっぽないことに気づいたからだ。長くやってるから書ける視点や文というものがある。ディスプレイ型ブース
 店頭やイベントでのディスプレイケースないし展示ブース。通常、撮影されることも想定した飾り方および照明バランスになっている。店頭展示や有力メーカーになると、盗難防止や接触事故対策として、高確率で物理的なガラスの窓ないし壁を挟む。ガラスはどうしても撮影難度が上昇する。
 ライティング的にはアマチュアのディーラー展示だと専用の照明はまずなく、会場の天井光に頼る。たとえ用意されていてもレフ板の類がある確率が低く、光の周りは弱い。撮影専用ブースと同等のクオリティを得るには、ストロボ(スピードライト)などを自前で持ち寄り、撮影時に発光させる必要がある。この一事の違いは意外なほどに大きい。撮影台
 撮影用ブースの土台となる部分を写真用語で撮影台と呼ぶ。ボックス型だろうがスタジオ型だろうが変わらない。高ささえ確保できるなら、ベッドでも机でもPCラックでも構わない。写真撮影用として売られてるものもある。
 撮影台に向いた高さは無数のブツ撮り職人の経験より90cm前後と判明している。ただしこれは「欧米の大人の男性」が基準になっているようで、日本国内だと市販品がおおむね80cm台まで下がってくる。女性や低身長ならもっと低くて良いだろう。
 撮影台の広さは、ボックス型なら数十cmもあれば事足りる。スタジオ型は1m前後は必要だ。私の撮影台は横90cmちょい、奥行き70cmある。部屋全体まるごと撮影スタジオにするガチ本格派なら1mくらいでは足りない。人は空間が広いほど動きも大きくなるからだ。
 撮影台はブースが狭いほどコンパクトに、広いほど余裕を大きめに持たせる。趣味でも仕事でも勉強でもあまり変わらない傾向だと思う。
 例外として撮影台を必要としないブースセッティングもある。床だ。どういうとき床が選択されるかはケースバイケースなので詳細は割愛する。吊して写す場合は内容に応じて撮影台が用意されたりされなかったりする。
 趣味のフィギュア撮影では一度設置された撮影台はそう簡単に撤去されない。というか普段はPC机とか模型工作スペースで、一時的に撮影ブースへ模様替えしてる運用例のほうが多いようだ。撮影台の水平
 撮影台を撮影用として調節する行為が水平の調査。水平をはかるレベラーを用いるが、アマチュアならべつに肉眼でも良いだろう。フィギュアでもなんでもいいから、台の上に置けば傾いてるかどうかすぐ分かる。
 一般的な人間は平静で0.2度・歩いてても1度未満の小さな角度を知覚できるという。わりと高精度な平衡感覚は、人間が直立二足歩行するバランサー動物だからだろう。人間は斜度に弱く、家の床が1〜2度傾くと日常生活を送れなくなる。人間が長時間を過ごすスペースは屋内外を問わず、作業場だろうが田畑であろうとも、その大半が「水平」だ。平らがなければ強引に整地してしまう。
 角度にデリケートな生き物なので、最低限の水平を取っておかないと、公開する写真に違和感を感じる人がわりと出てくることを示している。だから写真の玄人はとくに三脚で撮影するとき、素人から見れば病的なまでに水平を気にする……らしいが、実状は知らん。
 撮影台での撮影は基本、三脚を用いる。ゆえに三脚なら迷わず撮影台および三脚側の双方で水平を取る。写真専用の台は高精度なのであまり計ることはないようだが、少なくとも三脚側は調べる。三脚セッティングの基礎として広く定着している。写真用として売られてる撮影台は高精度の水平が確保されているか、微調整機能を備えたものもあるようだ。
 その辺の机を用いる撮影台には調節なんてないし、精度も期待できない。そこで足や床にボードを挟むなどして水平を得る。前後と左右、だいたい2方向の水平を確保すれば間違いない。 作業スペース
 撮影台の上に撮影ブースを設営すれば、それで終わりではない。周辺の空間を作業用にちゃんと確保しておかねば、狙った表現や強弱を満足に得られないし、道具の持ち替えにも苦労する。
 私の場合、経験則的に撮影関連の道具を保管し、固定具や照明を動かすスペースは、撮影ブースの最低でも2倍は欲しい。いまの環境だと計測すると4.5倍だった。表現の可能性や幅を求めるほどその面積はどんどん広がっていく。
 作業スペースにはカメラ側の空間も含まれる。そちらのほうもけっこうな広さが必要で、私の場合はいま計ると、なんか10倍弱を確保していた。そこまででなくとも、2倍は余裕を持っておきたい。
 過去の講座でフィギュア全身を綺麗に写すには、カメラの距離は80cm以上はいると書いた。撮影者本人はカメラおよび三脚のさらに後ろにいるわけで、そこまで含めた距離は1mを軽く超える。ブースの奥行きが60cmの場合、1.2mで2倍となる計算だ。
 広さは余裕で、余裕は可能性。大は小を兼ねるの典型だろう。

背景
 ここでいう「背景」とは、フィギュア以外の周辺部まるごと。ジオラマや背景紙とか。
 写真は写る範囲すべてを写実のままつつがなく記録してしまうので、背景をしっかりセッティング・演出してやる必要があり、ゆえに撮影ブースに背景はつきものだ。もっとも単純なものがただの背景紙や布、バックプリント、ただのバック、背景布、背景紙などという。
 フィギュアレビューやサンプル撮影に用いる頻度が高いものはそれらのうち、背景紙だ。英語でバックプリントペーパー。素材は主流で紙ないし紙っぽいプラスチック、たまに布。スタジオ型のブツ撮りブースだと78〜84cm×105〜120cmくらいのサイズがひとつの定番で、全紙サイズと呼ぶ。日本だとおおむね四六判〜A判、縦横比にしてだいたい2:3ほどが選ばれる。
 全紙は紙ジャンルによって基準サイズが違う。ほかの用途の紙を撮影用に使おうとして「全紙ください」といっても、フィギュアの箱すら写せない60cmくらいの小さなものが出てきたりするので注意だ。
 ジオラマやブンドドでも背景紙は使う機会が多い。見下ろす俯瞰アングルでジオラマだけを写真に収める構図ばかりを使うわけじゃない。水平に近いアングルなら、ジオラマで作ってない「遠景」を背景紙に代用させなければいけない。そういう凝った背景紙も探せばちゃんと売っている。
 背景には敷物というジャンルもある。見下ろし構図で使われ、タイル状とかシルク布とかいろいろ。また俯瞰でなくとも通常のフィギュア撮影でフィギュアの足下に透明なアクリル板を置くスタイルがある。床面へ水面反射のような効果を得られる。
 スタジオ室内を完全に暗くして、被写体に暗めの照明を集めるだけの技法もある。背景は真っ暗になるが、背景紙は使われてない。背景紙からの色被りを防ぎ、被写体の色彩をそのまま見せる効果がある。部屋が狭いとこの技は難しい。背景紙には周囲のゴチャゴチャしたものを誤魔化す遮蔽効果もある。

変化のある背景紙
 撮影を長くやってる人で無地単色の背景紙を使う例は少ない。レザックのように和紙のような凹凸が全体に入ってるものや、近い色の模様が印刷されたもの、多色の模様で構成されたもの、グラデーションのある背景、構造的に立体的なしわや陰影が出やすい布など、多くの撮影者が変化を付けた背景紙を使う。
 変化のある背景を使う意味はいろいろあるが、ひとつは写真における解像感の演出。ピントの合ったフィギュアが解像して、背景がボケていても、無味無変化な単色だとボケ具合が分からない。変化があればボケてると分かる。
 人の視線は情報量が多い、すなわち解像してる箇所へ誘導されるので、フィギュアを注視する効果が期待できる。無変化な単色も情報はないが、背景とフィギュアの距離感が掴みづらく、立体感の情報量という曖昧なものが減っている状態だ。ここはピントが合ってないぜ、軽視していいぜ、フィギュアを見ようぜと、脳の視覚処理へヒントを与えてくれるのが変化、そのための模様らしいのだ。
 レンズ評価の指標に解像感というものがあり、それを見定めるのに都合がよいのが、ピントの合った主題とボケた脇役(背景)の組み合わせだ。変化のある背景紙はそれを簡単に出力できる。レンズ交換型カメラらしい写真を提供する、名脇役。

背景のカラーマッチング
 ジャンル違いの話になるが、ウェブデザイナーを目指すプロの卵はその学習過程で、色合わせ・カラーマッチングについて学んでいる。色を知ることは、被写体と背景のマッチングにも繋がっていく。
 色について書くと本になる。それほどまでに膨大なノウハウがあり、色に関するノウハウが蓄積されている。人間にはとてつもない種類の色を見分ける力があり、ほ乳類の中でもかなり鮮やかな色彩の世界に生きている。
 上で述べた水平とおなじように、色についても人間は様々な心理的影響を受けるとされている。ゆえに背景紙の色のチョイスは重要であろう――と思いきや、ことフィギュアレビューやジオラマに限れば、けっこう適当で良い模様だ。
 根拠はアクセス量で、その色合わせに鈍感な私のサイトは、背景を軽視してるのにレビューサイトとして成功してる部類だ。また背景をずっと黒で通してるトイナビさんもいる。背景がサイトアクセスに与える影響が大きいのなら、まともに色彩を勉強していた。だが実際は違ってるので、ずっと適当なままだ。サイトのレイアウトやカラーすら理屈など知らず、適当である。
 ここでウェブデザインとカラーマッチングの話へ戻すと、個人運営のブログやサイトで爆発的に受けてるまとめ系は、おしなべて色合わせの素人が手がけている。レイアウトは色のセンスに乏しい。しかしコンテンツの圧倒的なパワーによってマッチングの不備を無視する勢いで支持され、すさまじいアクセス量を誇っている。
 そういう現実があるので、カラーの重要度は低くても良い。ただし芸術的な写真で評価されるものは、それがフィギュアやドールのものであっても、かなりの確率で背景の色が素晴らしい。メイン被写体のフィギュアを引き立てる役割を完全に果たしている。軽視しても人は集まってくれるが、人の心を揺さぶり感動させ、突き抜けた雲上の承認を得たいのなら、ぜひとも色の理論・理屈・セオリーをマスターしておくべきだろう。
 少なくともプロフェッショナルへ至るならば。

色を選ぶ簡単な基準
 私が実践してる色合わせはわずか3種類だ。
近似色
補色
色彩心理


 色のあれこれはたくさんあるが、多種多様すぎるからこそ、あまり多くの基準を元にしても仕方ない。なのでめっちゃ限定して背景紙の選定に使っている。
 Asahiwa.jp の「あんない」ページには、何年も前からページ最上部に固定されている画像がある(下)。色相環という。元となる表色系を Munsell color system と呼び、視感評価実験で合理化されたものをマンセルの色相環というが、私が使ってるこれは数字的に単純に定量化しただけの、計算上のデジタル色相である。現像ソフトSILKYPIXの色補正ツールから借りた。
 肉眼による補正がされてないとなにが分かるのかというと、近似色と補色の直感的な距離感だ。近似色
 色相環で距離が近いほど近似色。単純明快。フィギュアの主要な色に対して背景紙に近似色を用いる効果は、フィギュアが柔らかく見えるうえ、妙に映える。色が近いのにフィギュアが目立つ。ただ近すぎると背景に同化してしまうので、ちょっと離すのがコツ。私は髪の色をもとに近似色背景を使うことが多い。髪が目立てばおのずと顔も目立つ。顔は人形の命。
 近似色は原色より離れた淡くソフトな色で行うほど効果があるように思える。あくまでも可能性。

補色
 色相環で距離がもっとも離れるほど補色。円で正反対の色。これも単純。効果はいうまでもなく、主体の色を浮き上がらせる。補色での背景紙を私はあまり使わない。色彩心理の影響のほうが補色によるクッキリより効果が高いように見えるからだ。
 近似色でも補色でもない途中段階の色は、色そのものがもつイメージを見る者へ反映させやすいという。あくまでもそういう傾向があるっぽいだけで、実践せずともたぶんあまり差は生じない。

色彩心理
 生存に有利だから、人は色から心理的な影響を受けるようになった。色が多少なりとも行動を左右する。たとえば赤や青は集中力を高める。赤(血・火)は危険、青(昼間・水)は覚醒、緑(植生)は安心、黄色(朝日・夕日)はリラックス、喜びなど。
 ただし人間には刷り込みという現象があり、色彩心理は体験によっても変化しつづける。背景紙へ原作のもつイメージカラーを使うと、作品の舞台をイメージさせやすく、閲覧者の期待により集中力上昇を促す効果を期待できる。これは一般化された色彩心理にないもので、アニメを見たとかゲームをプレイしたといった、共有体験へ働きかけるピンポイントな色彩心理だ。
 艦これなら青、まどかマギカならピンクといった感じ。個人差があるので注意だ。共有など関係なく、一般的な効果のほうへ引っ張られる人もいるだろうし、まったくなにも感じない人も多いだろう。

画像の背景
 想像やイメージ力の余地はない。単色背景の効果には個人差があるが、詳しく描かれたあるいは写真を印刷した画像であれば、確実に100%の効果を発揮する。効果のレベルでジオラマとおなじだし、ジオラマの背景紙としても高頻度で選ばれる。
 私は画像背景を滅多に使わない。理由はレビュー以上の演出に思えるからだ。フィギュアレビューの主役はフィギュアそのもので、それ以外はすべておまけという考えで、ようは手抜きを正当化してるだけだが、背景に凝ると設営や撮影の時間がとてつもなく伸びてしまうので背景にはさほど力を使わないスタイルを貫いている。
 逆にいえば、全体で演出したい人、実在的なものを重視したい人、単純に撮影間隔が長くて毎回こだわれる人などに向いている。SNSなどの共有系サービスで爆発的に受けるフィギュア写真には画像背景の比率が高い。または屋外。そこは迷いなくリアルだ。

屋外ロケ/野外撮影
 欲しい景色のある現地まで移動しなければいけない。水中とか夜になるとさらに大変だ。必要な道具がいろいろあって、とても書ききれない。だから最初から書かない。
 私が野外撮影で演出的なことをしてたのは初めだけで、すぐ「なにもしなくて済む」方向にシフトした。観光やレポの、案内役としてのフィギュア。これは楽で短期間に数をこなせるかわり、評価を得づらい。
ブンドド
 基本的にフィギュア以外の小道具がいる。それもたくさん。初期のブンドドは背景要素をカットしてたり、家の中をそのまま舞台に見立てたごっこ遊びが主体だったが、講座執筆時点では家具にはじまってエフェクトすら準備しないと受けなくなっている。なにが必要かは長くなるので書かないが、ようは――
 それがもしリアルの光景ならば、目に入るであろう「あらゆるもの」が必要だ。
 ジオラマと化した本格ブンドドは比率としてフィギュア撮影趣味の第一位に躍り出ており、情熱&実力ある撮影者の大半が本格ブンドドへ集中している。
 メディアが取材ないし紹介するフィギュア撮影者も以前はレビュアーだったが、いまはブンドドマンだ。
 目に入るであろう小物をことごとく背景に配置したブンドド写真あるいはフィギュアポートレイトの受けは、そうしないものの数倍〜数百倍にも達し、レビュー系に見られない際立った特徴といえる。レビューは、共有系サービスだと写真よりプロデュースの影響が大きいように思える。個人ブログないしサイトならば写真とテキストだ。ホルダー
 ホルダーとは「ホールドするもの」、なにかを支持・保持する固定具だ。
 それでホルダーの固定するものは、ブースを撮影専用たらしめる数々のものだ。まず背景紙を挟むものを背景紙ホルダー、背景ホルダーという。スタジオ型ブースなら必須といえる。撮影用に開発された市販品もあるし、適当なものを組み合わせて代用してもいい。私は2017年10月まで脚立とのれん棒と洗濯バサミで背景を支えてた。
 ホルダーの支えるものにはほかにレフ・ランプ・アンブレラ・布幕・ライトバンク・トレーシングペーパーなどがある。こちらはライティングのハウツーになってくるので、今回は割愛する。 固定
 ホルダーだけでは足りない。動かないよう挟んだり置いたりする小物がいる。たとえば背景紙の下側を支える文鎮みたいなもの。クリップ的なものや、万能置物アクリルブロックで押さえる。これはフィギュア撮影時にも使える。むしろそちらが活躍のメイン。写真に写り込むこともある事情により、ブロック類は透明が選ばれやすい。
 被写体や撮影テーマによって煉瓦や石、人工芝、両面テープ、ブンドド用アイテム、エフェクトパーツなどで代用される。透明ブロックはレビュー活動ないし背景簡素型ブンドド。本格的になるほど背景で隠れるように固定する。本格派の撮影でもfigmaなどのアクションフィギュアは例外で、台座・支柱が写り込んでも暗黙の了解で許されることが多い。それでも凝る撮影者は撮影後の編集で消す。スケールフィギュアでも支柱付きの浮遊ポーズは支柱映り込みが許容されるが、内容によってはやはり編集で修正カットされる。三脚
 まだまだ固定具の出番は終わらない。カメラの固定だ。カメラなくして撮影にならない。選ぶべき三脚の内容については講座1で説明済みなので、設置方法についてだが、三脚はカメラを乗せた状態で水平を取るべし。
 いまどきのデジカメは入門機に至るまでデジタル水準器/水平器を実装している。調節作業はカメラのレベラーを用いるのが一般的だ。レベラーを備える三脚もあるが、基本はカメラのものを使う。10万円を超えるようなガチ三脚なら三脚側での調整もあるらしいが、まともなレベラーに精度でかなわない。
 三脚の高さは脚で合わせるのが基本。センターポールでの調整は短時間で高さが変化するときの緊急的な扱いだが――撮影時間短縮のために、私は99%くらいセンターで高さを変えている。ポールを伸ばすほど安定性が失われブレやすいので注意。ゆえに基本は脚側だ。ただ脚を上下させるたび水平を取り直す必要がある。ポールはその作業が不必要だ。リモコン
 三脚運用時、カメラのシャッターを押すもの。あるとカメラぶれを大幅に減らす。こいつをカメラにセットする。手持ちなら不要。フィギュア(モデル)
 ここまでセッティングしてきたブース上に、フィギュアを置く。破損事故防止のため、被写体そのものである必要はない。これはテスト用モデルさんみたいなものだ。本番で写す実物より大きすぎても小さすぎてもいけない。
 ブースの手前側に置くか、奥側へ置くかは適当だ。背景紙が模様入りでそのボケ具合から解像感の演出をしたいなら、奥側へ置くと浅い絞りでも効果は高い。照明コントロールへ余裕を持たせるなら中程、絞り値に背景ボケを左右されたくないなら手前寄り。
 セッティングもいよいよ終盤へ突入する。

照明器具&レフ板
 モデル用フィギュアを囲うように、照明やレフを置いていく。イメージを掴むためや微調整の事情で実物があったほうが配置は正確で、作業もはかどる。
 定常光を使うにせよストロボを焚くにせよ、フィギュア撮影のクオリティを大きく左右するのがライティング関連のツールだ。
 詳細はライティング編で扱う。この講座でかなり経ってからこの項目が登場したように、セッティングで照明の順番は最後のほうだ。理由は舞台となる撮影台やブースを先にセットしておかないと、ライティング系の配置が決まらないから。
 定常光はライトを付けたまま微調整するが、ストロボ系は試写を繰り返して配置を決定していく。フィギュア(主役)
 代役から主役へ交代する。撮影本番、メインヒロインの登場だ。フィギュアレビューなら高確率で未開封状態の箱から撮影する。微調整を欠かさず。ブロアー&ブラシ
 ホコリを飛ばす。ホコリを払う。ホコリはフィギュア撮影の大敵なり。ホコリを掃除すれば人類みんな幸せ。ホワイトバランスの取得
 写真の「色作り」において、重要な基礎情報となるホワイトバランスをゲットする。カメラ側でプリセットとして取得してしまう方法と、適切なターゲットを写してあとから画像ソフトで補正する方法の、2種類がある。慣れた撮影者の多くが後者を採用する。
 プロやハイアマの現場ではグレースケール、グレーカード、18%標準反射板などがターゲットとして使われる。フィギュア撮影でホワイトバランスを調整するのは、デジカメが原理的に人工照明を苦手としているからだ。
 デジカメの色再現は万能の共有光源である太陽光を基準に設計されており、太陽光から離れた性質をもつあらゆる光を苦手とする。デジカメにはその光源が人工なのか生物由来なのか星々の煌めきなのか、自力では判断できない。ソニーがAIカメラの開発を発表してるが実用化はまだ先だし、発売されてもしばらくはアホの子だろう。
 ゆえにすこしでも手動で補正するのがホワイトバランス調整であり、絶対的な基準として活躍するのが、フィルム時代より受け継がれる、50%の黒と50%の白を混ぜて生じる18%標準反射グレーだ。
 18%グレーは適正露出決定のターゲットでそちらが本来の役目だが、色補正の基準としても使われてきた。デジカメ時代の今日では、ホワイトバランス用ターゲットとしての役割がメインというかほぼそれだけで、完全に入れ替わってる。
 ホワイトバランス調整は直接的な色の見え方を決定する重要な工程で、ここを手抜きするわけにはいかない。心して掛かろう。ターゲットの置き場所
 フィギュアの手前か奥だ。奥側だと過剰補正となり、背景紙からの影響をほぼ打ち消す。人間の目は色覚の錯覚を起こしやすく、フィギュアの囲まれた色がフィギュアの見える色に引っ張られやすい。とくに淡いソフトな色、原色より離れた背景で起こりやすい。わざと手前に置いて、ソフト背景の影響をわざと残す手もある。黄色系だとフィギュア全体が柔らかい印象の色に染まった――ように錯覚する。こういった影響を嫌うなら白〜灰色〜黒系のモノクロ背景か、白抜きないし黒抜き、あるいは原色系の濃い背景を用いればよい。置き場所を変えずとも、グレーカードのフィギュア足下に近い部分で色補正すれば過剰補正となる。
 なお、ホワイトバランスは照明配置やバランスを変えるごとに取得する必要がある。私は一回のレビュー撮影で2〜8回ほどターゲットを撮影する。カメラの設定
 三脚で撮るならISO感度はできるだけベース感度に固定する。おおむねISO100かISO200だ。手持ちで写すときも最高ISO感度を低めに抑えておきたい。三脚時でも照明が暗すぎて三脚が弱いときはカメラブレが起こりやすく、やむなくISO感度をあげて成功率を高めるときもある。
 露出設定はレビュー撮影や連続撮影なら固定する。カメラは露出決定の基準となる範囲の明るさが平均50%±αになるよう働き、どんどん露出が変わる。黒っぽいほど明るく、白っぽいほど暗くするのだ。
 それによって生じる違和感を打ち消すのが露出固定で、高級コンデジとレンズ交換型カメラの中級機以上が標準搭載している。レンズ交換型でも一眼レフは高確率で採用している。ミラーレス入門機はかなりの機種が短時間での固定機能しか持たず、ちょっと設定を変えるとすぐ解除されてしまう。ハイアマ機になるとレンズ交換しても20分席を外してもモード変更しても維持されちゃうほど賢く、そのアドバンテージは絶大だ。
 レビュー以外の撮影で露出固定はあまりしないほうがいい。
 撮影データの保存形式はRAWを強くオススメする。上で紹介したホワイトバランスを補正できるのはRAWだ。最近の画像ソフトはjpgでも可能だが、jpgには補正を重ねるほど画質が劣化していくという弱点がある。RAWの編集には現像ソフトが必要だ。カメラメーカーはたいてい無料の純正現像ソフトを用意している。
 シャッターは三脚撮影なら手で押すのではなく、リモコンやレリーズケーブルを使う。ブレを防ぐための大前提だ。
 レンズやカメラの手振れ補正は三脚ならオフ!
 さらにブレを減らすための機能が、多くのカメラに備わっている。静音モード、ソフト撮影、電子シャッター、電子先幕、露出ディレー、ミラーアップ……色々だ。カメラごとに異なるそれらを駆使すれば、失敗をより減らせる。イベントや店頭展示のカメラ設定
 ワンフェスなどでのカメラ設定は独特なように見えて、屋外用とさほど変わらなかったりする。いくらなんでもおでかけ設定が分からないという人はほとんどいないと思うので、詳細は省く。
 ひとつ大きく違うのが、カメラのストロボ機能か、別売りのストロボをイベント撮影中ずっと使う。初めから終わりまで。さらにディフューザーで光を柔らかくするぜ。
 ただしブレ軽減のための努力は怠らないようにしたい。すなわち最低シャッター速度を決めておく。長時間のカメラ保持でしだいに腕が疲れてくるので、手振れ補正をオンにしつつ1/100秒とかだ。手振れ補正オンなら通常1/10秒でも大丈夫だが、その10倍のマージンを取っておく。この速度設定は機種によってはカメラとストロボ別々だったりするので注意。
 ガラスケースにどうしてもストロボが写り込む場合は、一時的に発光を切って無発光で写すしかない。ISO感度を思いっきりあげてブレないように。また店内のサンプル展示で発光禁止なら、おなじくISO感度で勝負。あまり絞らないという選択もある。
 イベント時のほかの写し方については以前の講座で述べてるので割愛する。
 これらの設定は当日に現地へついてからじゃ遅い。必ず予習しておこう。以前の経験があるからといって軽視していると痛い目をみる。人は忘れるもので、関連記憶から思い出すならいいが、記憶回路より完全に消去されているとどうしようもない。
 イベント撮影で悩みが大きいのが絞りだが、あまり開けない方がいい。APS-CでF8以上、フルサイズF11以上が安全かな。野外撮影のカメラ
 カメラ以外がかなり多い。テーマ、スタイル、主題、目的などによって内容に激しい変化があり、書き切れない。たぶんこれだけで本が書ける。
 私は観光を最優先させるタイプで、カメラ以外はフィギュアだけ。なにも用意しない。フィギュアを置いて写し、回収して終わり。レフ? 使わないよ。支持具? 使わないよ。一脚? 使わないよ。ハレ切り? 使わないよ。
 いい加減で済まないが、ほとんど実践してないから、文責を持てない。できないなら正直に無理だよんと書く。多くの人が複数のテキストを元に自分のスタイルを構築していく。できることを教えればいい。
 行楽最優先のフィギュア野外撮影は非創造的であり、あまり反応を得られない。私はそれを承知で気軽な観光に集中している。メインのフィギュアレビューでアクセス稼いでるから平気でいられるわけで、より多くの人に見て欲しい、反応や感想が欲しいと願うなら、私の真似はあまりしないほうがいい。 以上でセッティング編を終わる。前回から半年もかかったのは、第6回までの執筆によって自身の不足を感じ、スタイルそのものに変更を施したからだ。それが馴染むまで半年を要した。そのうえで自分に出来ないものを省いた範囲で今回のテキストを仕上げた。次はいよいよライティング……かもしれないし、ほかに向くかも。なにせ準備編が第7回だったのだ。もう適当だよ。

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