栗本薫著「グイン・サーガ」シリーズのショートストーリー。いずれもギャグ。
グル・ヌーへ行きたいかー?
世界の秘密を手にしたくないか?
というわけで、やって来ましたノスフェラス横断ウルトラクイズ!
それでは第一問!
――高らかにファンファーレ。
ロカンドラスが登場。
「あ~……聞こえるかいのう?」
その場にいた全員の頭に、直接響く声。
参加者たち、馴れぬ魔道の手妻にどよめく。
「聞こえるようじゃのう、よし、第一問いくぞい――」
参加者たち、身構える。
「おまえたちが弁当と一緒に飲んだ水じゃが、じつは手違いでグル・ヌーに一番近いオアシスで汲んだ、放射能実験用のものじゃった……そこでじゃが、いい問題を思いついた。ここにいる者たちは、放射能で一週間以内に半分以上が死ぬ。イエスかノーか」
…………
会場、静まり返る。
「ああん、どうしたんじゃ?」
ロカンドラス、いぶかしげに見回す。
「ああ、そうか」
手を叩いた。
「結果が出るのに時間がかかるのう。しょうがない、これから一週間この場にいようぞ。ちなみに第二問は、残った者は一ヶ月以内にさらに半分――あら?」
参加者たちは悲鳴をあげながら会場から逃げ出そうとしていた。
グインは何が起こっているのか理解できないようにじっとしていた。
スカールは、わなわなと体を震わせてロカンドラスを睨んでいる。
一部参加のセムやラゴンは平然としていた。
ロカンドラスは、にっこりとほほえんだ。
「ふぉふぉふぉ、そんなにこの問題が嬉しいか」
気付よじいさん……
ウーラはいつものように狗頭山のいただきにいた。孤高の父ロボと違い、彼は秩序を好んだ。それゆえ多くの手下どもを引き連れ、ノスフェラスの黄色い砂の大地を睥睨していた。ノスフェラスの暮らしは大変だったが、ウーラは強く賢く群れを統率し、それなりに安定した秩序を狗頭山にもたらしていた――しかしそれゆれ、ウーラは退屈だった。そんなときウーラは、彼の犬生において、もっとも華やかだった旅を思い出しては自分を慰めるのであった――そしていま、ウーラはまさにいつものように、思い出に浸っていたのであった。
――と、ウーラの目の前に、とつぜん黒い大ガラスが現れた。
手下どもは何だと威嚇の鳴き声をあげたが、ウーラが小さくうなるとしぶしぶと止めた。ウーラはその大ガラスを見上げた。
ウーラは懐かしそうにばうとほえた――そう、彼の大ガラスは、彼のもっともすばらしい時間を共有した仲間にちがいなかった。もう何年ぶりになるだろうか。
それにしても、いったい急にどうしたというのだ。
そんなウーラの疑問をよそに、大ガラスはみどりの目をらんらんと輝かせ、赤い口を見せびらかすかのようにくちばしを大きく開いて、なにかぎゃあぎゃあと繰り返し叫んだ。
その内容は、ウーラの疑問を消し飛ばし――それどころか、まさに彼が望んでいた最高の「報せ」そのものにちがいなかった。
ウーラは耳を立て、突然、咆哮した。
手下たちは驚いた。その叫びは、いままで聞いたこともない、大きな喜びに満ちあふれていたからだ。いつも落ち着き払ったボスに、何が起こったというのだ。だが――手下どもはわけがわからずもボスにならい、続けて咆哮した。
狗頭山からノスフェラスの乾いた大地に、喜びの合唱が響いた。
ウーラの尾が横に振れた。
さあ、行くか。
野郎ども、後は頼んだぞ。なにせ我々の王が、また旅に出たらしいからな。側にいてお仕えしないとな――