フィギュア撮影講座6 構図&フレーミング 企画 よろずなホビー

企画
執筆:2018/01/12

横・縦・斜めを操れ! 写真を「写真らしく」する、フレーミングと構図パターン。講座3~5とも繋がっている。広い範囲から制限のある写真へ収める行為をフレーミング、フレーミング内の組み立てを構図という。 ワンフェスなどイベント撮影での構図と小技についても触れる。 写真の基本はカメラの形から見ても分かるように、横長での記録だ。カメラはしっかり水平を取ろう。フィギュア写真だと群像・ブンドド・ジオラマで多用される。フィギュアレビューでも多い。 横長の基本的な縦横比を単純に横構図とも呼ぶ。横位置と横構図はおなじようなものだ。フィギュア写真において横で出番の多いフレーミングが、フィギュアを中心にぽんと置くもの。日の丸構図と呼ぶ。基本の横位置でさらに基本の日の丸。基本のダブル重ねだ。素人がなにも考えないで写す写真に多いが、主題が中央にあるので誰にでも分かりやすい。 これも日の丸だがちょっとズラした日の丸的なやつ。変化を付けてみたい感じ。構図としてはとくに別の名は付かない。日の丸構図の系統だ。 三分割法。画面を3×3のブロックに分けて主題をフレーミングする構図。背景が均質なフィギュアレビューだと、じつはあまり意味がない。分割法のような構図は背景と合わせて考慮すべきもので、バックプリントに変化がないなら構図にこだわっても仕方がないが、だからといって日の丸だけでは「下手」と思われる――というか実際に指摘されてしまうので、効果がないと分かっていても見栄からつい写してしまうのであった。要は「基本くらい分かってるわい」アピールだ。 つづけてカメラ縦位置。これも水平を取るのが基本。フィギュア全身をフレームに収めるときに選択されやすい。バストアップでも多いが、ブンドドではわりと少なめ。レビュー撮影の最多位置? 人によっては横のほうをメインにしてるし、定番とは言い切れない。あくまでも人それぞれだ。 横構図とおなじく、単純に縦構図とも言われたりする。縦横比が単純に縦長になってるだけだ。フィギュア単体撮影だとやはり日の丸が構図として多くなりがちだ。むしろ横より日の丸の割合が高くなる。なにせフィギュアはたいてい上下に長いから、縦長フレームだとすっぽり収まる。 縦位置の構図は日の丸を軸にほかの構図セオリーを混ぜて変化を付けるパターンになる。下は構図に「×」を引いて考える対角線構図を取り入れたもの。背景が淡泊なので例によってわざわざ構図として採用する意味はない。それでも写真を知ってる人へ「俺もこれくらい知ってるぞ」とのアピールにはなる。 こちらも日の丸を軸に、三角構図。主題を三角形に放り込む。頂点から頂点への視線移動を誘いやすく、ただの日の丸より「なんか違ってそう」というか、ハッタリ的なものが付く。たぶん。 番外地だ。斜め位置。水平なんか考えない。純粋な演出・変化として用いられる。 角度は自由自在で、右だろうが左だろうか関係ない。ただし傾けるなら5度とか微妙にしないで、30度とか45度か大胆に「これ演出ですよ、わざとやってますよ」と分かるように。半端に1~2度とかは水平取り忘れてるなと知ってる人に思われてしまい、つまり下手だという印象を与えてしまう。 ひとつの当たり前だけど忘れがちな現象を。カメラを斜めにして写しても、カメラに記録されるデータは縦長か横長だ。被写体が斜めになっている。これを案外忘れがちになったりする。縦と横は小学生でも分かるけど、斜めはちょっとだけ難しい。たまに「あれ?」となる。人によってはまったく写さない。 斜め撮影、フィギュアレビューだと背景の重要度が低いぶん日の丸構図が多く、構図的な効果はフレーム内へどのパーツを盛り込むかが重視すべき課題となる。下のは横構図では入りづらいものを斜めに収める感じ。撮影中は案外なにも考えてない。後からどうして斜めにしたんだろうって考える。試行錯誤、トライ&エラー。 斜めで対角線だ。右斜めのラインが分かるだろうか? これは意識的に対角線を取った。そうすることで腕から顔への視線移動を狙っている。対角線は人間の視線がフレーミングされた構図内でどう動くかを経験則で分類して判明した「効果的な構図」の一種だ。日の丸もそう。人の目は日の丸とか対角線に動く。 三分割。性的な水着のアンダーと2人の顔がフレームを3×3分割した交点ポイントに収めている。これも人間の視線がどう動くか以下略。不特定多数を相手にして、見て貰いたい箇所を高確率で見て貰える、そんな小技。それが「構図」という技術が存在する理由だ。 相変わらずサンプルに日の丸が多いね。斜めで三角構図でフカン構図だ。ただの斜めアングルなのに構図の一種として扱われる。構図とは構成で、ゆえにほかの講座で扱ったポジショニング・アングリングなどもフレーミングと繋がっている。みんなひとつの環になっている。写真という限定された平面へリアルの一瞬を閉じ込めるために。 三分割に斜めに対角線にアオリと、詰め込みまくった写真だ。この講座シリーズを継続して読んでくれている人なら分かるだろうが、私はわりと理詰めで考える傾向があり、そのせいで感性の成分が不足し、写真が上手と言われないが、まあそこそこ整ってるとは言われる。理詰めなんで。というわけでセンス・オブ・ワンダーを教えることは私には出来ないが、理論方面はこうしてテキストとして形にできる。 さっきアングルも構図に含まれると書いたので、アングル視点でも触れてみる。基本は水平だ。フィギュア全身やパーツ撮影の多くは水平で写される。フィギュアの目線高になる。好みに応じて微妙に小さな上下の角度変化を付けてみたり。私は一度のレビューでアングル変化を10回以上行う。パーツの起伏やフィギュアの視線に対して平面になるようアングルを設定することが多く、完全な水平アングルは少ない。基本なのに、紹介してる当人が守ってない。 フィギュアの上より写すハイアングル。フレーミングされた全体を遮蔽なしで見渡しやすく、ブンドドで多用される。また素人が写した場合「撮影体勢が楽」という身も蓋もない理由により、このアングルになることが多い。ゆえに基本として撮影者に負担を強いる水平アングルが定義され、伝えられるのだ。実際は水平以外のほうが多いっぽいとしても、基本として水平アングルがあるのだと決めておくことで、考えずに選ばれるハイアングルから、必要として選ばれるハイアングルになっていく。この差はとても大きい。「考えられたハイアングル」は、穏やかな角度や急な角度のコントロールに達者となる。フカン構図ともいう。食品サンプルなどはフカンがメインだ。 レビュー撮影のフカンは見上げる演出で高い効果をもつ。自分より背の低い女の子がさらにその身長差を強調するように上目遣いで頼ってくる――じつにあざとい萌え要素で、ゆえに効果をもつ。 フィギュアの下から写すローアングル。使用率はハイアングルより低い。「ぱんつ見せろ」のように、典型的な「考えて写す」角度だ。アオリ構図ともいう。 アオリ構図はフィギュアよりむしろ、普通の写真撮影で効果を発揮する。空を8割入れた広い空間で開放感。 壁が多いと圧迫感。カメラを水平より上へ傾けるアオリ構図は、心理へ訴えるような写真を簡単に写せる。 フィギュア撮影でのアオリは、背景が淡泊均一なレビュー系ではフィギュアそのものの見え方にだけ注力してれば良い。背景に凝ったらもちろん話は変わってくる。 構図視点でのアングルまとめ。私は三脚のセンターにあるエレベーター昇降のみでローからハイまで兼用しており、脚の高さは変えない。現在のメイン三脚はポール長42.4cmを誇る。じつはセンターの長さ「だけ」で選んだ。脚による昇降と比べ安定性が悪くなりやすく、三脚の使い方としては邪道らしいが、「変化を付ける撮影」において必要な時間を大幅に短縮させる。 これまで構図について語ってきたが、フレーミングのさらに限定、パーツ拡大では話が違ってくる。 ただの部分見せの拡大アップだ。構図とかまったく考えておらず、フレーミングはひたすらどの範囲まで見せるかだけに集中している。語るべき構図など存在しない。 箱の写真もそうだ。やはり演出など存在しない、全体が主題という、ただ見せるだけの写真。主題をひたすら大きくして、全体が主役。簡単だぜ! この思考はワンフェスなどのイベント撮影でも使える。ただひたすらフレームに収めていくだけ。 構図も水平も考えない。小世界を切り取るフレーミングに集中し、ピントもむろんAF任せ、カメラを信じる。イベントは時間との勝負だ、細かく理論の実践とか考えてる暇も余裕もないぞ。周囲も後列もみんな写したがってるのだから。 ピントが合ってブレておらず、あるていど解像してればワンフェス撮影は「勝利」だ。フィギュアの見え方は撮影距離で決まるので、強制的に距離を取らざるをえない中望遠の単焦点レンズ(できればマクロ)を付けていれば、「なにも考えずに距離を取って」スタイリッシュに写しまくれるぞ。APS-Cなら60mm前後、フルサイズは100mm前後が目安。そこまで行けたのなら勝利のさらに上、「大勝利」だぜ。広めに写しておけば、水平・構図はあとから補正できる。画角&撮影距離において自制が効くなら、ズームレンズのほうが有利。 イベント撮影でのちょっとした小技を紹介する。
ワンフェスなどで1m前後離して写せば下の左のように頭から足先まで引き締まって写ってくれるが、どうしても必要な距離が取れないこともあるし、時間がないなら寄って写して次へ、を延々と繰り返すだろう。私はワンフェスで人の群がる後方よりカメラを構えて何分でもじっと動かず、「視界が開ける瞬間」を待ち続けるスタイルを取っている。ひたすら無言で、動かない。文句も言わず、ただ構えて静止するのみ。たいてい数十秒~3分以内にチャンスが到来する。トレフェスなら平均30秒以内だ。そうやって頭から足先まで歪み少なく収まったフレーミングをコンスタントに得ているが、辛抱たまらず出来ない人のほうが多いだろう。
ならば妥協だ。下の写真の右側は足をフレーム外へ追い出した「足切り」で写したもので、撮影距離は短くなっている。パーツは寄って写すと書いたように、足を捨てて上半身を大きなパーツと見立てる戦略だ。 足切りを行う理由はパースだ。下の写真は知識不足だった時期のレビュー撮影の一枚で、左側の下半身を見て欲しい。一見すれば問題ないように見えるかもしれないが、左右の足の長さが違って見える。これは1m前後も離れれば収まるパースで、60cmとか50cmという近距離でフィギュア全身を写してしまうと、手前側の足と奥側の足で写真に写り込む見かけの長さに大きな差が生じるのだ。さらに水平アングルだというのに、まるで見下ろしたみたいに台座が写っている。これもパースの影響。1m離したときと比較すれば、短足に写ってるはずだ。
それを救済してしまうのが「足切り」。顔を中心に構図を決めてるので、撮影距離が近いと顔からもっとも離れた足先ほど歪みの影響を受けやすい。撮影後のトリミングで足をチョッキンしてしまう。または撮影時でもいい。撮影時に下半身をフレームの外へ追いやると、自然と顔がフレームの中心近くへ収まり、そのぶん歪みがさらに減る。 この足切りだが、日常の撮影だとほとんどの人が普通に行っている。人(フィギュア含む)の全身を写すなら離れて、上半身なら寄って。記念撮影やメモ写などであたりまえに行われている方法だが、わざわざ小技として紹介しているのは、定義によって無意識な失敗からの解放が果たされるからだ。普段なら意識せずともやってる撮影方法を、意外なほど多くの人が特別な撮影で忘れてしまう。普段と違うやり方をするから、失敗写真を量産する。
ワンフェスでフィギュアに寄って全身を撮ろうという行為は、半年から1年に1回しかない特別な機会で、お金を払って見に来てる「元を取ろう」という心理からくる。リラックスできないのだ。一種の興奮状態で、「みんな記録せねば」となる。そのみんなとはすなわちフィギュア「全体」、言い換えると「全身」だ。しかし人がたくさんいるから寄って写そうとする。さらにスマホは広角~準広角だ。 結論はひとつ。寄ってでしか写せないなら、いつも日常で写してるように足を捨てよう。そうすれば可愛いフィギュアを可愛いまま写真データとしてゲットできる。とはいっても最低限の距離はある。私はフィギュア上半身を写すときでも、撮影距離は30~60cm。ワンフェスで問題にされる「スマホのストラップがガレージキットに当たりそう」な15~20cm以下の至近距離なんて、フィギュアの顔内でパースが生じる領域だ。あまりにも近すぎて足切りでも救済できない。30cmじゃフィギュアが小さい? 広角すぎるそのスマホを呪うがよい。Amazonとか覗けばスマホ用のマクロ&望遠パーツがいくらでも転がってるぜ。 ここからおまけ編。フィギュア撮影で私があまり使わない構図について。あくまで私が使わないだけであって、使えないわけじゃない。好みとか嗜好などだ。まず二分割構図。縦横で真ん中に線を引くだけ。4つの四角形で考える。 主題が日の丸だけど同時に二分割でもある。効果は知らない。経験則的に視点移動や注目されやすさで有利らしいので、とりあえず撮っておくといい選択肢のひとつというだけ。構図通りちゃんと見てくれるかは個人差がある。 二分割で主役の五重塔を日の丸よりちょっとズラした変化構図。三分割法までは動かしてない。 二分割の派生、シンメトリー。分割線の対におなじ形状が鏡のように配置される構図。効果があると分かってるので構図として分類されている。なおシンメトリーでありながら三分割的といった変則もある。すべては主題や視線の移動をどう誘導したいかで選択されるフレーミングの手法であって、構図がこう言われてるからといってそう写されるものでもない。すべては主題の都合で決められ、たまたま多く頻出するパターンが抽出され、○○構図と名付けられているだけだ。 三分割は3×3の9ブロックで考えるが、さらに細かい4×4の16ブロックで考える四分割構図。ないし四分割法。実例で使用されるのは外側の交点ばかりで、内側の交点が使われることはあまりない。 放射構図、絵画でいうところの遠近法だ。道路や道などの消失点との対比。撮影ブースで行うフィギュア撮影だと、ジオラマを組んでもあまり使われない構図。事実上の野外撮影用。 画面構成の外側や内側に囲いをフレームインし、そのさらに内部が主題という構図を額縁構図という。下のはさらに放射構図も混じってる。たいていの写真は複数の構図が混在している。横位置か縦位置かだけですでに横構図・縦構図と呼んだりするし。 サンドイッチ構図。挟んでる。それだけ。これも屋内ブースで行う通常のフィギュア撮影では難しい。複数のフィギュアを使うブンドドならやりやすい。たぶん。以上、構図とフレーミングについて語ってみた話、おわり。これでカメラを操作して色々やる撮影行為についてのハウツーはおおまかながら扱えたと思う。次回からはカメラより離れての話だね。セッティングとかライティング、撮影後の編集とか。


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