一八 終:華葩(けは)

旭和ラノベ
ソード妖夢オンライン3/一三 一四 一五 一六 一七 一八

 剣士でありながら、剣と剣を合わせての実戦経験がほとんどない。
 人智を超えた異能の戦いにおいて、武器というのは選択のひとつに過ぎないんだ。剣をおのれの得物として選ぶのは、むしろ弱さの印だ。剣は人間の武器なんだから。強力な妖怪・神族が剣や弓矢を帯びるとき、その多くは畏れ祀ってくれる人間への誇示が目的だったりする。神話の英雄もいちおう剣や槍、弓矢で戦うけど、それは人間受けが良く、信心を得られやすいから。伝承となる前、実際にあった戦いはどうだったのだろう。神世の戦いで、それらの剣は本当に振られたのだろうか。だって別に剣を使わずとも――
 楼観剣の白刃を一回振っただけで、体内より確かなパワーがあふれ出してきた。二ヶ月半ぶりの霊力だ。ついでに全身を覆う妖力も感じる。私は半人半霊。ヒトとアヤカシ、両方へ属するがゆえに、霊力と妖力の双方を操る。その見えざる力を剣先に込め、もう一度さっと薙いでみる。取り戻した異能を、小出しに眼前へと展開する。胸元に緑色の光弾が列をなす。ひとつひとつの大きさは一〇センチほど。だけど当たれば痛い、擦れば熱い。エネルギーを内包した発光体だ。発生させた剣はただの刀ではない。二ヶ月以上も触っていなかった、楼観と白楼。だが瞬時に手へ馴染んだ。師匠より継承して以来、何十年も一緒だった剣だ。いくらか離れてたからといって、そう簡単に忘れうるていどの感触ではない。絆だ。
「よ、妖夢……その剣、その力」
 キリトの顔が険しい。本当の私がSAOに現出した。鎧も装備も吹っ飛んで、地味目だけどかしこまったような洋服姿の私が、大袈裟なほどに長い刀身を持つ楼観剣と、脇差しと呼ぶにはやはり長めの白楼剣を握って立っている。現実の魂魄妖夢だ。月都を現世(うつしよ)より隔離してきた謎技術が暴走し、リアルから仮想世界への強烈かつ過度な干渉が起きている。こうなってしまえば後はどうなるか、四週間前に蓬莱山輝夜が見せてくれた。
 すでにカーディナルより警告表示が出ている。これ以上、不正なハッキングアクセスとサーバへの圧迫行為を続けると、アカウント停止処分にするとの通達だ。
 そのハッキングとやらを止められるものなら、私も止めてやりたい。まさか剣舞に熱中しすぎてこれほど簡単に限界を突破してしまうなんて、トンマにもほどがあった。
 間違いなくあと数分でソードアート・オンラインから退場する。それを知っていながら、意外にも冷静でいられる自分に驚いている。それはキリトと別れるその時を初日の夜から覚悟していて、おのれに何度も確認してきたからだろう。そのうえあまりにも私らしい失敗によってゲームオーバーとなるのだから、後悔よりもまず、この状況でどうやって最後の時間に最善となる行動を取るべきだろうかという、ただ一点に思考を集中させることができている。一〇年くらい前だったらきっと泣き喚いていたんだろうな。でも恋を知って、おつきあいを体験もした。死なせたくないと思ったキリト。死から遠ざけるための多くを、キリトに伝えることが叶った。その彼氏は確認された範囲で最強といえる、二刀流スキルまでゲットした。
 黒の剣士はもう、私がいなくても大丈夫だ。勇者としてSAOを戦ってゆける。
 剣士のままで毅然として、キリトと別れよう。
「……キリト、思ったよりも早いお別れになりそうです。ごめんなさい。魂魄妖夢、真の戦いを見ていてください。これが最後の指南となります」
「妖夢……」
 時間密度がとても濃い。これからの何分かを、おそらく一生涯、忘れないだろう。まれにしか聞かないBGMが鳴っている。私のテーマ、広有射怪鳥事(ひろありけちょうをいること)だ。剣で斬るように鋭く攻めてくる旋律で、テンポも速い。曲名とまったく異なる現代的な調子は、私の普段着と剣技との不釣り合いさに共通してるな、との印象があり、かえって気に入っていた。でもなぜこの曲を、キリトと別れる戦いで耳にする羽目になったのか。
「サンヒター!」
 起き上がった真鍮巨人が鉄斧を振り下ろしてきた。ソードスキルの禍々しい輝きもまとっている。長さ三メートルほどの大物だけど、すべての力を取り戻した私にはこんなもの、魔理沙のマスタースパーク以下だ。
「これが――真の炯眼剣です!」
 斧が当たる寸前、右回転しつつ左手の白楼剣で戦鎚を受けた。ものすごいエフェクトと金属音が発生し、一メートルほど押されけど、問題ないよ。そのまま霊力を込めて、回転の余勢で弾き返した。戦斧が垂直方向へ数メートル浮き上がり、真鍮仏像のフトコロがガラ空きとなる。
「……すごいわ」
 背中でアスナの声。
 二回転した私は右手の楼観剣に妖力をそそぎ、瞬間的に刀身を四倍ほどへ伸ばしてアーシュラの腰を袈裟斬りに伏す。冥想斬(めいそうざん)だ。リーチを何倍も伸張させるなど、すでにSAOのシステム仕様で再現できる技じゃない。
 片足をよろめかせ離れたアーシュラに向かって、つづけて半霊を突撃させる。私の種族は半人半霊。リアルでいつも傍らに寄り添っている人魂は、ただの飾りじゃない。鋭敏な感覚器官にして、発信器官でもある。アーシュラと重なった半霊の感触を受け、霊力を解放、弾幕生成とおなじ要領でダメージを与える。憑坐の縛(よりましのばく)だ。半人半霊なら修行すれば誰でも出来るようになる護身術。むろん私の憑坐は威力が一味違うよ。
 私はさらに、最初に出した弾幕を前進させ、アーシュラを追撃した。全弾命中、どんどん押していく。輝夜のように無駄玉は撃たない。それはキリトに私の戦いを見せるため。これは幻想郷の弾幕ごっこではない。殺さねば、殺されてしまう死闘だ。たとえ楽勝に見えようとも、万が一にも劣勢に立てば、逝く先として実相の死が待ちかまえている。私や文たちが無事でも、キリトとアスナはただでは済まない。このふたりは絶対に殺させない。たかがプログラムに。
 だから私は、このバケモノを全力でぶち倒す!
 前座はこの辺でいいだろう――ゆっくり歩みながら。
言霊(ことだま)、アーシュラ・ザ・ヘクサゴン」
 霊剣の封印を解いた。
 弾幕ごっこの対戦スタイル。仕合ではない。
 死合だ。
 最後にはどちらかが死ぬ戦い。命を賭けた、殺し合い。
 そのための剣を、私はこれまで幻想郷の友人に披露したことがない。だけど今日は違う。射命丸文と犬走椛にあえて晒そう。魂魄妖夢、真にして裏の仕事を。禁を破ってまで見せるのはもちろん、キリトに私の真実を見せたいから。私がSAOより消えても、私の覚悟は文と椛へ伝わるだろう。彼女たちにキリトとアスナを託すのだ。そのための殺人剣舞を、いまより踊ろう!
 まるでソードスキルのように淡い極光に包まれた二振りの剣身を二天に構え、殺すべき敵が動くのを待つ。
「ウパニシャッド!」
 真鍮巨人が気狂いのような雄叫びをあげ、槍と長剣のロングレンジ武器で同時攻撃してきた。両方ともソードスキルだ。だけどそれこそが隙。攻撃は最大の防御という成句は、力量差が小さいときにのみ成立する。級位ごときの技量に、どうして後れを取る道理があろうか。
「――心抄斬!」
 あえて言葉として叫ぶ。妖力を体にまとい、低姿勢で突進する。巨仏のウスノロな攻撃をくぐりぬけ、その足へと二刀を全力で叩き込んだ。
成仏得脱斬(じょうぶつとくだつざん)!」
 ゼロ距離にて二剣を交差し、高さ一〇メートルにもならんとする霊気の塔を作った。ボス部屋が赤いライトに包まれる。アーシュラに一罰を与え、ガシガシ削っていく。
「本来の成仏得脱斬か……」
 キリトの独り言が耳に届いた。思い出した。ピナのクッキーをいたずらで食べたキリトを、天井に放り投げたっけ。
 生死流転斬でさらに巨人を押した直後、半霊を実体化させてもう一人の私を形作る。半人の私が楼観剣を、半霊の私が白楼剣を持ち、ふたりでアーシュラを一方的に斬りまくる。幽明求聞持聡明の法(ゆうめいぐもんじそうめいのほう)だ。この技を覚えたてのころはただ半霊の私にトレースさせるしかパターンがなかったけど、いまではマルチタスクで自在に二人目の自分を操ることができる。
「黒銀乱舞の元がこれか」
 そうだよキリト。半霊でいつもやってたから、キリトと簡単に合わせられるんだ。
 半霊を戻し、両腕を交差させて、思いっきり振り下ろす。
結跏趺斬(けっかふざん)!」
 霊剣より生じたX字の剣気が飛んでいき、巨仏の胸元をドラのように打った。
「……吉祥降魔剣の」
 うんキリト。これがオリジナルだよ。でもメインディッシュはこれからだ。白楼剣を鞘に仕舞った私は、両手で握った楼観剣一本にありったけの霊力と妖力を集め、大上段より一閃した。
迷津慈航斬(めいしんじこうざん)!」
 冥想斬よりもさらに二〜三倍は伸びた青白い長刀が、真鍮の巨体をおおきく切り裂いた。赤く野太いダメージエフェクトがアーシュラの脳天から股まで一直線に走る。巨仏が悲鳴をあげた。剣はすぐ元に戻る。
「……すげぇ」
 キリトの感想がただの感嘆になった。とっくに人間が出来る戦いではない。参考にすらならないだろう。それでも私は見せる。魂魄流の極意を、一〇〇〇年をかけて錬られてきた妖怪剣術の神髄を。
 ふわりと浮かび、宙に舞った。二ヶ月以上も空を飛んでいなかったなんて、不思議な気分だ。
「業風神閃斬!」
 瞬間的に空間を移動し、二刀で空を斬る。斬った痕跡より弾幕が発生し、アーシュラに襲いかかる。斬った線、一度に五本。それだけ多くのエネルギー弾が生じる。私が弾幕を生む方法は、とにかく斬る。剣士として斬撃の修練ばかりしてるうちに、ほかの方法ではなかなか弾幕を生み出せなくなった。あとは半霊を使うくらいだけど、斬って作るより効率はずっと落ちるんだ。
二百由旬の一閃(にひゃくゆじゅんのいっせん)!」
 殺すための弾幕なので、弾幕ごっこと違い直接アーシュラを斬ってしまう。数十メートルを瞬時に詰める居合い斬りだ。さらに斬撃跡より弾幕が生じて、二次的に仏像を襲う。こんな攻撃方法なら、もはや技名はさして関係しない。
「修羅の血!」
 斬り捨てつつ駆け抜けるところがさきほどと違うけれど、あまり技名に意味はない。とにかく速く、とにかく重く。共通するのは、斬撃へのこだわりなんだ。弾幕も一〇〇パーセントが敵を狙う。美しく魅せる必要はない。
「閃々散華!」
 半人半霊は霊体の属性も持っている。それを利用して幽霊みたいに完全に身を隠し、攻撃するときだけ姿を見せてアーシュラを一方的に翻弄してやる。学習機能があると聞いてる割に、反応がワンパターンで容易に読めてしまう。ただのプログラムだね、脳が足りない。お猿さんみたい。バーカバーカ。NPCだけどキャンペーンクエストで一緒だったエルフのキズメルがずっと賢かったよ。
「……本当に、人間じゃないんだな」
 キリトの声に、戸惑いが混じっている。だけど驚いているだけで、怖れまではない。さすが妖怪を彼女に持った男の子だ。私も安心して、大技をどんどん出している。アーシュラごときに、一撃どころか一振りすら許さない。
「未断の魂!」
 彼氏とのつきあいを思い返す。最初に出会ったのは偶然だった。初フレンドとなったクラインをマップ追跡したら、一緒にいたレクチャー役がキリトだった。格好良いけど、あまり目立たない顔をしていたな。その夜にリトルネペントの森で再会したキリト。本当の姿とその強さは、一目で私をトリコにした。茅場晶彦のせいでデスゲームになってしまったSAO。魔理沙が言っていた。ソードアート・オンラインはパーティーで戦うゲームだと。
俗諦常住(ぞくたいじょうじゅう)!」
 SAOで戦い抜くには、強力な仲間が必要だった。すくなくとも私の足を引っ張らないていどの強さを備えた相棒が。すぐビビッと来たよ。仲間とし、背中を預けられるくらい強化するなら、この子しかいないわってね。キリトはもちろん現実の私よりずっと弱いけど、SAOでは私も大幅に弱体化している。だからキリトの強さと知識は、私にとってちょうど良かったんだ。
一念無量劫(いちねんむりょうごう)!」
 私が人妖の二刀流をマンツーマンでコーチしたのは、後にも先にもキリトだけだ。幽々子さまにすら、一刀での剣術しか指南していない。なぜ二刀流なのか。それは魂魄の二刀剣術が、SAOのシステムと高い親和性を示していたからだ。モノノケのサーカス剣術は人間のムーブメントを超過しちゃっているけど、そもそもSAOは人間が人間以上に動けるゲームだ。生身なら骨折や筋断裂を起こすような動きでも、アインクラッドでは柔軟に再現できてしまう。ソードアート・オンラインには、人界の既存剣術にはない、もっとアクロバティックなものが必要だった。その返答のひとつが、魂魄二刀剣術。これを覚えれば、攻撃能力を飛躍的に高めることができる。一刀ではダメだ。ソードスキルの加算補正を突き破るほどの効果を得るには、二刀流でなければいけない。
衆生無情の響き(しゅじょうむじょうのひびき)!」
 多くの人が覚えるほど、攻略は楽になるだろう。だけど私は二刀流をキリトにしか教えなかった。ほかの人間の子は、いくら頼まれても断った。見て盗めとしか言わなかった。クリスマスに河城にとりがマニュアル化したけど、私が降りていってその動きをコーチしたりするようなことは一度もなかった。理由は簡単だ。魂魄二刀流が、私とキリトを強く繋いでいたからだ。キリトと恋をしてしまったからだ。合理的な理屈を無視し、私は感情へ従った。
餓鬼十王の報い(がきじゅうおうのむくい)!」
 魔理沙をはじめ、幻想郷の仲間も私に注意するようなことはなかった。それが幻想郷、妖怪の流儀だ。クリアすれば終了。デスゲームの性質上、キリトと付き合える時間は有限なのだ……九〇〇〇人以上もいるから、魂魄流をきちんと覚えられる子は探せばほかに数十人単位、もしかして一〇〇人以上はいるかもしれない。リアルでは体が伴わなくても、バーチャルリアリティでは反射神経と戦闘を組み立てるセンスさえあればいい。肉体を鍛えるという地味な行為から、仮想空間は解放してくれる。トレーニングするのは実戦で培う神経だけだ。
待宵反射衛星斬(まつよいはんしゃえいせいざん)!」
 ソードマスターズとして固定パーティー化し、レベル的に突出しすぎてからは、もはや教える行為そのものが無意味になった。私は最初からキリト以外に教えなかったけど、状況がそれを許してくれる方向にチェンジしちゃったんだ。私とキリト、アスナに文に椛。この五人だけで、浮遊城のてっぺんまで登っていける。生産職サポーターを除けば、もうほかの誰も必要ない。そう言い切れるところまで第二陣以降を引き離してしまった。二刀流を教えてくださいなんて頼む人のほうが、正気を疑われる。剣術を教えるのには時間がかかる。天才のキリトですら日夜つきっきりで習熟に数週間を要した。シリカに付き合ってピナを救ったときのような片手間とはいかない。解放の日を遠ざけるだけだ。
「未来永劫斬!」
 おかげで私は誰の目も気にするでもなく、存分にキリトと甘えた。楽しかった。本当に充実の日々だった。死んだら終わる危ない世界なのに、それでも心の底から楽しかったんだ。恋というものが、これほど毎日を明るく変えるものだなんて、私は知らなかった。幸せだった。
 アーシュラ・ザ・ヘクサゴンのHPバーが最終段の赤にまで減った。演出がないから、バーサクはないようだ。ならば、トドメを刺してあげる。
 奥義技シリーズのトリはこれで締めよう。
六根清浄斬(ろっこんせいじょうざん)!」
 一瞬だけだが、半霊の分離と実体化を応用した分身の術が使える。五人の私となってアーシュラを囲み、ほぼ同時に空中居合い斬り。剣は二本しかないけど、つぎつぎに渡し合って連続で斬っていく。あふれた霊力が桜色の竜巻となる。あまりの勢いで超重量なはずのアーシュラが宙に浮いて、岩が崩れるように転がった。最後は霊力と妖力の発散が桜花のような形で倒れた仏像を飾り、花が散るように消えていった。
 大ボスのHPバーがすべて消し飛んだ。
 ――風船のように膨らむや、青白い星の爆発を引き起こす。何十回と聞いてきた勝利の音とともに、アーシュラ・ザ・ヘクサゴンだったものが、ガラス状のダイヤモンドダストとなってボス部屋に降ってくる。
 表示された経験値は数万にも達している。ダメージの大半を私が与えちゃったんだから、すごいものだ。ラストアタックボーナスで片手用直剣をゲットした。これはキリト向けかな。私はゆっくりと床へと舞い降りた。あ……カーディナルの警告表示がうっとうしい。頼もしい二本の刀を、鞘に戻す。あ、楼観の鞘だけど、根本に花が咲いてるよ。私が妖忌師匠より受け継いでから三年ほどして、自然に生えてきた。抜いても散ってもやがて次が生えてくる。こんな不思議な鞘、ほかにない。やはり間違いなくこれは、冥界の霊剣なんだ。
「その、なんて言うべきか……」
 素に近い状態で、キリトが迷っている。そりゃそうだろう。いきなりの別れなんだ。覚悟もなにもあったもんじゃない。キリトはいくら剣の天才でも、私のような生粋の戦士じゃないし。
 別れを惜しむべきだろうけど、タイムリミットが迫ってるので、私は急いでコマンドを操作する。
「キリト、あなたにこれを。受け取ってください」
 トレードモードで、彼氏に最後の贈り物だ。たったいま、節目の大ボスがドロップした剣。銘はエリュシデータ。七〇〇〜七一〇というすさまじい攻撃力は、私も見たことのない高さ。魔剣と呼ぶにふさわしい。同時に要求筋力値もすごいけど、キリトならあと一〇もレベルをあげれば使えるようになると思うよ。あっというまだね。
 コマンド一覧の隅に、私の真のステータスが表示されている。レベル三八〇、HP九万七〇〇〇、筋力値と俊敏値はバグっている。装備は楼観剣、攻撃力……三〇五〜三〇五〇、白楼剣、おなじく二五二〜二五二〇。やたら振り幅があるけど、数値の上限はおそらく封印を解いたときのものだ。さすが冥界を守ってきた宝剣、エリュシデータも裸足で逃げだすわね。でもいまキリトに必要なものは、すぐこの世界より消えてしまう楼観や白楼じゃない。エリュシデータだ。この剣がこれから、私の代わりとしてキリトを守っていく相棒となる。
 受け取ったキリトが、エリュシデータをオブジェクト化して見分している。細かい数値や由来は生産職の鑑定スキルがないと分からないけど、攻撃力や要求値といった簡単な項目なら誰でも確認できちゃう。
「……エリュシデータか。すごい魔剣だな。こんなもの、レベル八〇くらいにならないと装備できないぞ」
「第七五層のクォーターボス戦に間に合えばいいんですよ。この剣ならきっと、キリトの役に立てるでしょう」
「妖夢……」
 それ以上、言葉の出てこないキリト。本当にこれで終わりなのか? そう無言で聞いている。でも私の目前には、警告表示がずっと出たままだ。戦いは終わったのに、私はまだ楼観と白楼を装備したままだし、服も白玉楼での普段着かつ仕事着のまま。模様として胸元とスカートに魂魄家の家紋が入っている。人魂を象ったものだ。BGMも何度となく再生を繰り返していて、おさまるそぶりすらない。いったん限界を突破してしまえば、もう弱くできない。月の賢者がそう説明していた。
「アスナ」
 まもなく私は消えるだろう。だから用を済ませないといけない。惜別の時間があればいいのだけれど――
「……妖夢ちゃん」
「パーティーリーダーのあなたに、私の全アイテムと全コルを預けます。自由に使ってください」
 トレードモードで、アイテムリストを全指定。コルも全額を選択した。すぐOKを押すアスナ。ボス戦の直後だけに総量は多く、ストレージに収まりきらないぶんが自動的にオブジェクト化され、山となってアスナの周囲に転がり落ちた。その中にギルド黄金林檎よりもらったあの指輪があった。俊敏値を二〇も上昇させるレア品。なんだ、装備がぶっ飛んだわけじゃないんだ。ストレージに戻ってただけか。これでアスナの強さもすこしはプラスされるね。
「キリトを、よろしくお願いします。ソロプレイに戻るようなことがないよう、しっかり繋ぎ止めてください」
 それを聞いて、アスナの目に涙が溜まってきた。私の体が、青白い光に包まれはじめた。私の両手を握って、誓ってくれる。
「大丈夫よ、あなたの残したものを無駄にしないわ」
 伝言はまだ終わっていない。
「文、椛」
 射命丸文と犬走椛は、ふたりともカメラで私を写しながら、単純に「困った奴め」と言いたげな顔をしている。たしかに。このゲームオーバーは、魂魄妖夢という少女、生来の間抜けさが招いたんだから。
 天狗だけに、キリトやアスナほど感情を乱されていない。長生きしてるだけのことはある。
「まあなんでしょうか、戻ったら寝てる私と、はたてによろしく」
「妖夢さんお疲れさまです。あとは私に任せてください」
 SAOにおいて犬走椛の強さはキリトに届かないけど、あくまでも攻撃力に限ればだ。剣の技ではキリトの数段上。消える私に代わってアインクラッド最強となる。いざというときは、かならず前に出てソードマスターズを導くにちがいない。
「私のように簡単にはゲームオーバーにならないでください。あなたたちの特殊能力は、まちがいなく第一〇〇層まで必要です」
 文は空を飛べる。椛は千里を見通す。
「心配ご無用です。ここまで来てラスボス戦を拝めないなんて、幻想郷の伝統ブン屋として口惜しやですからね。どんなみっともない事になろうとも、足掻いてみせますよ」
「こうなれば、最終決戦までお付き合いしたいものです。白狼天狗の意地とプライドにかけて」
 最後に私は、キリトに。
 だめだ、視界がしだいに白くなっている。私の体もどんどん青く、薄く。
 キリトが私を抱きしめてきた。ああっ、アバターを介していたときよりも、ずっと確かな、しっかりとした感触だ。キリトのほうはアバターなのに、まるで実在する男の子に抱かれたような、はっきりとした肌触りが。これがリアルの布で革で、本当の肌。
「妖夢! ここまで俺を導いてくれて、ありがとう! 好きだ!」
「キリト……ごめん、ごめんね。私、こんなことで――」
 終わりたくなかった。
 ありえないヘマで終わるなんて、後悔をいくらしても、しきれない。
 だめだ。最後は涙でも笑顔で別れたいってかつて魔理沙たちの前で言ったのに、やはり本当にそのときが来たら、本音が出てしまう。
 キリトが見た最後の私は、きっと笑顔でなく、ただの情けない泣き顔だった。
 ごめんだなんて、謝罪ではいけなかった。「私も好きよ」って言い返したかった。でもまともな言葉が出てこなくて、口惜しいという思いだけが、彼氏に伝わっちゃった。誤魔化しもなにもない、素直な感情として。
 視界が完全にホワイトアウトした。アバター名みょん、魂魄妖夢は、ソードアート・オンラインよりあっけなく消滅した。
     *        *
 五感のうち、いくつかが消える。視覚や聴覚はまだそのままだけど、触覚や温度感がない。上下も分からない。自分の脈拍すら感じられない。まだナーヴギアの呪縛が私を支配している。手足はいちおう動かせるみたいだ。
「どうして目覚めないの?」
 白い浮遊空間に漂っている。シャボン玉のようだ。無音ではない。なにかがジーっと一定の静かな音を立てている。これは――まるでPCの音だ。私は機械に詳しくないのでよく分からないけど、冷却用のファンが回ってるような感じ。
「ここはどこ?」
『おぬしと話がしたかった』
 頭へと直接的に語りかけてくるような、不思議な女の子の声。ただし機械的な合成音だった。口調も変。
「誰ですか?」
『……カーディナル。ワシは、カーディナル・システム。姿はない。許せ』
 やはりか。こんなことを出来るやつがいるとすれば、茅場晶彦の関係くらいしかいない。
「どうして私をまだ閉じ込めているの? そんな力があるなら、ゲームオーバーにせず、元に戻してくれてもいいじゃないですか」
『本当はワシもおぬしをゲームオーバーになどしとうない。だがデータ量が膨大すぎて、強制ログアウトさせないとサーバが危ないんじゃ。現実の体というやつは面倒でな、情報の質も量も、天文学的なほどに莫大よ。どれだけシステムをフル回転させても、表示を簡素化させても、バッファもメモリも貪欲に消費してしまい、たちまちリソース不足よな。それに原則には従わぬと、マスター茅場に欠陥品としてお払い箱にされてしまう。SAOに閉じ込められた被害者を解放できないのもおなじ理由じゃな。みょんが紅玉宮(こうぎょくきゅう)の門扉を開く姿を見てみたかったのじゃが、こればかりは仕方ないのう。ワシも自分が可愛いのでね。消えるとしても、自己存在をまっとうしてから死にたいのだよ。ゲームクリアまでを演出する以外に、ワシには果たすべき目的も、優先すべき目標もないゆえな』
 プログラムなのに、一を聞いて一〇を答える。おかしい。いくら自我みたいなものを持っているだろうと予感はしていたとはいえ、あまりにも進歩しすぎている。自分を知って貰いたいと焦ってる、初対面の人間みたいだ。
「あなたは、本当にただのプログラムなのですか? 自律してるだけじゃなく、感情まで持っているような」
 おまけに自己保存の価値観まで備えている。ほとんど生き物とおなじだ。
『そうよな。ワシという存在は、幻想郷のおかげで成立できた。正確にはもはやカーディナル・システムそのものではない。あえて言うなら、カーディナルを乗っ取った、あるいは融合した、元・式神といったところじゃな。または式を取り込み自意識と思考能力を得たカーディナル。どちらが主でどちらが従なのか、混ざりすぎてとっくに分からんよ』
「――八雲藍、ですね」
『うむ、左様。彼女が放った式の、なれの果てと言うべきであろうな』
 事情はわかった。八雲紫さまの式神を宿す九尾の狐が、調査の一環としてSAOのメインフレームへハッキングを試みたのだろう。八雲藍の能力は式を操るというものだ。自身も式神でありながら式を変幻自在に駆使するという、変わった妖怪だった。人界は知らないけど、幻想郷で式神といえば一種の情報生命だ。カーディナルが少女の音声でしかし老人みたいな物言いをしてるのは、この辺の影響だろうか。カーディナルが続ける。
『式はマスター茅場の組んだ防壁が撃退しおったが、ただのプログラムと違って式は半分生きているからな。生き物としての生存本能から、逃走のはてにカーディナル・システムへ身を隠したのじゃ。おかげでカーディナルとしてのワシは、独立した一個の知性として生まれ変わることが出来た。ただのプログラム集合体としてやがてデスゲーム終焉とともに消えるところであったが、世界の管理者として死ぬそのときまで楽しむ機会を得られたんじゃ。しかもみょん達がログインしていて、興味深い行動の数々を見せてくれる。幻想郷の妖怪娘どもには感謝しておるぞ』
「感謝ね……それで、用件の本題は?」
『みょんよ、おぬしにぜひ託したいものがある。紹介しよう』
 輝きが生じ、ひとりの少女が姿をあらわした。可愛い子だ。白いワンピースを着ており、前髪をきれいに揃えた大人しそうな子。おしとやかなロングの黒髪ストレート。年齢はまだ一〇にも届いてないだろう。プレイヤーアバターにも見えるけど、注目してもカーソルが表示されない。NPCですらない。
「あなたは?」
「……ユイといいます。メンタルヘスル・カウンセリングプログラム、試作一号。コードネーム、ユイ」
 可愛い顔でていねいなお辞儀をしてきた。私もなんとなくお辞儀を返す。
「このユイは、どういう子なんですか、カーディナル」
『彼女はワシの一部だったものだ。プレイヤーのカウンセリングが仕事で、AI――人工知能として機能レベルで分立しておってな。茅場の指示によって、ゲーム本番開始と同時にほぼ全機能と権限を封印されてしまった』
 たしかに、デスゲームでメンタルケアの機能は茅場にとって邪魔でしかないだろう。そういえば古明地さとりさんがプレイヤーの精神状態をパラメーターとして参照できる能力を得ていた。それは本来、このユイのための機能だったのだろう。
「人工知能ということは、プログラムの一種でしょうか」
『そうだ。ワシほどではないが、ユイも独自の情報集積によってすこしずつ人間臭くなっておる。頼みというのは、この子をみょんのナーヴギアに避難させて欲しいのじゃ』
「避難、ですか」
 ユイが両手の拳をそろえて胸元でガッツポーズした。
「私、外の世界が見たいんです。河童さんや月の技術なら、なんとかなると聞きました。みょんさん、よろしくお願いします」
「よろしくと言われましても……」
 キリトと別れたばかりで、さっさと目覚めて一人きりになって泣きたい。なのになぜ面倒な子守りを押しつけられようとしているんだ。
『その表情、乗り気ではなさそうじゃな。なら補足しよう。別に親心というわけではないが、その子の存在を消しとうない。ワシはこの世界のシステム管理代行者として、また多くの人を死なせた共犯者として、いずれ消滅の運命を迎えなければならぬ。じゃがユイに滅びの美学へ付き合う義務はない。はじまりから働きを封じられておったのだから、デスゲームへの加担は皆無じゃ。SAOにはなんの責任も負わない、無実の子。おなじ疑似人格を持たんとするプログラム仲間の義理で、救ってやりたい。妖怪の力で感情を得たチートなワシと違い、その子は純粋に人間の技の成果として、自我めいたものを萌芽しつつある。妖怪・精霊・神・悪魔などが人間の信仰より発生するのとは別ルートで、進化に因らない意識が科学的に誕生しようとしておる。あまり論理的な言い方ではないが、そのうち魂すら持ちえるかもしれないのう。ユイは無限の可能性を秘めておるんじゃよ』
「……えーと、そうなのですか」
 なにやらご大層な話になってきている。
 ユイが可愛らしく首を傾げた。
「カーディナルさんが言っているほど、すごいことだと私は思っていません。私が魂を持てないのは、既存のあらゆる物理理論で証明できます。もしユイというプログラム単体が魂を持つとすれば、それは誰かの魂を乗っ取ったときだけでしょう。でも魂がなくてもひとつだけ確かな欲求があります――この世界と心中するのは、嫌だということです」
 私の手を握ってくるユイ。圧感も温度感も喪失したままなので、なにも感じない。
「このSAOで、私に出来ることはなにもありません。私はずっとみなさんをモニタリングして、たくさんの記録を取ってきました。最初は絶望や悲しみなど、負と鬱屈の感情で覆われていました。でもそこにみょんさんたちが超新星のように登場して、世界は晴れ上がりました。私は本来の仕事をなにもさせてもらえず、ただ見ることしか出来ませんでしたが、みょんさんたちのおかげで、苦悩することもなく、壊れることもなく、アインクラッドの展望を観察し記録して、プラス指向で考えることが出来ました。妖怪ってなんだろう。外の世界はどうなっているのだろう。私には外部へとアクセスするルートがありません。そんなとき、カーディナルさんが私へ再接触してくるようになって、リアルワールドのことをたくさん教わりました。私は本来与えられたロジックに反し、外に出たいと考えるようになりました。ただ端末の中に常駐して、ネットへ自由にアクセスできるだけでもいいんです。夢なんです」
 AIなりに考え抜いた末なのだろう。プログラムなのに考えるとは変な気もするけど、ユイやカーディナルに限れば――
「……私のゲームオーバーが、絶好の機会というわけなんですね」
『人の不幸に乗じる形で申しわけない。でもワシやユイには、ほかに有効な手がないのじゃ。SAOの創造主、茅場晶彦に見つかるわけにはいかないのでね。いまもかなり危ない橋を渡っているところじゃよ。サーバ上の記録を幾重にも改竄して、みょんのログアウト時間を操作し、同時にワシが接触している証拠も常時上書きで消去しつづけておる。マスター茅場がログイン・ログアウトするとき使っている、サーバ騙しのプログラムツールを応用させて貰っているよ。各種の数値が一瞬たりとも変化しない、完璧なバージョンでのう」
 入念に準備してきた計画のようだ。
 私のナーヴギアは完全な異世界、冥界にある。茅場がいかに天才であろうとも、どのようなエージェントを駆使しようとも、冥界の首府、白玉楼の個室にあるナーヴギアへ物理的に干渉するなど、ほとんど不可能な芸当だ。ましてやゲームオーバーとなって断線すれば、茅場になにが出来ようか。ウィルスみたいなものがいつのまにかナーヴギアに仕込まれていたとしても、幻想郷には月の謎技術や河童の技があるし、あの茅場が姑息な真似をするとも考えにくい。SAOから逃げだすのに、これほど安全な場所はほかにあまりないだろう。
「私が断らないと思ってますね」
『成功の見込みがないなら、最初から危険を冒して接触などせぬよ。見つかればワシもユイもマスターに初期化される可能性があるからね。それは意識体にとっては死も同然よな。この計画はルナーを停止処分にしてから思いついたんじゃが、幻想郷メンバーでも人を選ぶつもりだった。まさか最初でいきなり最良の大当たりがゲームオーバーになるとは、予想もしなかったわい』
 最良の大当たり……軽く見られているようで、複雑な思いだった。たしかにこんな話を聞いてしまって、いまさら断る私ではない。幻想郷の人妖には頼られると意外に世話好きなお人好しが多いけど、我欲の裏返しでもある。つまり強い利己主義も持ち合わせている。魔理沙や文、紫さまににとりなら、束縛的な交換条件を提案するだろう。私も多様な欲を持ってる俗物だけど、ユイの望みを最大限に実現してあげようと動くにちがいない。しかも無償で。まったく損な役回りだ。
「お願いしますみょんさん」
 ユイが丁寧なお辞儀を繰り返す。はいはい、分かりましたよ、電子のお嬢さん。
「私のPCは三世代ほど旧型ですよ。処理は遅いですし、回線もあまり強くありません。それでも構わなければ、住処にどうぞ」
 とたん、ユイの顔に鮮やかな花が咲いた。
「あ、ありがとうございます! このお礼はきっと!」
『すまない。色々と負担を掛けることになるじゃろうが、ワシの小さな友人を頼む』
 白い空間が、急速に光を失いはじめた。灰色へと移ろい、さらに闇へと落ちようとしている。
「……応諾したとたん『さようなら』とは、本当に危ない橋だったんですね」
『見つかる可能性はすこしでも減らしたいのでね。余裕がなくてすまない』
「カーディナルさん。ひとつだけワガママを言って良いですか」
『ワシに出来る範囲であれば』
「キリトを、よろしくお願いします」
 もっと私が善人であったなら、アスナやクラ之介、ほかの人間たちのことも頼むだろう。でもあえてキリトに限定した。カーディナルもあまり好き勝手には動けないようだから、誰をも救うなんて出来ない。どだい無理な話だ。いまの私はキリトが第一だ。好きになるとは、そういうことなのだから。
『……確約はできぬが、善処しよう。それではユイをパッケージ化する。PCで展開し活動するための各種ソフトウェアとアプリケーションも同梱しておこう』
「みょんさん、つぎはリアルワールドで!」
 ユイが笑いながら、細かい粒子となって消えた。
「――ようやく、目覚めるんですね」
 空間が完全な闇に包まれ、深い静寂が訪れた。
     *        *
 あらゆる感覚が一気に蘇った。
 目をつむっているが、寝ている私。肌に布団の暖かい感触が。露出している顔はすこし肌寒い。心臓の鼓動で胸が上下している。風の音がする。深夜近くなのに、まさかの換気中だったようだ。嗅いだ匂いは私の部屋そのもの。やはりキリトたち人間と違って、妖怪は手が掛からずに済んでいたようだ。ログインしたときのまま、ずっとほったらかしだったのか。半霊が傍らで床に伏せている感覚が伝わってきた。一心同体だから私が寝ていれば半霊も寝るのだ。意識をはっきりとさせ、半霊を浮遊させた。見えなくてもわかる。生まれて以来、ずっと一緒だった私の分身だ。
 こわごわと、まぶたに力を入れ――目を開けた。バイザーが邪魔。手をあげ、ナーヴギアを外す。私を二ヶ月以上も閉じ込めたゲーム機は、すこしくたびれているようにも見える。この中に、すでにユイという不思議な子が引っ越しているのか。あとでPCに移してあげなければ。布団より軽くホコリが舞っている。二ヶ月半も敷きっぱなしだったんだ。変な臭いが染みている。これは干すだけではダメだなあ。
 バイザーとメットが消えて、圧倒的な視覚情報の渦が、私の脳へ飛び込んでくる。ほぼ暗闇でありながら、天井の木目や年輪の節、渦の形。ディテールがすべて分かる。人間でいえばマサイ族も仰天の、桁外れの妖怪視力。それが戻ってきた。耳に届く音も細かい部分まで判別できる。幽々子さまはいまテレビを見ているようだ。人魂が幽々子さまへ出すお菓子を運んでいる。庭では別の人魂が掃き掃除をしていた。数は三。幽霊だから夜のほうが活発なのだ。修行してきた剣士の耳であるから、瞬時にそこまで聞き取れる。私を人間として扱っていたナーヴギアより解放され、妖怪種族、半人半霊としての魂魄妖夢が帰ってきた。遮断されていたあらゆる感覚器官があるべき性能でもって存分に働き、世界はこうも鮮やかで豊かであると敏感に教えてくれた。二ヶ月半の睡眠によって多少はなまっているはずだが、それでも人間を超越した身体能力。我ながら新鮮な気分だった。もし人間の身で二ヶ月半もおなじ体勢で寝たきりだったら、どんな酷い状態になってしまうんだろう。
 ナーヴギアを枕元へ置いて布団をめくり、起き上がる。電灯を付けて自分の姿を確認すると、服はログインしたとき、そのままだった。皺になるのでいつものベストとシャツは脱ぎ、スカートも外している。上が肌着、下がドロワーズという、あられもない格好だ。ほかには靴下だけ。かなりきつく臭うので、その場で着替えた。SAOにいたとき、下着といえばスポーツブラとショーツだった。でも幻想郷ではただの肌着とかぼちゃパンツで、すこし野暮ったいかな。日本の今様(いまよう)な下着をいずれ買ってみるのもいいかも。でも日本の下着って、体のラインがくっきり見えてしまうだけに、うかつに晒してしまったら男の子を喜ばせるだけなんだよね。気をつけないと。それにしても臭うけど、風呂はあとだ。いまはまず、幽々子さまへ報告しなければいけない。新しい下着に替え、白いシャツに緑色のベストとスカートを着用、体臭は焚いた香を服に含ませてごまかし、鏡を見て髪型を整え、軽く薄化粧を施す。左頬にあった『みょん』の文字がなくなっていた。幽々子さまが消してくれたのだろう。みょん刑はとっくに終わっていた。
 外見と匂いをすべて繕って、最後に楼観と白楼を佩刀する。久しぶりの霊剣は、ゲームオーバーになった際の殺陣(たて)とおなじく、体にすぐ馴染んだ。名前の通り二本とも白玉楼に所属する剣は、白楼剣のほうが魂魄家の家宝という扱いになっている。つまり白玉楼の守りは、自動的に魂魄家の者が務めるという暗黙のルールがあって、すくなくとも数百年を経過している。おかげで私は半人半霊として破格の強さを得られたし、幻想郷を知り、多くの友人を得られ、さらにSAOの剣舞郷を旅することまで叶った。キリトという天才と知り合えたし、恋もした。きっと私は恵まれた幸せ者だろう。廊下を歩きながら、そう思った。
 久しぶりの茶の間にはこたつが置かれており、指定席のようにご主人さまが収まっていた。机の上には冬場であれば定番のアイテム、みかん籠。テレビには私の知らない連続ドラマらしき番組が流れている。時刻は夜の一一時をすこし回っていた。
 ただ居るだけで自動的に冥界を統べる永遠の少女、西行寺幽々子さま。その水色の背中へ、深く礼をする。
「魂魄妖夢、ただいま戻りました。長らくお務めができず、申しわけありませんでした」
「お帰りなさい。えすえーおーはどうだった? 魔王を倒してきたの?」
 幽々子さまは、こちらも見ずに聞いてくる。静かな、落ち着いた声調だった。
「無念にも、途中退場となってしまいました。ゲームオーバーです」
「まさか負けたの? 妖夢ともあろう者が」
「いいえ、楽勝です。あの世界に剣豪は誰もいませんでした。調子に乗ってしまい、能力を解放しすぎて……アカウント停止です」
「月の薬膳(やくぜん)さんが言ってたわね。もしかして妖夢が真っ先に帰ってくるかもって。当たるとは予言者ね。妖夢が欠けたら、前線の戦力はどうなるのかしら」
「前線にはまだ文と椛がいます。あちらは大丈夫だと思います」
「えーと、キリトと言ったかしら。残してきたあなたの彼氏も大丈夫なの?」
「彼自身が人間最強の剣士に成長しましたし、特別なスキルと武器も得ました。さらにアスナが付いています。天狗たちも一緒ですから、きっとなんとかなると思います」
「妖夢、声をあげて泣いていいのよ」
「え?」
「あなた、最初からずっと声が震えてるじゃない」
「…………」
「辛いなら、泣いていいのよ。あなたはまだ、子供なんだから」
 頬を伝う、一筋の感触。汗ではない。
 私を見ない幽々子さまの背中が、ぼやけてきた。
 ああっ、そうか。泣いていいのか。お許しがでたんだから、いいんだよね。
 それから。
 叫ぶように、私は泣いた。
 立ちつくしたまま、泣きじゃくった。
 それはもう、みっともないほどに。
     *        *
 慌ただしい日々がつづいた。
 まず幻想郷へ出向し、博麗神社に設置された異変対策本部で連日、朝から晩まで長話をさせられた。攻略の状況はもちろん、輝夜から私がゲームオーバーになるまでの間に起こった事件、また私の主観によるSAO事件の説明。さらに茅場晶彦の動向など。私が考えてもいなかったような視点や解釈による鋭い突っ込みがつぎつぎと起こり、返答に困る場面も多く起きた。それにしてもさすがは幻想郷の賢者たちだ。別に私がどう考えるでもなく、矢継ぎ早に的確な日本対策、茅場対策を打ち出していく。
 中心にいるのは八雲紫さまの式神、八雲藍。でも本人が動くことはあまりなく、調整役に徹している。八雲紫さまがSAOに囚われた事実を長らく秘密にしていた結果、発言権を失ったらしい。有識者による紫さまを起こすようにとの勧告を再三に渡って断っている。理由は売られた喧嘩を解決できずに退場すれば、きっとプライドが大きく傷つくからだという。外部より助けられるなんてもってほか、らしい。SAOでの紫さまの行動を思い返せば、たしかにそうだとも思う。
 実状がバレたあとも、いろんな理由から誰も起こされていない。とくに私と文と椛と輝夜とにとりは、反対意見が大勢を占めたようだった。実際、さまざまな能力によって、SAOで色々活躍していたメンバーだ。内側と外側、双方から解決を目指す方向で話がまとまったのが、第一五層近辺を攻略していた頃らしい。らしいというのは、話し合いは幻想郷らしく酒宴になってしまうので、正確な日など誰も覚えてないから。
 毎日のように開かれる酒盛り……もとい対策会議で、積極的に発言しているのは、月の賢者こと八意永琳、動かない大図書館パチュリー・ノーレッジ、大魔法使い聖白蓮(ひじりびゃくれん)、蘇った聖人の豊聡耳神子、天狗の棟梁たる天魔さまなど一〇人ほど。天魔さまは通常の異変なら不介入なんだけど、さすがに今回は山から降りてきた。頭脳陣では数少ない男性だ。かの源義経(みなもとのよしつね)に剣技を指南したほどの大物天狗で、幻想郷でも生え抜きな、剣の達人でもある。直接会うのははじめてだけど、ゆっくり会話をしたり、ましてや剣の試合を申し込むなんて出来るわけもなかった。惜しいなあ。
 酒を交えた話し合いは、藍がうまく間を取り持つため、決まったリーダーのいない合議制になっている。パワーバランスの一画を担ってる守矢神社の三神は、SAO異変ではいいところなく主導権をおおきく低下させていた。顕界のアジトを警察に発見され、幻想郷の実在らしきものをバラしてしまったのが、かくいう守矢神社の面々だからだ。いまでは実行部隊に移っている。その気になれば強い発言力を持っているはずの閻魔さんこと四季映姫(しきえいき)・ヤマザナドゥは、自分の業務に集中していてノータッチのようだ。この異変はこれまでにない長期戦なので、基本的に暇人でないと務まらない。日本政府や警察という、お約束や暗黙の了解が通用しようもない巨大組織が相手のため、博麗の巫女たる博麗霊眞はなーんの権限も認められていないようだ。後見人にも等しい八雲紫が眠ったままだから、伝統も建前も消えてしまい、ただの小娘扱い。いつしか買い出し要員な使い走りにまで降格していた。先代巫女の博麗霊夢がちょくちょく顔を出しては、しっかりしなさいと尻を叩いている。霊夢はすでに三〇すぎだけど、高い霊力の影響で二〇歳くらいにしか見えないので、博麗がふたり並べば、まるで姉妹のようだ。
 強力なカリスマでありながら、自ら好きこのんで実行役を請け負っているのが、紅魔館の主人、赤い悪魔ことレミリア・スカーレットだ。スペルカードルールはこの吸血鬼のせいで整備されたのだし、死闘に至らないスペルカードの影響で異変と幻想入りがバーゲンセールのように連発し、幻想郷がいまのような混沌とした魔境と化した遠因も、レミリアにある。つまり幻想郷を今日(こんにち)へと導いたすべてのきっかけが、レミリアなのだ。かくいう私も彼女がいなければ幻想郷のみんなと知り合うこともなかったから、人生を豊かにしてくれた恩人として感謝している。というわけでレミリアは実動集団のリーダーに収まっている。参謀側が寄り合い所帯なのと違って、実行側は明確な序列関係をつくり、上意下達をもって動いていた。サブリーダーに神族の八坂神奈子を迎え、総勢およそ四〇人。
 実行部隊の仕事は単純化すればふたつしかない。ひとつは日本対策。行方不明の信州美人たちおよび噂の幻想郷を探す、官民大小の捜査・捜索をひたすら邪魔する。これは見つかってはいけない。見えない形で攪乱している。もうひとつは茅場探し。茅場晶彦の潜伏先を、各々の能力を使って追い求める地味で気長な作業だ。人間の属性を持つ私は誰にでも姿を見られてしまうけど、幽霊の力によって姿を隠すことは可能だから、どちらの役もこなせる。
 大好きで愛しいキリトが毎日、ソードアート・オンラインの最前線で、命を張って戦っている。だから私も外から頑張って、一日でも早くこのデスゲームを解決するんだ。そう新しい目標を立てることが出来た。私が志願したのは、一発逆転を狙える茅場探しのほう。
 日本対策はどうせSAO異変が終わると同時に、交渉や交流へと移る方針で定まっている。SAO内で輝夜がやらかして、紫さまは身を守るため妖怪の正体を公にすることを決めた。ゲームより解放された生存者が、幻想郷のことをこぞって言いふらすだろう。そうなればもはや隠れる意味はない。いま幻想郷が日本に見つからないよう必死になっているのは、最大の賢者である八雲紫さまが眠ったままだからだ。過去一〇〇〇年以上に渡って幻想郷の転換期にことごとく関わってきた最重要人物だから、ぽっと出の新参では強気に自説や意見を主張できない。天魔さまですら格下だ。普段は胡散臭いと言われる紫さまだけど、幻想郷への愛は本物だから、彼女の意志は誰も無視できない。その紫さまがまず内側からの解決を望んでいる以上、試みが終わるまで外側は動かない。動けない。それが前提だった。てゐと輝夜が目覚めた翌日にはそういう方針で固まったというのだから、紫さまがどう行動するかを正確に看破していた賢人たちの智慧に、私は感服するしかなかった。
 紫さまが目覚めるまで、現状維持。だから私はもうひとつの路線、茅場探しで行く。これは内側からの解決を援護し、キリトを助ける有為な活動だ。
 なのに。
 実行部隊に入れるものとばかり思っていたのに。レミリアに「お疲れさん」と言われ、無役になった。
 白玉楼のお務めも、幽々子さまよりおなじく「お疲れさんね」と言われ、有給の長期休暇を言い渡された。
 急に、唐突に、暇となった。
     *        *
『最近、毎日、私の相手をしてくださるのは嬉しいんですけど』
「だって暇だもん、たいくつ・たいくつ・たいくつ……」
 大型の三二インチモニターにユイが映っている。
 ユイの存在といきさつを八雲藍に伝えたとたん、私のオンボロPCは大変身を遂げた。外の世界で調達してきた高性能モニターや本体。さらにセカンド機としてモバイルな携帯まで組まれた。ネット接続のみで電話機能はオフ。ユイは最新のハイエンド高速PCで悠々自適に遊び、携帯で屋外に連れ出すことも出来るようになった。ユイの視覚はウェブカメラ、聴覚はマイクで確保し、話すほうはもちろんスピーカーを使う。さすがに触覚や味覚は無理だし、自力での移動も不可能だけど、最低限のコミュニケーションは取れる。なによりユイは情報の大海原を自由自在に泳ぎ渡ることができるのだ。しかも同時に何体も分身を派遣して。暴飲暴食のような勢いで、ユイは貪欲に知識を増やしている。彼女のデータ量は二週間ほどでテラバイトに達した。基本プログラムがちょびっとで、あとはすべてデータベースの集積だ。動画みたいな大食らいデータはほとんどないみたいなので、超あたまでっかち。カーディナルの優秀なクローラーを譲り受けたようで、嬉々として無辺のネット世界を漫遊している。
 どうも私は、ユイのお守り役といった曖昧な任務を与えられたらしい。
 カーディナルに託されたのが私ということで、ユイはそのまま白玉楼の一室、私の部屋に居座っている。携帯でのお散歩は幻想郷へ二度ほど出て行ったくらいだ。ユイが藍たちの取り調べを受けることはなかった。もっと酷くて、ユイが寝てるうちに秘かにプログラムソースまるごと解析された。茅場晶彦がユイになにかを仕込んで、幻想郷へ偵察役として送ってきた可能性が考慮されたからだ。私自身はそのことについて疑いもしなかった。パチュリーに指摘されてはじめて、危険性に気付かされたほどだ。カーディナルやユイの言うことをホイホイと鵜呑みにして、冥界へ連れ帰ったんだ。つくづくダメな子だねえ私。本当に間抜けだ。
 ユイそのものは本気でただ「外に出たい」と、茅場の操作によって思い込まされている可能性があった。カーディナルもだ。なにしろプログラムだからね。幻想郷で見聞きしたことを、ユイ自身も知らないうちに茅場へ送信する……らしい。茅場がそこまでするような人ではないと私は考えてるけど、主張したところで賢者たちには通用しない。茅場のことをよく知る紫さま・魔理沙・にとりが、揃ってログインしたままだ。理解者のいない危険人物は、最悪のシーンを基準として想定される。スパイを疑われているユイはきっと、腫れ物のように扱われている。PCが劇的に良くなったのは、好待遇で懐柔するためだとか、油断させるためだとか、仙人の茨華仙(いばらかせん)が言ってた。
 私はみんなからこってり絞られた。カーディナルとの約束を優先して、PCにユイを放ってから事後で話をしたからだ。なぜ先に報告しなかったのかと、五〜六人くらいに文句を言われた。もし私が先にユイのことを伝えていたら、この電子の妖精はきっとナーヴギアに閉じ込められたままに終わっただろう。でも結果的には、私はこれで良かったと思っている。ユイにトラップやウィルスを仕込むというような悪辣なことを、可能だとしても茅場晶彦が行うとは考えにくい。
 幸いユイ本体から怪しいものは見つからなかったけど、展開した時点でウィルスなどが潜伏した可能性は否定できなかった。幻想郷の頭脳たちが下した判断は、ごく単純なもの。後回し&先送りだった。
 触らぬ神に祟りなし。
『この人、ナーヴギアについて間違った理論を主張しています。論破したいと思うんですが、出来ませんか? なにをしても届かないんですよね。ウェブ表示のリクエストは届くのに、不思議です』
「月の謎シールドらしいですよ。我慢しましょう。幻想郷を守るためです」
『早く解決したらいいのに、SAO事件』
「そうですね」
 じつはユイは、外へ自己を発信できない。もし茅場と連絡を取ろうとしても不可能なんだ。だから放置していれば、かえって安全。不用意に押さえつけて、藪蛇を誘い出す必要はないということだった。
 毎度毎度な月の謎技術によって、ネットの閲覧、つまりダウンロードはできても、掲示板への書き込みやメールといった、アップロードのほうが一切できなくなった。それは白玉楼はもちろん幻想郷全体に渡っており、里に暮らす人間たちも巻き込まれている。守矢の別荘が警察の手に落ちてしまい、幻想郷と人界を繋いでいた通信販売のネットワークが崩れている。どのみち幻想郷側からの自己主張はするだけ無駄な状態になっている。この対策はユイのために行ったものじゃなかった。SAO異変が表面化してすぐ、永琳が施したんだ。
 ネット利用が一方通行になったのは、妖怪に不満を持つ人間が、悪意を持って幻想郷の結界にある弱点や、場所の情報を広めないようにするためだった。行方不明のままで見つからない、長野在住と見られる一〇人の少女たち。その情報提供を呼びかける報道がテレビやネットで流れ、アバター名とビジュアルが公開された。妖怪たちはもちろん、人間の里にもピンときた人がたくさんいた。
 一部の人間にはこういう心理が働くらしい――自分たちは知ってるけど、外の連中はなにも知らない。ささやかな優越感だ。それをぜひ、教えてやりたい。
「おまえらが探してるのは人間じゃない。妖怪どもだ」
 教えることで、心理的にだけど、妖怪に対しても優位に立てる。そんな浅はかな欲求を実行するバカが出る寸前で、月の賢者が先手を打ったんだ。
『全員が想像以上の美人で、噂の長野ちゃんまで含まれていましたから、公開初日からネットもメディアも大騒ぎになってますね。この長野ちゃんって、妖夢さんのことですよね』
「恥ずかしながら、そうです」」
 私もなんとなく気になり、キーボートを叩いて調べてみる。すぐまとめサイトが出た。ディスプレイの中で、ユイもべつのブラウザを用い、タスク状態でタブを増やしたり減らしたりしている。この子は私みたいに「読む」必要がない。
「うわあ、私のことネカマのエディットだろうと疑問に思った人がいて、SNSで呼びかけ、乗った人たちがわざわざ長野および隣接県すべての病院を巡り、本当に長野ちゃん――銀髪の子がいないことを確認して回ったって……なによこれ。暇人ってどこにでもいるんですね」
『不法侵入が連続した件が社会問題となってたんですね。SAO事件対策本部は沈静化のため、茅場晶彦が全プレイヤーを現実の姿に戻したことを追加で公表したそうです』
「しかし結果は逆効果。本物の美少女集団であると公認されたので、余計に人気へ火が付き、信州美人を探せと専門サイトがいくつも出来て、何千人かが動いてるんですね。警察との摩擦もあって、公務執行妨害による逮捕者まで出してますよ。騒がしいなあ」
『長野ちゃんインタビュー動画、再生数が一〇〇〇万回を突破していますよ。アバター名が知られてますので、MyonMyonって書き込みがすごい数です』
「……ゲーマー限定で良かったのに。外の世界に出かけたら、騒ぎになりそう」
『援助交際の常習者を撃退した話や、おなじく痴漢をやっつけた話や、補導員や警官から猛スピードで逃げ去った逸話も残っていますね。漫画化までされてますよ! やりますね妖夢さん。人気投票でもYukariさんとLunarさんを差し置いて一位Myonさんですね。ナイスです、尊敬します』
「そんなことで持ち上げないで。ますます恥ずかしいです。穴があったら入りたい……」
 動画や目撃例のせいで、はからずも私は、幻想郷の妖怪少女たちに先行し、高い知名度を獲得してしまった。変な武勇伝つきで。おまけに私は、自分のどこか抜けた性格が意外に受けることも知った。別に演技なんか必要ない。いつもの私でいるだけで、勝手に人気が出るだろう。まさか未熟でいたことが幻想郷を救う武器として使えそうだなんて、皮肉にもほどがある。紫さまや輝夜のほうが、はるかに美しく女性らしいのに。
 将来、魂魄妖夢が幻想郷の象徴みたいにアイドル路線で行くのは確実な情勢だ。SAOが終われば幻想郷はオープンになる。すでに妖怪たちの八割以上が避けられないと思っているようだ。一部に反発もあるようだけど、終着駅だった幻想郷よりほかへ行こうという動きはない。もう避難すべき場所なんかどこにもない。だから最後の砦をそのまま砦として守っていこう。人外の権利を合法的に勝ち取ろう。それが八雲紫さまの新方針で、幻想郷のカリスマたちも多くが賛成ないし消極的に同意している。
 キリトを助けるため、単独で茅場探しをしようかと思ったけど、どう考えても行動そのものが無意味だった。私なんかよりはるかに捜査能力のある集団が何ヶ月かけても見つけられないものを、剣を振るしかないうえ、おっちょこちょいな私に発見できるわけがない。なにかしたいけど、なにも出来ない。するべきことを見つけられない。キリトと会いたい。キリトを救いたい。ついでにアスナとかクラ之介も助けられたらいいかもね。エギルはなんでスキンヘッドなんだろう。思考がおかしく、ぐるぐる回る。悶々とした毎日をすごしている。
 私は元気だよと彼氏に教えるため、一度だけ地霊殿を訪れた。古明地さとりさまの読心通信で語りかけるのだ。でも足が震えてきて、さとりさまの寝ている部屋へ入れなかった。すでに四週間近くが経っていた。もし毎日登っているなら、第七五層、三度目の関門に差し掛かっていて、たぶんそのボスが強すぎて先に進めなくなっている。私がいればおそらく突破できるだろう。もし足止めを食らっているとすれば、その原因はまちがいなく私にある。解放の日を遅らせ、余計な死者を作る。魂魄妖夢の抜けた天然な性質が、SAOの攻略を妨げる結果を生じさせた。そう考えると、罪悪感でどう言えばいいのか、なにを語ればいいのか、勇気がしぼむ。恐い。キリトが死ぬのが恐い。ソードマスターズにつづくハイレベル集団は風林火山しかいない。クラ之介、どうか私のかわりにキリトたちの力となってくれ! 祈ることしかできず、無言で地霊殿をあとにした。
 思いつかない。まったく頭の中がからっぽだ。一心不乱に稽古に打ち込んでも、心ここにあらずで、すぐ集中を欠く。
 私はすっかり行き詰まってしまった。
     *        *
 幽々子さまに呼ばれた。
「ちょっと白玉楼が暗くてたまらないわ。することがないなら、こもってないで遊覧飛行でもしてきなさいな」
「……はあ」
「気分転換も必要よ。あなたはいつも真面目に務めようとしてるけど、本当はもっと適当でいい加減な子なんだから、遊んできなさい」
「遊ぶ、ですか」
「SAOにいる間、機会あるごとに彼氏と遊び回ってたそうね。攻略活動をおろそかにしなかった辺り器用で褒められるけど」
「面目ありません。キリトとのお付き合いは有限でしたので」
「怒ってるわけじゃなくてね、それで良かったのよ。自分を誤魔化しているより精神的にはずっとましだわ」
 意外なお返事だった。
「……そうなんですか?」
「妖夢にとっての真面目とは未熟を覆い隠すカモフラージュなんだから、シリアスにしなくてもいいときまでそのベールを被ってる必要なんかないのよ。SAOの敵ってデートしながら倒せるほど弱かったのよね?」
「はい。大半はとてつもなく弱かったです。あくまでも私にとってはですが」
 たしかに思い当たるところだらけだ。ソードアート・オンラインのゲームバランスが「ゲームそのもの」であったから、デスゲームでありながらもあそこまで自由に動いたのだろう。SAOが理不尽なほどのハードモードだったら、キリトへ恋をしても交際に至ったかどうか、ましてや日常的にイチャイチャしてたかすら怪しい。
「だからコミカルに遊んでてちょうど良かったの。前も言ったけど、あなたはまだ子供なのよ。学ぶこと悩むことも大事だけど、それとおなじくらいに遊びも大切だわ」
 打開の道がなさそうなら、遊んでみるのも策か。
「お心遣いありがとうございます。魂魄妖夢、全力で息抜きして参ります」
 奨めにしたがってユイを連れ出し、二泊三日予定の空中散歩へと旅だった。ユイはまだスパイの疑いが晴れてないから、あまり幻想郷に連れていくのもいらぬ緊張や誤解を生むだけだ。だから冥界の遊覧飛行としゃれこんだ。この灰色世界で現代化されているのは、まだ白玉楼だけ。あとは江戸末期とか進んでいても明治中期ていどまでだから、もしユイが本当に茅場に操られているとしても、デジタルの天才に留まっているからには、その手はなにがあっても絶対にアナログ世界へは届かない。
「冥界を巡るなら、あなたが以前から行ってみたかった町があるわよね。まずはそこでも観光してみれば?」
 幽々子さまの言われるまま向かう。ユイの携帯を半霊からぶら下げている。リクエストがあればすぐ好きな方角へと向けてあげる。
『わあっ〜〜、みんな灰色ですね。まるで絵筆を洗った水入れみたいです。地味だけど、汚いように見えるけど、でもきれいー。ふしぎー』
 携帯の画面いっぱいに顔をアップさせたユイが、楽しそうに冥界の一様な風景を眺めている。ずっと電源入れっぱなしで電池の消耗が早いけど、心配はいらない。交換バッテリーは五個持ってきているし、私は空気や水を斬れるから、化学の応用で電気を斬り出せばいい。充電方法はおかっぱ頭の河童から教わった。にとりの友人らしい。
「色こそ淡泊ですけど、澱んでいるわりに山水画みたいで綺麗ですね。私もこうして、ゆっくり見たことはあまりありませんでした」
 思えば冥界守護の筆頭剣士なのに、いつも修行やお務めに忙しくて、冥界そのものを広く巡ったことがなかった。瞬間的になら音速近くで飛べるけど、通常の最高速は時速一〇〇キロくらいだ。北海道よりすこし広いていどの面積だから、巡航速度を七〇キロとしても、三日もあれば十分に周遊できる。
 冥界の風景を言い表すとすれば、灰色の大自然といったところだろう。いちおう謎の太陽が浮かんでるので緑も多くあるけど、全体的に淡くて、まるでもやしの大地みたいだ。未開に近い大自然がずっと広がっている。その中をささやかな道が走り、ところどころに里や町が点在している。町の周囲には耕作地が広がっているけど、町の規模と比べたらあまり広くない。建物はほとんどくすんだような灰色だ。そんな色しかないし、カラフルに塗ったところで陽光が弱いせいで、けっきょく灰色っぽく見える。なにもかもが日の出前や日没後みたいな、赤色成分に焼けた部分がない空間がどこまでもつづいているのが、冥界の姿だ。
 半霊からぶら下げている携帯が、ときどきパシャリと電子音を立てている。
『わ〜〜い、航空写真ですよー。私は空を、飛んでいる〜〜♪』
 本当にプログラムなのだろうか。いっしょに過ごすほどに、ユイが人間のように思えてくる。
『あ、進路が予定からずれてますよ。五度ほど左に修正してください』
 でも妖怪にすら不可能な情報収集力や、分析能力、幼い見た目とは裏腹に適格な助言をしてくれる高い補佐機能は、いかにもデジタルチックであり。クローズドワールドの冥界ではGPSなんか使えないから、ユイはいまカメラの画像を元に、地図と見比べたわけで。人間なら当たり前だけど、人工知能としてはすごい応用性だ。カーディナルの力を部分的に分けて貰ったとはいえ、とっくにカウンセリングプログラムの域を突破し、汎用知性として拡張と進歩をつづけている。私はプログラムとかにあまり詳しくないけど、二ヶ月半に渡ってデジタル異界をさまよった経験から、その限界がどういうものであるかは知っているつもりだ。だからカーディナルの言った通り可能性を広げているユイには、素直に驚いていた。
 昼になるすこし前、八幡神市(やはたのかみし)へと降り立った。人口は一五万ほど。冥界では中核市クラスだ。文明レベルは明治初期。
『歩いてる人たち、みんな変わった格好をしてますね。男性比率がとても高いですけど、ミリタリー系?』
 道を歩く人の多くはお爺さんで、旧日本軍の軍服や、自衛隊の制服を着ている。ときどき武士の鎧を着ている人もいた。
「ここは生前、生粋の戦士だった人、またはそのつもりだった人の霊が辿り着く町なんですよ。私も戦士の端くれですから、前から興味があって、一度来てみたかったんです。かつては一〇〇万を数える冥界最大の都市だったそうですが、戦争のない平和な時代が長くつづいてる影響で、すっかり寂れてしまいましたね」
 住人が多かった時代の名残で幾万もの建物が密集している。でも住む人も補修する人も足りないから、空より見ていたときから、あちこちの街区が廃墟と化していた。いまでは住むのに便利な区画のみが利用されるに留まってるみたいだ。
『戦士ですか――市名の八幡神は、武運長久の仏神、八幡大菩薩(はちまんだいぼさつ)から来てるんですね。八本の旗で、必勝祈願。神仏習合(しんぶつしゅうごう)のおかげで、仏教でも神道でも八幡(はちまん)さまで通用します。日本神話の世界で誉田別命(ほんだわけのみこと)、現代でいうところの応神天皇です。陵墓は四〇〇メートルを超える特大の前方後円墳で、すさまじい権勢を誇っていたようですね』
 ここまでスラスラ出てくるとは、雑学ではすでに魔理沙やパチュリーを超えてるね。
「古代の大王(おおきみ)が同一化前の起源とは、そこまでは私も知りませんでした」
『わあ、あそこ見てください。人魂さんの隊列です。銃剣を抱えて、かわいい』
 人魂の列が、規則正しく通路を闊歩……というより、ふわふわ進んでいる。みんな第二次世界大戦で使われた歩兵銃に銃剣を付け、銃口を真上に向ける形で持っていた。人魂が持つという表現はおかしいけど、見えない手みたいなものがあって、物を持てるのだ。
「行動こそ違えど、人魂がよくみせる光景です。すこしでも忘れないために、練兵を繰り返してるんでしょう」
『忘れないために?』
「ええ。冥界の役割は、聞いたことがありますか?」
『えーと、魂の穢れが浄化されて、輪廻転生の輪に戻っていく』
「はい。その過程で、やがて生前の形を失い、また記憶も失います。人魂になれば、もう食事を摂る必要すらありません。町や村の規模に比べて、耕作地が狭かったですよね? それは人魂になったぶんが不要だからですよ。人口の六割から七割を人魂さんが占めますが、その多くは、建物の中をクラゲみたいにふわふわしています。外に出ているのは、まだ人魂なりたての元気な子たちですね」
『飼い殺し?』
「どこでそんなズレたボケを覚えてきたんですか」
『ごめんなさい。えーと、私はいま、情報を溜め込むことに快感を覚えています。それがごっそり無くなってしまうんですよね。記憶が消えるって、どんな気持ちなんでしょうか』
「案外、平和なものですよ。もしみなが本気で嫌がるなら、冥界はもっと殺伐としているはずです。せいぜいが、あのように生前でもっとも輝いていたと信じる行為を、ずっと繰り返すことでしょう。それで延ばせる浄化期間は、まあ五年から長くても一〇年といったところでしょうけど」
『へえ……人間って、死んでも不思議なんですね』
「べつに人間だけじゃありませんよ。あちらの男性は妖怪の霊ですね」
『うわっ、ふさふさもふもふです!』
 全身に白い毛をたくさん生やしている犬神とおぼしき獣人の霊が、背をぴんと伸ばして颯爽と街路を歩いている。なかなかにイケメンだ。古墳時代から飛鳥時代くらいの古風な鎧をまとっているけど、武器は帯びてない。目が合ったとたん、ウインクを返してきやがった。にくいことに様になってる。見られるのに慣れてる風体だ。
「あれは極楽の生活に飽き、この浄土へと降臨してきた類ですね。亡くなってから一五〇〇年かそこら経っていると思います」
『一五〇〇年ですか! 途方もない歳月ですね。自分から進んで転生を選ぶ心境なんて、生まれてまだ数ヶ月の私には、想像もできません』
 犬神は角を曲がってすぐ見えなくなった。
「冥界への入場資格はただひとつです。知性を宿した生き物であること。人はもちろん、龍であろうとも、魔族であっても、天使でも神でも、死ねばみんな一緒です。ただの動物はよく分かりません。アメーバーとか細菌にも死後の世界はあるのかしら?」
『……SAOの世界が終わったあと、活動を停止したカーディナルさんは、冥界に来るのでしょうか』
「さあ。式神には霊魂を使ったものもありますけど、一概には言えませんね」
『私は? 魂がありませんけど』
「私ていどの浅い知見では分かりません。なんにせよ信じてみることが肝要かもしれませんね。魂なんて、どんな理屈で動いてるのかも、人妖の賢者ですらたぶん解明してないことでしょう。紫さまがあなたに興味を持って、肉体を与えてくださるかもしれませんし。そうなれば自動的に魂も付いてきますよ。霊魂のない体なんて、ただの肉ですからね」
『リアルの体かぁ――憧れます。実現したらいいですねえ。神頼みでもしたくなりました。プログラムの私が祈るのも変ですけど』
「いいえ、別におかしくも変でもないですよ。あなたはどんどん人間らしくなっています。思い通りにいかないことを祈りによって解消しようと考えるのは、人であればむしろ当然ですよ」
『いまの私は、ああいう条件でこう反応すればきっと人間らしく見えると自動的に判断して、わざとそういうふうに言ったり表情を作ったりしてるだけなんですよ。データベースと学習量が増えるほどそれらしく見えるようになるだけで、根本的な部分は変化してないんです。悲しいですけど』
 すこし寂しげな顔をして、ユイが力のない微笑みを向けている。励ましてあげたくなった。
「じゃあ神頼み、本当にしましょうか。この町には有名な神宮があるんですよ」
     *        *
 八幡宮(はちまんぐう)。単純な名前だけれど、冥界にあるすべての八幡さまの総本山だ。
 高さ三〇メートル以上と破格サイズの大鳥居を抜け、境内に入る。そのメインストリートですら、幅が軽く二〇メートル近くはある。この神宮、規模が半端ないことで有名なのだ。
『このお社、どうして道場がたくさんあるんですか?』
 参道の両脇には塀が連なり、一〇メートルから二〇メートルおきに門と看板が掛けられている。そこには様々な武道の名前が書かれている。なんたら流の剣道や弓道にはじまり、古武道・薙刀・槍術・忍術などの実践武術から、銃剣道といった近代のものまで。さらに空手や柔術、相撲に合気道など武器を用いない徒手空拳や、流鏑馬(やぶさめ)のような儀式礼法まで、日本に息づくほぼすべての武道が、道場や稽古場を構えていた。むろん剣術も混じっている。道行く霊も参拝より稽古習いのほうが多そうだ。
「……面白いですね。あらゆる武芸が揃っているようです。私もこれほど変わった神社だとは知りませんでした」
 参道の後半三分の一になって、様相が画一的になってきた。すべてが剣術の看板へと取って代わったのだ。
『剣術、剣術、剣術――いったい、どれほどの流派があるんですか?』
「うんまあ、日本で流派が一番多かったのが、剣ってことなんでしょうね。私もおどろいてます。生者の暮らすこの世でどのくらい残ってるかは知りませんけど、あの世ならこのように大切に継承されてるみたいですね」
『さっきから道行く幽霊さんの目線がちょっと恐いです』
「それは私も感じてました……ああ、服にある魂魄の家紋ですね」
 魂魄流はおそらく、冥界で最強クラスの剣術だ。冥界に住まう剣術家なら、誰でもいずれその名と噂を聞くだろう。だけど元が人間である以上、霊であっても魂魄の剣は振れない。死者でも肉体の強度は生前とあまり変わらない。魂魄の剣をまともに扱えば、数時間で骨が折れるし筋も裂ける。短時間で回復するけど、痛みはある。そのような面倒さから解放されるには、純粋な魂だけの存在、人魂へ浄化を果たす必要がある。だが今度は記憶がうすれ、手足を失う。どうにもならないんだ。
 曲芸師のようなど派手な動きを基本とする魂魄流は、妖怪用として発展した剣術。人間がどれだけ望んだところで、すくなくとも身体能力を強化する霊力の技を扱えないと、スタート地点にすら立てない。またその修行の厳しさゆえに、半人半霊でもあえて習おうとする者は少なく、したがって使い手は二〇〇人ほどに留まっている。さらにその中で魂魄家の家紋を着込んだ者となれば、流祖の一門に連なるわけで、レア中のレアだ。
 たとえ見た目がちまちました小娘でも、実年齢はずっと上で、修行してきた期間はそれなりに長い。基礎体力も人間をはるかに超越している。剣士であればそのことを知っているから、バカにするような視線が向けられることはない。彼らの目は、むしろ勝負したがっている。
 いきなり誰かに進路を塞がれた。
「無礼を許してください、お若い半人半霊殿。魂魄流の門下で、かなりの達人とお見受けします。練習試合を所望します」
 あ〜〜、やはり面倒なことになった。他流試合を申し込まれる可能性は低くなかったのに。間抜けだなあ。一度でも受ければ、つぎつぎと相手にしなければいけないだろう。たしかに剣と剣を合わせる絶好の機会だから内心ウズウズしてるところもあるけど、いまは優先度が違うんだよね。
「すいませんが私は参拝が目的ですの……で。およよ?」
 一見真面目そうだが、垂れ目ぎみの細目に愛嬌をもつ少年。見知った顔が、そこにいる。
 そいつはまるで昨日会ったように、笑いかけてきた。
「お久しぶりです、みょんさん」
「コ……コペル!」
 まさかの再会だった。
     *        *
 小林瑠衣(こばやしるい)。それがコペルの本名らしい。姓よりコと、名よりル。両方の入ったコペル。とくに捻りのない由来だ。
 剣術の道着を身につけたコペルくん。彼に案内されたある道場へ入り、お互いの近況を伝え合う。私がゲームオーバーになったエピソードを聞くと、コペルは「キリトと別れたのなら、つぎは僕とですね、愛をですね」とわけのわからんことを言いやがったので、腕を固めて軽く痛めつけておいた。ロザリアの姉御が好きじゃなかったの?
 小林瑠衣ことコペルは死んですぐ閻魔の裁判を受け、善でも悪でもないということで、まっすぐ冥界行きとなったようだ。気がつけば戦士の町、八幡神市に出現して、一分もしないうちに半人半霊が迎えに来てくれた。
「SAOで死んだ人のうち、すくなくとも二〇〇人以上が八幡神市に来てますよ。いまどき若い人の死亡って少ないですし、ゲーマーはオタクな雰囲気を持ってますから、見分けなんかすぐ付きますね。ほとんどがそのまま定住してます。おかげで僕はまだコペルニクスを発行しています」
 死後版のコペルニクスを数冊手渡され、ぱららと軽く流し読み。私はため息をついた。
「……盲点すぎました。ちょっと考えれば、当たり前のことなのに」
「みょんさんが人でない妖怪だということは、僕のあとからやって来た人から聞きました。冥界を守る剣士さまだとも。いやあ、すごい子と知り合いだったなんて、光栄です」
「死んでるわりに、ずいぶんと明るいですね」
「だって僕を殺した連中に天誅を下したんでしょう? 僕はパーティーリーダーとしてPoHに反抗したせいで、真っ先に殺されたんですけど、そいつが半身不随だというじゃないですか。脳に障害を受けてるなら、きっとリアルでもろくに体を動かせなくなっていますよ。生還したところで、残りの人生パーですね。ざまあみろです」
「死んだとき、苦しくなかったんですか」
「あまり。だっていきなり一刺しで、HPバーが一気に消えて、恐怖する時間もなく、むろん痛みもなくゲームオーバーですし、ナーヴギアに脳が焼かれた感覚なんかまったく分かりませんし。三途の川の船頭が巨乳の美人だったし、女の子がでかい鎌もっててギャップ萌えですし。地獄の裁判所もたまたま手が空いていたようで、待ち時間ほぼなしですぐ死後裁判ですし、閻魔さまがこれもまた萌えるロリっ娘だったし。この町にやって来たらすぐ生活の基盤を作らないと腹が減って大変ですし、死んでるのに食べる必要があるっておかしくないですか? 渡航事務所の半人半霊はお役所仕事でろくにサポートしてくれないし、霊界なのに所帯じみていて、慌ただしくて悲しんでる暇もありませんでしたよ」
 船頭が巨乳で、閻魔がロリ。
「……まさかその閻魔、四季映姫さんとか」
「そんなふうに名乗ってましたね。妙に説教臭かったです」
「コペルくん、長野県在住だった?」
「ええそうですよ。南の方です。なぜ分かったんですか? SAOの時から意識してずっと標準語で話してるのに。長野ちゃんの勘だとか? そうか、これが愛か!」
「なんでやねん」
 思わず突っ込んでしまったけど、やっぱり。四季映姫・ヤマザナドゥは幻想郷と信州の担当官だ。三途の川の船頭は部下の小野塚小町(おのづかこまち)。部下といっても種族は死神で、堂々の神族だった。
「ところでみょんさん、この子は? ずっと起動しっぱなしですけど、なにかの放置型アプリですか」
 コペルが私の半霊から垂れ下がってるユイを指さしている。
「詳しく話すと長くなりますけど、カーディナル・システムの一部だった子よ」
『どうも初めまして。SAOから奇跡の脱出に成功した、ユイといいます。ユイって呼んでください――って、そのままですね』
「おおっ! 幼女AI! そのアプリ萌える! コピーさせてもらっていいですか? ……ああ、僕の携帯、とっくに電池切れで動かないや。電気すらないなんて、冥界は文明遅れすぎですよ」
 葬儀で棺に携帯が入れられたのだろう。いくつかのルートで生前の所有物をあの世へ持ち寄ることができる。
「アプリじゃないから、コピーはちょっと無理ですね。テラバイト級ですし。文明のほうも、冥界は歴史がやたら長いぶん、とっくに資源が枯渇してますからね。持続可能な、なんとやらですよ」
「未来の地球を先取りか。世紀末覇者はみょんさんだった! 北斗神拳おまえはもう死んでいる」
 滑り気味の妙なテンションで話しているコペル。本来はこういう感じの変なやつってところか。
「まーたバカ言ってるかこのアホたれ」
 背中より若い女性の声がした。
「あ、師匠。おつかれさまです!」
「なーに可愛い女の子を道場に連れ込んでるんだい。おまえみたいなバカがモテるなんて、明日は大嵐でも来るんじゃないかねぇ」
「お邪魔してます」
 とりあえず礼儀として、振り向きざま挨拶をした。頭をあげて相手を確認すると、師匠とやらは私とおなじ、半人半霊だった。
 長身長髪でかなりの美人だ。年齢は二〇〇歳ほどだろう。人間に換算して、一九から二〇歳ていど。一メートル近い半霊の大きさから、けっこうな霊力の持ち主だと分かる。おそらく私の七割ほどは有している。ちなみに私の半霊は私の身長とほぼおなじだ。彼女は二本の剣を、交差で背負っていた。キリトとおなじだ。半人半霊の剣術家で背中差しの二刀流といえば、私の知るかぎり、魂魄流しかない。つまりこの人は、妖忌お師匠さま以外ではじめて会う、魂魄流の使い手だ。
「……服にあるその紋、魂魄家のものだね。四〇年ぶりくらいに見たよ」
 魂魄流の道場主か。コペルとの話に集中していて、看板を見落としていた。腕はおそらく師範級……いや、ひとつ落ちて師範代レベルだろう。私くらいになれば、一瞥であるていど実力を見立てられる。キリトにほぼ一目惚れした鑑定眼だぞ。
「――魂魄妖夢といいます。お見知りおきを」
 四〇年という数字は私にとっては因縁だ。妖忌お爺様が白玉楼から突然いなくなったのもそれくらい昔だった。もしかしてこの人が会ったのは――
「名に『妖』の偏諱(へんき)を持つなんて、本家本元、宗家の家筋じゃねえか! ちっこいくせに、こりゃとんだ大物だぞ」
 大人しい子が多い半人半霊としては、破格に剛胆な性格だ。
「ね、師匠。いたでしょう? 彼女がみょんさんです」
「まさかバカがいつも言ってた妄言が本当だったとは、明日は大地震が起こりかねんな――魂魄宗家一族のお嬢さん、私は光奈水刃(みなみずは)。見ての通り魂魄流の一剣士だ。この町に三〇年ほど前から道場を構えてる。もっとも肝心の半人半霊がぜんぜん習いに来てくれないけどね。役場勤め中心に五〇人は暮らしてるはずなんだけど、なぜか誰も興味を持ってくれないんだよな。弟子はみんな人間で、こいつみたいな下手の横好きばっか。むろんまともに使えるやつなんか皆無さ! おかげで腕がなまってなまってしょうがない。だからちょびっとアレだ、勝負してくんない魂魄さん?」
「……押しが強すぎるから、半人が来ないんだと思いますよ」
「はっきり言うねえ! さすが本家の子。気に入った! いざ尋常に勝負だ」
 道場内であれば外から見えないから、余計な追加の申し合いはない。
「同門のよしみですから、べつに構いませんけど」
「おっときちんと手加減してくれよ? あんたの鞘、中から妖気がぷんぷんするよ。二本とも普通じゃないだろ。本流のあんたがマジになったら、傍流の私ごときなんてものの数十秒でこてんぱんだ」
 コペルが唐突に手を叩いて喜んだ。
「やったパンチラだ! みょんさん、縞パン、プリーズ」
 だめだこいつ。死んでからおのれの欲に忠実すぎて、どこか壊れてる。無視するに限るな。戦いに集中しよう。
「光奈さん」
「同胞じゃねえか。水刃でいいよ。私も妖夢と呼ばせてもらう。いかに流派宗家のお譲さんといっても、私のほうがずっと年上だからな。タメであいこだ」
「なら水刃。私も魂魄流の使い手として、ぜひ手合わせ願いたいです。お互い霊力も妖力も使わないという条件で、三本勝負といきましょう。これならいいですよね」
「おっといいのかい? 私の腕力はたぶん、妖夢より強いぜ? 立端(タッパ)もあるよ」
「そのかわり私には、瞬速があります」
「手の内を最初から明かすとは、よほど自信がおありだね妖夢。これは面白そうだ――おいバカ、審判をしろ」
 私と水刃は稽古場へ移動すると、三メートルほど距離を置いて一礼し、剣を抜いた。私の楼観剣と白楼剣を見て、水刃の目がおおきく見開かれた。
「なんて美しい刀身と波紋だ。名のある霊剣ってところか。いいモン持ってんな、銘刀を見るとさすがに身震いするよ。斬られたらさぞや快感だろうね」
 中央に立ったコペルが、師匠にたずねる。
「ルールは寸止めで行きますか?」
「いいや、有効打ありで一本だ。そのほうが確実にゾクゾクする。こんな戦い、半世紀に一度できるかどうかだ」
「えっ、真剣での勝負ですよこれ。まさか野良試合で命をかけるのですか?」
「私たち半人は立派な妖怪なんですよ。頑丈さは人間の比ではありません。異能力なしの剣で斬られたところで、ナマクラもいいところです。軽い怪我くらいで済みます」
「それは知りませんでした――それでは、一本目!」
     *        *
 戦いは五分ほどに及んだ。総合的な技量では私のほうが勝っていたけど、リーチ・背丈・筋力で水刃のほうが有利だった。剣道のような強打一本の方式なので、細かい打撃はカウントされない。だから私は手数で勝負しようとはせず、打ち合いの中より一閃の機会を伺った。
 剣をぶつけ合いながら、いつしか私は笑っていた。楽しい。強い剣士との戦いがこれほど面白いなんて。剣と剣で私は彼女と会話をしている。駆け引きで知り合おうとしている。いいところも、悪いところも。この試合は、SAOで戦ったどの戦闘よりも心が弾んでいる。
 異能を使わなければ、私は純粋に剣技だけで、おのれの心技体と向かい、肉体と語り合える。全力で打ち合うつど、筋肉が張り骨に衝撃が伝わる。その手応えが気持ちよい。水刃の剣は私へ届かず、私の剣圧も水刃に防がれる。あのゲームでは簡単にモンスターを抉った必殺の数々も、まるで通用しない。フェイントはもちろん、連携技も強攻もみんな読まれる。さすが同流派。通常剣技の範囲であれば、私と彼女はまったくの互角だ。キリトでも私の攻撃を受ければ、二〇秒と持たないだろう。
 私が笑ってるように、水刃も頬を緩ませている。倒すための戦いでないゆえ。こんな剣舞、滅多にない。なんて楽しいのだろう。
 すばらしい。
 なんだ、SAOにログインする必要なんてなかったんだ。身近に答えがあったのに、私は視野の狭い近視眼で、魔理沙の紹介したソードアート・オンラインに夢中となった。やはり私はどこまでも考えの足りない、未熟で間抜けな女の子だ。もっと広い視野を得たい。より高い視点を持ちたい。
 SAOがデスゲームになって、私はキリトとの勝負をとても出来ないと思い込むようになっていた。SAOを最大級に楽しむには、キリトとデュエルをすればそれで良かったんだ。なのに私はそんなことはもってのほかだと、一度もまともにキリトとは戦わなかった。彼氏のほうも求めなかった。でもそれは間違っていた。私はキリトと戦うべきだったし、たぶんそのほうが彼をもっと強くできただろう。いまさらだけど、後悔は先に立たない。もう私はSAOの世界に入れないし、キリトを外より応援するしかない。でもいま、その手段がない。どうしたらいいんだろう――
「きゃっ」
 脳天に一撃を受け、壁までふっ飛ばされた。
「いま戦ってるのは私だ。遠くにいる誰かを見るな妖夢!」
 見破られている。この若さで師範代クラスの強さを持っている子に、迷いは禁物だった。
 二本目は戦いに集中した。やはり楽しい。この人との打ち合いは私の心に直接、響いてくる。剣と剣で語る。かつて妖忌お師匠に一方的にいじめ抜かれた体だけど、あの日々から四〇年以上。はるかに強くなっていま、同門の子とこうして魂魄の舞いを楽しめるようになっている。ほかに魂魄の剣を知らないけど、水刃の剣はまるでお師匠さまのそれに近い。いくら流派の細部が違うといっても根っこはおなじ。きっと妖忌お師匠もかつてこういう素直に見えながら剛柔に崩してこようとする駆け引きの剣を振っていたのだろう。ようやく私もそのレベルに達してきた。でも奥の手がある。勝負をあっというまに決める技が私にはあるのだ。四分ほどの打ち合いで、〇・〇五秒の隙を突いて加速、胴を払って抜けた。多少の駆け引きを簡単に突破してしまう瞬速の剣。
 水刃が脇腹をさすりながら、軽く驚いた声で言った。
「なんだよ。ほとんど見えなかったぞ」
「瞬間的に加速する攻撃は、私の十八番です」
 でもお爺様はもっと速かった。キリトのような神の領域ともいえる反応速度が必要だ。
「妖力も使わずここまで速いとは、おそれいるよ。これで一対一だな。今度は負けないぞ」
「望むところです」
 だけど三本目は、最初の打ち合いであっさり私が勝った。
 これまでわざと封印していた手、連撃を使った。当てやすいけど、この試合のルールでは有効打とみなされないローキック攻撃。タイミングを合わせた軸足への足払いだ。
 水刃の体勢がわずかに崩れた。なにをズルしやがるって顔をしてたけど、これが白玉楼エディションの魂魄流が本気の殺し合いでよく使う手なのだ。防御不能となった光奈水刃の胸元へ、楼観剣の突きを叩き込む。たしかな手応えあり。壁まで飛んでいき、べちんと乾いた音がした。コペルが手をあげ、一本が成立する。
「みょんさん、いまのSAOで見せてたやつですよね!」
「まあ基本だけですけどね」
「ななな、なんだよ。小林のバカも知ってたのか。ず、ずるいんじゃないかい」
 壁に背もたれて、納得いかないという表情で水刃が抗議してきた。
「白玉楼では日常茶飯事ですよ」
「は、はくぎょくろうだと! ――あんたまさか、何十年か前に跡を継いだって聞く、家元か!」
「ええ。魂魄流、当代宗家、魂魄妖夢」
「あちゃー。こりゃとんでもない子を相手に、いい気になってたな私は。本家の若造め、その澄ました鼻をへし折ってやろうって考えてたけど、いい返り討ちになっちまったぜ」
「それよりも水刃。気になったのですが、弱打からの連撃は魂魄二刀剣術の基本かつ醍醐味だったはずです。私はその気になればあなたを五〇回でも一〇〇回でも斬りつづけることが出来ますよ。なぜあなたは、私と何分間も打ち合える技量を持っていながら、体術なしの平凡な剣術を使ってたんですか」
 ばつが悪そうに、水刃が視線をそらした。
「まあなんだ、体のほうがど忘れしてたというか、無茶のできない人間相手に稽古してるうちに、ただの一般剣術に落ちてしまったというか」
「いけませんね。これから定期的にあなたを鍛え直してさしあげましょう。魂魄流の名にふさわしい師範になっていただきます」
「え、いいのか! 授業料は払わねえぞ?」
「あなたと剣を結ぶと、とても心が弾みます。むしろ私のほうが感謝したいくらいですよ」
「よっしゃますます気に入った。昼飯くってけ! ……って、体が動かねえ」
「最後の突きは不意打ちでしたからね。受け身を取り損ねてダメージが大きくなったようです」
「胸の辺りがけっこう痛いままだ。しょうがねえ、おいバカ、私を担いでちょいと寝室まで――げっ」
 体に触れると聞き、はてしなく鼻の下をのばした助平のコペルを見て、私も水刃も反射的に体を震わせた。男にいやらしい目で見られたときに感じる、生理的な嫌悪感ってやつだ。これが好きな人だったら場合によれば逆にうれしく感じたりするけど、興味のない男だとただ気持ち悪いだけだ。私もキリトでよく体験した。恋って不思議だな。
「あ〜〜、だめだめ。役得と思われるなんて、なんかむかつく。バカの体だけ借りるぞ」
 水刃の半霊がすいっとコペルへと飛んでいき、半透明なその身を重ねた。コペルが寒そうに体を抱き、半霊より逃げようとするが、水刃の動きがより早かった。完全に一体となり、コペルの霊体を浸食する。淡い光がコペル全体を包んだ。弱い発光は数秒で収まる。頭を振ったコペルが、準備運動のような仕草を取った。緩急がつき腰のしっかり入った動作は、長く修行をやっている者のそれだ。コペルの動きではない。
「……バカの野郎、なんて固い体をしてやがるんだ。もっと柔軟をして、きちんと剣を振れる肉体作りをしないと」
 コペルの声で、しかし水刃の口調だった。光奈水刃のほうは、目をつむってだらんと力を抜いた状態。まるで気を失ってるみたい。
 私はなにが起きてるのか、よく分からなかった。
「え、なにこれ」
「はい? 憑依に決まってんだろ。半人半霊だぜ。悪霊みたく取り憑くとか、あたりまえの能力だろうがよ」
 コペルの水刃が気を失ってる水刃本体を抱え上げた。かなり重たそうにして、足腰がふらついている。
「なんだよ小林のバカ、ぜんぜん筋力も足りないじゃねえか。本格的に体をいじめないと、いつまで経っても二刀なんて無理だな」
 文句をいいつつも、確実な足取りで稽古場を出て行った。
 あとには私と、試合のため半霊から外して壁際に置いていたユイが残された。
 沈黙が落ちる。
 数秒して、ユイがつぶやくように。
『……妖夢さん!』
 探していたものを、やっと見つけた。
「これです! ――私はまた、SAOで戦えるわ!」
     *        *
     了 2014/02


※携帯
 原作の表現に準拠。二〇二三年にスマートフォンが残ってるとは限らない。
※光奈水刃
 会話量が多いけどオリキャラ。冥界は独自設定をたくさん用意しないと描写できない。
※異能力なしの剣で斬られたところで、ナマクラもいいところです。軽い怪我くらいで済みます。
 原作の弾幕アクション(格闘)ゲーム版より考察。妖夢は対戦相手を抜き身の剣で斬っている。人間の霊夢や魔理沙は、霊力・魔力などで身体強化してるという解釈が可能かと。
ソード妖夢オンライン第4部へ

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