Nikon AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G 機材 ホビーレビュー

機材
購入:2012/07 分類:単焦点レンズ

Nikon D7000用の新たな標準レンズだぜ。表現力が満足できない AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G と交換だ。 ボーナスが出たのに合わせ、発売2ヶ月とまだ新しい AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G を購入した。本来はニコンFXフォーマット(35mm判フルサイズセンサー)機用の広角レンズだが、より小さなニコンDXフォーマット(APS-Cイメージセンサー)のニコンD7000では、換算42mmのやや広めな標準レンズとして使える。スペックを調べると色々と高性能なようなので、発表当日から目を付けていた。2ヶ月置いての購入だが、それでも直後と比べれば1万円は安く手に入った。 アマチュア層にもっともアピールできるこのレンズの特徴は、光学系にナノクリスタルコートを採用していることだ。「N」の黄金マークが輝かしいね。通称ナノクリはニコンの最上級コーティングで、フレアやゴーストを大幅に軽減し、抜けも良くなる。これに匹敵するレベルのコーティングはキヤノンくらいしか実用化できていない。 あと嬉しい誤算が、フード形状の美しさかな。花形フードにもいろいろあるけど、起伏バランスが綺麗で、個人的にかなり好ましい外観となる。レンズ上部を一周する金環もいいね。これは上等なAF-Sレンズの証で、自信を持って推奨できるハイエンドレンズにニコンが与えているステータスのようなものだ。その割に超好評なマイクロ60mmに金環がないのが不思議だが、まあ同カテゴリーに上級格として金環のマイクロ105mmがいるしな。 D7000における28mmの画角というものを見てみる。人間を写せばどうなるかの答えは、フィギュアを写せば分かる。撮影距離が変わるだけで、写り方はまったく等しくなるはずだ。左が28mm、右が60mmだ。
28mmは足先まで構図に入れてしまうと、短足気味に写る。すなわちポートレイト(人物写真)で28mmを使う際は、足先まで入れるときは低い高さより煽り気味に、通常の高さであればヒザから下は構図の外へ追い出すほうが良いだろう。
右の60mmは換算90mmとなり、ポートレイトに最適とされる85mmの画角にほぼ等しい。代わりに人間相手で全身を写すとなれば、撮影距離が6~8mとかなり離れなければならず、コミュニケーション面でよほど余裕のある状況でないと難しいだろう。一期一会が多く撮影距離も稼ぎづらいイベントのコスプレ撮影などで使うには、やはり28mmのほうが有利だろう。足先まで写さなければ良いだけの話だ。 これより AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G のテスト撮影を行う。比較対象は野外撮影のメインレンズ、SIGMA 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM だ。こいつより多くの性能で勝っていないと、あえて不便な単焦点レンズを使う意味がない。実際ボケ味などで同等に留まった AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G は、所有感もさほどなく、ほとんど使わなくなっていた。
まずは前ボケだ。ボケる対象を前に配置する写し方。ボケは素直で、溶け方も良し。合格! つづけて普遍的な後ボケ。点光源はきれいに丸くなっている。17-50mmF2.8で起きる年輪ボケもない。合格! 絞り開放における二線ボケのテストだ。35mmF1.8Gや17-50mmF2.8では、直線箇所で像が多重にブレる、二線ボケが絞り開放付近で起こりやすい。うむ、ほとんど目立たない。点光源のにじみもないし、合格! 歪曲収差のテスト。17-50mmは直線がちょっとだけ曲がって写る。よろしい、ほぼまっすぐで、素直な描写だ。合格。 逆光的なもの。明暗の差が激しい被写体へレンズを向けるテストだ。35mmではゴーストが、17-50mmではフレアが起こるシーンだが、なにも起きない。ナノクリスタルコートが描写の暴れを防いで、人間の目に近い写りを実現している。合格! パンフォーカスにおける解像感のテスト。ほかのレンズとの違いはとくに分からない。比較対象の SIGMA 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM は各所のテストでニコン純正 AF-S DX Zoom-Nikkor 17-55mm f/2.8G IF-ED に匹敵する光学性能であると評価されているので、絞った際の解像力だけで見れば、単焦点レンズとの差はほとんどないようなものか。ただ、やはり逆光では28mmのほうが強いはずだ。 夜間スナップ。ほぼ絞り開放に近い。28mmは絞り開放から解像度がそこそこあり、光量の少ない状況でその仕事を果たしてくれそう。 最短撮影距離でのボケ。絞り開放ではF1.8の強味で大きくボケてくれる。寄れることもこのレンズの特徴。逆にいえば28mmは積極的に寄らないとボケない焦点距離。 ここからはごく普通のスナップとなる。AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G は確実に35mmよりも使えるレンズだ。実売価格も3倍近く違うしな。いわゆる撒き餌レンズと、本格金環ナノクリとの、格の違い? 標準レンズとはいろんなものを写しやすい画角のレンズを指す。35mm判換算で40~60mmくらいが該当する。APS-C(D7000)の28mmは換算42mmで、その範疇に入っている。35mmも換算52mmだ。 じつはAPS-Cサイズ用の標準レンズとしては、ひとつの定番としてシグマから SIGMA 30mm F1.4 EX DC HSM というものが出ている。絞り開放がF1.4と、今回買った28mmのF1.8よりも大口径で、絞り開放のボケ量も多い。 ただその30mmを避けたのは、やはり絞り開放のシャープネス・四隅の解像力・AF性能・逆光性能・ボケ質などが、いずれも28mmのほうが良いらしいと判断したからだ。それにシグマ30mmは癖玉としても鳴らしており、絞り開放はほぼ中央に被写体を置く、いわゆる日の丸構図でないときれいに写せないという。ボケにもグルグル傾向など癖があるようで、35mm f/1.8G のボケ質に悩まされた私としては、素直な28mmを選びたくなるのも心理上のトラウマみたいなものか。 28mmは焦点距離が短くて、あまりボケにくいと言われているが、ぼかしの諸条件を一通りマスターしてる私には、さほど苦労はない。逆に35mmより広いぶん、より多くのものを構図内に収めることができて有利だ。余計なものはあとでトリミングしてしまえばいいし。 いまのところこのレンズはフィギュア&スナップ&ポートレイト専用となっている。単焦点レンズは基本的に写す目的が決まってないと使いづらいとされるレンズ群で、単焦点を使いこなしやすい用途はそれなりに限られてくる。なんにせよ良いレンズだ。本音をいえば超高性能な AF-S NIKKOR 35mm f/1.4G が欲しいところだが、値段が高すぎて却下だな。フィギュアを買えなくなる。28mmのF1.8で十分だ。 ※追記
フルサイズ機ニコンDfを購入し、このレンズを野外撮影で積極的に使うようになった。だいたいマイクロ60mmとタッグを組むことが多い。28mmF1.8と60mmマクロの組み合わせは超広角と望遠を除いてたいていのものが写せ、かつ高画質を得られる。下のサラダはF1.8で。 こちらはF8に絞って。ISO感度2000以上だが高感度に強いDfのおかげでボケもスムーズ。2014年前半だけでもこのレンズ1本で数度の野外撮影レポをアップした。28mmという画角は意外と汎用性に富んでいる。


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