銀英伝SS

小説
田中芳樹著「銀河英雄伝説」のショート。すべてコメディ。
アイゼナッハ家の食卓(創作)
第1回銀河系対抗柔道大会(創作)
ヒゲとハゲとアゴ(創作・下ネタ注意)
銀河英雄伝説VIIなのに(イオナズン)
ちゅるやさんにょろーん(涼宮ハルヒの憂鬱)
沈黙の春(創作)

アイゼナッハ家の食卓 (創作)

アイゼナッハ「…………」
     妻「…………」
     子「…………」
アイゼナッハ「……(パッチン)」
     子「……(頷く)」
     妻「……(子を見て目だけ微笑む)」
     子「…………」
アイゼナッハ「…………」
     妻「…………」
     子「……(立ち上がってテストを取り出す)」
     妻「……(受け取ったテストを夫に渡す)」
アイゼナッハ「…………」
アイゼナッハ「……(子の頭を撫でる。無表情で)」
     子「……(なんとなくうれしそう)」
     妻「……(目だけ微笑んでいる)」
アイゼナッハ「…………」
     子「…………」
     妻「…………」

  会話は一切なかった。

銀英伝SS

第1回銀河系対抗柔道大会 (創作)

なんとなく柔道大会が開かれた。

同盟軍
先鋒 ユリアン
次鋒 ブルームハルト
中堅 マシュンゴ
副将 シェーンコップ
大将 ヤン

帝国軍
先鋒 ミッターマイヤー
次鋒 キルヒアイス
中堅 ロイエンタール
副将 オフレッサー
大将 ラインハルト

主審 リューネブルク
副審 アッテンボロー
副審 メルカッツ

第1試合 ユリアン VS ミッターマイヤー
「ヤン提督は私がお守りします」
ユリアンがんばるも実戦の経験差はカバーできず。
1分14秒 肩車 1本 ミッターマイヤー勝利
「このまま疾風のような速攻で5人抜きしてみせよう!」

第2試合 ブルームハルト VS ミッターマイヤー
いくらミッターマイヤーが万能とはいえ、格闘技の専門家で体格にも大きく勝るブルームハルト相手には分が悪い。
2分36秒 背負い投げ 技あり
3分25秒 横四方固め 合わせ1本 ブルームハルト勝利

第3試合 ブルームハルト VS キルヒアイス
「ラインハルト様は、私がお守りします」
シェーンコップとやりあうキルヒアイスに、ブルームハルトといえども手も足も出ず。
15秒 大内刈り 技あり キルヒアイス
22秒 大内刈り 有効 キルヒアイス
38秒 内股 1本 キルヒアイス勝利
「つ、強すぎる」

第4試合 マシュンゴ VS キルヒアイス
「…………」
マシュンゴ闘志を燃やすが、さすがにどうにもならない。
6秒 内股 1本 キルヒアイス勝利
秒殺されてしまた。
「う、運命には逆らえませんから」

第5試合 シェーンコップ VS キルヒアイス
「おいおまえ、まだ女を知らないだろう」
シェーンコップのいきなりの挑発に、キルヒアイスの頬が赤くなった。
47秒 巴投げ 有効 シェーンコップ
1分33秒 大内刈り 効果 キルヒアイス
1分50秒 大外刈り 有効 キルヒアイス
2分41秒 袖釣り込み腰 効果 シェーンコップ
実力伯仲。ポイントも互角。以降完全な膠着となり、4分をすぎて両者に指導が与えられた。そのまま延長に。
そして――
「あ、アンネローゼのねーちゃんがいる」
「!」
「いまだ!」
延長2分25秒 巴投げ 技あり優勢勝ち シェーンコップ
「……不覚でした」
「若いな、坊や」

第6試合 ロイエンタール VS シェーンコップ
「同盟の猟犬か。あのときの勝負、ここで決着を着けよう」
「望むところだ」
しかし微妙に互角であった。実力的にはシェーンコップのほうがやや優勢なはずだが、なにか不思議な力が働いたのか、まるで試合が動かない。
3分40秒、双方に3回ずつ指導が来て、互いに技ありポイントとなってしまった。
4分57秒 払い腰 効果 シェーンコップ
5分時間切れ シェーンコップ 優勢勝ち
「試合終了寸前で仕掛けてくるとは……」
「まだまだ甘ちゃんだな」

第7試合 シェーンコップ VS オフレッサー
オフレッサーいきなりトマホークを持ち出してリューネブルク審判に没収される。
2秒、オフレッサー、シェーンコップを張り手で殴り反則による警告を受ける。
18秒、興奮したオフレッサー、シェーンコップの右上腕にかみつき反則にて注意を受ける。反則の累積により、規定で反則負け。
シェーンコップ勝利。
「おれが負けただと? なんだと貴様らー!」
「こいつは真性の馬鹿だ」

第8試合 シェーンコップ VS ラインハルト
シェーンコップ、オフレッサーに噛まれた腕の怪我がひどく、ドクターストップにより棄権。
ラインハルト 不戦勝
「私は勝利を譲られたというのか。まるで乞食のように」
ちゃうねん。

第9試合 ヤン VS ラインハルト
いよいよ大将戦。組み合った直後、ヤンが言った。
「私は菜食主義者です」
「それがどうした」
13秒 三角絞め 降参 ラインハルト勝利
「ごめん、ユリアン……」

帝国軍には優勝商品として、カップラーメン1年分が贈られた。
ラーメンをすする帝国軍一堂の姿はちょっと間抜けである。
「だめだ、こんなことでは勝った気がしない!」

満足いかないラインハルトは審判団に試合を申し込んだ。
主審のリューネブルクは幽霊なので試合不可能、副審のアッテンボローは歩く小言から逃げ出す要領でかわした。
「仕方がない、私でよければ」
エキジビジョンマッチ ラインハルト VS メルカッツ
「私に通用するのかな?」
「バカメと返信してあげよう」
41秒 体落とし 有効 ラインハルト
1分1秒 背負い投げ 効果 ラインハルト
1分19秒 内股 効果 ラインハルト
1分30秒 隅落し 有効 ラインハルト
ポイントで圧倒的に有利なラインハルトだが、メルカッツの体のやわらかさに内心恐々としていた。
ラインハルトの切れなら技あり以上になって当然のところで、ことごとくかわされて有効以下しか取れないのだ。
そしてそのときはきた。
2分 山嵐 1本 メルカッツ勝利
「……私は負けたのか?」
「地球か、なにもかも懐かしい」

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3 ヒゲとハゲとアゴ (創作・下ネタ注意)

 アス キーアート(AA)を利用した中編。データ量が多いため別ページへ収蔵。
ヒゲとハゲとアゴ

銀英伝SS

銀河英雄伝説VIIなのに (元ネタ:イオナズンを使えるのに内定が出ない)

社長「特技は未払いとありますが?」
Y氏「はい。未払いです」
社長「未払いとは何のことですか?」
Y氏「鯖落ちとか頻繁に発生させられます」
社長「え、鯖落ち?」
Y氏「はい。鯖落ちです。関係者全員に大ダメージを与えます」
社長「……で、その未払いは当社とのビジネス上で何のメリットがあるとお考えですか?」
Y氏「はい。未完成のパッケージを売りつけたテスターが文句をいっても、あまり開発をしなくて済み楽ちんです」
社長「いや、当社にはテスターなどいません。それにすでにお金を払っているユーザー様をテスターと呼ぶのは犯罪ですよね」
Y氏「でも、説明会でも誤魔化せましたよ」
社長「いや、誤魔化したとかそういう問題じゃなくてですね……」
Y氏「資金繰りもどんどん悪化するんですよ」
社長「ふざけないでください。我が社を倒産でもさせる気ですが。だいたい……」
Y氏「悪徳詐欺に比べたら良心的なものです。1年半も持続したんですよ」
社長「聞いてません。帰って下さい」
Y氏「あれあれ? 怒らせていいんですか? 使いますよ未払い」
社長「いいですよ。使って下さい。未払いとやらを。それで満足したら帰って下さい」
Y氏「運がよかったな。あんたんとことは契約してないみたいだ」
社長「帰れよ」

※補足
 PC用の銀河英雄伝説VIIは2004年春、オンラインゲームとして販売されたが、未完成のβ版という惨状だった。本来プレイヤーはユーザーとなるはずが、事実上の有料テスターとして参加せざるを得なかった。製作途上のためバランスは凶悪で、度重なる微調整と大量のバグによるサーバダウン(鯖落ち)に悩まされたあげく、開発は遅々として進まなかった。秋には説明会も開かれたが、そのとき公約された機能はことごとく実装が遅れ、AIなどはついに一度も動かなかった。そして2005年はじめ、あまりの惨状に版権管理会社らいとすたっふが販売元のボーステックから権利を取り上げ、5月初旬にサーバも停止となって銀英伝VIIの命脈は絶たれた。ボーステックが未完成状態でパッケージを発売したのは資金繰り悪化による投資回収であり、サーバがすぐダウンしていたのはサーバ会社への使用料滞納が原因だった。

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ちゅるやさんにょろーん (涼宮ハルヒの憂鬱)

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沈黙の春 (創作)

 事件は士官学校入学式で起こった。
「御来賓のアイゼナッハ元帥閣下より、御祝辞を頂きます」
 無言の紳士が檀上に立った。
「…………」
 沈黙である。
「…………」
 学生たちをはじめ、その場に在る全員が口を開かない。生ける伝説となっている、殿上人にも等しい沈黙元帥の重い口が開く、歴史的な瞬間を聞き逃さないために。
「…………」
 アイゼナッハは動かない。まるで彫像のようだ。
「…………」
 沈黙の上に緊張が塗り重ねられてゆく。各人の呼吸や鼓動さえ聞こえるほどに。
「ヤー」
 静寂と心の張りを蹴り倒してホールに響いた呟きは、誰もが思いもしなかった方向から届いた。
「しまった」
 入口より一人の高級将校が、駆け足でアイゼナッハに向かっていた。
「チェックメイト」
 両手で大きなレコーダーを抱え上げており、フルボイスで渋い声が拡声されている。
「ヤー」
 走る軍人はアイゼナッハ元帥府の首席提督、元アイゼナッハ艦隊参謀長のグリーセンベック上級大将であった。
「しまった」
 檀上にあがり、レコーダーをアイゼナッハの前に置く。
「チェックメイト」
 レコーダーはバカのように「ヤー、しまった、チェックメイト」を繰り返す。
 ホールの誰もがあっけに呆然としているうちに、奇妙なリズムが混じりはじめていた。
「ヤー、ヤー、ヤヤヤヤヤッ、しまったしまったチェックメイト」
 ノリの良いリズムに沿って、アイゼナッハとグリーセンベックが踊っている。
 やがて不思議な興奮がホール全体を包んでいた。
「チェックメイト、チェックメイトチェックメイッチェチェチェチェ、しまったヤー」
 天井ではいまやミラーボールが回転しており、薄暗くなった中で帝国の未来を担う若き人材たちや、彼らを育む教員までもが、身分や階級の上下に関係なく、等しくリズムを共有している。
「チェックメイトトトトトトトトトト!」
 奇妙な一体感の坩堝が、帝国軍人一人一人の脳髄にまで浸透していった。
「お、思い出した――」
 踊りながら教師の一人が、つぶやいた。
「沈黙提督と呼ばれた方の艦隊が、なぜ統一した行動ができていたのか……」
「チェェェェェしェまェっェたェェェェェクメメメメメヤメーメメメィィィトォォォ」
 暗転し、音と光の洪水が止んだ。
 彼の視線の先、檀上で、スポットライトを全身に浴びて、天上天下唯我独尊の決めポーズを取るエルンスト・フォン・アイゼナッハの神々しい御姿が、光輪を背負って眩しく輝いている。
「噂は本当だったのか」
 彼は崩れ落ちた。心地よい疲労と共に、洪水のような喝采と拍手を耳に残して。

※補足
 アイゼナッハ提督はプライベートを除けば、作中の5年間で「ヤー」「しまった」「チェックメイト」の三言しか人に聞かれたことがない。
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     最終 2007/04

銀英伝SS

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