グイン・サーガSS

小説
栗本薫著「グイン・サーガ」シリーズのショートストーリー。いずれもギャグ。
ノスフェラス・おそるべき大地?(創作)
ザザとウーラ・出発の日(創作)
ナリス様をいじめないで(創作)
グインでウィザードリィ!(ウィザードリィ)

ノスフェラス・おそるべき大地? (創作)

 グル・ヌーへ行きたいかー?
 世界の秘密を手にしたくないか?
 というわけで、やって来ましたノスフェラス横断ウルトラクイズ!

 それでは第一問!
 ――高らかにファンファーレ。
 ロカンドラスが登場。
「あ~……聞こえるかいのう?」
 その場にいた全員の頭に、直接響く声。
 参加者たち、馴れぬ魔道の手妻にどよめく。
「聞こえるようじゃのう、よし、第一問いくぞい――」
 参加者たち、身構える。

「おまえたちが弁当と一緒に飲んだ水じゃが、じつは手違いでグル・ヌーに一番近いオアシスで汲んだ、放射能実験用のものじゃった……そこでじゃが、いい問題を思いついた。ここにいる者たちは、放射能で一週間以内に半分以上が死ぬ。イエスかノーか」

 …………

 会場、静まり返る。
「ああん、どうしたんじゃ?」
 ロカンドラス、いぶかしげに見回す。
「ああ、そうか」
 手を叩いた。
「結果が出るのに時間がかかるのう。しょうがない、これから一週間この場にいようぞ。ちなみに第二問は、残った者は一ヶ月以内にさらに半分――あら?」
 参加者たちは悲鳴をあげながら会場から逃げ出そうとしていた。

 グインは何が起こっているのか理解できないようにじっとしていた。
 スカールは、わなわなと体を震わせてロカンドラスを睨んでいる。
 一部参加のセムやラゴンは平然としていた。
 ロカンドラスは、にっこりとほほえんだ。
「ふぉふぉふぉ、そんなにこの問題が嬉しいか」

 気付よじいさん……

グイン・サーガSS

ザザとウーラ・出発の日 (創作)

 ウーラはいつものように狗頭山のいただきにいた。孤高の父ロボと違い、彼は秩序を好んだ。それゆえ多くの手下どもを引き連れ、ノスフェラスの黄色い砂の大地を睥睨していた。ノスフェラスの暮らしは大変だったが、ウーラは強く賢く群れを統率し、それなりに安定した秩序を狗頭山にもたらしていた――しかしそれゆれ、ウーラは退屈だった。そんなときウーラは、彼の犬生において、もっとも華やかだった旅を思い出しては自分を慰めるのであった――そしていま、ウーラはまさにいつものように、思い出に浸っていたのであった。

 ――と、ウーラの目の前に、とつぜん黒い大ガラスが現れた。
 手下どもは何だと威嚇の鳴き声をあげたが、ウーラが小さくうなるとしぶしぶと止めた。ウーラはその大ガラスを見上げた。
 ウーラは懐かしそうにばうとほえた――そう、彼の大ガラスは、彼のもっともすばらしい時間を共有した仲間にちがいなかった。もう何年ぶりになるだろうか。
 それにしても、いったい急にどうしたというのだ。

 そんなウーラの疑問をよそに、大ガラスはみどりの目をらんらんと輝かせ、赤い口を見せびらかすかのようにくちばしを大きく開いて、なにかぎゃあぎゃあと繰り返し叫んだ。
 その内容は、ウーラの疑問を消し飛ばし――それどころか、まさに彼が望んでいた最高の「報せ」そのものにちがいなかった。
 ウーラは耳を立て、突然、咆哮した。
 手下たちは驚いた。その叫びは、いままで聞いたこともない、大きな喜びに満ちあふれていたからだ。いつも落ち着き払ったボスに、何が起こったというのだ。だが――手下どもはわけがわからずもボスにならい、続けて咆哮した。

 狗頭山からノスフェラスの乾いた大地に、喜びの合唱が響いた。

 ウーラの尾が横に振れた。
 さあ、行くか。
 野郎ども、後は頼んだぞ。なにせ我々の王が、また旅に出たらしいからな。側にいてお仕えしないとな――

グイン・サーガSS

ナリス様をいじめないで (創作)

 ヴァレ君は魔道師なので、いつも滋養の液体を隠し持っている。
 そのひとつは薬用養命であった。
 そして――実はもう一品。

 ごくっごくっ……
「あー、不味い……もう一杯!」
 青汁。

 これでヴァレ君は今日も元気。さあ、ナリス様にも薦めましょうぞ。
 しかしナリス様、なんともご不興。
「……ヴァレリウス、これは人の飲み物ではないよ」
 困ったヴァレ君、「養命酒」を差し出す。
「……ヴァレリウス、これは人の飲み物ではないよ」
 困ったヴァレ君、「日本酒」を差し出す。
「……ヴァレリウス、これは人の飲み物ではないよ」
 ヴァレリウス怒る。
「ノスフェラスで鍛え直してらっしゃい!」
 古代機械でナリス様、ノスフェラスに一直線!

 ナリス様、モンゴールに渡る直前のグイン一行の前に落ちてきた。
「……どうした、そこの美しい妖魔。疲れているのか? これを飲め」
 グイン、竹の筒に入れた、残り少ないキタイ産の酒を差し出す。
 しかしナリス、一口含んで条件反射に、
「……これは人の飲み物ではないよ」
「そうか、ならさらばだ。君は妖魔だから大丈夫だろう」
 そしてグイン一行、去っていく。
 ナリス様、しばらくして「あー!」と叫ぶ。
 自分が求めていた者が、世界の秘密が、そこにいたのに!!

 グイン、首を傾げる。
「あの妖魔、やけに人間臭かったな」
 マリウスも首を傾げる。
「……う~ん、誰かに似ているような」
 さしものマリウスも、弱って変わり果てた兄を一瞥では見分けられない。
「ねえグイン、あの美しい妖魔、私のしもべに欲しい~」
 いきなりシルヴィア、わがまま炸裂。セム族と過ごしているうちに、すっかり昔に戻ったようだ。
 しかしグイン、そのいい傾向に気づかず、
「だめです姫君。あんな美しい妖魅を近くに置けば、きっと悪いことがおこる」
「いや~、欲しい欲しい」
「だめです」
「欲しい欲しい~!!」
「だめです」
 こういうことを繰り返しているうちに、せっかく良くなりつつあったシルヴィア姫、またもや闇の躁鬱シルヴィアになってしまいましたとさ……

 一方、呆然とするナリス。
 そこにヴァレリウス、閉じた空間を飛んで登場。
「どうですか、十分に反省なさりましたか」
 ナリス、あうあうとグイン一行の去った方向を指さす。
 しかしウーラの足はあまりにも速いので、すでに馬車はなく、また風が強いので轍も足跡も消えている。
 ヴァレリウス息をつく。
「まさか声が出なくなるとは……さすがにこれは応えすぎたようですね。すいませんナリス様、もう二度とこのような非道いことはしませんので」
 とヴァレリウス、いきなり懐から取り出した、青汁に養命酒に安酒!
「ナリス様、せめてこれらを一気に飲んで、気をお鎮めください」
 ナリスの悲鳴が、ノスフェラスにこだました――

 次の朝、起きたナリス様は開口一番。
「……ヴァレリウス、私はなにか重大なことに遭遇したような気がするが」
 寝ずの番をしていたヴァレ君、澄まし顔で、
「熱を出されていたので、悪い夢でも見たのでしょう。すべて忘れることです」
「そうか……じゃあまた寝るよ」
 ナリス様、お眠りになりました。
 ヴァレリウス、ほっと胸をなで下ろす。
「あぶないあぶない……どういうわけかいつも忘れてくださるからいいものの、私もすぐにナリス様をいじめる癖をなんとかしないと――今月に入ってもう4度目のノスフェラス送りですからねえ……さあ、今日も激しい公務が待っています。気を引き締めますか!」
 そしておもむろに懐から青汁を取り出し、ごくりごくり……
「あ~、不味い。もう一杯!」
 そして懐から青汁を取り出し、ごくりごくり……
「あ~、不味い。もう一杯!」
 そして懐から青汁を取り出し、ごくりごくり……
「あ~、不味い。もう一杯!」
 そして懐から青汁を取り出し、ごくりごくり……
「あ~、不味い。もう一杯!」
 そして――――

 ……永遠に続く!

 続いてたまるか!
 ああ、ヴァレリウス、ナリス様をいじめないで。

グイン・サーガSS

グインでウィザードリィ! (ウィザードリィ)

ウィザードリィー「ダイヤモンドの騎士」にてグインキャラプレイをしたことがある。

 序盤、前衛は――

 グイン :攻撃魔法を使える魔法戦士サムライ(ごついドワーフ族!・善)
 スカール:戦士(人間族・悪)
 イシュト:戦士(麗しのエルフ族!・悪)

 後衛は――

 リンダ :僧侶(人間族・悪)
 ナリス :魔法使い(美しいエルフ族!・悪)
 カメロン:盗賊(小人しかいないホビット族!・悪)

 基本的に属性「悪」のパーティー。サムライは善か中立でないと作れないのでグインだけ善だが、善悪混合パーティーは迷宮の中で合流すれば簡単に組めるので大丈夫。よく見れば、人間族なのはスカールとリンダだけだった。

 で、迷宮に入って友好的な敵を倒しまくったら、グインも仲良く悪に染まる。性格のイメージを完全に無視してるが、悪のほうが楽なんだよなこのゲーム。

 そして中盤、イシュトが君主(ロード・回復魔法を使える魔法戦士)に転職できるステータスに。君主は属性・善でないとなれないので早速友好的な敵を見逃しまくってイシュトを善に転向、無事に君主に。

 国はないが夢を叶えてとりあえず立場だけ王様。

 で、一人だけ5歳年を取る。このゲームは転職すると「修行」によって歳を取る。でも他のメンバーは若いまま(笑)

 転職するとレベルが1になって弱くなるので、役立たずイシュトを後衛(肉弾戦ができない。主に魔法で戦う位置)に下げる。かわりに後衛で一番肉弾戦に強い僧侶のリンダを前に。しばらくそのままでゲームを進める。

 前衛は――

 グイン :そこそこ強い攻撃魔法戦士サムライ
 スカール:屈強なベテラン戦士
 リンダ :当面の矢面に立たされる可哀想な僧侶

 後衛は――

 イシュト:なにもできない貧弱な新米君主
 ナリス :かなりできる魔法使い
 カメロン:有能な盗賊

 やがて強力な「カシナートの剣」を、「小人」の盗賊カメロン(ファンの方ごめんなさい)が発見。それをイシュトに装備させ、フォーメイションは元に戻る。リンダ様、慣れない前衛ご苦労様。

 レベルが13~14になった頃、僧侶リンダと魔法使いナリスが、ほぼ同時期に仲良くすべての魔法を覚える(ウィザードリィは、最近のRPGに比べて可能クリアレベルが低い)。さすがは夫婦。

 これでゲームに余裕が出る。そしてカメロンが忍者(最強の戦士。魔法は使えないが一撃で敵を倒す「クリティカルヒット」の技能を持つ)になれるステータスに達したので、一気に複数のキャラを転職させる。

 このときパーティーの属性は全員「悪」。忍者は悪でないとなれない。

 すなわち、

 リンダ :僧侶からビショップ(魔法使用回数は減るがアイテム鑑定能力付加)
 カメロン:盗賊から忍者(忍者も罠を解除できる。とにかくこれで前衛要員に)
 スカール:戦士から僧侶(リンダの穴を埋め、カメロンと交替で後衛に下がる)

 そしてパーティーを一部入れ替え。

 今後いじる必要のない調和の取れたチーム完成。

 前衛――

 グイン :手が付けられないほどめちゃくちゃ強い攻撃魔法戦士・サムライ
 イシュト:そこそこいけるようになってきた回復魔法戦士・君主
 カメロン:将来の予定は「最強」だが今はまだ弱いぴよぴよ暗殺くん・忍者

 後衛――

 スカール:体力だけはあるがすっかり貧弱になった新米僧侶
 リンダ :回復魔法のスペシャリストにしてアイテム鑑定者・ビショップ
 ナリス :大量殺戮魔法の使用回数を極めようと心に誓う危険な魔法使い

 一度にパーティーの半分も転職させたため、パーティーの弱体化は著しく、しばらくは弱い敵を相手にこつこつと力を回復させる。やがてレベルもあがって強くなってくると、一気に最強の悪魔連中とやり合う。

 そしてエンディングへ……

 とまあ、こんな感じだった。

 ちなみに重要アイテム保管要員として、魔法使いレムス、戦士アルミナの夫婦がいた。二人とも最後までLV1。

 マリウスは……作ったかどうか、覚えていない。

 いずれにせよ奥が深いが単純なゲームだから、けっこう覚えていた。

 ちなみにカメロンおぢさまは、途中からすっぱだかに。

 忍者はレベルがあがるほど、装備を一切しないほうが回避も攻撃も良くなるという不思議な特性がある。フリチンで恥ずかしくないんかい。
     *        *
     最終 1999/11

グイン・サーガSS

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