フィギュア撮影講座5 アングル・ポジション・パース

企画
執筆:2018/01/05

 ハイアングルやローアングルを可愛く写そうぜ! 前回の講座4距離編で撮影距離が「見え方を決める唯一の基準」と書いたな。あれは嘘だ! 広義では正しいが、条件を絞った狭義では異なってくる。本当はさらにアングルとポジションが加わり、おまけでパースの概念が……なに、難しそうだと? 基礎のつぎは当然のように応用だ! 普段やってる何気ないことを理屈で考えられるようになれば、確実にベストの結果を毎度出力できるようになる。「たまたま上手く写せた」との違いは大きいぜよ。ポケモンマスターになるには、ポケモンをすべて覚えなければいけない。つまり出番の多い基本につづく稀少シーンもみんな覚えて、ポケモンゲットだぜ。上手くなるとは頻度の小さいものまで遺漏なく網羅するってことだ。
 ――などと偉そうに書いてみたが、自身へのブーメランになってしまっている気がする。なにせ私は写真がキレイと言われても上手とは言われないタイプだ。
 気を取り直して話を進めるぜ。カメラとフィギュアの構図・フレーミング決定には相対角度と相対位置が関わってくる。写真用語だと角度をアングル、位置をポジションと呼ぶ。フィギュア撮りでは上から見下ろすハイアングルを取った場合、自然とハイポジションになる。2つは一緒なので、普段はとくに考えなくていい。 カメラとフィギュアを水平に置く水平アングルと、フィギュアの顔の高さにカメラを持ってくるアイレベル・ポジション。これがフィギュア撮り、とくにフィギュア単体を写す際の基本になっている。あくまでも基礎であって、いくらでも幅が生じてくるが、この水平&アイレベルは「意識」して「考える」必要のある組み合わせだ。理由は後述する。 フィギュアを低い位置より見上げるローアングル&ローポジション。ハイとおなじくほとんど同じなので、これも考えなくていい。 3種類を並べてみた。フィギュアは人間と比較して「小さい」ので、高い位置より低きを写す際、あるいは低い位置より高きを写す際、双方とも相対的な関係が同一になりがちだ。ハイアングルにしてハイポジション、ローアングルにしてローポジション。残り物は違うよ。要はカメラを水平にしたとき、あるいは水平に近いとき、はてまたアイレベルのときに、「思考せよ」というシグナルが点る。ここで考えないと、失敗写真をゲットだぜ。ポケモンマスターは遠のくぞ。 なぜ水平&アイレベルのときに「思考」が必要なのか、それはポジションとアングルの違いによって起きる。下の写真はポジションの分割を示したものだ。基本はアイレベルになり、そこより高い位置はすべてハイポジション、低い位置はすべてローポジションだ。本来なら撮影者側の概念だが、今回はあえて被写体側で使用している。 アングルは相対的なもので、「どこでも水平」になる。ハイだろうがアイレベルだろうがローだろうが、カメラを水平に構えれば単純に水平だ。 どこで上を向かせてもローアングル。足だろうが腰だろうが胸だろうが、たとえアイレベルでも上を向けばローアングル。ハイアングルも同じなので省略する。 ただの言葉遊びのように見え、一見無駄な思考に思えるが、この概念と定義をしっかり理解してもらう必要がある。なにせ応用が待っているからだ。とにかくごく狭い範囲にあるアイレベルと水平のとき、「思考」せねばならない。その実例をあとで見せる。 アングル・ポジション基本3パターンのガチ本気だ。見たら分かると思うけど、すべて「目」がピント位置になっている。フィギュアのピント合わせの基本は目だとピント編で述べたが、まさに目、より拡大すればフィギュアの顔面、ご尊顔を中心にフィギュア写真論は回っている。それは女性撮影のセオリーそのものだ。ゆえにポジションとアングルの関係をしっかり把握しておく必要がある。写真用語からして「顔」を中心に決まっており、それはすでに100年以上の歴史をもっていて、すっかり定番と化している。萌えフィギュアの命は顔であり、ゆえに女性写真の方法論がそのまま適応・通用するのだ。 だが例外も存在する。そこに思考のパターンが。下は水平アングルでローポジション。顔部分だけを切り取ればローアングルに見えるが、主題はフィギュア全体であり、カメラは水平に構えている。フィギュアのポージングによっては水平&ハイポジションもあり得るが、だいたいは水平のアングルとローのポジションだ。すなわちカメラを水平に構えてフィギュア全身を写すとき、カメラの高さは顔ないし顔から下の、2パターンが存在することになる。これも基本が「顔の高さ」にあるから生じる後付けの考えだ。 以上のことをとくに意識せずとも普通にフィギュアは写せるが、きちんと理解しておくと応用の「なぜなに」が自然と導き出せる。すなわちフィギュア撮影の実状であり、理想と現実の差異だ。きっちり水平できっちりアイレベルにという撮影は、私の場合じつはそれほど多くない。下はわずかにハイアングルでアイレベル高という撮影結果で、雪風と「目線を合わせる」ために選択された基本破りの応用だ。フィギュア撮影が長くなってくると、自然とこういう応用的な撮影になっていく人が多い。私の場合は写真が下手だった時期から一貫して、フィギュアと視線を合わせることにこだわっている。それはまさに女性写真におけるセオリーのひとつでもある。むろん合わせないことによる演出もあるが、たいていフィギュアを飾ると目と目を合わせちゃうよね。
 ♪目と目が逢う、瞬間、好きだと気付いた〜〜(Byアイドルマスター) さてこの講座、タイトルに「パース」と書いている。これめっちゃ重要だったりして、アングル・ポジションとも密接に絡み合っている。パースってなんだ? 答えは「遠近感」だ。パースペクティブと呼ぶ。レンズだと準広角・広角・超広角・魚眼の領域で発生する。遠近感ってなんぞや? とくに理解しなくていい。結果だけ見せよう。 これが「パース」の影響だ。一目で「マジヤバい」と分かるだろう。遠近感すなわち「遠くと近くの感じ」が「一枚に収まってる」ということは、遠いっぽい見え方と近いっぽい見え方が同居してるわけで、それってスタイリッシュに見えなくなる可能性が高いのだ。コントロールできないと写真が死ぬ。失敗の少なからずがパースへの無知によって生じる。「寄れ」ばヤバい。広角で近すぎるとこんな写りになってしまう。 超広角の特徴を示す。フィギュアの箱は歪みなく普通に写っている。これは写真が「平面を均一に写そうとする」姿勢によって起きる現象だ。10mmでも30mmでも100mmでも、カメラに対して平行に置いた平面は歪まない(魚眼を除く)。ところが立体は違う。画面の端ほど歪んで見えてくる。理由は端ほど平面でなく「側面」を見ているからで、画角が広がるとその横面を見る面積の比率が正面よりも大きくなる。すなわち「平面:側面」の比率が変わるぶん、歪んで見る。中央ほど歪まないのは遠近感の元となる側面成分がほぼゼロだからだ。 となればパースの活用法は中央から端まで被写体を構図に収めること。男性フィギュアなら演出的に使えるが、萌えジャンルだと難しい。すなわち逆にいえば―― 画面の中央にフィギュアを収めれば、超広角でもパースは発生しない。下の写真で両方の例が写ってる。構図の端にある照明器具が強烈に歪んで見えているのは、パースペクティブの遠近感だ。中央のフィギュアは無傷でそのまま。画面の中央部分をひたすら拡大していくと、それが望遠域になっていく。パースペクティブを排除した、歪みの少ないエリアだ。前回の講座で離れて写すと述べているのも、これが根拠になっている。 さてここで「中望遠でのアングル可変は可愛い」という結論が飛び出してくる。撮影距離が長いと物が小さい。だから望遠側で写す。だが望遠はさすがに遠すぎるので、中間で写す。すなわち中望遠。これが実作業と理論との整合、現実を見た回答だ。その回答である中望遠で、アングルを水平からローやハイへ傾けるのが、なぜ良いのか。すでに答えは出てるが、カメラを被写体に対して「斜め」に構えるのは、パースを強調する行為だからだ。平面からのズレは側面成分を多めに見ようというのだから、当然のように見た目のパースが増幅する。それを抑制できるのが中望遠でのアングル撮影行為。むろん高さや低さ、撮影距離を取るのが難しければ、標準域でも良い。肝心の主題さえ歪んでなければ(画面の端にメインを持ってこないことで回避できる)結果オーライだ。 ただし35mm相当、準広角から広いのは「離して写す」場合を除いてダメだ。アイレベルは萌えフィギュアの顔の高さ、すなわち「端っこ」だから、広角で全身を入れようとすればカメラは自然と下を向き、ハイアングルとなる。そのぶん足下のパースが強調されていく。さらに顔も歪む。変わらないのは構図の中央にある連装砲くらいだ。 まだ話はつづく。下の写真、丸で囲んだ部分に注目。 コンセントがあるが、超広角の隅っこにあるというのにさほど歪んで見えない。講座4でも似たようなことを書いたが、小さいものほど歪んで見えなくなる距離が短くなるからだ。建物を写すとたいていパースが出るのは、建物が大きすぎて歪まずに済む距離がとっても長いからだ。これを覚えておくと、妙なセオリーの罠にはまらなくて済む。写真術のセオリーとは一般的な撮影距離や被写体サイズで通用するものが多く、フィギュアといった小さな被写体には、セオリー外のほうがむしろ理解しやすいという話もあるのだ。撮影距離重視もそのひとつだし、ポジションとアングルを水平以外で考えなくてよいのもフィギュアが小さいからこそだ。 それじゃ、とりあえず超広角の活用例を。ずばり「ローアングル」。写真の上手な人ならほかの構図やポジションでも見事に操って見せているけど、私のレベルだとロー以外は難しい。足が大きく、あるいは手を大きく、ないしは武器を大きく。構図の端に手や足を持っていけば、もれなく遠近感が発動して拡大してくれるぜ。反対にいえば、中央ほど相対的に小さく見える。以上、フィギュアの見え方を決める諸要素の応用編を終わる。

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