TOKINA AT-X 107 DX Fisheye 10-17mm F3.5-4.5(IF)

東方光画機
購入:2011/12 分類:魚眼レンズ

 この超広角レンズは珍しい魚眼ズームだぜ。普通の超広角の役割もこなせる。

 2011年の秋、PC死亡とマイカー故障が一度に重なり、30万円以上の臨時出費となった。その結果使用率の低い機材を売り払ってお金を作る必要が生じ、TOKINA AT-X 116 PRO DX 11-16mm F2.8(IF) ASPHERICAL を手放してしまった。

 そして冬――ボーナスの季節。欠けた穴を再補充する資金が手に入った。新たな超広角レンズは11-16mmF2.8の実働がわずか10回ていどに留まった反省から、明るさよりも画角を優先することにした。選んだのは、おなじメーカーの可愛らしいこいつだ。

 この魚眼レンズはズームレンズだ。焦点距離は10-17mmをフォローする。モーター非搭載なので、カプラーモーターを内蔵している中級機以上のカメラじゃないとAFは利かない。

 それではなぜ超広角の後釜に魚眼ズームという変わり種を選んだのか、具体的に紹介していくぜ。

 いきなり10mmを。対角画角は魚眼らしく180度もある。11-16mmの11mmはおよそ104度なので、圧倒的な差だ。

 しかし魚眼レンズなので、このように――

 水平と垂直以外は、ものすごく曲がるのだ。

 だがそれも、17mmまで伸ばせばさほど目立たなくなる。このレベルであれば、通常の超広角レンズのような感覚で使用できる。

 17mmの画角は100度と、11-16mmの一番広い104度とほぼ重なる。一般的な標準ズームのワイド端は75度ほど、広角を重視したタイプでも80〜82度くらいが限度なので、17mm端でもずっと広い視野を体験できる。

 画角の差をもうすこしわかりやすく比較してみよう。下の写真は標準ズームの広角端17mmで写したものだ。対角81度をカバーしている。

 続けてこの魚眼ズームの望遠端17mmで写したもの。100度の範囲が写っている。黒枠は標準ズーム17mmで写るおおよその範囲だ。おなじ17mmでもこれだけ違う。先に書いた通り、およそ11〜12mm相当だ。枠の上下中央部分でズレてる範囲があるが、魚眼ゆえの特徴である。

 10mm、180度の空間。空と地面の境界をほぼ中心に据えてるので、曲がってることが分かりにくい。構図が限定されるが、十分に超広角の代用に使える。ただし直線の多い人工物はどうしても苦手らしいので、あくまでも風景や遠景に限られるが。なお黒枠は中央部ほど写り込み範囲がズレてるが、魚眼レンズの激しいタル型歪みによるため。

 さて、これまで私がたびたび苦労してきた表現として、パノラマ写真がある。下は5枚の写真を合成したもので、ほぼ150度の範囲をカバーしているが、○で囲った部分で合成処理に失敗している。成功率を高めるため、いつもは8〜10枚も使う。正直面倒だし、それでも失敗する部分は生じてしまう。

 というわけで、さっそく魚眼レンズの登場だ。写り込んでる範囲は150度。一見では魚眼で写したとは分からないかもしれない。

 だが元の写真はこうだ。トリミング(切り取り)で、ゆがみの大きな上下を取り除いたのだ。

 こちらも魚眼ズームによるパノラマ表現だ。何百メートルもつづく街路市の様子が、一目で見て取れる。

 そして切り取る前がこれ。魚眼レンズ独特の誇張が、300年以上の歴史を持つ日曜市よりも目立っているかもしれない。それをごまかし、主題をちゃんと立てるために、切り取りを使うのだ。トリミングを前提としたパノラマ運用によって、魚眼の圧倒的な画角を活用してみようという狙いだ。

 もちろん魚眼レンズとしても使えるので、表現の幅は並の超広角レンズより広いかも知れない。最短撮影距離は14cm。レンズ先端2.5cmまで被写体に近寄れる。

 180度の世界。広角側は色収差が大きめで、テント軒の枠が青紫がかっている。これはF10くらいまで絞ると改善される。ボケを使いたい接近&開放撮影では、上の写真みたいに収差ごとボカせるので表現への影響は小さい。

 100度の世界。すでにどんな大口径標準ズームでも得られない画角だ。

 超広角ズーム的な運用の具体例。あくまでも魚眼のまま疑似超広角として使用するパターンと、画像補正で超広角化する手がある。左が普通の魚眼、右がそれを元に超広角化。建物に関しては超広角化したほうが見映えあり。画質こそ本物の超広角ズームに劣るが、あまり拡大しないなら普通に使える。広角域は使用頻度が低めな割にお金がかかるので、魚眼ズーム一本で十分かなと思っている。軽いし。

 もっとも狭い100度より。左が魚眼そのまま、右が超広角化。印象や意図によって使い分け。

 180度で。上が魚眼、下が超広角化。歪みが激しいので、さすがに100度と違って多少の補正では超広角にはならない。それでも選択肢が多いのはいいことだ。超広角は魚眼化できないが、その逆は可能なのだから。ただし画質とトレードオフ。解像度も解像感も低めなので、大延ばしにはできない。

 超広角・パノラマ・魚眼。この3要素を求めて、私は魚眼ズーム AT-X 107 に決めた。小さくて軽いし、実売価格も安い。もしニコン純正で同様のレンズが出れば、値段は10万円以上になるだろう。
 このレンズはフィルタを付けられないが、前玉が撥水・撥油性に優れたコーティングを採用しているのでメンテナンスは楽だ。とにかくこいつは、一本で何役もこなすことの出来る、超広角領域の便利屋さんだ。